【宅建過去問】(平成29年問07)請負契約
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- 請負契約が請負人の責めに帰すべき事由によって中途で終了し、請負人が施工済みの部分に相当する報酬に限ってその支払を請求することができる場合、注文者が請負人に請求できるのは、注文者が残工事の施工に要した費用のうち、請負人の未施工部分に相当する請負代金額を超える額に限られる。
- 請負契約が注文者の責めに帰すべき事由によって中途で終了した場合、請負人は、残債務を免れるとともに、注文者に請負代金全額を請求できるが、自己の債務を免れたことによる利益を注文者に償還しなければならない。
- 請負契約の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合せず、それが請負人の責めに帰すべき事由による場合、注文者は、請負人から損害の賠償を受けていなくとも、特別の事情がない限り、報酬全額を支払わなければならない。
- 請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡した場合に担保責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることはできない。
Contents
正解:3
請負契約とは
請負契約というのは、当事者の一方(請負人)がある仕事を完成することを約束し、相手方(注文者)が仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束するという契約です。注文者は請負人に対して仕事完成請求権を有し、請負人は注文者に対して報酬請求権を有しています。
1 正しい
判例(最判昭60.05.17)をベースにした問題です。文章がヤヤコシイので、少し具体的な話にしましょう(実際の判例をかなり単純化しています)。
- (1)注文者は、請負人との間で、家の新築工事に関する請負契約を締結し、その報酬を1,000万円と定めました。
- (2)工事は85%まで進んだのですが、ここで請負人側の事情で、中断してしまいました。
- (3)請負人は、施行済みの部分に相当する報酬、すなわち850万円を請求することができます。
- (4)注文者は、家を完成させるために、未施工部分の工事を別の業者に発注しました。その結果、200万円の費用がかかりました。
請負人には、仕事を完成させなかったという債務不履行があります。したがって、注文者は、請負人に対し、損害賠償を請求することができます(民法415条)。問題は、損害賠償の範囲です(同法416条)。
これについては、(a)と(b)の考え方があり得ます。
(a) | 未施工部分に相当する請負代金額の全額 | 200万 |
(b) | 未施工部分に相当する請負代金額を超える額 | 50万 |
このうち、判例は、(b)を採用しました。つまり、「注文者が請負人に請求できるのは、注文者が残工事の施工に要した費用のうち、請負人の未施工部分に相当する請負代金額を超える額に限られる」と判断したのです。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | 29-07-1 | 請負契約が請負人の責めに帰すべき事由によって中途で終了し、請負人が施工済みの部分に相当する報酬に限ってその支払を請求することができる場合、注文者が請負人に請求できるのは、注文者が残工事の施工に要した費用のうち、請負人の未施工部分に相当する請負代金額を超える額に限られる。 | ◯ |
2 | 18-06-1 | 請負契約の目的物たる建物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合、目的物の修補が可能であれば、AはBに対して損害賠償請求を行う前に、目的物の修補を請求しなければならない。 | × |
3 | 07-10-3 | 注文者が請負人から完成した建物の引渡しを受けた後、第三者に対して建物を譲渡したときは、その第三者は、その建物の欠陥について、請負人に対し修補又は損害賠償の請求をすることができる。 | × |
4 | 01-08-1 | 完成した目的物に契約の内容に適合しない欠陥がある場合において、その修補が可能なものであっても、注文者は、目的物の修補に代えて、直ちに損害賠償の請求をすることができる。 | ◯ |
5 | 01-08-2 | 完成した目的物に契約をした目的を達することができない重大な欠陥があるときは、注文者は、目的物の修補又は損害賠償の請求をすることはできないが、契約を解除することができる。 | × |
2 正しい
債権者に帰責性がある場合の危険負担(売買契約)
本肢は、債権者に帰責性がある場合の危険負担の問題です。いきなり請負契約で考えるのは複雑なので、まずは、馴染みの深い売買契約で知識を整理しましょう。
建物の売買契約において、買主の失火により建物が全焼してしまいました。つまり、引渡請求権に関する債権者(買主)の責任で、引渡請求権が実現不可能となったわけです。この場合、売主の代金請求権は、消滅しません(民法536条2項前段)。代金全額を請求することができます。
請負契約で考えると
本肢では、注文者の仕事完成請求権が実現不可能となっており、その原因は、注文者にあります。つまり、仕事完成請求権に関する債権者(注文者)の責任で、仕事完成請求権が実現不可能となったのです。当然のことですが、請負人は残りの工事をする義務を免れます。それにもかかわらず、請負人の報酬請求権は、消滅しません(同法536条2項前段)。つまり、報酬全額を請求することができます。
請負人が自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還する必要があります(同項後段。最判昭52.02.22)。例えば、仕入れた材料を使わずに済み、別の現場で利用することができた、というようなケースでは、その材料費分を注文者に請求することはできません。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R03s-09-4 | AがBに対してA所有の甲建物を①売却又は②賃貸した。①と②の契約締結後、甲建物の引渡し前に、甲建物がEの放火で全焼した場合、①ではBはAに対する売買代金の支払を拒むことができ、②ではBとAとの間の賃貸借契約は経了する。 | ◯ |
2 | R02-05-1 | AとBとの間で締結された委任契約において、委任者Aが受任者Bに対して報酬を支払うこととされていた。Aの責めに帰すべき事由によって履行の途中で委任が終了した場合、Bは報酬全額をAに対して請求することができるが、自己の債務を免れたことによって得た利益をAに償還しなければならない。 | ◯ |
3 | R01-08-3 | Aを注文者、Bを請負人とする請負契約の目的が建物の増築である場合、Aの失火により当該建物が焼失し増築できなくなったときは、Bは本件契約に基づく未履行部分の仕事完成債務を免れる。 | ◯ |
4 | 29-07-2 | 請負契約が注文者の責めに帰すべき事由によって中途で終了した場合、請負人は、残債務を免れるとともに、注文者に請負代金全額を請求できるが、自己の債務を免れたことによる利益を注文者に償還しなければならない。 | ◯ |
[共通の設定] 本年9月1日にA所有の甲建物につきAB間で売買契約が成立した。 | |||
5 | 19-10-1 | 甲建物が同年8月31日時点でAB両者の責に帰すことができない火災により滅失していた場合、甲建物の売買契約は有効に成立するが、Aは甲建物を引き渡す債務を負わないものの、Bは代金の支払いを拒むことができない。 | × |
6 | 19-10-3 | 甲建物が同年9月15日時点でBの責に帰すべき火災により滅失した場合、Aは甲建物を引き渡す債務を負わず、Bは代金の支払いを拒むことができる。 | × |
7 | 19-10-4 | 甲建物が同年9月15日時点で自然災害により滅失しても、AB間に「自然災害による建物滅失の危険は、建物引渡しまでは売主が負担する」との取決めがある場合、Aは甲建物を引き渡す債務を負わず、Bは代金の支払いを拒むことができる。 | ◯ |
8 | 08-11-1 | 代金の支払い及び建物の引渡し前に、その建物が地震によって全壊したときは、Bは、Aに対して代金の支払いを拒むことはできない。 | × |
9 | 08-11-2 | 代金の支払い及び建物の引渡し前に、その建物の一部が地震によって損壊したときは、Aは、代金の額から損壊部分に見合う金額を減額した額であれば、Bに対して請求することができる。 | × |
10 | 08-11-3 | Aが自己の費用で建物の内装改修工事を行って引き渡すと約束していた場合で、当該工事着手前に建物がBの責めに帰すべき火災で全焼したときは、Aは、内装改修工事費相当額をBに対して償還しなければならない。 | ◯ |
11 | 01-09-1 | 甲建物の所有権移転登記後、引渡し前に、甲建物が天災によって滅失した場合、Bは、Aに対し代金の支払いを拒むことができない。 | × |
12 | 01-09-2 | 甲建物の所有権移転登記後、引渡し前に、甲建物が放火によって半焼した場合、Bは、Aに対し代金の減額を請求することができない。 | × |
3 誤り
請負契約の目的物に契約不適合がある場合、請負人に帰責事由があれば、注文者は、損害賠償の請求をすることができます(民法415条1項本文)。この場合、注文者の損害賠償請求権と請負人の報酬請求権との間には、同時履行の関係があります(同法533条本文)。
具体的にいうと、注文者は、請負人から損害の賠償を受けるまでは、報酬全額の支払を拒むことができます。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | 29-07-3 | 請負契約の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合せず、それが請負人の責めに帰すべき事由による場合、注文者は、請負人から損害の賠償を受けていなくとも、特別の事情がない限り、報酬全額を支払わなければならない。 | × |
2 | 11-08-3 | 建物の建築請負契約の請負人が、種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したときに請負人が注文者に対して負う損害賠償義務について、その履行の提供をしない場合、注文者は、当該請負契約に係る報酬の支払いを拒むことができる。 | ◯ |
4 正しい
請負人は、契約不適合担保責任を負わない旨の特約をすることができます。しかし、この場合であっても、知りながら告げなかった事実については、責任を免れることができません(民法559条、572条)。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | H29-07-4 | 請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡した場合に担保責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることはできない。 | ◯ |
2 | H18-06-4 | 請負契約の目的物たる建物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合に請負人が担保責任を負わない旨の特約をしたときには、注文者はその不適合について請負人の責任を一切追及することができなくなる。 | × |
3 | H06-08-4 | 請負人は、その住宅に契約の内容に適合しない欠陥がある場合でも担保責任を負わないとする特約を注文者と結ぶこともできるが、その場合でも、請負人がその欠陥の存在を知っていて、注文者に告げなかったときは、免責されない。 | ◯ |