7月
19
2007

【宅建過去問】(平成18年問08)弁済の提供・債務不履行

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AはBとの間で、土地の売買契約を締結し、Aの所有権移転登記手続とBの代金の支払を同時に履行することとした。決済約定日に、Aは所有権移転登記手続を行う債務の履行の提供をしたが、Bが代金債務につき弁済の提供をしなかったので、Aは履行を拒否した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1. Bは、履行遅滞に陥り、遅延損害金支払債務を負う。
  2. Aは、一旦履行の提供をしているので、これを継続しなくても、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内にBが履行しないときは土地の売買契約を解除できる。
  3. Aは、一旦履行の提供をしているので、Bに対して代金の支払を求める訴えを提起した場合、引換給付判決ではなく、無条件の給付判決がなされる。
  4. Bが、改めて代金債務を履行するとして、自分振出しの小切手をAの所に持参しても、債務の本旨に従った弁済の提供とはならない。

正解:3

18-08-0

1 正しい

Bは、決済約定日に代金債務につき弁済の提供をしていないので、履行遅滞となる。したがって、遅延損害金の支払債務を負うことになる(民法415条)。

※弁済の提供をしてさえいれば、例えば債権者の協力が得られないため弁済が完了しなかったとしても、それは債務者の責任とはいえない。債務者は、債務不履行責任を免れることができる。本問でいえば、Aは、債務の履行の提供をしているから、その後は、債務不履行責任を負わない。

弁済の提供 債務不履行責任
売主A ×
買主B ×
■類似過去問(債務不履行の発生)
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 年-問-肢内容正誤
128-09-4
売主が信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった場合、買主は、売主に対して、この説明義務違反を理由に、売買契約上の債務不履行責任を追及することはできない。
226-01-3債務の履行のために債務者が使用する者の故意又は過失は、債務者の責めに帰すべき事由に含まれる旨は、民法の条文に規定されている。×
324-08-1AがBと契約を締結する前に、信義則上の説明義務に違反して契約締結の判断に重要な影響を与える情報をBに提供しなかった場合、Bが契約を締結したことにより被った損害につき、Aは、不法行為による賠償責任を負うことはあっても、債務不履行による賠償責任を負うことはない。
424-08-3売主が不動産を二重譲渡して第二の買主が登記を具備した場合、第一買主は売主に対して債務不履行に基づく損害賠償請求をすることができる。
523-02-4停止条件が成就しなかったことにつき、債務者に帰責事由がなくても、債務不履行責任を負う。×
619-10-2売買契約の目的物である建物が、売主の責めに帰すべき火災で滅失した場合、有効に成立した売買契約は、債務不履行により無効となる。×
718-08-1代金債務につき弁済の提供をしないと、履行遅滞に陥り、遅延損害金支払債務を負う。
814-07-1履行を遅滞しているとして、損害賠償請求を受けた債務者は、自己の履行遅滞について、帰責事由のないことを主張・立証すれば、免責される。

2 正しい

Bは既に履行遅滞に陥っている(民法415条)。したがって、Aは履行の催告をした上で、契約を解除することができる(同法541条)。
この場合、Aは一旦履行の提供をしているので、履行の提供を継続しなくとも構わない(最判昭36.6.22

■類似過去問(債務不履行:解除)
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 年-問-肢内容正誤
127-09-3土地の賃借人が賃料を支払わない場合にも、賃貸人において法定解除権を行使できる場合とできない場合がある。
222-09-全判決文の読取問題
322-12-2賃貸借契約において、借主が貸主との間の信頼関係を破壊し、契約の継続を著しく困難にした場合であっても、売主が契約解除するためには、催告が必要である。×
418-08-2売主が一旦履行を提供すれば、これを継続しなくても、買主に対し相当期間を定めて履行を催告し、期間内に履行しないときは解除できる。
514-08-1売買契約の解除権を有する売主は、契約を解除せず、買主に対して代金の支払いを請求し続けることができる。
614-08-3(Aは、A所有の土地を、Bに対し、1億円で売却する契約を締結した。)Bが、AB間の売買契約締結後、この土地をCに転売する契約を締結していた場合で、Cがやはり土地の値下がりを理由としてBに代金の支払をしないとき、Bはこれを理由として、AB間の売買契約を解除することはできない。
710-08-1売主が履行期に引渡しをしない場合、買主は代金支払債務の履行の提供をしなくても、催告のうえ契約を解除できる。×
808-09-1建物の買主は、自らの履行期前でも、代金を提供して物件の引渡しを請求し、売主が応じない場合は、契約を解除できる。×
908-09-3売主が、買主の代金支払いの受領を拒否していないが、履行期に物件の引渡しをしない場合、買主は、売主に催告するだけで売買契約を解除できる。×
1008-11-4買主が代金の支払を終えたのに、物件の引渡しを請求しても売主が応じない場合、建物が地震で全壊したときは、買主は、契約を解除して代金返還を請求することができない。×
1105-07-1売主が履行の提供をしても、買主が代金支払いをしない場合、売主は、相当期間を定めて履行を催告し、期間内に履行がない場合は、契約解除と損害賠償請求ができる。
1205-07-2催告期間が不相当に短いときでも、催告から客観的に相当の期間を経過しても買主の履行がないときは、売主は、改めて催告しなくても、その契約を解除することができる。
1305-07-4売主が履行の提供をしても、買主が代金支払いをしない場合、売主が相当期間を定めて履行を催告する際に「履行がないときは、解除の意思表示なしに解除する」と意思表示をしても、解除の際には、改めて解除の意思表示が必要である。×
1404-08-2買主が支払期日に代金を支払わない場合、売主は、不動産の引渡しについて履行の提供をしなくても、催告をすれば、当該契約を解除することができる。×
1501-09-3所有権移転登記後、引渡し前に、売買契約の目的物である家屋が、売主の失火によって焼失した場合、その契約は失効する。
1601-09-4所有権移転登記が完了し、引渡し期日が過ぎたのに、売主が売買契約の目的物である家屋の引渡しをしないでいたところ、その家屋が類焼によって滅失した場合、買主は、契約を解除することができる。

3 誤り

【用語の整理】
給付判決とは「BはAに対して、代金を支払え」という判決である。さらに、以下の2つに分類できる。

引換給付判決 「Aの移転登記手続と引換に代金を支払え」
無条件の給付判決 「(Aが登記に協力しようとしまいと無条件に)代金を支払え」

【本肢について】
「Aが一旦履行の提供をした」という事実は、あくまで「Aは履行遅滞とならない」という効果を持つに過ぎない。
Aの登記移転義務とBの代金支払義務も引き続き存続し、両者は同時履行の関係に立つ(民法533条)。
したがって、Aが代金の支払を求める場合には、登記移転義務を果たさねばならず、判決は引換給付の判決となる。

4 正しい

銀行の自己宛小切手
銀行が支払保証した小切手
自分振出の小切手 ×

銀行の自己宛小切手や銀行の支払保証のある小切手は、取引界で現金同様に取り扱われている。したがって、それらの提供は、債務の本旨にしたがった弁済の提供と扱われる(最判昭37.09.21)。一方、自分振出しの小切手では不渡り等の危険がある。これを提供したとしても、債務の本旨にしたがった弁済の提供ということはできない(民法493条。最判昭35.11.22)。

■類似過去問(弁済の提供の方法)
内容を見る
 年-問-肢内容正誤
118-08-4自分振出しの小切手を持参しても、債務の本旨に従った弁済の提供とはならない。
217-07-3自分振出しの小切手を提供すれば、債務の本旨に従った適法な弁済の提供となる。×
316-04-4売主が残代金の受領を拒絶することを明確にしている場合であっても、買主は売買代金を現実に提供しなければ、履行遅滞の責任を負う。×
404-11-1賃借人が家賃を支払おうとしても、賃貸人がこれを受領せず、以後の家賃の受領を明確に拒んだ場合においても、賃借人は、家賃を供託しないと、履行遅滞になる。×

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Written by 家坂 圭一 in: 平成18年過去問,民法 |

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