【宅建過去問】(平成04年問02)意思表示・行為能力


Aが未成年者Bに土地売却に関する代理権を与えたところ、Bは、Cにだまされて、善意無過失のDと売買契約を締結したが、Aは、Bがだまされたことを知らず、かつ、知ることができなかった。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。

  1. Aは、Bが未成年者で、法定代理人の同意を得ないで契約を締結したことを理由に、当該契約を取り消すことができる。
  2. Aは、自らがだまされたのではないから、契約を取り消すことができない。
  3. Aは、BがCにだまされたことを知らず、かつ、知ることができなかったのであるから、契約を取り消すことができる。
  4. CがBをだましたことについてDが善意無過失であるから、Aは、契約を取り消すことができない。

正解:4

1 誤り

代理人となるに当たって、行為能力は要求されない(民法102条)。したがって、未成年者であっても代理人になることができる。
もちろん、未成年者である代理人がした行為は、確定的に有効になる。言い換えれば、未成年者であることを理由に取り消すことはできない。

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代理人の行為能力(民法[03]3(3))
年-問-肢内容正誤
130-02-2[Aが、所有する甲土地の売却に関する代理権をBに授与し、BがCとの間で、Aを売主、Cを買主とする甲土地の売買契約を締結した。]AがBに代理権を授与するより前にBが補助開始の審判を受けていた場合、Bは有効に代理権を取得することができない。
×
226-02-ウ代理人は、行為能力者であることを要しない。
324-02-1未成年者が代理人となる契約には法定代理人の同意が必要。×
422-02-3代理人が未成年であることを理由に、相手方から取消しが可能。×
521-02-2代理人が未成年であることを理由に、本人からの取消しは不可。
612-01-1未成年者は代理人になることができない。×
706-04-1代理人が未成年であることを理由に、本人からの取消しが可能。×
804-02-1代理人が未成年であることを理由に、本人からの取消しが可能。×
903-03-1代理人が未成年であり親権者の同意がないことを理由に、本人からの取消しが可能。×

2 誤り

代理人が相手方に対してした意思表示の効力が以下の事実の影響を受ける場合、事実の有無は、代理人について決定する(民法101条1項)。

  1. 意思の不存在(心裡留保、虚偽表示)
  2. 錯誤、詐欺、強迫
  3. ある事情に関する善意・悪意や過失の有無

本問では、代理人Bが詐欺によって意思表示をしている。したがて、「代理人Bの意思表示が詐欺によるものだった」=「本人Aの相手方Dに対する意思表示が詐欺によるものだった」と考えることになる。
詐欺によって意思表示をしたAは、その意思表示を取り消すことができる(同法96条1項)。

※実際には、肢3の理由で取消しはできない。しかし、本肢のいうように「自らがだまされたのではないから」取消しできないわけではない。

■参照項目&類似過去問
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代理行為の瑕疵(民法[03]3(2))
年-問-肢内容正誤
126-02-エ代理人の意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、本人の選択に従い、本人又は代理人のいずれかについて決する。
×
224-02-2法人が代理人により取引を行った場合、即時取得の要件である善意・無過失の有無は、代理人を基準に判断される。
314-02-1Aは、Bに対してCとの間の売買契約を委任したが、Bが、DをCと勘違いした要素の錯誤によってDとの間で契約した場合、Bに重過失がなければ、Aは、この契約を取り消すことができる。
413-08-2代理人が、買主から虚偽の事実を告げられて売買契約をした場合でも、売主本人がその事情を知りつつ代理人に対して買主との契約を委託したものであるときには、売主本人から買主に対する詐欺による取消しはできない。
504-02-2未成年者である代理人が、相手方にだまされて契約を締結した場合、詐欺につき善意無過失の本人は、契約を取り消すことができない。
×
603-03-2代理人が相手方にだまされて契約を締結した場合、本人が詐欺の事実を知っていたときは、契約を取り消すことができない。
702-05-3相手方が代理人をだまして売買契約を締結させた場合は、代理人は当該売買契約を取り消すことができるが、本人は取り消すことができない。×
代理人による詐欺
108-02-3代理人が相手方をだまして契約を締結した場合、本人が詐欺の事実を知っていたと否とにかかわらず、相手方は契約を取り消すことができる。

3 誤り

(肢2参照。)
Bを代理人としたAの意思表示は、詐欺によるものであるから、取り消すことができる(民法96条1項)。
しかし、第三者による詐欺の場合、意思表示を取り消すことができるのは、相手方が詐欺について悪意又は善意でも過失があった場合に限られる(同条2項)。
本問では、第三者Cの詐欺について、買主Dが善意無過失である。詐欺を理由として契約を取り消すことはできない。

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第三者による詐欺(民法[02]5(4))
年-問-肢内容正誤
130-01-1[AがBに甲土地を売却した。]甲土地につき売買代金の支払と登記の移転がなされた後、第三者の詐欺を理由に売買契約が取り消された場合、原状回復のため、BはAに登記を移転する義務を、AはBに代金を返還する義務を負い、各義務は同時履行の関係となる。
230-01-4[AがBに甲土地を売却した。]Aが第三者の詐欺によってBに甲土地を売却し、その後BがCに甲土地を転売した場合、Bが第三者の詐欺の事実を知らず、かつ、知ることができなかったとしても、Cが第三者の詐欺の事実を知っていれば、Aは詐欺を理由にAB間の売買契約を取り消すことができる。
×
323-01-2第三者の詐欺の場合、相手方が知っていたとしても、取消不可。×
416-01-3第三者の詐欺の場合、相手方の知不知に関わらず、取消不可。×
514-01-1第三者の詐欺の場合、相手方が知り、又は知ることができたときでないと、取消不可。
610-07-1第三者の詐欺の場合、相手方が知っているときは、取消可能。
704-02-3代理人が第三者に騙された場合、相手方が善意無過失でも、本人から取消可能。
×
804-02-4代理人が第三者に騙された場合、相手方が善意無過失であれば、本人から取消不可。

4 正しい

(肢2・3参照。)
本問では、第三者Cの詐欺について、買主Dが善意無過失である。詐欺を理由として契約を取り消すことはできない。

■参照項目&類似過去問
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第三者による詐欺(民法[02]5(4))
年-問-肢内容正誤
130-01-1[AがBに甲土地を売却した。]甲土地につき売買代金の支払と登記の移転がなされた後、第三者の詐欺を理由に売買契約が取り消された場合、原状回復のため、BはAに登記を移転する義務を、AはBに代金を返還する義務を負い、各義務は同時履行の関係となる。
230-01-4[AがBに甲土地を売却した。]Aが第三者の詐欺によってBに甲土地を売却し、その後BがCに甲土地を転売した場合、Bが第三者の詐欺の事実を知らず、かつ、知ることができなかったとしても、Cが第三者の詐欺の事実を知っていれば、Aは詐欺を理由にAB間の売買契約を取り消すことができる。
×
323-01-2第三者の詐欺の場合、相手方が知っていたとしても、取消不可。×
416-01-3第三者の詐欺の場合、相手方の知不知に関わらず、取消不可。×
514-01-1第三者の詐欺の場合、相手方が知り、又は知ることができたときでないと、取消不可。
610-07-1第三者の詐欺の場合、相手方が知っているときは、取消可能。
704-02-3代理人が第三者に騙された場合、相手方が善意無過失でも、本人から取消可能。
×
804-02-4代理人が第三者に騙された場合、相手方が善意無過失であれば、本人から取消不可。

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【宅建過去問】(平成04年問02)意思表示・行為能力” に対して2件のコメントがあります。

  1. さむ より:

    登記の有無を考えなくていいのでしょうか?

    1. 家坂 圭一 より:

      さむ様

      ご質問ありがとうございます。
      「登記の有無」を基準に優劣を決めるのは、「対抗問題」が生じている場合の話です。
      この問題では、「対抗問題」が発生していないので、「登記の有無」を考える必要はありません。

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