【宅建過去問】(平成16年問10)売主の担保責任


宅地建物取引業者ではないAB間の売買契約における売主Aの責任に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1. Bは住宅建設用に土地を購入したが、都市計画法上の制約により当該土地に住宅を建築することができない場合には、そのことを知っていたBは、Aに対し土地売主の担保責任を追及することができない。
  2. Aは、C所有の土地を自ら取得するとしてBに売却したが、Aの責に帰すべき事由によってCから所有権を取得できず、Bに所有権を移転できない場合、他人物売買であることを知っていたBはAに対して損害賠償を請求できない。
  3. Bが購入した土地の一部を第三者Dが所有していた場合、Bがそのことを知っていたとしても、BはAに対して代金減額請求をすることができる。
  4. Bが敷地賃借権付建物をAから購入したところ、敷地の欠陥により擁壁に亀裂が生じて建物に危険が生じた場合、Bは敷地の欠陥を知らなかったとしても、Aに対し建物売主の担保責任を追及することはできない。

正解:2

1 正しい

買主が売主の担保責任を追及することができるのは、引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しない場合に限られる(民法562条、563条)。そして、ここでいう「不適合」には、物理的な欠陥だけでなく法律上の制限も含まれる(最判昭41.04.14)。
しかし、本肢の買主Bは、都市計画法上の制約について知っていた。つまり、Bは、住宅を建築することができない土地を購入するという売買契約を締結したのである。この場合、目的物が「契約の内容に適合しない」という評価はできない。BがAの担保責任を追及することは不可能である。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
契約不適合担保責任:法律的な欠陥(民法[24]3(2))
年-問-肢内容正誤
124-03-4物の瑕疵とは、目的物が備えるべき性質、品質を備えていないことである旨は、民法の条文に規定されている。×
216-10-4Bが敷地賃借権付建物をAから購入したところ、敷地の欠陥により擁壁に亀裂が生じて建物に危険が生じた場合、Bは敷地の欠陥を知らなかったとしても、Aに対し建物売主の瑕疵担保責任を追及することはできない。
契約不適合担保責任:買主が欠陥に悪意の場合(民法[24]3(2))
年-問-肢内容正誤
[共通の設定]
Aを売主、Bを買主として甲土地の売買契約を締結した。
126-06-1Bは、売買契約の締結の当時、甲土地に欠陥があることを知っていた場合であっても、その欠陥の存在を知ってから1年以内に本件欠陥についてAに通知していれば、Aに対して売買契約に基づく担保責任を追及することができる。
×
219-11-3Bが契約時に甲土地に欠陥があることを知っていた場合には、Aはその欠陥を担保すべき責任を負わない。
316-10-1Bは住宅建設用に甲土地を購入したが、都市計画法上の制約により当該土地に住宅を建築することができない場合には、そのことを知っていたBは、Aに対し土地売主の担保責任を追及することができない。
415-10-1Bが、甲土地の欠陥の存在を知って契約を締結した場合、BはAの担保責任を追及して契約を解除することはできないが、Aに対して担保責任に基づき損害賠償請求を行うことができる。
×

2 誤り

他人物売買も契約として有効である。この契約により、売主Aは、Cから土地の所有権を取得して買主に移転する義務を負う(民法561条)。
土地の権利を買主に移転することができなければ、買主に対する債務不履行である。Aには帰責事由があるのだから、BはAに対して損害賠償を請求することができる(同法415条)。

※売買契約を解除することも可能であるができる(民法542条)。

※買主が、売主以外の第三者の所有物であることを知っていたかどうかによって、結論は、異ならない。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
他人物売買:売主の債務不履行(民法[24]1(3)③)
年-問-肢内容正誤
[共通の設定]
Aを売主、Bを買主として甲土地の売買契約を締結した。
128-06-1
Bが、甲土地がCの所有物であることを知りながら本件契約を締結した場合、Aが甲土地の所有権を取得してBに移転することができないときは、BはAに対して、損害賠償を請求することができる。
228-06-2
Bが、甲土地がCの所有物であることを知りながら本件契約を締結した場合、Aが甲土地の所有権を取得してBに移転することができないときは、Bは、本件契約を解除することができる。
317-09-1買主が、売主以外の第三者の所有物であることを知りつつ売買契約を締結し、売主が売却した当該目的物の所有権を取得して買主に移転することができない場合には、買主は売買契約を解除するととともに、損害賠償を請求することができる。
416-10-2Aは、C所有の土地を自ら取得するとしてBに売却したが、Aの責に帰すべき事由によってCから所有権を取得できず、Bに所有権を移転できない場合、Bは、他人物売買であることを知っていたときであっても、Aに対して損害賠償を請求できる。
508-08-1この土地がCの所有であることをBが知って契約した場合でも、Aがこの土地をCから取得してBに移転できないときには、Aは、Aに対して契約を解除することができる。
605-08-3甲土地のすべてがCの所有地で、AがBに移転することができなかった場合、Bは、善意悪意に関係なく、契約を解除することができる。
703-11-2その土地の全部が他人のものであって、AがBに権利を移転することができないとき、買主の善意悪意に関係なく、契約を解除することができる。

3 正しい

権利の一部が他人に属する場合、売主Aは、Dから土地の所有権を取得して買主Bに移転する義務を負う(民法561条)。
他人に属する一部の土地の権利を買主に移転することができない場合、つまり、移転した権利が契約の内容に適合しない場合にも、売主は、目的物の契約不適合のときと同様の担保責任を負う(同法565条)。担保責任の追及方法として、Bは、Aに対して代金減額請求をすることができる(同法563条)。

※買主が、土地の一部が第三者の所有物であることを知っていたかどうかによって、結論は、異ならない。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
契約不適合担保責任:一部他人物(民法[24]3(3)②)
年-問-肢内容正誤
[共通の設定]
Aを売主、Bを買主として甲土地の売買契約を締結した。
116-10-3Bが購入した土地の一部を第三者Cが所有していた場合、Bがそのことを知っていたとしても、BはAに対して代金減額請求をすることができる。
208-08-2甲土地の8割の部分はAの所有であるが、2割の部分がCの所有である場合で、そのことをBが知って契約したときには、Bは、Aに対して契約を解除することができない。
×
305-08-2甲土地のうち一部がCの所有地で、AがBに移転することができなかった場合、Bは、善意悪意に関係なく、代金の減額を請求することができる。
403-11-1甲土地の一部を第三者が所有していた場合、BがAに権利を移転できず、残りの部分だけでは買主が買うことができないとき、買主は、他人物であることに関する善意悪意に関係なく、契約を解除できる。

4 正しい

売買の目的物は建物と敷地の賃借権であり、敷地自体は対象となっていない。したがって、敷地に欠陥があったとしても、それを理由に売主の担保責任を追及することはできない(最判平03.04.02)。


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【宅建過去問】(平成16年問10)売主の担保責任” に対して7件のコメントがあります。

  1. ロヒモト より:

    いつもお世話になっております。
    肢2について教えて下さい。

    他人物売買のときの買主の請求権として、買主が悪意の場合、損害賠償は出来ないと認識しておりましたが、これは、民法改正により悪意の場合でも請求出来るようになったのでしょうか?
    色々調べているのですが、どうしてもわからず、先生にお尋ねする次第でございます。

    1. 家坂 圭一 より:

      ロヒモト様

      いつもご質問ありがとうございます。

      他人物売買のときの買主の請求権として、買主が悪意の場合、損害賠償は出来ないと認識しておりましたが、これは、民法改正により悪意の場合でも請求出来るようになったのでしょうか?


      改正民法では、改正前の「他人物売買における売主の担保責任」という特別な条文(改正前の561条)はなくなりました。
      他人物売買については、一般的な「債務不履行の問題」として扱います。

      したがって、
      ・買主は、契約を解除することができますし、
      損害賠償を請求することもできます。
      買主が悪意だからといって、結論は異なりません。

      1. ロヒモト より:

        先生、お忙しい中ご回答頂きありがとうございます。

        売主の担保責任はなかなかどこのサイトなどを見ていても良い解説がなく困っていたところでした。
        改正でかなりシンプルになったのですね。

        ありがとうございます!
        引き続き宜しくお願い申し上げます。

  2. 中村 より:

    配慮が足りず申し訳ありませんでした。
    先生にもご迷惑をお掛けしてしまいました。
    お詫び申し上げます。

  3. 中村 より:

    こんにちは。
    肢1について質問です。こちらの回答について、他サイトでは見解が分かれているようです。

    以下コピペ(サイト名は伏せます。どちらも文末が~追求できると改題されています)
    他社様の著作権に配慮し、「コピペ部分」を削除しました。その内容の要約を下の私のコメントに記載します。(家坂)
    以上、コピペ終了

    ちょっとこんがらがってきてしまいました。
    ご多用中とは存じますが、追加解説をお願いいたします。

    1. 家坂 圭一 より:

      中村様

      「コピペ(サイト名は伏せます」では「引用」の要件をみたすことができず、著作権法違反になりかねません。そのため、「以上、コピペ終了」までの部分を削除します。ご了承ください。

      中村さん以外のかたのために要約すると、ここには、他社さんによる本問の解説がコピペされていました。その内容を要約すると、以下の通りです。

      契約不適合について悪意の買主であっても、売主の担保責任を追及することができる。

      「契約不適合について悪意の買主による売主の責任追及」については、混乱している受験生が多いようです。きちんと説明したいので、明後日日曜まで時間を下さい。
      お待たせして申し訳ありません。

    2. 家坂 圭一 より:

      中村様

      回答が遅くなり、申し訳ありません。
      同様の質問が多く寄せられているため、丁寧に説明しようと思いました。
      その結果、「コメント」で済む分量ではなくなったわけです。
      別の記事としてまとめましたので、こちらをご覧ください。
      ■売主の担保責任と悪意の買主

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