「手付」と「手附」と「手付け」の話

コラムはいいね

過日、以下のようなコラムを書きました。
「建ぺい率」は「建蔽率」になりました。
意外なことに(?)マジメに書いた記事よりもよほど受けているようで、結構なアクセスをいただいております。

味をしめてしまいましたので、本日も「息抜きコラム」をお届けします。

宅建業法はどうか

「建ぺい率」から「建蔽率」への改正は、都市計画法と建築基準法の全範囲について一括で行われました。

これと対照的なのが宅建業法です。
宅建業法では、用字用語のルールが変更された場合でも、それを全条文について一律に改正するというアプローチは取られていません。過去の改正を見ると、

  1. 個別の条文(第◯条)単位で改正する。
  2. 改正する時点での用字用語が適用される。

というのが基本ルールであるようです。

「手付」と「手附」と「手付け」

「手付」と「手附」

この点が典型的に現れたのが、「てつけ」に関する漢字表記です。同じ宅建業法の中で、「手付」と「手附」が混在しているのです。
出現回数でいうと、

「手付」 74回
「手附」 5回

という状況で、「手付」が「手附」を圧倒しています。
実際のところ、「手附」という表現が出てくるのは、39条に限られています。

手附の額の制限等)
第39条 宅地建物取引業者は、みずから売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して、代金の額の十分の二をこえる額の手附を受領することができない。
2 宅地建物取引業者が、みずから売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手附を受領したときは、その手附がいかなる性質のものであつても、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手附を放棄して、当該宅地建物取引業者はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。
3 前項の規定に反する特約で、買主に不利なものは、無効とする。

最近まで「手付け」もあった!

つい最近まで、宅建業法には、「手付」「手附」に加えて、さらに第三の表記法も存在しました。
平成29年の法改正前の47条3号では、「手付け」という表記法が採用されていたのです(送り仮名の「け」があります)。当時の条文を挙げておきましょう。

(業務に関する禁止事項)
第47条 宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
(一・二号略)
三 手付けについて貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為

このときの改正は、宅地建物取引業法の一部を改正する法律(平成28年法律第56号)によって行われました。具体的には、以下のような表現です。

第四十七条…(中略)…第三号中「手付け」を「手付」に改める。

こういうときにも、一つ一つ「改め文」が必要なんですね。
以上のような経緯を経て、ようやく「てつけ」の表記は、2つに減ることになりました。さらに「手付」への統一を図るためには、39条の改正が必要なのですが、果たしてその日はくるのでしょうか?

【追記】ついに「手附」が消えた!

令和2年4月1日施行の民法改正で、手付解除に関する条文が改正されました(同法557条1項)。
それに伴い、宅建業法39条についても改正が必要になったわけです。
その際に、「手附」の表記は一掃され、「手付」に統一。ついに、その日が来ました!

他にもあります

宅建業法には、他にも表記の不統一があります。ザッと思い出せる範囲でいうと、以下のようなものがあります。

  1. 「取り戻し」と「取りもどし」
  2. 「添付」と「添附」
  3. 「最寄り」と「もより」
  4. 「超える」と「こえる」
  5. 「講じる」と「講ずる」
  6. 「行なう」と「行う」

これらについても、キチンと整理すると面白いような気がします。
しかし、あまり意味がある作業には思えないので、本日はここまで。
以上で、お開きです。

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