【宅建過去問】(平成02年問06)抵当権


Aは、BからBの所有地を2,000万円で買い受けたが、当該土地には、CのDに対する1,000万円の債権を担保するため、Cの抵当権が設定され、その登記もされていた。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。

  1. Aは、契約の際Cの抵当権のあることを知らなくても、その理由だけでは、AB間の売買契約を解除することはできない。
  2. Aは、売買契約の内容に適合しない抵当権が存在する場合は、その消滅を請求することができ、その手続きが終わるまで、Bに対し、代金の支払いを拒むことができる。
  3. Cは、BのAに対する代金債権について、差押えをしなくても、他の債権者に優先して、1,000万円の弁済を受けることができる。
  4. Aは、売買契約の内容に適合しない抵当権の実行を免れるため、DのCに対する1,000万円の債務を弁済した場合、B及びDに対し、当該1,000万円の支払いを請求することができる。

正解:3

02-06-0

1 正しい

民法は、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合についても、目的物が契約の内容に適合しないものである場合のルールを準用している(同法565条)。
したがって、「Cの抵当権が設定されていること」がAB間の契約の内容に適合しないのであれば、Bは、売主Aの担保責任を追及することが可能である。そして、担保責任を追及する方法の一つとして、契約の解除も可能である(同法564条、541条)。

ポイントは、「Cの抵当権がAB間の契約の内容に適合しているかどうか。」である。ただ単に、「契約の際Cの抵当権のあることを知らない」という理由だけで、契約を解除することはできない。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
売主の担保責任(抵当権・地上権等がある場合)(民法[24]3(3)③)
年-問-肢内容正誤
抵当権がある場合
[共通の設定]
Aを売主、Bを買主として甲土地の売買契約を締結した。甲土地には、Cを抵当権者とする抵当権が設定され、その登記もされていた。
128-06-3
Bが、A所有の甲土地が抵当権の目的となっていることを知りながら本件契約を締結した場合、当該抵当権の実行によってBが甲土地の所有権を失い損害を受けたとしても、BはAに対して、損害賠償を請求することができない。×
228-06-4
Bが、A所有の甲土地が抵当権の目的となっていることを知りながら本件契約を締結した場合、当該抵当権の実行によってBが甲土地の所有権を失ったときは、Bは、本件契約を解除することができる。
320-09-2甲土地に設定されている抵当権が実行されてBが所有権を失った場合、Bが甲土地に抵当権が設定されていることを知っていたとしても、BはAB間の売買契約を解除することができる。
417-09-3買主が、抵当権が存在していることを知りつつ不動産の売買契約を締結し、当該抵当権の行使によって買主が所有権を失った場合には、買主は、売買契約の解除はできるが、売主に対して損害賠償請求はできない。×
511-10-3AがCに設定していた契約の内容に適合しない抵当権の実行を免れるため、BがCに対しAの抵当債務を弁済した場合で、BがAB間の契約締結時に抵当権の存在を知っていたとき、Bは、Aに対し、損害の賠償請求はできないが、弁済額の償還請求はすることができる。×
608-08-3この土地が抵当権の目的とされており、その実行の結果Dが競落したとき、Bは、Aに対して契約を解除することができる。
704-06-3Bは、Cの抵当権が設定されていることを知らなかったときであっても、Cが抵当権を実行する前においては、Aに対し、売買契約を解除することができない。×
802-06-1Aは、契約の際Cの抵当権のあることを知らなくても、その理由だけでは、AB間の売買契約を解除することはできない。
901-04-4その土地に抵当権が設定されていて、買主がそのことを知らなかったときであっても、買主は、その事実を知ったとき、抵当権が行使された後でなければ、契約を解除することができない。×
地上権がある場合
105-08-4売買の目的物である土地に第三者が登記済みの地上権を有していて、買主が利用目的を達成することができなかった場合、善意悪意に関係なく、契約を解除することができる。

2 正しい

買い受けた不動産について契約の内容に適合しない抵当権の登記があるときは、抵当不動産の第三取得者Aは、抵当権消滅請求の手続をすることができる(民法379条)。そして、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、代金の支払を拒むことが可能である(同法577条1項前段)。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
代価弁済・抵当権消滅請求(民法[12]7(2)(3))

[共通の設定]
Bは、B所有の甲土地にAから借り入れた金員の担保として抵当権が設定され、その旨の登記がなされた。その後、Bは、第三者であるCに甲土地を売却した。
年-問-肢内容正誤
代価弁済
1R04-04-1Bから甲土地を買い受けたCが、Aの請求に応じてその代価を弁済したときは、本件抵当権はCのために消滅する。
2H27-06-3抵当不動産を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその代価を抵当権者に弁済したときは、抵当権はその第三者のために消滅する 。
抵当権消滅請求
1R04-04-4X所有の甲土地にBのAに対する債務を担保するためにAの抵当権が設定され、その旨の登記がなされた。BがXから甲土地を買い受けた場合、Bは抵当不動産の第三取得者として、本件抵当権について、Aに対して抵当権消滅請求をすることができる。×
2H28-04-4
Aの抵当権設定後、Bが第三者であるCに甲土地を売却した場合、CはAに対して、民法第383条所定の書面を送付して抵当権の消滅を請求することができる。
3H27-06-2抵当不動産の被担保債権の主債務者は、抵当権消滅請求をすることはできないが、その債務について連帯保証をした者は、抵当権消滅請求をすることができる。×
4H21-06-1抵当権の被担保債権につき保証人となっている者は、抵当不動産を買い受けて第三取得者になれば、抵当権消滅請求をすることができる。×
5H21-06-2抵当不動産の第三取得者は、当該抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生した後でも、売却の許可の決定が確定するまでは、抵当権消滅請求をすることができる。×
6H21-06-3抵当不動産の第三取得者が抵当権消滅請求をするときは、登記をした各債権者に民法383条所定の書面を送付すれば足り、その送付書面につき事前に裁判所の許可を受ける必要はない。
7H21-06-4抵当不動産の第三取得者から抵当権消滅請求にかかる民法383条所定の書面の送付を受けた抵当権者が、同書面の送付を受けた後2か月以内に、承諾できない旨を確定日付のある書面にて第三取得者に通知すれば、同請求に基づく抵当権消滅の効果は生じない。×
8H21-10-4Aを売主、Bを買主として甲土地の売買契約を締結した。A所有の甲土地に売買契約の内容に適合しない抵当権の登記があり、Bが当該土地の抵当権消滅請求をした場合には、Bは当該請求の手続が終わるまで、Aに対して売買代金の支払を拒むことができる。
9H02-06-2Aは、BからBの所有地を2,000万円で買い受けたが、当該土地には、CのDに対する1,000万円の債権を担保するため、Cの抵当権が設定され、その登記もされていた。Aは、売買契約の内容に適合しない抵当権が存在する場合は、その消滅を請求することができ、その手続きが終わるまで、Bに対し、代金の支払いを拒むことができる。
買主による代金の支払の拒絶(民法[24]3なし)
年-問-肢内容正誤
権利を失うおそれがある場合
1R03-07-4Aを売主、Bを買主として、A所有の甲自動車を50万円で売却する契約が締結された。甲自動車について、第三者CがA所有ではなくC所有の自動車であると主張しており、Bが所有権を取得できないおそれがある場合、Aが相当の担保を供したときを除き、BはAに対して、売買代金の支払を拒絶することができる。
201-04-3売買契約の目的物である土地に権利を主張する者がいて、買主が買い受けた土地の所有権の一部を失うおそれがあるときは、買主は、売主が相当の担保を提供しない限り、その危険の限度に応じて代金の一部の支払いを拒むことができる。
抵当権等の登記がある場合
121-10-4A所有の甲土地に売買契約の内容に適合しない抵当権の登記があり、Bが当該土地の抵当権消滅請求をした場合には、Bは当該請求の手続が終わるまで、Aに対して売買代金の支払を拒むことができる。
202-06-2Aは、売買契約の内容に適合しない抵当権が存在する場合は、その消滅を請求することができ、その手続きが終わるまで、Bに対し、代金の支払いを拒むことができる。

3 誤り

抵当権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる(民法372条、304条1項本文)。これを物上代位という。したがって、Cは、BのAに対する代金債権に対して抵当権を行使し、優先弁済を受けることができる。
ただし、そのためには、抵当権者が売買代金の払渡し又は引渡しの前に差押えをする必要がある(同法372条、304条1項ただし書き)。本肢は、「差押えをしなくても」とする点が誤り。

4 正しい

抵当不動産の第三取得者Aは、債務者Dの弁済について、正当な利益を有する(民法474条2項本文)。

したがって、Aは、たとえDの意思に反する場合であっても、債務を弁済することができる(同条1項、2項本文)。

債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する(同法499条)。本肢でいえば、AがCに代位する。そのため、Aは、Dに対して、1,000万円の支払を請求することができる。
また、Aは、費用を支出してその所有権を保存している。したがって、売主Bに対し、その費用の償還を請求することも可能である(同法570条)。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
第三者による弁済(民法[20]3(2))
年-問-肢内容正誤
120-08-1借地上の建物の賃借人は、借地人の意思に反しても、地代を弁済できる。
220-08-4借地上の建物の賃借人が土地賃借人に代わって地代を弁済した場合、土地賃貸人は地代不払を理由に借地契約を解除できない。
317-07-1Bは、土地所有者Aから土地を賃借し、その土地上に建物を所有してCに賃貸している。Cは、借賃の支払債務に関して正当な利益を有しないので、Bの意思に反して、債務を弁済することはできない。
×
416-04-1正当な利益を有しない第三者は、債務者の意思に反しても、弁済することができる。
×
511-05-1Aが、Bに対して不動産を売却し、所有権移転登記及び引渡しをした。Bの親友Cが、Aに直接代金の支払いを済ませても、それがBの意思に反する弁済である場合には、Bの代金債務は消滅しない。
605-06-1BのAからの借入金100万円の弁済について、Bの兄Cは、Bが反対しても、Aの承諾があれば、Aに弁済することができる。
×
704-06-4抵当不動産の第三取得者は、債権者・債務者の反対の意思表示のないときは、Bの債務を弁済して、抵当権を消滅させることができる。
802-06-4抵当不動産の第三取得者は、債務者の債権者に対する債務を弁済することができる。
弁済による代位(民法[20]5)
年-問-肢内容正誤
111-05-4連帯保証人が債務全額を弁済した場合、連帯保証人は、債権者の承諾がないときでも、債権者に代位する。
210-04-4連帯保証人が債権者に対して全額弁済した場合に、主債務者に対して債権者が有する抵当権を代位行使するためには、連帯保証人は、債権者の承諾を得る必要がある。×
306-05-3連帯保証人は、債務者及び第三取得者に対して債権者に代位できる。
406-05-4第三取得者が弁済した場合、債務者及び連帯保証人に対して債権者に代位できる。×
505-06-2主債務者の保証人が債権者に弁済した場合、保証人は、債権者の承諾がなくても、債権者に代位することができる。
602-06-4抵当不動産の第三取得者が債務者に代わって弁済した場合、債務者に対して支払いを請求できる。

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