【宅建過去問】(平成26年問06)契約不適合担保責任・不法行為
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- Cは、売買契約の締結の当時、本件欠陥があることを知っており、本件欠陥を有した状態で引渡しを受ける旨を契約した場合であっても、本件欠陥の存在を知ってから1年以内に本件欠陥についてAに通知していれば、Aに対して売買契約に基づく担保責任を追及することができる。
- Bが建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき義務を怠ったために本件建物に基本的な安全性を損なう本件欠陥が生じた場合には、本件欠陥によって損害を被ったCは、特段の事情がない限り、Bに対して不法行為責任に基づく損害賠償を請求できる。
- CがBに対して本件欠陥に関して不法行為責任に基づく損害賠償を請求する場合、当該請求ができる期間は、Cが本件欠陥の存在に気付いてから1年以内である。
- 本件欠陥のために請負契約を締結した目的を達成することができない場合でなければ、AはBとの契約を一方的に解除することはできない。
正解:2
設定の確認
1 誤り
買主が売主の担保責任を追及することができるのは、引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しない場合に限られます(民法562条、563条)。
AC間の売買契約において、買主Cは、「欠陥を有した状態で引渡しを受ける旨を契約」しました。つまり、Cは、欠陥のある建物を購入するという売買契約を締結したのです。この場合、目的物が「契約の内容に適合しない」という評価はできません。CがAの担保責任を追及することは不可能です。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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[共通の設定] Aを売主、Bを買主として甲土地の売買契約を締結した。 | |||
1 | 26-06-1 | Bは、売買契約の締結の当時、甲土地に欠陥があることを知っていた場合であっても、その欠陥の存在を知ってから1年以内に本件欠陥についてAに通知していれば、Aに対して売買契約に基づく担保責任を追及することができる。 | × |
2 | 19-11-3 | Bが契約時に甲土地に欠陥があることを知っていた場合には、Aはその欠陥を担保すべき責任を負わない。 | ◯ |
3 | 16-10-1 | Bは住宅建設用に甲土地を購入したが、都市計画法上の制約により当該土地に住宅を建築することができない場合には、そのことを知っていたBは、Aに対し土地売主の担保責任を追及することができない。 | ◯ |
4 | 15-10-1 | Bが、甲土地の欠陥の存在を知って契約を締結した場合、BはAの担保責任を追及して契約を解除することはできないが、Aに対して担保責任に基づき損害賠償請求を行うことができる。 | × |
2 正しい
建物の設計者には、建築にあたり、居住者等に対して基本的な安全性に配慮する注意義務が生じています。この義務を怠った結果、建物に安全性を損なう瑕疵(欠陥のこと)が生じ、居住者等の生命・身体・財産が侵害された場合、設計者は、不法行為による賠償責任を負います(最判平19.07.06。民法709条)。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R02s-01-1 | 建物の建築に携わる設計者や施工者は、建物としての基本的な安全性が欠ける建物を設計し又は建築した場合、設計契約や建築請負契約の当事者に対しても、また、契約関係にない当該建物の居住者に対しても損害賠償責任を負うことがある。 | ◯ |
2 | H26-06-2 | Aは、Bに建物の建築を注文し、完成して引渡しを受けた建物をCに対して売却した。本件建物の主要な構造部分に欠陥があった。Bが建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき義務を怠ったために本件建物に基本的な安全性を損なう本件欠陥が生じた場合には、本件欠陥によって損害を被ったCは、特段の事情がない限り、Bに対して不法行為責任に基づく損害賠償を請求できる。 | ◯ |
3 | H08-06-2 | AがBとの請負契約によりBに建物を建築させてその所有者となり、その後Cに売却した。Cはこの建物をDに賃貸し、Dが建物を占有していたところ、この建物の建築の際におけるBの過失により生じた瑕疵により、その外壁の一部が剥離して落下し、通行人Eが重傷を負った。Bは、Aに対してこの建物の建築の請負契約に基づく債務不履行責任を負うことがあっても、Eに対して不法行為責任を負うことはない。 | × |
3 誤り
不法行為による損害賠償の請求権は、以下のいずれかに達したとき、時効によって消滅します(民法724条)。
「Cが欠陥の存在に気付いてから1年以内」を基準とするわけではありません。
※「欠陥の存在に気付いてから1年以内」というのは、買主が売主の契約不適合担保責任を追及する場合に、契約不適合について売主に通知すべき期間の制限です(民法566条本文)。
■参照項目&類似過去問
内容を見る不法行為による損害賠償請求権の消滅時効(民法[06]3(2))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R03-08-3 | Aが1人で居住する甲建物の保存に瑕疵があったため、甲建物の壁が崩れて通行人Bがケガをした。本件事故について、AのBに対する不法行為責任が成立する場合、BのAに対する損害賠償請求権は、B又はBの法定代理人が損害又は加害者を知らないときでも、本件事故の時から20年間行使しないときには時効により消滅する。 | ◯ |
2 | R03-08-4 | Aが1人で居住する甲建物の保存に瑕疵があったため、甲建物の壁が崩れて通行人Bがケガをした。本件事故について、AのBに対する不法行為責任が成立する場合、BのAに対する損害賠償請求権は、B又はBの法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しないときには時効により消滅する。 | ◯ |
3 | R02s-01-4 | 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しない場合、時効によって消滅する。 | ◯ |
4 | H28-09-1 | 信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった売主に対する買主の損害賠償請求権(人の生命又は身体の侵害によるものではない。)は、買主が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効により消滅する。 | ◯ |
5 | H28-09-2 | 信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった売主に対する買主の損害賠償請求権は、損害を被っていることを買主が知らない場合でも、売買契約から10年間行使しないときは、時効により消滅する。 | × |
6 | H26-06-3 | Aは、Bに建物の建築を注文し、完成して引渡しを受けた建物をCに対して売却した。本件建物の主要な構造部分に欠陥があった。CがBに対して本件建物の瑕疵に関して不法行為責任に基づく損害賠償を請求する場合、当該請求ができる期間は、Cが瑕疵の存在に気付いてから1年以内である。 | × |
7 | H26-08-1 | 不法行為による損害賠償請求権の期間の制限を定める民法第724条における、被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいう。 | ◯ |
8 | H26-08-2 | 不法行為による損害賠償債務の不履行に基づく遅延損害金債権は、当該債権が発生した時から10年間行使しないことにより、時効によって消滅する。 | × |
9 | H26-08-3 | 不法占拠により日々発生する損害については、加害行為が終わった時から一括して消滅時効が進行し、日々発生する損害を知った時から別個に消滅時効が進行することはない。 | × |
10 | H26-08-4 | 不法行為の加害者が海外に在住している間は、民法第724条後段の20年の時効期間は進行しない。 | × |
11 | H19-05-4 | 不法行為による損害賠償の請求権の消滅時効の期間は、権利を行使することができることとなった時から10年である。 | × |
12 | H17-11-4 | 交通事故の被害者が、車の破損による損害賠償請求権を、損害及び加害者を知った時から3年間行使しなかったときは、この請求権は時効により消滅する。 | ◯ |
13 | H12-08-3 | 不法行為の被害者が、不法行為による損害と加害者を知った時から1年間、損害賠償請求権を行使しなければ、当該請求権は消滅時効により消滅する。 | × |
4 誤り
請負契約の請負人の担保責任については、売買契約の売主の担保責任に関する規定が準用されます(民法559条本文)。
したがって、請負人に債務不履行があった場合、注文者は、請負契約を解除することができます(同法541条、542条)。解除ができるのは、契約の目的を達成できないときに限られません。
※令和2年以前の民法とは大きく変わっています。古い知識は、捨ててしまいましょう。
※民法は、請負人の担保責任につき、以下のように定めています。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | 26-06-4 | 請負の目的物である建物に種類又は品質に関して契約の内容に適合しない欠陥がある場合、そのために請負契約を締結した目的を達成することができない場合でなければ、注文者は請負人との契約を一方的に解除することはできない。 | × |
2 | 18-06-3 | 請負契約の目的物たる建物が種類又は品質に関して契約の内容に適合せず、目的物の修補に要する費用が契約代金を超える場合であっても、請負人は原則として請負契約を解除することができない。 | × |
3 | 06-08-2 | 注文者は、住宅の引渡しを受けた場合において、その住宅に契約の内容に適合しない欠陥があり、契約をした目的を達成することができないときであっても、その契約を解除することはできない。 | × |
4 | 01-08-2 | 完成した目的物に契約をした目的を達することができない重大な欠陥があるときは、注文者は、目的物の修補又は損害賠償の請求をすることはできないが、契約を解除することができる。 | × |
5 | 01-08-4 | 完成した目的物が建物その他土地の工作物である場合において、その物に契約をした目的を達することができない重大な欠陥があるときであっても、注文者は、契約の解除をすることができない。 | × |
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売買の目的物の種類、品質または数量が契約内容に適合しない場合、たとえ買主が悪意であったとしても売主の契約不適合責任が否定されるわけではない。以上のように改正により変更されたという解説を見たのですが、どちらが正しいでしょうか?
m様
ご質問ありがとうございます。
令和2年施行の民法改正により、買主は、「契約不適合」について担保責任を負うことになりました。
改正以前と違って、買主が「善意無過失」であることは要求されていません。
とはいえ、買主が契約不適合について「悪意」であるにもかかわらず、売主の契約不適合担保責任を追及することができる、というケースは、そうそう考えられません。
売買の目的物の不具合等について買主が「悪意」であれば、「不具合のある目的物に関する売買契約を締結した。」と理解するのが普通だからです。
この場合、買主は、契約通りに「不具合のある目的物」を引き渡したのであり、「契約不適合」はありません。
したがって、買主が契約不適合担保責任を負う必要もありません。
以上については、別の記事で詳しく説明しています。
詳細については、こちらをご覧ください。
■売主の担保責任と悪意の買主
解説頂きありがとうございます。
追加で質問をさせて頂きます。
もしこの欠陥が主要構造部の欠陥だった場合は、不適合責任を追求できるのでしょうか。
上の解説をよく読んでください。
それで足らなければ、[Step.1]基本習得編で、
民法[24]売買契約3.売主の契約不適合担保責任
を確認してください。
売主が契約不適合担保責任を負うかどうかは、「契約不適合があったかどうか。」によって決まります。
「主要構造部の欠陥であるかどうか。」によって決まるわけではありません。
また、本問については、「主要な構造部分の欠陥」であることが、すでに問題文に示されています。
「もしこの欠陥が主要構造部の欠陥だった場合」について、別に検討する必要はありません。
いつも参考にさせていただいております。
「悪意の買主」に関してですが、法改正部分の先生の解説は非常に分かりやすく勉強になりました。
ただ、「平成28年の問06」の、選択肢(1)(2)が他人物売買、選択肢(3)(4)が抵当権付の事例での解説では「買主の善意、悪意を問わず」に損害賠償や解除が出来る内容となっており、この違いがなかなか理解出来ずに困っております。
単純に、
・本問の平成26年問06の場合は、「契約時点」であきらかに「契約不適合」だとはっきりしていた場合(だから売主に責任追及出来ない)。
・平成28年の問06では、「契約時点」では、まだ他人物であったり抵当権付きであるものの、「引渡時」には他人から所有権を獲得済みとなっているか、債務者が債務を弁済する等で抵当権が消えている、あるいは弁済が順調に出来ており抵当権が実行されない状態であると買主は信じていた状態(それでも他人物のままで引渡しが不可能である、あるいは抵当権付のままで、尚且つ抵当権が実行されてしまった)。
という解釈で宜しいのでしょうか?
初歩的な質問で恐縮ですが、ご意見を賜れましたら幸いです。
堀川様
ご質問ありがとうございます。
回答が遅くなり、大変申し訳ありません。
買主が抵当権の存在を知っていても知らなくても、買主がその不動産の所有権を手に入れることができなかった、という事実は、変わりません。
つまり、売主は、
「目的物を引き渡す」
という義務を履行できなかったわけです。
これは債務不履行(履行不能)ですから、買主は、契約を解除し、損害賠償を請求することができます。
本問の場合、「引渡しを受けた建物」に関するものですから、平成28年問06とは話が全く違います。
引き渡された目的物に「契約内容不適合」があるかどうか、が問われる局面です。
改正後の民法は、「契約不適合」の有無を売主の債務不履行責任発生の基準としています。
改正以前のような
「◯◯について善意だから◯◯できる。」
「××について悪意だから××できない。」
という単純な構造にはなっていません。
善意・悪意が要件でないことに気を付けましょう。
買主が欠陥について悪意、つまり、キズモノであることを知っていて買った以上、通常、契約内容は『キズモノを買う。』というものであると考えられます。
この場合、売主の義務は、「そのキズモノを引き渡す。」ことに尽きるわけです。これを越えた責任を負わせることはできません。
選択肢4の解釈、不足していると思います。
仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができないときは、注文者は、契約の解除をすることができます。但し、建物その他の土地の工作物については、解除することはできません(民法第635条)。本肢は、建物ですから、Aは、請負契約を解除することができません。
JORDAN様
ご指摘の「民法第635条」は、今回の民法改正以前に存在した条文です。
今回の改正で、削除されました。
ご確認ください。
いつも参考にさせてもらっています。
No.3について教えて頂けないでしょうか。注釈で
「欠陥の存在に気付いてから1年以内」というのは、買主が売主の契約不適合担保責任を追及する場合に、契約不適合について売主に通知すべき期間の制限です(民法566条本文)。と記載されていると思います。
私は、この問題は、上記の「欠陥の存在に気付いてから1年以内」の事と混同していました。
解説を読むと、不法行為による損害賠償の請求権の期限(3~20年)と契約不適合について売主に通知すべき期間の制限(1年)は別物のようですが、この二つの関係は、以下の認識で合っているでしょうか?
家を購入→契約不適合を発見→1年以内に通知→不法行為による不適合だった場合、3~20年以内に損害賠償を請求する事が可能
shin様
ご質問ありがとうございます。
この問題では、「契約不適合担保責任」と「不法行為責任」とをしっかり区別する必要があります。
肢3では、CがBの責任を追及するわけです。
図を見ながら、この2人の関係を押さえましょう。
(1)契約不適合担保責任について
BとCとの2人の間には、そもそも契約関係がありません。
したがって、「契約不適合」という話にはならないわけです。CがBの「契約不適合責任」を追及することはできません。
(2)不法行為責任について
「Bの行為による欠陥により、Cが被害を受けた。」という関係から、Bを加害者、Cを被害者とする不法行為があったことが分かります。
Cは、Bの「不法行為責任」を追及することができます。
回答ありがとうございます。
確かに注文主Aと請負人Bがいますから、相手によって変わりますね。そこは前提から抜けていました。ありがとうございます。
では、この場合、CからAには契約不適合責任を、Bには不法行為責任を追及することができるのでしょうか?
ご返信ありがとうございます。
本件欠陥がAC間の売買契約に適合しないものであれば、Cは、Aに対して、契約不適合担保責任を追及することができます。
いつも参考にさせていただいております。
確認ですが、
選択肢1につきまして、法改正により、「悪意の買主」でも通常の担保責任が追及出来る様になったのではなかったでしょうか?
宜しくお願い致します。
受験生様
ご質問ありがとうございます。
同様のご質問を多くのかたから頂戴します。
短いコメントでは説明しにくいので、別の記事を用意しました。
こちらをご覧ください。
■売主の担保責任と悪意の買主