【宅建過去問】(平成27年問10)遺言・遺留分
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- 自筆証書の内容を遺言者が一部削除する場合、遺言者が変更する箇所に二重線を引いて、その箇所に押印するだけで、一部削除の効力が生ずる。
- 自筆証書による遺言をする場合、遺言書の本文の自署名下に押印がなければ、自署と離れた箇所に押印があっても、押印の要件として有効となることはない。
- 遺言執行者が管理する相続財産を相続人が無断で処分した場合、当該処分行為は、遺言執行者に対する関係で無効となるが、第三者に対する関係では無効とならない。
- 遺留分権利者は、受遺者又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができるが、受遺者又は受贈者に対し、遺贈又は贈与の減殺を請求することはできない。
正解:4
1 誤り
自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じません(民法968条3項)。
「変更する箇所に二重線を引いて、その箇所に押印するだけ」では、削除の効力は生じないわけです。
■参照項目&類似過去問
内容を見る
3種類の遺言(民法[32]2(1))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
自筆証書遺言 | |||
1 | R03s-07-1 | 自筆証書によって遺言をする場合、遺言者は、その全文、日付及び氏名を自書して押印しなければならないが、これに添付する相続財産の目録については、遺言者が毎葉に署名押印すれば、自書でないものも認められる。 | ◯ |
2 | 27-10-1 | 自筆証書の内容を遺言者が一部削除する場合、遺言者が変更する箇所に二重線を引いて、その箇所に押印するだけで、一部削除の効力が生ずる 。 | × |
3 | 27-10-2 | 自筆証書による遺言をする場合、遺言書の本文の自署名下に押印がなければ、自署と離れた箇所に押印があっても、押印の要件として有効となることはない 。 | × |
4 | 22-10-1 | 自筆証書遺言は、その内容をワープロ等で印字していても、日付と氏名を自署し、押印すれば、有効な遺言となる。 | × |
5 | 17-12-1 | 自筆証書遺言には証人二人以上の立会いが必要。 | × |
公正証書遺言 | |||
1 | R03s-07-2 | 公正証書遺言の作成には、証人2人以上の立会いが必要であるが、推定相続人は、未成年者でなくとも、証人となることができない。 | ◯ |
2 誤り
遺言書本文の自署名下には押印をしなかったとしても、これを入れた封筒の封じ目に押印した場合には、押印の要件が満たされます(最判平06.06.24)。
つまり、「遺言書の本文の自署名下に押印」しない場合でも、押印が有効になることがあります。
■参照項目&類似過去問
内容を見る
3種類の遺言(民法[32]2(1))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
自筆証書遺言 | |||
1 | R03s-07-1 | 自筆証書によって遺言をする場合、遺言者は、その全文、日付及び氏名を自書して押印しなければならないが、これに添付する相続財産の目録については、遺言者が毎葉に署名押印すれば、自書でないものも認められる。 | ◯ |
2 | 27-10-1 | 自筆証書の内容を遺言者が一部削除する場合、遺言者が変更する箇所に二重線を引いて、その箇所に押印するだけで、一部削除の効力が生ずる 。 | × |
3 | 27-10-2 | 自筆証書による遺言をする場合、遺言書の本文の自署名下に押印がなければ、自署と離れた箇所に押印があっても、押印の要件として有効となることはない 。 | × |
4 | 22-10-1 | 自筆証書遺言は、その内容をワープロ等で印字していても、日付と氏名を自署し、押印すれば、有効な遺言となる。 | × |
5 | 17-12-1 | 自筆証書遺言には証人二人以上の立会いが必要。 | × |
公正証書遺言 | |||
1 | R03s-07-2 | 公正証書遺言の作成には、証人2人以上の立会いが必要であるが、推定相続人は、未成年者でなくとも、証人となることができない。 | ◯ |
3 誤り
民法1013条1項は、「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。」と規定しています。
これは、遺言者の意思を尊重するため、遺言執行者に遺言の公正な実現を図らせるためのルールです。この趣旨からすると、相続人が無断で相続財産を第三者に譲渡したとしても、その処分行為は無効です(同条2項本文)。ただし、第三者が善意である場合には、無効を対抗することができません(同項ただし書き)。
4 正しい
令和2年施行の民法改正により、遺留分権利者が遺留分を主張する方法は、遺留分減殺請求から遺留分侵害額請求へと変更されました(民法1046条)。現在、遺留分権利者は、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができます。しかし、遺留分の減殺を請求することはできません。
■参照項目&類似過去問
内容を見る
遺留分侵害額請求(民法[33]3)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | 20-12-1 | 相続人の一部の遺留分を侵害する被相続人の遺言は、その限度で当然に無効である。 | × |
2 | 12-10-2 | Aは、「Aの財産をすべてBに遺贈する。CはBに対して遺留分侵害額の請求をしてはならない」旨の遺言をして、CをAの相続から排除することができる。 | × |
3 | 12-10-4 | Aは、「Aの乙建物を子Cに相続させる」旨の遺言をした場合で、子Bの遺留分を害しないとき、これをC単独の所有に帰属させることができる。 | ◯ |
4 | 09-10-2 | 遺留分侵害額の請求は、訴えを提起しなくても、内容証明郵便による意思表示だけでもすることができる。 | ◯ |
5 | 07-11-2 | [Aが死亡し、相続人はAの子であるC・Dのみ。]Aが遺産の全部をCに遺贈した場合、DからCに対して遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。 | ◯ |
6 | 02-11-2 | Aが遺産を子Cに遺贈していた場合、その遺贈は、配偶者B、子D及び子Eの遺留分を侵害した部分について、効力を生じない。 | × |
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選択肢3について
民法1013条第2項:前項の規定に違反してした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
とありますので、問題文に、「原則として」とことわりを入れるか、第三者の前に善意か悪意を記載した方がよろしいかと思います。
失礼しました。
まる様
ご指摘ありがとうございます。
このサイトに掲載している問題は、宅建本試験の過去問です。
そのため、法改正でもない限りは、内容や表現の訂正はしません。
また、「行為が無効である」ことと「善意の第三者に対抗することができない」ことは、矛盾しません。
むしろ、第三者に対しても無効であるからこそ、「善意の第三者に対抗することができない」という制限を設けています。
令和元年7月1日に改正して、2項と3項が新設されました。
過去問は法改正前のものになります。
善意の第三者だと無効になります。
悪意の第三者だと有効となります。
正解が、誤りなので、(悪意の)第三者と理解するのが通常ということでしょうか?
解説でも触れていないし、法改正前の判例を根拠にしているので法改正を加味していないのかなと思った次第です。
まる様
ご返信ありがとうございます。
■まるさんのご指摘について
これですと、悪意の第三者のみが保護されることになるので、善意・悪意が逆なのだと思います。
いずれにせよ、第三者の善意・悪意に関わらず、相続人の処分行為は無効です(民法1013条2項本文)。
ただし、第三者が善意の場合には、その第三者に対して、処分行為が無効であることを対抗することができません(同項ただし書き)。
「無効を対抗することができない。」からといって、その行為が「有効」に転換するわけではありません。
行為が「無効」であることを前提に、
・第三者が善意→無効を対抗することができない。
・第三者が悪意→無効を対抗することができる。
という違いがあるだけです。
上で、条文番号を挙げたことで分かるように、改正民法は、この点を変更するものではありません。むしろ、この理屈を明確にしたものです。
■虚偽表示の例で説明します。
「第三者に対抗することができない。」の分かり易い例として、「虚偽表示と第三者」の例で考えてみましょう。
売主と買主の間の売買契約が通謀虚偽表示によるものであった場合、この契約は、無効です(民法94条1項)。
しかし、第三者の善意・悪意によって、
・第三者が善意→無効を対抗することができない。
・第三者が悪意→無効を対抗することができる。
という扱いを受けます(同条2項)。
繰返しになりますが、第三者が善意でも悪意でも、虚偽表示による意思表示が無効であることに違いはありません。この意思表示が有効に転換することはないのです。
違うのは、その無効を第三者に対抗することができるか、できないか、という点です。
■本問の問題・解説について
以上より、民法改正に関わらず、肢3の選択肢の問題文を訂正する必要はなく、この選択肢は、誤りです。
しかし、1013条2項について説明したほうが、一層明快な解説になります。
まるさんの今回のご質問を踏まえ、解説文に修正を加えたいと思います。
この度は、ご指摘いただき、ありがとうございました。