【宅建過去問】(平成14年問08)解除
Aは、A所有の土地を、Bに対し、1億円で売却する契約を締結し、手付金として1,000万円を受領した。Aは、決済日において、登記及び引渡し等の自己の債務の履行を提供したが、Bが、土地の値下がりを理由に残代金を支払わなかったので、登記及び引渡しはしなかった。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
- Aは、この売買契約を解除せず、Bに対し、残代金の支払を請求し続けることができる。
- Aは、この売買契約を解除するとともに、Bに対し、売買契約締結後解除されるまでの土地の値下がりによる損害を理由として、賠償請求できる。
- Bが、AB間の売買契約締結後、この土地をCに転売する契約を締結していた場合で、Cがやはり土地の値下がりを理由としてBに代金の支払をしないとき、Bはこれを理由として、AB間の売買契約を解除することはできない。
- Bが、AB間の売買契約締結後、この土地をCに転売する契約を締結していた場合、Aは、AB間の売買契約を解除しても、Cのこの土地を取得する権利を害することはできない。
正解:4
1 正しい
解除権は債権者(A)の権利であって義務ではない。
解除事由がある場合でも、Aは、この売買契約を解除せず、Bに対して、残代金の請求をし続けることができる。
■参照項目&類似過去問
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解除権の行使:意思表示(民法[23]3(1))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | 14-08-1 | 売買契約の解除権を有する売主は、契約を解除せず、買主に対して代金の支払いを請求し続けることができる。 | ◯ |
2 | 05-07-3 | 解除権を行使した場合、その意思表示を撤回することはできない。 | ◯ |
3 | 04-08-3 | 解除権行使の条件がみたされても、解除の意思表示をしない限り、契約は解除されない。 | ◯ |
2 正しい
解除権を行使したときでも、損害賠償の請求をすることができる(民法545条4項)。
この損害賠償の範囲には、土地の値下がりによる損害も含まれる(民法416条)。
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解除の効果:損害賠償請求(民法[23]4(2))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | 21-08-4 | 解除後、原状回復義務履行時までに目的物の価格が下落し損害を受けた場合、損害賠償請求はできない。 | × |
2 | 17-09-2 | 解除に加え、損害賠償請求はできない。 | × |
3 | 14-08-2 | 解除に加え、損害賠償請求ができる。 | ◯ |
4 | 08-09-4 | 解除に加え、損害賠償請求ができる。 | ◯ |
5 | 05-07-1 | 解除に加え、損害賠償請求ができる。 | ◯ |
3 正しい
Bの転売先であるCが代金を支払わないからといって、これはBC間の契約の事情であり、Aには関係がない。
Aは、登記及び引渡し等の自己の債務の履行を提供しているから、債務不履行ということはできない。
したがって、Bから債務不履行に基づく解除をすることはできない。
また、Aが履行に着手している以上、解約手付による解除も不可能である(民法557条1項)。
4 誤り
解除によって、第三者の権利を害することはできない(民法545条1項ただし書き)。
しかし、この権利を主張するためには、第三者は登記を備えなければならない(最判昭33.06.14)。
本肢では、登記はAのところにとどまっており、Cは登記を有していない。
したがって、Aは土地の所有権をCに対して主張することができる。
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対抗問題:解除前の第三者(民法[07]2(3)②)
解除:解除前の第三者(民法[23]4(3)②)
解除:解除前の第三者(民法[23]4(3)②)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | 21-08-1 | 解除前の第三者が登記を備えている場合、その第三者が悪意であっても、売主は所有権を主張できない。 | ◯ |
2 | 16-09-1 | 建物の買主がその債権者と抵当権設定契約を締結し登記をした後で、売主が売買契約を解除しても、売主は抵当権の消滅を主張できない。 | ◯ |
3 | 16-09-2 | 建物の買主がその建物を賃貸し引渡しを終えた後で、売主が売買契約を解除した場合、売主は賃借権の消滅を主張できる。 | × |
4 | 16-09-3 | 建物の買主がその債権者と抵当権設定契約を締結したが、登記をする前に、売主が売買契約を解除した場合、抵当権設定契約は無効となる。 | × |
5 | 14-08-4 | 買主が土地を転売した後、売買契約を解除しても、未登記の第三者の土地を取得する権利を害することはできない。 | × |
6 | 13-05-2 | 買主が土地を転売した後、売買契約を解除した場合、登記を受けた第三者は、所有権を売主に対抗できる。 | ◯ |
7 | 08-05-3 | 解除前の第三者が登記を備えていても、その第三者が解除原因につき悪意であった場合には、売主に対し所有権を対抗できない。 | × |
8 | 03-04-2 | 解除前の第三者が登記を備えていても、売主は第三者に対し所有権を対抗できる。 | × |
9 | 01-03-3 | 売主が買主の債務不履行を理由に売買契約を解除した場合、売主は、その解除を、解除前に転売を受け、解除原因について悪意ではあるが、所有権の移転登記を備えている第三者に対抗することができる。 | × |
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