10月
27
2007

【宅建過去問】(平成19年問01)意思表示・意思能力

【過去問本試験解説】発売中

A所有の甲土地についてのAB間の売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

  1. Aは甲土地を「1,000万円で売却する」という意思表示を行ったが当該意思表示はAの真意ではなく、Bもその旨を知っていた。この場合、Bが「1,000万円で購入する」という意思表示をすれば、AB間の売買契約は有効に成立する。
  2. AB間の売買契約が、AとBとで意を通じた仮装のものであったとしても、Aの売買契約の動機が債権者からの差押えを逃れるというものであることをBが知っていた場合には、AB間の売買契約は有効に成立する。
  3. Aが第三者Cの強迫によりBとの間で売買契約を締結した場合、Bがその強迫の事実を知っていたか否かにかかわらず、AはAB間の売買契約に関する意思表示を取り消すことができる。
  4. AB間の売買契約が、Aが泥酔して意思無能力である間になされたものである場合、Aは、酔いから覚めて売買契約を追認するまではいつでも売買契約を取り消すことができ、追認を拒絶すれば、その時点から売買契約は無効となる。

正解:3

【1】 X 誤り

19-01-1真意でないAの意思表示は心裡留保である。
心裡留保による意思表示は原則として有効であるが、相手方が表意者の真意を知っているか、または知り得た場合には無効となる(民法93条)。
本肢では、BがAの意思が真意でないことを知っているのだから、AB間の売買契約は無効である。

■類似過去問(心裡留保)
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 年-問-肢内容正誤
119-01-1表意者の意思表示が真意でないことを相手方が知っていても、契約は有効に成立する。×
216-01-1表意者の意思表示が真意でないことを相手方が知っていても、契約は有効である。×
310-07-3表意者が真意でないと認識しながら意思表示を行い、相手方がその真意を知っていた場合、表意者は意思表示の無効を主張できる。

【2】 X 誤り

19-01-2aAとBが意を通じて土地を仮装売却する行為は通謀虚偽表示である。
通謀による虚偽の意思表示は無効であり、AB間の売買契約は無効となる(民法94条1項)。

■第三者が存在する場合
19-01-2b通常の問題では、売主Aと買主B以外の第三者(図のP)についても出題されるので、ここで触れておく。
第三者Pが善意の場合には、Aは、所有権を対抗することができない。逆に、Pが悪意の場合であれば、Aは、所有権を対抗することができる。

■類似過去問(通謀虚偽表示:当事者間の効果)
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 年-問-肢内容正誤
119-01-2仮装の売買契約でも、売主の動機が債権者の差押えを逃れることにあると買主が知っていた場合、契約は有効に成立する。×
216-01-2強制執行を逃れるため、売り渡す意思がないのに売買契約を装った場合、契約は無効である。
312-04-1通謀虚偽表示の買主が登記を受けていても、売主は、買主に対し、契約の無効を主張できる。
409-07-4税金逃れのために土地の所有名義を移転することは、不法原因給付に当たるので、売主は、買主に対し、登記抹消と土地返還を求めることはできない。×
502-04-4通謀虚偽表示は当事者間では無効だが、善意無過失の転得者には所有権を主張できない。
■関連過去問(通謀虚偽表示:第三者への対抗)
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 年-問-肢内容正誤
127-02-1善意のCがBから甲土地を買い受けた場合、Cがいまだ登記を備えていなくても、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない 。
227-02-2善意のCが、Bとの間で、Bが甲土地上に建てた乙建物の賃貸借契約(貸主B、借主C)を締結した場合、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない 。×
327-02-3Bの債権者である善意のCが、甲土地を差し押さえた場合、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない 。
427-02-4甲土地がBから悪意のCへ、Cから善意のDへと譲渡された場合、AはAB間の売買契約の無効をDに主張することができない 。
524-01-1Aが所有する甲土地につき、AとBが通謀の上で売買契約を仮装し、AからBに所有権移転登記がなされた場合に、B名義の甲土地を差し押さえたBの債権者Cは、通謀虚偽表示における「第三者」に該当する。
624-01-2Aが所有する甲土地につき、AとBの間には債権債務関係がないにもかかわらず、両者が通謀の上でBのために抵当権を設定し、その旨の登記がなされた場合に、Bに対する貸付債権を担保するためにBから転抵当権の設定を受けた債権者Cは、通謀虚偽表示における「第三者」に該当する。
724-01-3Aが所有する甲土地につき、AとBが通謀の上で売買契約を仮装し、AからBに所有権移転登記がなされた場合に、Bが甲土地の所有権を有しているものと信じてBに対して金銭を貸し付けたCは、通謀虚偽表示における「第三者」に該当する。×
824-01-4AとBが通謀の上で、Aを貸主、Bを借主とする金銭消費貸借契約を仮装した場合に、当該仮装債権をAから譲り受けたCは、通謀虚偽表示における「第三者」に該当する。
922-04-4第三者は、善意悪意によらず、所有権を主張できない。×
1020-02-2仮装売買の売主→虚偽表示に善意無過失だが登記を備えていない第三者|対抗できる。×
1115-03-4土地の買主B(未登記)→Bと二重譲渡の関係に立ち登記を有する仮想譲渡の買主F|土地所有権を主張できる。
1212-04-2善意無過失で未登記の第三者→売主|対抗できる。
1312-04-3(Aが、債権者の差押えを免れるため、Bと通謀して、A所有地をBに仮装譲渡)
DがAからこの土地の譲渡を受けた場合には、所有権移転登記を受けていないときでも、Dは、Bに対して、その所有権を主張することができる。
1412-04-4(Aが、債権者の差押えを免れるため、Bと通謀して、A所有地をBに仮装譲渡)
Eが、AB間の契約の事情につき善意無過失で、Bからこの土地の譲渡を受け、所有権移転登記を受けていない場合で、Aがこの土地をFに譲渡したとき、Eは、Fに対して、その所有権を主張することができる。
×
1507-02-1土地の買主B→Bと二重譲渡の関係に立ち登記を有する仮想譲渡の買主C|登記がなければ土地所有権を主張できない。×
1607-04-1仮想譲渡の売主→悪意の抵当権設定者|抵当権設定の無効を主張できる。
1707-04-2仮想譲渡の売主→善意有過失の転得者|所有権を主張できる。×
1807-04-4仮想譲渡の売主→悪意の転得者|対抗可、
仮想譲渡の売主→悪意の転得者から取得した善意の転得者|対抗不可。
1905-03-1売主→善意の第三者に対抗可。×
2005-03-2売主の善意の債権者→善意の転得者に対抗可。×
2105-03-3売主→善意で未登記の第三者に対抗可。×
2205-03-4善意の転得者→売主に対抗可。
2303-04-3Aの所有地にFがAに無断でF名義の所有権移転登記をし、Aがこれを知りながら放置していたところ、FがF所有地として善意無過失のGに売り渡し、GがG名義の所有権移転登記をした場合、Aは、その所有権をGに対抗することができない。
2402-04-4通謀虚偽表示は当事者間では無効だが、善意無過失の転得者には所有権を主張できない。

【3】 ◯ 正しい

19-01-3a意思表示をするにあたり、第三者(C)が強迫を行った場合、Aは、相手方(B)の善意・悪意に関わらず、その意思表示を取り消すことができる(民法96条2項の反対解釈)。

19-01-3b※第三者が詐欺を行った場合には、相手方が事実を知っていた場合に限り、その意思表示を取り消すことができる(民法96条2項)。逆に、第三者が善意の場合には、取り消すことはできない。

■類似過去問(第三者による強迫)
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 年-問-肢内容正誤
119-01-3第三者の強迫による意思表示は、強迫を相手方が知っていたかどうかにかかわらず、取消可能である。
216-01-4第三者の強迫による意思表示は、強迫を相手方が知らなければ、取消できない。×
■関連過去問(第三者による詐欺)
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 年-問-肢内容正誤
123-01-2第三者の詐欺の場合、相手方が知っていたとしても、取消不可。×
216-01-3第三者の詐欺の場合、相手方の知不知に関わらず、取消不可。×
314-01-1第三者の詐欺の場合、相手方が知っているときでないと、取消不可。
410-07-1第三者の詐欺の場合、相手方が知っているときは、取消可能。
504-02-3代理人が第三者に騙された場合、相手方が善意でも、本人から取消可能。×
604-02-4代理人が第三者に騙された場合、相手方が善意であれば、本人から取消不可。

【4】 X 誤り

意思能力とは、自己の行為の結果を判断することができる精神的能力のことをいう。例えば、精神上の障害や泥酔により、意思能力を欠く状態で意思表示を行った場合、その意思表示は、当初から無効となる(条文はないが、判例上認められている)。取り消して初めて無効になるわけではない。したがって、追認・取消・追認拒絶などの対象になることもない。

意思能力 実質的基準 無効
行為能力 形式的基準 取消可

※このように、意思無能力であるかどうかの判断は、意思表示の時点での精神的能力を実質的に判断する。これに対し、未成年であるとか、成年被後見人として家庭裁判所の審判を受けている、という形式的な基準により、意思表示の効力を判断するのが、「行為能力」の制度である。制限行為能力者が行った一定の行為は、取り消すことができる。当初から無効になるわけではない。

■類似過去問(意思無能力者の法律行為)
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 年-問-肢内容正誤
124-03-1意思能力を欠く状態での意思表示が無効であることは、民法の条文で規定されている。×
219-01-4意思無能力者の法律行為は取消可能。×
317-01-2意思無能力者の法律行為は取消可能。×
415-01-1意思無能力者の法律行為は親族が取消可能。×

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Written by 家坂 圭一 in: 平成19年過去問,民法 |

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