【宅建過去問】(平成20年問07)注意義務

注意義務に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

  1. ある物を借り受けた者は、無償で借り受けた場合も、賃料を支払う約束で借り受けた場合も、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
  2. 委託の受任者は、報酬を受けて受任する場合も、無報酬で受任する場合も、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負う。
  3. 商人ではない受寄者は、報酬を受けて寄託を受ける場合も、無報酬で寄託を受ける場合も、自己の財産と同一の注意をもって寄託物を保管する義務を負う。
  4. 相続人は、相続放棄前はもちろん、相続放棄をした場合も、放棄によって相続人となった者が管理を始めるまでは、固有財産におけると同一の注意をもって相続財産を管理しなければならない。

正解:3

1 正しい

特定物の引渡しを目的とする債権について、債務者は、引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存する義務を負います(善管注意義務。民法400条)。
本肢の「借り受けた物を返還する」義務も特定物の引渡しを目的とする債務の一つです。したがって、借主は、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければなりません。
このことは、無償で借り受けた場合(使用貸借)でも、賃料を支払う約束で借り受けた場合(賃貸借)でも、変わりがありません。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
特定物の引渡しの場合の注意義務
年-問-肢内容正誤
120-07-1ある物を借り受けた者は、無償で借り受けた場合も、賃料を支払う約束で借り受けた場合も、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
220-07-3商人ではない受寄者は、報酬を受けて寄託を受ける場合も、無報酬で寄託を受ける場合も、自己の財産と同一の注意をもって寄託物を保管する義務を負う。×

2 正しい

委託の受任者は、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負います(民法644条)。
このことは、報酬を受ける場合でも、無報酬の場合でも、変わりがありません。

■参照項目&類似過去問
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受任者の注意義務(民法[29]2(2))

[共通の設定]
Aが、A所有の不動産の売買をBに対して委任する。
年-問-肢内容正誤
1R02-05-2Bは、契約の本旨に従い、自己の財産に対するのと同一の注意をもって委任事務を処理しなければならない。×
2H20-07-2委託の受任者は、報酬を受けて受任する場合も、報酬で受任する場合も、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負う。
3H14-10-3Bが当該物件の価格の調査など善良な管理者の注意義務を怠ったため、不動産売買についてAに損害が生じたとしても、報酬の合意をしていない以上、AはBに対して賠償の請求をすることができない。×
4H09-09-1Bが無償で本件管理を受託している場合は、「善良なる管理者の注意」ではなく、「自己の財産におけると同一の注意」をもって事務を処理すれば足りる。×

3 誤り

寄託というのは、他人の物を保管するという契約です。
無報酬で寄託を受ける場合、受寄者は、自己の財産に対するものと同一の注意をもって寄託物を保管する義務しか負いません(民法659条)。
これに対し、受寄者が報酬を受ける場合には、善管注意義務を負います。「保管した物を返還する」という受寄者の義務は、「特定物を引き渡す義務」に該当するからです(肢1参照。民法400条)。

※商人が寄託を受けた場合(商事寄託)については、商法に別のルールがあります。しかし、宅建試験では、そこまで気にする必要はありません。

■参照項目&類似過去問
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特定物の引渡しの場合の注意義務
年-問-肢内容正誤
120-07-1ある物を借り受けた者は、無償で借り受けた場合も、賃料を支払う約束で借り受けた場合も、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
220-07-3商人ではない受寄者は、報酬を受けて寄託を受ける場合も、無報酬で寄託を受ける場合も、自己の財産と同一の注意をもって寄託物を保管する義務を負う。×

4 正しい

相続人は、固有財産におけると同一の注意をもって相続財産を管理する義務を負っています(民法918条1項本文)。
相続放棄をした場合でも、放棄によって相続人となった者が管理を始めるまでは、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続する必要があります(同法940条1項)。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
相続財産の管理(民法[31])
年-問-肢内容正誤
120-07-4相続人は、相続放棄前はもちろん、相続放棄をした場合も、放棄によって相続人となった者が管理を始めるまでは、固有財産におけると同一の注意をもって相続財産を管理しなければならない。
219-12-4相続人が相続放棄をした場合でも、被相続人の債権者は被相続人の相続財産管理人の選任を請求することによって、貸金債権の回収が可能となることがある。

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