6月
11
2013

【宅建過去問】(平成22年問03)取得時効

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所有権及びそれ以外の財産権の取得時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1. 土地の賃借権は、物権ではなく、契約に基づく債権であるので、土地の継続的な用益という外形的かつ客観的事実が存在したとしても、時効によって取得することはできない。
  2. 自己の所有と信じて占有している土地の一部に、隣接する他人の土地の筆の一部が含まれていても、他の要件を満たせば、当該他人の土地の一部の所有権を時効によって取得することができる。
  3. 時効期間は、時効の基礎たる事実が開始された時を起算点としなければならず、時効援用者において起算点を選択し、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできない。
  4. 通行地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。

正解:1

【1】 X 誤り

土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されているときは、土地賃借権を時効により取得することができる(民法163条。最判昭43.10.08)。

【2】 ◯ 正しい

他人の土地の筆の一部であっても、要件を充たせば時効取得することができる(民法163条。最判昭52.03.31)。

【判例の説明】
22-03-2Aは、自らの土地とBの土地との境界が図の黒い線であると信じていた。しかし、実際の境界は、緑の線である。だとすると、緑色の土地は、Aが、「自己の所有と信じて占有している」が、実際には、「隣接する他人の土地の筆の一部」ということになる。「このような土地であっても、取得時効の対象となる」とするのが、この判例である。

【3】 ◯ 正しい

時効期間は、時効の基礎たる事実の開始された時を起算点として計算すべきもので、時効援用者において起算点を選択し、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできない(民法144条、162条。最判昭35.07.27)。

【詳しい説明】
元々の土地所有者をA、時効による取得者をB、Aから譲渡を受けた者をCとする。

■時効完成前の第三者
22-03-3aAからCへの譲渡が、Bの時効完成よりもだった場合、

  1. Aの土地をCが譲渡により取得し、
  2. Cの土地をBが時効により取得した

と考える。つまり、土地の所有者は、AからC、CからBと順番に交代したことになる。この場合、CとBとの関係は、対抗関係ではない。時効取得された者とした者という当事者の関係なのである。したがって、Bは、登記がなくても、Cに対して所有権を主張することができる。

■時効完成後の第三者
22-03-3bAからCへの譲渡が、Bの時効完成よりもだった場合、

  1. Aの土地をBが時効により取得し、
  2. Aの土地をCが譲渡により取得した

と考える。つまり、同じ土地をBとCの両方が取得していることになり、二重譲渡と同様の関係、すなわち対抗関係である。この場合、BとCとの優劣は、対抗要件の有無で判断する。したがって、Bは、先に登記を受けない限り、Cに対して所有権を主張することができない。

■起算点の移動?
22-03-3c以上の理屈からすると、時効取得者Bにとっては、Cが時効完成後の第三者であるよりも、時効完成前の第三者である方が都合がよい。なぜなら、Cに対し、登記なしに所有権を主張することができるからである。
そこで、Bは、「時効の起算点を遅らせ、Cが時効完成前の第三者だったことにしたい」と考えた。時効完成に必要な期間(図では10年間)よりも、長い期間占有を続けていたのであれば、このような操作も可能であるように思える。
しかし、最高裁判所は、このようなBの操作を認めなかった。「時効期間は、時効の基礎たる事実の開始された時を起算点として計算すべきもので、時効援用者において起算点を選択し、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできない。」と判断したのである。

■類似過去問(時効完成前後の第三者)
内容を見る
 年-問-肢内容正誤
時効完成前の第三者
127-04-3
Aから甲土地を買い受けたCが所有権の移転登記を備えた後に、Bについて甲土地所有権の取得時効が完成した場合、Bは、Cに対し、登記がなくても甲土地の所有者であることを主張することができる。
224-06-1
A所有の甲土地につき、時効により所有権を取得したBは、時効完成前にAから甲土地を購入して所有権移転登記を備えたCに対して、時効による所有権の取得を主張することができない。×
322-04-3
AがBから甲土地を購入したところ、Cが時効により甲土地の所有権を取得した旨主張している場合、取得時効の進行中にBA間で売買契約及び所有権移転登記がなされ、その後に時効が完成しているときには、Cは登記がなくてもAに対して所有権を主張することができる。
410-02-3
DがBの取得時効完成前にAから甲土地を買い受けた場合には、Dの登記がBの取得時効完成の前であると後であるとを問わず、Bは、登記がなくても、時効による甲土地の所有権の取得をDに対抗することができる。
509-06-4
Jが、K所有の土地を占有し取得時効期間を経過した場合で、時効の完成後に、Kがその土地をLに譲渡して登記を移転したとき、Jは、登記なしにLに対して当該時効による土地の取得を主張できる。×
604-04-3
Bの所有地について、Aが善意無過失で占有を開始し、所有の意思をもって、平穏かつ公然に7年間占有を続けた後、BがDにその土地を売却し、所有権移転登記を完了してもAは、その後3年間占有を続ければ、その土地の所有権を時効取得し、Dに対抗することができる。
時効完成後の第三者
119-06-4
取得時効の完成により乙不動産の所有権を適法に取得した者は、その旨を登記しなければ、時効完成後に乙不動産を旧所有者から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない。
213-05-4
(AからB、BからCに、甲地が順次売却され、AからBに対する所有権移転登記がなされた)
BからCへの売却前に、取得時効の完成により甲地の所有権を取得したEがいる場合、Eがそれを理由にして所有権登記をBから取得する前に、Eの取得時効につき善意のCがBから甲地を購入し、かつ、所有権移転登記を受けたときは、Cは甲地の所有権をEに対抗できる。
307-02-4
Aの所有する土地についてBの取得時効が完成した後、AがCに売却し、登記をC名義に移転した場合、Bは、Cに対して登記がなければ土地の所有権を主張できない。
時効期間の起算点
122-03-3
時効期間は、時効の基礎たる事実が開始された時を起算点としなければならず、時効援用者において起算点を選択し、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできない。

【4】 ◯ 正しい

地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる(民法283条)。

※判例は、通路の開設があっただけでは足りず、その開設が要役地所有者によってなされたことが必要であるとしている(最判昭33.02.14)。

■類似過去問(地役権)
内容を見る
 年-問-肢内容正誤
付従性
114-04-2(Aは、自己所有の甲土地の一部につき、通行目的で、隣地乙土地の便益に供する通行地役権設定契約を、乙土地所有者Bと締結した。)この通行地役権の設定登記を行った後、Bが、乙土地をDに譲渡し、乙土地の所有権移転登記を経由した場合、Dは、この通行地役権が自己に移転したことをAに対して主張できる。
214-04-3(上と同じケース)Bは、この通行地役権を、乙土地と分離して、単独で第三者に売却することができる。×
時効取得
125-03-4承役地の所有者が通路を開設し、要役地の所有者がその通路を利用し続けると、時効によって通行地役権を取得することがある。×
222-03-4継続的に行使され、外形上認識できる地役権は時効取得が可能。
314-04-4継続的に行使され、外形上認識できる地役権であっても時効取得は不可能。×
対抗問題
114-04-1Aは、自己所有の甲土地の一部につき、通行目的で、隣地乙土地の便益に供する通行地役権設定契約を、乙土地所有者Bと締結した。この通行地役権の設定登記をしないまま、Aが、甲土地をCに譲渡し、所有権移転登記を経由した場合、Cは、通路として継続的に使用されていることが客観的に明らかであり、かつ、通行地役権があることを知っていたときでも、Bに対して、常にこの通行地役権を否定することができる。×

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Written by 家坂 圭一 in: 平成22年過去問,民法 |

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