8月
19
2002

【宅建過去問】(平成14年問11)不法行為(使用者責任)

【過去問本試験解説】発売中

Aの被用者Bと、Cの被用者Dが、A及びCの事業の執行につき、共同してEに対し不法行為をし、A、B、C及びDが、Eに対し損害賠償債務を負担した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1. Aは、Eに対するBとDの加害割合が6対4である場合は、Eの損害全額の賠償請求に対して、損害の6割に相当する金額について賠償の支払をする責任を負う。
  2. Aが、自己の負担部分を超えて、Eに対し損害を賠償したときは、その超える部分につき、Cに対し、Cの負担部分の限度で求償することができる。
  3. Aは、Eに対し損害賠償債務を負担したことに基づき損害を被った場合は、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、Bに対し、損害の賠償又は求償の請求をすることができる。
  4. Dが、自己の負担部分を超えて、Eに対し損害を賠償したときは、その超える部分につき、Aに対し、Aの負担部分の限度で求償することができる。

正解:1

【1】 X 誤り

共同不法行為においては、加害者の全員が被害者の損害全額を賠償すべき義務を負う(民法719条1項。最判昭57.03.04)。
加害割合に応じて賠償責任を負うのではない。
(加害割合は加害者間の求償関係の基準となるに過ぎない。)

■類似過去問(共同不法行為者の責任)
  • 平成25年問09肢3(共同不法行為(自動車事故)の加害者の同乗者は、他の加害者に対して損害賠償請求できない:×)
  • 平成19年問05肢3(共同不法行為の加害者の1人に履行を請求しても、他の加害者には効力を有しない:◯)
  • 平成14年問11肢1(共同不法行為の加害者は、加害割合に応じた金額についてのみ賠償の責任を負う:×)
  • 平成12年問08肢2(共同不法行為の加害者のうち過失が軽微な者に対しても、損害全額の賠償を請求できる:◯)
  • 平成04年問09肢3(売主・買主それぞれが宅建業者に媒介を依頼し、両業者が共同不法行為を行った場合、買主は、自らが依頼した宅建業者には損害賠償請求できるが、売主が依頼した業者には請求できない:×)

【2】 ◯ 正しい

加害者BDの複数の使用者ACが使用者責任を負う場合、使用者の一方(A)が自己の負担部分を超えて損害を賠償したときは、その超える部分に関し、他方の使用者(C)に対して、その使用者の負担部分の割合で求償することができる(民法715条。最判平03.10.25)。

【3】 ◯ 正しい

加害者Bの使用者であるAが損害を負担した場合、損害の公平な分担という見地から信義則上認められる限度において、Bに対して、損害の賠償又は求償の請求をすることができる(民法715条。最判昭51.07.08)。

■類似過去問(使用者の被用者に対する求償)
  • 平成25年問09肢2(使用者は、被用者に対して、求償ができない:×)
  • 平成24年問09肢3(使用者は、被用者から全額の求償ができる:×)
  • 平成20年問11肢3(使用者は、被用者に対して、求償ができない:×)
  • 平成18年問11肢4(使用者は、被用者から損害額の1/2の求償ができる:×)
  • 平成14年問11肢3(使用者は、被用者に対して、信義則上相当と認められる限度において、求償ができる:◯)
  • 平成11年問09肢4(使用者は、被用者に故意または重過失がなければ、求償できない:×)
  • 平成04年問09肢4(使用者は、被用者に対して、求償ができない:×)

【4】 ◯ 正しい

BとDの共同不法行為の場合に、Dが自己の負担部分を超えて、損害を賠償したときには、その超える部分について、使用者Aの負担部分(=加害者Bの負担部分)の限度で求償することができる。


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Written by 家坂 圭一 in: 平成14年過去問,民法 |

4 Comments »

  • ふるた

    少し気になる点があり、質問させてください。
    使用者が被用者に対して求償できる旨は民法上規定があると理解していますが、
    被用者が使用者に対しても求償できると理解しておいて言いのでしょうか?
    というのも、他書籍で見かけたのですが、被用者は使用者に求償できないとあったので、すごく引っかかっています。

    Comment | 2016/10/03
  • 家坂 圭一

    ふるた様

    講師の家坂です。
    御質問ありがとうございます。

    ■1■使用者から被用者に対する求償

    こちらについては、民法715条3項に明文の規定があります。
    ———
    前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
    ———

    本試験では、
    (1)「求償ができるか、できないか」
    というテーマが一つ目のポイントです。

    もう一つの頻出テーマは、
    (2)「どの範囲で求償できるか」
    という知識です。
    「全額の求償ができる」「1/2の求償ができる」などのヒッカケ・パターンがありますが、これについては、判例で結論が出ています。
    「信義則上相当と認められる限度において、求償ができる」
    というのが正しい知識です。

    他にも、
    (3)使用者に対し損害賠償を請求した場合に、被用者に対しても損害賠償請求できるか、
    (4)被用者の損害賠償義務が時効消滅した場合に、被用者の損害賠償義務は消滅するか、
    というようなテーマがあります。

    『類似過去問』を利用して、各種の出題パターンになれておきましょう。
    平成25年の問09と平成24年の問09を解けば、以上の全パターンが出現します。
    http://e-takken.tv/25-09/
    http://e-takken.tv/24-09/

    (長くなったので、いったん区切ります。)

    Comment | 2016/10/04
  • 家坂 圭一

    (続きです。)

    ■2■被用者から使用者に対する求償

    いわゆる「逆求償」というテーマです。

    これについては、条文もありませんし、判例も存在しません。
    また、学説にも様々な考え方があり、一致しているわけではありません。

    このような点から見ると、「逆求償」について、宅建試験で単純な◯×問題として出題するのは難しいように思います。
    過去の例を見ても、平成に入って以降27年間の中で、このテーマは出題されていないのです。
    (今回の問題でも、B→AやD→Cの求償について、あえて聞いていませんね。)

    ということで、この知識に関しては、受験対策的には無視した方がいいのではないでしょうか。
    「使用者→被用者」の求償に関する頻出ポイントについて整理する方が、得点効率がいいように思います。

    本試験までの時間は限られています。
    効率的に勉強していきましょう。
    最後まで全力で頑張って下さい。

    Comment | 2016/10/04
  • 家坂 圭一

    ———
    以下は、蛇足です。
    無視しても問題ありません。
    本試験が終わってから読んだ方がいいような気がします。
    ———

    「逆求償」の可否に関する考え方を整理してみましょう。

    (A)「逆求償」することができないとする考え方

    不法行為責任を負うのはあくまで加害者である被用者である。
    使用者責任は、被害者救済の点から設けられた制度に過ぎない。
    つまり、使用者は、本来であれば被用者が負担すべき損害賠償義務を被用者に代わって果たしているだけである。

    このような考え方を「代位責任説」といいます。
    これを徹底すれば、
    「被用者が損害の全額を賠償できたのであれば、被害者の救済は十分である。」
    「使用者責任を追及する必要がない。」
    したがって、逆求償はできない、という結論になるでしょう。

    (B)「逆求償」することができるとする考え方

    被害者に損害が発生したことにつき、使用者にも過失がある。
    つまり、使用者責任の構造は、被用者による不法行為と使用者による不法行為の共同不法行為(民法719条)なのである。
    だとすれば、一方の加害者である被用者が自己の負担部分を超えて損害を賠償した場合には、他方の加害者である使用者について求償することができる。
    つまり、逆求償は可能である。

    (まとめ)
    (A)も(B)も、どちらも筋道の立った考え方です。
    しかし、条文や判例など、どちらの学説が正しいか決める基準は存在しません。
    宅建はあくまで、「民法の規定及び判例」にしたがって正誤を決めるテストです。
    条文も判例も存在しない以上、「こっちが正解」と決めることはできないのではないでしょうか。
    つまり、「出題してはいけない」知識だと思います。

    Comment | 2016/10/04

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