【宅建過去問】(平成19年問02)復代理
Aは不動産の売却を妻の父であるBに委任し、売却に関する代理権をBに付与した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
- Bは、やむを得ない事由があるときは、Aの許諾を得なくとも、復代理人を選任することができる。
- Bが、Bの友人Cを復代理人として選任することにつき、Aの許諾を得たときは、Bはその選任に関し過失があったとしても、Aに対し責任を負わない。
- Bが、Aの許諾及び指名に基づき、Dを復代理人として選任したときは、Bは、Dの不誠実さを見抜けなかったことに過失があった場合、Aに対し責任を負う。
- Bが復代理人Eを適法に選任したときは、EはAに対して、代理人と同一の権利を有し、義務を負うため、Bの代理権は消滅する。
正解:1
最初に代理、さらに復代理の構造を確認しておこう。
■代理の構造
本人Aが代理人Bに代理権を与え、代理人Bが本人のためにすることを示して(顕名)、意思表示をした場合、その意思表示の効果は、Bではなく、Aに帰属する。これが代理の基本構造である。
■復代理の構造
代理人Bがさらに別人を選任し、その人に代理行為をさせることを復代理、選任された人を復代理人という。どういう場合に復代理人を選任できるか、選任した場合に代理人はどの範囲で責任を負うか、は、元々の代理人が法定代理人か任意代理人か、で大きく異なる。以下の表でまとめておこう。
選任できる場合 | 代理人の責任 | ||
原則 | 例外 | ||
法定代理人 | 常に可能 | 無過失の全責任 | 選任・監督責任のみ |
任意代理人 | (1)本人の許諾を得たとき (2)やむを得ない事由があるとき |
やむを得ない事由あり →選任・監督責任のみ |
本人の指名で選任した場合 →責任を負わない 【例外の例外】 復代理人が不適任・不誠実であることを知りながら、 本人への通知・解任を怠ったとき |
※本問では、「妻の父B」が代理人であるが、特別扱いする必要はない。単なる「任意代理人の復代理」の問題である。
■類似過去問(復代理人)
内容を見る復代理
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | 29-01-2 | 委任による代理人は、本人の許諾を得たときのほか、やむを得ない事由があるときにも、復代理人を選任することができる。 | ◯ |
2 | 29-01-3 | 復代理人が委任事務を処理するに当たり金銭を受領し、これを代理人に引き渡したときは、特段の事情がない限り、代理人に対する受領物引渡義務は消滅するが、本人に対する受領物引渡義務は消滅しない。 | × |
3 | 24-02-4 | 法定代理人は、やむを得ない事由がなくとも、復代理人を選任することができる。 | ◯ |
4 | 21-02-3 | 任意代理人は、自ら選任・監督すれば、本人の意向にかかわらず復代理人を選任できる。 | × |
5 | 19-02-1 | 任意代理人は、やむを得ない事由があれば、本人の許諾を得なくても復代理人を選任できる。 | ◯ |
6 | 19-02-2 | 任意代理人が、復代理人の選任につき本人の許諾を得たときは、選任に過失があったとしても責任を負わない。 | × |
7 | 19-02-3 | 任意代理人が、本人の許諾・指名に基づき復代理人を選任した場合、復代理人の不誠実さを見抜けなかったことに過失があったときは、本人に対し責任を負う。 | × |
8 | 19-02-4 | 任意代理人が復代理人を適法に選任したときは、復代理人は本人に対して、代理人と同一の権利を有し、義務を負うため、代理人の代理権は消滅する。 | × |
9 | 13-08-4 | 任意代理人は、やむを得ない事情があっても、本人の承諾がなければ、復代理人を選任できない。 | × |
10 | 12-01-2 | 任意代理人は、自己の責任により、自由に復代理人の選任ができる。 | × |
11 | 07-09-4 | 賃貸人から賃料取立て等の代理権を与えられた受託者が、地震のため重傷を負った場合、賃貸人の承諾を得ることなく、復受託人に委託して賃料の取立てをさせることができる。 | ◯ |
1 正しい
任意代理の場合は、原則として復代理人を選任することができない。
例外的に選任できるのは、以下のどちらかの場合に限られる(民法104条)。
- 本人の許諾を得たとき、
- やむを得ない事由があるとき。
やむを得ない事由のある本肢のケースでは、たとえ本人の承諾がなくても、Bは復代理人を選任することができる。
2 誤り
本人Aの許諾を得れば、任意代理の場合にも適法に復代理人Cを選任することができる(民法104条)。
しかし、本人Aが復代理人の選任を許諾した場合であっても、代理人Bは復代理人Cの選任および監督に関して責任を負う(民法105条1項)。
したがって、復代理人Cの選任に関して代理人Bに過失があれば、Bは本人Aに対して責任を負うことになる。
3 誤り
本人Aの指名に従って復代理人Dを選任した場合、代理人Bは復代理人の選任・監督に関する責任を負わない(民法105条2項本文)。
責任を負うのは、「代理人が、復代理人が不適任・不誠実であることを知りながら、その旨を本人に通知し、または復代理人を解任することを怠ったとき」に限られる(同法105条2項本文。
本肢の代理人Bは、「Dの不誠実さを見抜けなかったことに過失があった」だけであり、不誠実であることを知っていたわけではない。
したがって、代理人Bは本人Aに対して責任を負わない。
4 誤り
代理人Bが復代理人Eを適法に選任した場合、復代理人Eは本人Aに対して代理人と同一の権利を有し、義務を負う(民法107条)。
しかし、この場合でも、代理人Bの代理権が消滅するわけではない。Eだけでなく、Bもまた、依然としてAの代理人である。
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