【宅建過去問】(平成19年問14)借地借家法(借家)

借地借家法第38条の定期建物賃貸借(以下この問において「定期建物賃貸借」という。)と同法第40条の一時使用目的の建物の賃貸借(以下この問において「一時使用賃貸借」という。)に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。

  1. 定期建物賃貸借契約は書面によって契約を締結しなければ有効とはならないが、一時使用賃貸借契約は書面ではなく口頭で契約しても有効となる。
  2. 定期建物賃貸借契約は契約期間を1年以上とすることができるが、一時使用賃貸借契約は契約期間を1年以上とすることができない。
  3. 定期建物賃貸借契約は契約期間中は賃借人から中途解約を申し入れることはできないが、一時使用賃貸借契約は契約期間中はいつでも賃借人から中途解約を申し入れることができる。
  4. 賃借人が賃借権の登記もなく建物の引渡しも受けていないうちに建物が売却されて所有者が変更すると、定期建物賃貸借契約の借主は賃借権を所有者に主張できないが、一時使用賃貸借の借主は賃借権を所有者に主張できる。

正解:1

本問は、定期建物賃貸借と一時使用目的の建物賃貸借に関するものである。今回は問われていないが、この2つの間には、ごく一般的な建物賃貸借契約がある。まず、これら3種を比較しておこう。

■一時使用目的の建物賃貸借
この場合、借地借家法の規定は適用されない(借地借家法40条)。一般法である民法のみが基準となる。

■一時使用目的でない建物賃貸借契約
一時使用目的以外の建物賃貸借契約には、借地借家法が適用される。
そのうちでも、契約の更新がない旨を定めたものを定期建物賃貸借契約という(同法38条1項)。契約期間に制限はないから、ごく短期の賃貸借であっても構わない。
定期建物賃貸借以外の建物賃貸借契約をここでは、「通常の建物賃貸借」と呼ぶことにする。通常の建物賃貸借契約に関しては、契約の更新が可能である(同法26条)。また、期間を1年以内とした場合には、期間の定めのない賃貸借とみなされる(同法29条1項)。その意味では、契約期間の下限が1年と定められていることになる。

一時使用賃貸借 通常の建物賃貸借 定期建物賃貸借
民法 民法+借地借家法
(更新○・契約期間の下限○)
民法+借地借家法
(更新×・契約期間の下限×)
■参照項目&類似過去問
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一時使用目的の建物の賃貸借(借地借家法[07]3)
年-問-肢内容正誤
1H23-12-4中途解約は特約がなければ不可。
2H19-14-1書面ではなく口頭で契約しても有効。
3H19-14-2契約期間を1年以上とすることができない。×
4H19-14-3契約期間中はいつでも賃借人から中途解約を申し入れできる。×
5H19-14-4賃借権の登記も建物の引渡しもないまま建物が売却された場合でも、借主は賃借権を新所有者に主張できる。×
6H02-09-1(期間が満了後も賃借人が居住を続け、賃貸人は異議を述べなかった。)賃貸人は、期間満了を理由に、賃借人に対し、直ちに明渡請求をすることができる。×
7H02-09-2賃貸人は、正当事由のある場合に限り解約し、賃借人に対し、直ちに明渡請求をすることができる。×
8H02-09-3賃貸人は、正当事由のない場合でも解約の申入れをし、賃借人に対し、その3ヵ月後に明渡請求できる。
9H02-09-4賃貸人は、正当事由のある場合に限り解約の申入れをし、賃借人に対し、その6ヵ月後に明渡請求をすることができる。×

1 正しい

【定期建物賃貸借】
定期建物賃貸借は公正証書による等書面によって契約を締結しなければ有効とはならない(借地借家法38条1項)。

【一時使用賃貸借】
民法の賃貸借契約については、書面で契約しなければならないというルールはない(民法601条参照)。したがって、口頭での契約も有効である。

一時使用賃貸借 通常の建物賃貸借 定期建物賃貸借
口頭での契約も○ 書面による契約のみ
■参照項目&類似過去問
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定期建物賃貸借契約の成立(書面による契約)(借地借家法[07]1(2)②)
年-問-肢内容正誤
1R04-12-1Aは、B所有の甲建物につき、居住を目的として、期間2年、賃料月額10万円と定めた賃貸借契約をBと締結してその日に引渡しを受けた。BはAに対して、本件契約締結前に、契約の更新がなく、期間の満了により賃貸借が終了する旨を記載した賃貸借契約書を交付して説明すれば、本件契約を借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借契約として締結することができる。×
2R02s-12-3賃貸人Aと賃借人Bとの間で居住用建物の賃貸借契約を締結した。賃貸借契約に期間を定め、賃貸借契約を書面によって行った場合には、AがBに対しあらかじめ契約の更新がない旨を説明していれば、賃貸借契約は期間満了により終了する。×
3R01-12-1建物の賃貸借契約について、契約の更新がない旨を定めるには、公正証書による等書面によって契約すれば足りる。
×
426-12-1定期建物賃貸借契約を締結するには、公正証書による等書面によらなければならない。
524-12-3定期建物賃貸借契約では、更新がない旨の特約を記載した書面を契約に先立って賃借人に交付さえしておけば当該特約は有効となる。×
619-14-1定期建物賃貸借契約は書面によって契約しなければ有効とならない。
718-13-320年後に賃貸借契約を更新させずに終了させるという建物賃貸借契約が可能である。
815-14-2定期建物賃貸借契約は、公正証書でしなければ、無効である。×
907-13-2定期建物賃貸借契約は、公正証書でしなければならない。×

2 誤り

【定期建物賃貸借】
定期建物賃貸借の契約期間の上限は特に制限されていない。
したがって、1年以上とすることができる。

【一時使用賃貸借】
一時使用賃貸借かどうかは、「一時使用のため」かどうか、という目的によって判断するのであり、「●か月以内」と数値で定められているわけではない。したがって、1年以上の期間であっても、一時使用と定めることができる。
※また、借地借家法の契約期間に関する規定は適用されないから、「1年未満」と定めることもできる(借地借家法29条1項参照)。

  一時使用賃貸借 通常の建物賃貸借 定期建物賃貸借
長期 50年 限定なし 限定なし
短期 限定なし 1年
(1年未満=期間の定めなし)
限定なし
期間の定めなし ×
■参照項目&類似過去問
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建物賃貸借の期間(借地借家法[05]1)
年-問-肢内容正誤
1R05-12-1期間を1年未満とする建物の賃貸借契約は、期間を1年とするものとみなされる。×
2H26-12-2定期建物賃貸借契約を締結するときは、期間を1年未満としても、期間の定めがない建物の賃貸借契約とはみなされない。
3H19-14-2定期建物賃貸借契約は契約期間を1年以上とすることができるが、一時使用賃貸借契約は契約期間を1年以上とすることができない。×
4H17-15-3動産の賃貸借契約は、賃貸人と賃借人が合意して契約期間を6月と定めればそのとおりの効力を有するが、建物の賃貸借契約は、賃貸人と賃借人が合意して契約期間を6月と定めても期間を定めていない契約とみなされる。
5H05-12-1賃貸借の期間を10月と定めた場合において、その賃貸借が一時使用によるものでないときは、Aが解約の申入れをしても、その申入れの日から6月を経過しないと、契約は終了しない。
6H02-12-2建物の賃貸借においては、その存続期間の最長限度に制限はない。

3 誤り

【定期建物賃貸借】
定期建物賃貸借において、転勤、療養、親族の介護などやむを得ない事情により、賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難になったときは、解約の申込をすることができる(借地借家法38条5項。床面積が200㎡未満の建物に係るものに限る)。
つまり、契約期間中であっても、賃借人から中途解約を申し入れることが可能である。

【一時使用賃貸借】
一時使用賃貸借の解約については借地借家法が適用されないため、民法の規定によることになる。
民法の賃貸借のルールでは、、

  1. 期間の定めがない場合は、いつでも解約の申入れができる(同法617条1項)。
  2. 期間の定めがある場合は、解約する権利を留保した場合に限って、いつでも解約の申入れをすることができる(同法618条)。

本肢では、「契約期間中」とあることから、期間の定めがあることが分かる。したがって、解約権を留保していない限り、賃借人が契約期間中に中途解約することはできない。

一時使用賃貸借 通常の建物賃貸借 定期建物賃貸借
期間の定めなし:いつでも申入れ○
期間の定めあり:解約する権利を留保した場合に限り、○
  1. 居住用
  2. 床面積200㎡未満
  3. やむを得ない事

■参照項目&類似過去問
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建物賃貸借の中途解約(借地借家法[07]1(3)②借地借家法[07]3民法[26]7(2)
年-問-肢内容正誤
1R04-12-3A所有の甲建物(床面積100㎡)につき、居住を目的とした賃貸借契約が借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借契約である場合、Bの中途解約を禁止する特約があっても、やむを得ない事情によって甲建物を自己の生活の本拠として使用することが困難になったときは、Bは本件契約の解約の申入れをすることができる。
2R02-12-3AとBとの間でA所有の甲建物をBに対して、居住の用を目的として、期間2年、賃料月額10万円で賃貸する旨の賃貸借契約を締結し、Bが甲建物の引渡しを受けた。本件契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約である場合、Aは、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情があれば、Bに対し、解約を申し入れ、申入れの日から1月を経過することによって、本件契約を終了させることができる。×
3H30-12-2借地借家法第38条の定期建物賃貸借で、契約の更新がない旨を定めた場合には、当該契約の期間中、賃借人から中途解約を申し入れることはできない。×
4H27-12-4賃貸人も賃借人も契約期間中の中途解約をすることができない旨の規定は、定期借家契約では有効であるが、普通借家契約では無効である。×
5H24-12-4普通建物賃貸借では中途解約不可、定期建物賃貸借契約では途中解約可能。
6H23-12-4一時使用目的の場合、中途解約は特約がなければ不可。
7H20-14-4定期建物賃貸借契約では、床面積に関わらず、中途解約が可能。×
8H19-14-3定期建物賃貸借契約では中途解約不可、一時使用賃貸借ではいつでも中途解約可能。×
9H17-15-4建物の賃貸借では、中途解約権の留保は不可。×
10H02-09-3
(Aは、その所有する建物を明らかな一時使用のためBに賃貸したが、Bは期間満了後も居住を続け、Aもその事実を知りながら異議を述べなかった。)Aは、正当事由のない場合でも解約の申入れをし、Bに対し、その3ヵ月後に明渡請求をすることができる。

4 誤り

【定期建物賃貸借】
建物を買い受けた新所有者に賃借権を対抗するためには、賃借権の登記または建物の引渡しが必要である(民法605条。借地借家法31条1項)。したがって、賃借権の登記もなく建物の引渡しも受けていない段階では、賃借権を所有者に対抗することができない。

【一時使用賃貸借】
一時使用賃貸借については、借地借家法の対抗力に関する規定は適用されない(同法40条、31条1項参照)。したがって、賃借権を登記しない限り、建物の新しい所有者に賃借権を対抗することはできない(民法605条)。

一時使用賃貸借 通常の建物賃貸借 定期建物賃貸借
賃借権の登記 賃借権の登記
建物の引渡し
■参照項目&類似過去問
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建物賃貸借の対抗力(借地借家法[06]1)
年-問-肢内容正誤
1R04-12-2Aは、B所有の甲建物につき、賃貸借契約をBと締結してその日に引渡しを受けた。本件契約が借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借契約であるか否かにかかわらず、Aは、甲建物の引渡しを受けてから1年後に甲建物をBから購入したCに対して、賃借人であることを主張できる。
2R02-12-1AとBとの間でA所有の甲建物をBに対して、居住の用を目的として、期間2年、賃料月額10万円で賃貸する旨の賃貸借契約を締結し、Bが甲建物の引渡しを受けた。AがCに甲建物を売却した場合、Bは、それまでに契約期間中の賃料全額をAに前払いしていたことを、Cに対抗することができる。
3H27-11-3[AがBとの間で、A所有の甲建物について、期間3年、賃料月額10万円と定めた賃貸借契約を締結]Cが、AB間の賃貸借契約締結前に、Aと甲建物の賃貸借契約を締結していた場合、AがBに甲建物を引き渡しても、Cは、甲建物の賃借権をBに対抗することができる。×
4H27-12-1賃借権の登記をしない限り賃借人は賃借権を第三者に対抗することができない旨の特約を定めた場合、定期借家契約においても、普通借家契約においても、当該特約は無効である。
5H22-12-1建物の引渡しを受けていれば、賃借権を対抗可能。
6H21-12-3引渡しを受けている場合、建物の賃借権は対抗可、使用借権は対抗不可。
7H20-04-4建物の引渡しを受けていれば、賃借権を対抗可能。
8H19-14-4登記も引渡しもない場合、定期建物賃借権は対抗不可、一時使用賃借権は対抗可能。×
9H18-14-2建物の引渡しを受けていれば、賃借権を対抗可能。
10H12-12-1賃貸人の承諾を得て転借人に占有させている場合、賃借人は賃借権を対抗不可。×
11H02-13-1引渡しを受けていないと、常に、賃借権を対抗不可。×
12H01-13-1建物の引渡しを受けていれば、建物所有権が移転しても、新所有者に賃借権を対抗可能。
賃借権の対抗要件(民法[26]3(2))
年-問-肢内容正誤
129-11-1(A所有の甲土地につき、平成29年10月1日にBとの間で賃貸借契約(本件契約)が締結された。)Aが甲土地につき、本件契約とは別に、平成29年9月1日にCとの間で建物所有を目的として賃貸借契約を締結していた場合、本件契約が資材置場として更地で利用することを目的とするものであるときは、本件契約よりもCとの契約が優先する。
×
228-14-2登記することができる権利には、抵当権及び賃借権が含まれる。
326-11-2建物の所有を目的とせずに資材置場として借りている土地が第三者に売却された場合に賃借人であることを当該第三者に対抗する方法はない。×
420-13-4平置きの駐車場用地として利用するための土地の賃貸借契約を書面で行っても、賃借権の登記をしない場合、土地の譲受人に賃借権を対抗できない。

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【宅建過去問】(平成19年問14)借地借家法(借家)” に対して2件のコメントがあります。

  1. R32SKYLINEGTR より:

    先生に質問がございます。この問いの通常の建物賃貸借契約と、平成27年度の宅建本試験解説の問12番では普通建物賃貸借契約は、言い方は異なるだけで考え方は同じでよろしいでしょうか?

    通常の建物賃貸借契約と普通借家契約はまったく別者でしょうか?

    1. 家坂 圭一 より:

      R32SKYLINEGTR様

      講師の家坂です。
      御質問ありがとうございます。
      回答が遅くなり、大変申し訳ありません。

      さて、御質問にお答えします。

      >この問いの通常の建物賃貸借契約と、平成27年度の宅建本試験解説の問12番では普通建物賃貸借契約は、言い方は異なるだけで考え方は同じでよろしいでしょうか?
      >通常の建物賃貸借契約と普通借家契約はまったく別者でしょうか?

      両者は、まったく同じものです。
      「定期建物賃貸借」という用語は借地借家法で定義されています(同法38条)。
      しかし、「定期建物賃貸借『以外のもの』」を呼ぶための定義された用語はありません。
      そこで、「一般の建物賃貸借」「普通の建物賃貸借」など色々な名称で呼んでいます。

      平成27年の問12では、問題文で「定期借家契約」という言葉を使っているので、解説でもこの言葉に付き合いました。「通常の建物賃貸借契約」と言い換えても、まったく問題ありません。

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