【宅建過去問】(平成29年問10)不動産質権・抵当権

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①不動産質権と②抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

  1. ①では、被担保債権の利息のうち、満期となった最後の2年分についてのみ担保されるが、②では、設定行為に別段の定めがない限り、被担保債権の利息は担保されない。
  2. ①は、10年を超える存続期間を定めたときであっても、その期間は10年となるのに対し、②は、存続期間に関する制限はない。
  3. ①は、目的物の引渡しが効力の発生要件であるのに対し、②は、目的物の引渡しは効力の発生要件ではない。
  4. ①も②も不動産に関する物権であり、登記を備えなければ第三者に対抗することができない。

正解:1

1 誤り

①不動産質権者は、原則として、その債権の利息を請求することができません(民法358条)。不動産質権では、質権者に不動産の使用・収益が認められており(同法356条)、これによる利益は、被担保債権の利息とほぼ同価値だと考えられているからです。ただし、設定行為で別段の定めをすれば利息を請求することも可能です(同法359条)。

一方、②抵当権では、利息・遅延損害金に関し、満期となった最後の2年分についてのみ抵当権を行使することができます(同法375条1項)。これは、後順位抵当権者を保護するための措置です。
つまり、本肢は、①不動産質権に関する記述と②抵当権に関する記述が、正反対になっています。

■参照項目&類似過去問
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質権(民法[14]1(3))
年-問-肢内容正誤
約定担保物権
121-05-2先取特権も質権も、債権者と債務者との間の契約により成立する。×
効力発生要件
129-10-3不動産質権は、目的物の引渡しが効力の発生要件である。
被担保債権の範囲
129-10-1不動産質権では、被担保債権の利息のうち、満期となった最後の2年分についてのみ担保される。×
214-05-2利息請求権は、常に満期となった最後の2年分についてのみ、質権の被担保債権となる。×
善管注意義務
121-05-4留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有する必要があるのに対し、質権者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、質物を占有する必要がある。×
不動産質権者による使用及び収益
119-07-3質権は、占有の継続が第三者に対する対抗要件と定められているため、動産を目的として質権を設定することはできるが、登記を対抗要件とする不動産を目的として質権を設定することはできない。×
不動産質権の存続期間
129-10-2不動産質権は、10年を超える存続期間を定めたときであっても、その期間は10年となる。
不動産質権の対抗要件
129-10-4不動産質権は不動産に関する物権であり、登記を備えなければ第三者に対抗することができない。
指名債権を目的とする質権の対抗要件
114-05-1
債権質の質権者は、債務者の承諾が書面によるものであれば、確定日付を得ていなくても、この質権設定を、第三者に対しても対抗することができる。×
210-03-2
確定日付のある証書による債権者から債務者への通知又は債務者の承諾がないときでも、質権者は、建物賃貸借契約証書及び敷金預託を証する書面の交付を受けている限り、質権の設定を他の債権者に対抗することができる。×
質権者による債権の取立て
114-05-3
敷金返還請求権に質権の設定を受けた者は、賃借人に対する債権の弁済期到来前に、敷金返還請求権の弁済期が到来した場合は、賃貸人に対し、敷金を供託するよう請求できる。
214-05‐4
敷金返還請求権に質権の設定を受けた者は、賃借人に対する債権の弁済期が到来した場合、賃貸人に対し、敷金返還請求権の弁済期の前に、敷金を直ちに交付するよう請求できる。×
310-03-3
敷金返還請求権に質権の設定を受けた者は、賃借人の承諾を得ることなく、賃貸人から直接取立てを行うことができる。
抵当権(被担保債権の範囲)(民法[12]4(3))
年-問-肢内容正誤
129-10-1
抵当権では、設定行為に別段の定めがない限り、被担保債権の利息は担保されない。×
215-06-4
普通抵当権でも、根抵当権でも、遅延損害金は最後の2年分の利息の範囲内。×
313-07-3
債務不履行による遅延損害金については、一定の場合を除き、利息その他の定期金と通算し、最大限、最後の2年分しか、本件登記にかかる抵当権の優先弁済権を主張することができない。
407-06-2
抵当権の登記に債務の利息に関する定めがあり、他に後順位抵当権者その他の利害関係者がいない場合でも、抵当権者は、抵当権設定者に対し、満期のきた最後の2年分を超える利息については抵当権を行うことはできない。×
502-10-3
抵当権者は、抵当権の実行により、元本と最後の2年分の利息について、他の債権者に優先して弁済を受けることができる。

2 正しい

①不動産質権の存続期間は、10年を超えることができません(民法360条1項)。所有者以外の人に対し、10年を超えるような長期間の使用・収益を認めるべきではないからです。
一方、②抵当権では、存続期間について、特に限定はありません。抵当権では、目的物の占有は、抵当権設定者に残されます。抵当権が長期に存続することを認めても、抵当権設定者の損になることはないのです。

3 正しい

①不動産質権だけでなく質権全般について、目的物の引渡しが効力発生の要件とされています(民法344条)。一方、抵当権に関して、このような規定はありません。すなわち、設定契約のみによって、抵当権の効力が発生します。

※不動産質権・抵当権の対抗要件は、登記です(肢4)。効力発生要件と区別しておきましょう。

4 正しい

①不動産質権も②抵当権も、いずれも不動産に関する物権です。不動産に関する物権については、登記が対抗要件とされています(民法177条)。

■参照項目&類似過去問
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抵当権(第三者への対抗要件)(民法[12]2(3))
年-問-肢内容正誤
129-10-4抵当権は不動産に関する物権であり、登記を備えなければ第三者に対抗することができない。
228-14-2登記することができる権利には、抵当権及び賃借権が含まれる。
326-04-2抵当権を設定した旨を第三者に対抗する場合には登記が必要であるが、根抵当権を設定した旨を第三者に対抗する場合には、登記に加えて、債務者Cの異議を留めない承諾が必要である。×
422-05-1抵当権設定者AとBとの抵当権設定契約が、AとCとの抵当権設定契約より先であっても、Cを抵当権者とする抵当権設定登記の方がBを抵当権者とする抵当権設定登記より先であるときには、Cを抵当権者とする抵当権が第1順位となる。

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