7月
07
1998

【宅建過去問】(平成10年問03)敷金返還請求権

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建物の賃借人Aは、賃貸人Bに対して有している建物賃貸借契約上の敷金返還請求権につき、Cに対するAの金銭債務の担保として質権を設定することとし、Bの同意を得た。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。

  1. Aは、建物賃貸借契約が終了し、AからBに対する建物の明渡しが完了した後でなければ、敷金返還請求権について質権を設定することはできない。
  2. Cが質権の設定を受けた場合、確定日付のある証書によるAからBへの通知又はBの承諾がないときでも、Cは、AB間の建物賃貸借契約証書及びAのBに対する敷金預託を証する書面の交付を受けている限り、その質権の設定をAの他の債権者に対抗することができる。
  3. Cが質権の設定を受けた後、質権の実行かつ敷金の返還請求ができることとなった場合、Cは、Aの承諾を得ることなく、敷金返還請求権に基づきBから直接取立てを行うことができる。
  4. Cが、質権設定を受けた後その実行ができることとなった場合で、Bに対し質権を実行する旨の通知をしたとき、Bは、その通知受領後Aの明渡し完了前に発生する賃料相当損害金については敷金から充当することができなくなる。

正解:3

10-03-0

以下の基本知識を前提に解いていこう。

【敷金契約の性質】最判昭48.02.02

  1. 賃貸借契約に附随するものではあるが、それとは別個の契約である。
  2. 建物明渡義務を履行するまでの賃貸人の賃借人に対する全ての債権を担保する。
  3. 賃貸人は、賃貸借の終了後、明渡完了するまでに生じた被担保債権を控除してなお残額がある場合に、その残額につき返還義務を負担する。
    (賃借人の敷金返還請求権は停止条件付の債権である。)

1 誤り

敷金返還請求権は停止条件付の債権である。
しかし、だからといって、質権の対象とならないわけではない。条件付の債権であっても、通常の債権と同じように、質権の対象とすることができる(民法362条、129条)。

■類似過去問(明渡しまでの債務を担保)
  • 平成15年問11肢1(賃貸借契約が終了した場合、建物明渡しと敷金返還とは同時履行の関係に立たず、借主の建物明渡しは貸主から敷金の返還された後に行えばよい:×)
  • 平成13年問09肢1(賃貸借契約期間中でも、貸主の返済能力に客観的な不安が生じた場合は、借主は、賃料支払債務と敷金返還請求権とを対当額にて相殺することができる:×)
  • 平成13年問09肢3(賃貸借契約が終了した場合、建物明渡債務と敷金返還債務とは常に同時履行の関係にあり、借主は、敷金の支払と引換えにのみ建物を明け渡すと主張できる:×)
  • 平成13年問09肢4(貸主は、借主の、賃貸借契約終了時までの未払賃料と契約終了後明渡しまでの期間の賃料相当損害額の双方を、敷金から控除できる:○)
  • 平成10年問03肢1(賃借人は、建物賃貸借契約が終了し、建物の明渡しが完了した後でなければ、敷金返還請求権について質権を設定することはできない:×)
  • 平成10年問03肢4(敷金返還請求権に質権を設定した者が、賃借人に対し質権実行通知をしたとき、賃借人は、通知受領後明渡し完了前に発生する賃料相当損害金については敷金から充当することができなくなる:×)
  • 平成06年問10肢1(借主は、貸主に対し、未払賃料について敷金からの充当を主張することができる:×)
■類似過去問(敷金返還請求権の担保提供)
  • 平成13年問09肢2(敷金返還請求権は、賃貸借契約と不可分であり、借主は、貸主の承諾があったとしても、これを借主の債権者に対して担保提供することができない:×)
  • 平成10年問09肢1(賃借人は、建物賃貸借契約が終了し、建物の明渡しが完了した後でなければ、敷金返還請求権について質権を設定することはできない:×)
  • 平成10年問09肢4(敷金返還請求権に質権を設定した者が、賃借人に対し質権実行通知をしたとき、賃借人は、通知受領後明渡し完了前に発生する賃料相当損害金については敷金から充当することができなくなる:×)

2 誤り

敷金返還請求権は、指名債権である。そして、指名債権を目的とする質権の対抗要件については、指名債権の譲渡の場合と同一とされている(民法364条、467条)。
したがって、確定日付ある証書によるAからBへの通知又はBの承諾がない限り、質権設定をB以外の第三者に対抗することはできない。

※譲渡に証書の交付を要する債権を質権の目的とする場合には、証書の交付が、質権の効力要件となる(同法363条)。本肢は、指名債権に関するものであるから、この規定とは無関係である。

■類似過去問(指名債権を目的とする質権の対抗要件)
  • 平成14年問05肢1(債権質の質権者は、債務者の承諾が書面によるものであれば、確定日付を得ていなくても、この質権設定を、第三者に対しても対抗することができる:×)
  • 平成10年問03肢2(確定日付のある証書による債権者から債務者への通知又は債務者の承諾がないときでも、質権者は、建物賃貸借契約証書及び敷金預託を証する書面の交付を受けている限り、質権の設定を他の債権者に対抗することができる:×)

3 正しい

質権者は、質権の目的である債権を直接に取り立てることができる(民法366条1項)。したがって、質権の実行と敷金返還請求権の行使ができるようになった時点以降であれば、Cは、Aの承諾を得ることなく、Bから直接に取立てを行うことができる。

■類似過去問(質権者による債権の取立て)
  • 平成14年問05肢3(敷金返還請求権に質権の設定を受けた者は、賃借人に対する債権の弁済期到来前に、敷金返還請求権の弁済期が到来した場合は、賃貸人に対し、敷金を供託するよう請求できる:○)
  • 平成14年問05肢4(敷金返還請求権に質権の設定を受けた者は、賃借人に対する債権の弁済期が到来した場合、賃貸人に対し、敷金返還請求権の弁済期の前に、敷金を直ちに交付するよう請求できる:×)
  • 平成10年問03肢3(敷金返還請求権に質権の設定を受けた者は、賃借人の承諾を得ることなく、賃貸人から直接取立てを行うことができる:○)

4 誤り

敷金は、明渡完了に至るまでに発生した賃借人の全債務を担保する。したがって、Bは、明渡し完了前に発生する賃料相当損害金について敷金から充当することができる。質権者が賃貸人から返還を受けられるのは、賃借人の債務を差し引いた残りの部分のみである。

■類似過去問(明渡しまでの債務を担保)
  • →肢1
■類似過去問(敷金返還請求権の担保提供)
  • →肢1

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Written by 家坂 圭一 in: 平成10年過去問,民法 |

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