10月
19
2008

【宅建過去問】(平成20年問04)抵当権と賃貸借の関係

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Aは、Bから借り入れた2,000万円の担保として抵当権が設定されている甲建物を所有しており、抵当権設定の後である平成20年4月1日に、甲建物を賃借人Cに対して賃貸した。Cは甲建物に住んでいるが、賃借権の登記はされていない。この場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。

  1. AがBに対する借入金の返済につき債務不履行となった場合、Bは抵当権の実行を申し立てて、AのCに対する賃料債権に物上代位することも、AC間の建物賃貸借契約を解除することもできる。
  2. 抵当権が実行されて、Dが甲建物の新たな所有者となった場合であっても、Cは民法第602条に規定されている短期賃貸借期間の限度で、Dに対して甲建物を賃借する権利があると主張することができる。
  3. AがEからさらに1,000万円を借り入れる場合、甲建物の担保価値が1,500万円だとすれば、甲建物に抵当権を設定しても、EがBに優先して甲建物から債権全額の回収を図る方法はない。
  4. Aが借入金の返済のために甲建物をFに任意に売却してFが新たな所有者となった場合であっても、Cは、FはAC間の賃貸借契約を承継したとして、Fに対して甲建物を賃借する権利があると主張することができる。

正解:4

20-04-0

【1】 X 誤り

20-04-1

被担保債権につき債務不履行があった場合、抵当権者は、賃料債権に対して物上代位することができる(民法371条)。
しかし、抵当権者が、賃貸借契約を解除することはできない。抵当権は、非占有型の担保物権であり、目的物の利用・管理は、抵当権設定者に委ねられているからである。

■類似過去問(賃料に対する物上代位)
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 年-問-肢内容正誤
125-05-1賃料債権に対して物上代位をしようとする場合には、被担保債権の弁済期が到来している必要はない。×
224-07-1抵当権設定登記後に、賃料債権につき一般債権者が差押えした場合、抵当権者は物上代位できない。×
324-07-2抵当権実行中でも、抵当権が消滅するまでは、賃料債権に物上代位が可能。
424-07-4Aの抵当権設定登記があるB所有の建物について、CがBと賃貸借契約を締結した上でDに転貸していた場合、Aは、CのDに対する転貸賃料債権に当然に物上代位することはできない。
520-04-1抵当権実行を申し立てた抵当権者は、賃料への物上代位と賃貸借契約の解除が可能。×
617-05-2抵当権者は、賃料債権に物上代位することができる。
715-05-1(抵当建物を抵当権設定者が賃貸しているケース)抵当権設定登記後に、賃料債権が第三者に譲渡され対抗要件を備えた場合、賃借人が当該第三者に弁済する前であっても、抵当権設定者は、物上代位権を行使して当該賃料債権を差し押さえることはできない。×
815-05-2(抵当建物を抵当権設定者が賃貸しているケース)抵当権設定登記後に、賃料債権につき一般債権者が差押えした場合、差押命令が賃借人に送達された後は、抵当権者は物上代位できない。×
911-04-1抵当権者は、抵当権に基づく差押えの前であっても、賃料債権の差押えが可能。
1001-07-2抵当権の効力は、被担保債権に不履行があった場合、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。

【2】 X 誤り

20-04-2Bの抵当権が設定されたのは、Cが賃貸借契約を締結する以前のことである。したがって、Cは、原則として、その賃借権をBに対抗することができない。

※短期賃貸借保護制度(民法602条の限度で賃借権を認める制度)は、平成16年の民法改正で廃止されている。
※抵当権が実行された場合、買受人の買受けのときから6か月を経過するまでは、建物を買受人に引き渡すことを要しない(同法395条1項)。

■類似過去問(抵当建物使用者の引渡しの猶予)
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 年-問-肢内容正誤
122-05-3(AはBから2,000万円を借り入れて土地とその上の建物を購入し、Bを抵当権者として当該土地及び建物に2,000万円を被担保債権とする抵当権を設定し、登記した。)Bの抵当権設定登記後にAがDに対して当該建物を賃貸し、当該建物をDが使用している状態で抵当権が実行され当該建物が競売された場合、Dは競落人に対して直ちに当該建物を明け渡す必要はない。
220-04-2(Aは、Bから借り入れた2,000万円の担保として抵当権が設定されている甲建物を所有しており、抵当権設定の後に、甲建物を賃借人Cに対して賃貸した。Cは甲建物に住んでいるが、賃借権の登記はされていない。)抵当権が実行されて、Dが甲建物の新たな所有者となった場合であっても、Cは民法602条に規定されている短期賃貸借期間の限度で、Dに対して甲建物を賃借する権利があると主張することができる。×

【3】 X 誤り

抵当権の順位は、抵当権の登記の前後による(民法373条)。したがって、先に登記を経たBが優先することになる。しかし、抵当権者同士が合意すれば、抵当権の順位を変更することもできる(同法374条)。
つまり、Eは、抵当権の順位の変更につき、Bの合意を受ければ、優先して弁済を受けることができる。

■類似過去問(抵当権:対抗要件・順位)
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 年-問-肢内容正誤
対抗要件
128-14-2登記することができる権利には、抵当権及び賃借権が含まれる。
226-04-2抵当権を設定した旨を第三者に対抗する場合には登記が必要であるが、根抵当権を設定した旨を第三者に対抗する場合には、登記に加えて、債務者Cの異議を留めない承諾が必要である。×
322-05-1抵当権設定者AとBとの抵当権設定契約が、AとCとの抵当権設定契約より先であっても、Cを抵当権者とする抵当権設定登記の方がBを抵当権者とする抵当権設定登記より先であるときには、Cを抵当権者とする抵当権が第1順位となる。
順位上昇の原則
118-05-2債務者兼抵当権設定者Aが抵当権によって担保されている借入金全額を一番抵当権者Bに返済しても、第一順位の抵当権を抹消する前であれば、二番抵当権者Cの同意の有無にかかわらず、AはBから新たに金銭を借り入れて、第一順位の抵当権を設定することができる。×
202-10-4抵当権者の抵当権が消滅した場合、後順位の抵当権者の順位が繰り上がる。
抵当権の順位の変更
128-04-3
第一抵当権者と第二抵当権者が抵当権の順位を変更することに合意すれば、抵当権設定者の同意がなくても、抵当権の順位を変更することができる。
×
225-05-4抵当権を登記した後は、抵当権の順位を変更できない。×
320-04-3設定時に後順位となった抵当権者が、先順位の抵当権者に優先して弁済を受ける方法はない。×
413-07-4抵当権者間の合意で抵当権の順位を変更できるが、登記をしなければ効力を生じない。

【4】 ◯ 正しい

20-04-4Cは、「甲建物に住んでいる」というのだから、当然に甲建物の引渡しを受けていることになる。すなわち、甲建物の賃借権について、対抗要件を備えている(借地借家法31条1項)。したがって、Cは、賃借権設定後に建物の所有者となったFに対し、賃借権を主張することができる。

※肢2の場合、Dは建物の競落人であるから、抵当権者であるBの地位を引き継ぐ。肢4のFは、甲建物の任意売却を受けたものであるから、売却の前に甲建物の引渡しを受けていたCの賃借権を認めざるを得ない。

■類似過去問(建物賃貸借の対抗力)
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 年-問-肢内容正誤
127-11-3[AがBとの間で、A所有の甲建物について、期間3年、賃料月額10万円と定めた賃貸借契約を締結]Cが、AB間の賃貸借契約締結前に、Aと甲建物の賃貸借契約を締結していた場合、AがBに甲建物を引き渡しても、Cは、甲建物の賃借権をBに対抗することができる。×
222-12-1建物の引渡しを受けていれば、賃借権を対抗可能。
321-12-3引渡しを受けている場合、建物の賃借権は対抗可、使用借権は対抗不可。
420-04-4建物の引渡しを受けていれば、賃借権を対抗可能。
519-14-4登記も引渡しもない場合、定期建物賃借権は対抗不可、一時使用賃借権は対抗可能。×
618-14-2建物の引渡しを受けていれば、賃借権を対抗可能。
712-12-1賃貸人の承諾を得て転借人に占有させている場合、賃借人は賃借権を対抗不可。×
802-13-1引渡しを受けていないと、常に、賃借権を対抗不可。×
901-13-1建物の引渡しを受けていれば、建物所有権が移転しても、新所有者に賃借権を対抗可能。

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Written by 家坂 圭一 in: 平成20年過去問,民法,借地借家法 |

2 Comments »

  • hirosox

    H20.04の(4)ですが、抵当権設定後の賃借権は、対抗要件を備えていても買受人に、対抗できないはずですが、なぜここでは、賃借する権利を主張できるのでしょうか?

    Comment | 2016/06/26
  • 家坂 圭一

    hirosox様

    講師の家坂です。
    肢4のFは、抵当権設定者であるAから抵当物件の任意売却を受けた者です。つまり、抵当権付きの甲建物を購入した人物です。
    したがって、賃借人Cは、それまでの所有者Aに対抗することができた賃借権を、Fに対しても対抗することができます。
    (そのようなシステムにしないと、任意売却をすることで簡単に賃借人を追い出すことができてしまいます。)

    御質問の「買受人に、対抗できない」というのは、競売による買受人という意味であれば、正しい記述です。つまり、肢2のDのことです。
    DとFとでは、まったく立場が違うので、混同しないようにしましょう。

    Comment | 2016/07/28

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