過去問徹底!宅建試験合格情報

平成20年問21肢4の徹底検証(暫定版081107)

1.なぜこの記事を書いたのか

平成20年の宅建本試験で以下のような問題が出題されました。

建築基準法(以下この問において「法」という。)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。ただし、用途地域以外の地域地区等の指定及び特定行政庁の許可は考慮しないものとする。

  1. 店舗の用途に供する建築物で当該用途に供する部分の床面積の合計が20,000㎡であるものは、準工業地域においては建築することができるが、工業地域においては建築することができない。
  2. 第一種住居地域において、カラオケボックスで当該用途に供する部分の床面積の合計が500㎡であるものは建築することができる。
  3. 建築物が第一種中高層住居専用地域と第二種住居地域にわたる場合で、当該建築物の敷地の過半が第二種住居地域内に存するときは、当該建築物に対して法第56条第1項第3号の規定による北側高さ制限は適用されない。
  4. 第一種中高層住居専用地域において、火葬場を新築しようとする場合には、都市計画により敷地の位置が決定されていれば新築することができる。

これについて、当社の講師室では、
「正解は1、肢4は誤り」
ということについては全員一致で即座に決まりました。

しかし、
「解説は誰が書きますか?」
という話になると、みんな逃げたがる。
正確に書けば書くほど長くなるし、来年以降の試験を考える上で意味のない解説になっていきそうだからです。

そこで、必要最小限の解説を書いて試験当日の夜に発表したのですが…。

しばらくたって、リンク元を見ると、2ちゃんねるから多くのアクセスが来ています。

「ありがたいことだ」
と思いながら、2ちゃんを見ると、
「こんな解説じゃ分からん」
的に批判されていまして…

そこで、それらの批判に応える義務を、講師室が一丸となって、感じればよかったんですが、
たまたま最初に感じてしまったのが私(家坂圭一)だったので…

詳細な解説を書き始めてしまいました…

もともとは、ここでした。
■2ちゃんねる:宅建試験20年度問い21スレ

現在、上のスレは消化されてしまい、ここに続きました。
■2ちゃんねる:【宅建 20年度問21肢4正誤問題】

2スレ目も通過して、現在3スレ目が立っています。
■2ちゃんねる:【宅建 20年度問21肢4正誤問題 2】

さて、それでは解説を始めましょう。

2.問題文ただし書きの読み方

ただし、用途地域以外の地域地区等の指定及び特定行政庁の許可は考慮しないものとする。

このただし書きの読み方が混乱を呼んでいるようです。
しかし、これについては、以下の図のようにしか理解のしようがありません。
(他の解釈の不当性についても説明したいのですが、ごめんなさい、その解釈自体が理解できないでいます。)

(1)「用途地域以外の地域地区等の指定」は考慮しない

  1. 用途地域については問題文に書いてあることを前提とする
  2. その他の地域地区等の指定は考えない

という意味です。

2について説明します。
これは、
「問題文に書いていない地域地区等の指定については考えてはいけない」
「ないものとして検討せよ」
という意味です。
図で描けば、こんな感じになります。

以上を逆からいうと、
「もしここに◯◯地域の指定があったとすれば、この記述は正しい(誤り)になる」
というような付け加えをしてはいけないことになります。

具体的にはこういうことです。
たとえば、本問に
(問題文には記載がないが実は)「都市再生特別地区の指定を受けていた」
という要件を付け加えたとしましょう(法60条の2)。

そうすると、用途制限(法48条)や建築物の高さ制限(法56条)は適用されないことになります(法60条の2第3項・第5項)。

だとすれば、
肢1=×
肢2=◯
肢3=◯
と解釈する余地が出てきてしまい、問題が成立しません。
(付け加える地域地区によって、正答が変化し一定しません。)

そこで、問題を解く前提として、
「用途地域については問題の記載にしたがって考えるが、その他の地域地区等の指定はないものとして考えよ」
という決めを作っているのです。

 

 

 

   
「 開発整備促進区は、地域地区等に含まれるか」という質問が多数ありましたので、末尾に「補」を設けて説明することにしました。
(08/11/03。11/7に少々補充)

 

 

 

 

 

 

(2)「特定行政庁の許可」は考慮しない

これは用途制限の問題で、過去にも頻出の言い回しです。
直近の使用例として、以下の過去問を挙げておきましょう。

  1. 【宅建過去問】(平成19年問22)用途制限(建築基準法)
  2. 【宅建過去問】(平成14年問20)用途制限(建築基準法)
  3. 【宅建過去問】(平成12年問23)用途制限(建築基準法)

「特定行政庁の許可は考慮しない」という条件が明示される理由は以下の通りです。

用途制限に関する法48条は

  1. 本文で建築可能なものの原則を示す
  2. しかし、それ以外でも特定行政庁の許可を得れば建築可能(ただし書き)

という構造になっています。

したがって、
「特定行政庁の許可が得られた」
ことを付け加えて考えるとすると、正答が一つには決まらなくなってしまいます。

たとえば、本問に
「特定行政庁の許可が得られた」
という要件を付け加えたとしましょう。

だとすれば、
肢1=×
と解釈する余地が出てきます。
これでは正解が一つに決まらず、問題が成立しません。

そこで、問題を解く前提として、
「原則(法48条各項の本文)どおりに答えなさい。特定行政庁の許可が必要なもの(各ただし書き)は無視しなさい。許可がなくてもできるものを答えなさい。」
という決めを作っているのです。

(3)まとめ

以上より、本問は以下の前提の下で解いていくことになります。

  1. 問題文に書かれている用途地域については考慮するが、それ以外の地域地区等の指定は存在しない。
  2. 特定行政庁の許可が得られれば、原則的にはできないことも可能になるのだけれども、そういう許可は存在しない。

したがって、本肢を正確に書けば、以下のようになります。

以下がいよいよ本論です。

3.敷地の位置決定(建築基準法51条)の問題

51条(卸売市場等の用途に供する特殊建築物の位置)
都市計画区域内においては、卸売市場、火葬場又はと畜場、汚物処理場、ごみ焼却場その他政令で定める処理施設の用途に供する建築物は、都市計画においてその敷地の位置が決定しているものでなければ、新築し、又は増築してはならない。ただし、特定行政庁が都道府県都市計画審議会(その敷地の位置を都市計画に定めるべき者が市町村であり、かつ、その敷地が所在する市町村に市町村都市計画審議会が置かれている場合にあつては、当該市町村都市計画審議会)の議を経てその敷地の位置が都市計画上支障がないと認めて許可した場合又は政令で定める規模の範囲内において新築し、若しくは増築する場合においては、この限りでない。

(1)51条本文について

法51条本文につき、本肢で必要な部分のみを抜粋して整理すると、以下のようになります。

火葬場は、都市計画においてその敷地の位置が決定しているものでなければ、新築してはならない。

つまり、この条文は、
「敷地の位置が決定していなければ」→「新築してはならない」
という構造になっています。

一部の見解は、この条文を
「敷地の位置が決定していれば」→「新築することができる」
と理解しているようです。
つまり、火葬場の新築の可否については、都市計画による敷地の位置決定が唯一絶対の要件であり、その他の要件を考慮する必要はないと考えるのです。
しかし、この見解は誤りといわざるを得ません。

以下、理由を述べます。まずは図をご覧下さい。

条文の記述方法は、上の図式です。
本肢の記述方法は、下の図式です。
ここで「上の図式が正しいなら、下の図式も必ず正しい」と言えればいいのですが、それは無理です。

身近な例に置き換えてみましょう。
例えば、こういう話だったら分かりやすいのではないでしょうか。
「宅建試験を受験しないと」→「合格することができない」
この記述は明らかに正しい!!
受験もしないのに合格できる人がいるのなら、真面目に勉強している人はアホらしい限りです。

しかし、この記述を下のように変えたとき、それでも正しいと言えるでしょうか。
「宅建試験を受験すれば」→「合格することができる」
15%前後の合格率しかない宅建試験、残念ながら85%の人は涙を飲んでしまうのですから、この変更後の記述は必ずしも正しいとはいえません。

51条本文の記述と本肢の問題文の間でも、これと同様のことがいえます。
つまり、51条本文があるからといって、
「敷地の位置が決定していれば」→「新築することができる」
ということにはなりません。
他に充たすべき要件がある場合には、その要件をも充たさない限り、新築することはできない。これが論理的な帰結ということになります。

当サイトの解説で、また他社さんの解説でも、
「必要条件ではあるが十分条件ではない」
という言い回しが現れますが、その意味を正確に説明すると以上のようになります。

※論理学の言葉でいえば、
「命題が真だからといって、その裏が真であるとは限らない」
ということです。

(2)51条ただし書き

51条ただし書きに「特定行政庁の…許可」という言葉が出てくるので、混乱している方がいるようです。

しかし、本肢は、
「都市計画により敷地の位置が決定されていれば
ときいています。
つまり、51条本文に該当することが明示されているわけです。

本文に該当している以上、ただし書きについて検討する必要はありません。
本肢に関しては、
「51条ただし書きは無関係」
ということになります。

(3)51条についてのまとめ

さて、ここまでで、

  1. 51条本文が存在するからといって、敷地の位置決定→即→新築可能とはならないこと(必要条件に過ぎず十分条件ではないこと)
  2. 他の要件が存在するのであればそれを検討すべきこと
  3. 51条ただし書きは無視すべきこと

が分かりました。

それでは、新築が可能となるために、充たさなければならない他の要件とは何なのでしょうか。
これが次のテーマです。

4.用途制限(48条)の問題

(1)51条と48条の関係

(i).論理的に考えると

上述の通り、法51条による「敷地の位置の決定」を受けていることは、火葬場が新築できるための必要条件に過ぎません。
これが、必要十分条件でない以上、その他の要件をも検討しなければならないことは必然であると考えます。

ここに法48条(用途制限)は、検討すべき他の要件に含まれると考えます。
なぜなら、別個の趣旨の下に制定された2つの条文があり、一方(51条)が他方(48条)を排除していない以上、双方を充たさなければいけないと考えるからです。

※そうでないなら、先に例としてあげた「都市再生特別地区」(法60条の2)の場合のように、他方の条文の適用が排除されることが示さなければならないでしょう。

(法60条の2第3項)
都市再生特別地区に関する都市計画において定められた誘導すべき用途に供する建築物については、第48条から第19条の2までの規定は、適用しない

(ii).昭和39年住指発第160号の存在意義

以上の考察は、条文の優劣関係を論理的に考察した結果導き出されたものです。

一部の見解では昭和39年住指発第160号が例規として存在していることを根拠として、同様の結論を導出しています。
本稿での考察は、この解釈例規(通達の一種)と結論的には同じです。

しかし、この解釈例規が存在しなければ、法51条と48条の関係に結論が出せないわけではありません。
ましてや、
「本肢はこの解釈例規の存在を前提としている」
とか、
「この例規を知らないと本肢の答えが出ない」
というわけではありません。

したがって、
「通達に法的拘束力があるのか」(行政法の分野です)
とか
「宅建の試験では通達まで知らなければ解けないのか」
という一部の議論は、考える必要のない論点だと思います。

昭和39年住指発第160号
法第54条[改正法第51条]ただし書による許可と法第49条[改正法第48条]各項ただし書による許可との関係

(照会)
建築基準法第54条に規定する特殊建築物で、その敷地の位置が都市計画の施設として決定されていないものの新築にあたつてその一部に法第49条各項本文に抵触する部分がある場合は、法第54条ただし書による許可のみならず法第49条各項ただし書による許可をも必要とするか、また、法第54条ただし書の政令で定める範囲内の規定で新築または増築する場合はどうか。
(回答)
建築基準法第54条列記の建築物は、同条本文又はただし書により新築、増築できる場合でも、その建築物が法第49条各項本文に抵触するときは、同条各項ただし書による許可をも必要とする。
したがつて、貴質疑に係る場合はいずれも法第49条各項ただし書による許可が必要と解する。

(iii).まとめ(法51条と48条の関係)

法51条が必要条件に過ぎない以上、例規の存在の有無とは無関係に、他の条件を検討しなければならないことになります。
本問では、用途制限(法48条)こそが、考慮すべき他の条件なのです。

(2)第一種中高層住居専用地域における用途制限の定め方

第一種中高層住居専用地域において、用途制限の規定は、
建築することができる建築物を列挙する
という方法で定められています(法別表第二(は)項)。
いわゆるポジティブ・リスト方式です。

したがって、ここでは、
「火葬場がポジティブ・リストに含まれるのか」
を検討しなければなりません。

(3)「火葬場」の取り扱い

第一種中高層住居専用地域で(特定行政庁の許可なしに)建築することができるもののリストは、以下の通りです(法別表第二(は)項)。

(は) 第一種中高層住居専用地域内に建築することができる建築物

一 (い)項第一号から第九号までに掲げるもの
二 大学、高等専門学校、専修学校その他これらに類するもの
三 病院
四 老人福祉センター、児童厚生施設その他これらに類するもの
五 店舗、飲食店その他これらに類する用途に供するもののうち政令で定めるものでその用途に供する部分の床面積の合計が五百平方メートル以内のもの(三階以上の部分をその用途に供するものを除く。)
六 自動車車庫で床面積の合計が三百平方メートル以内のもの又は都市計画として決定されたもの(三階以上の部分をその用途に供するものを除く。)
七 公益上必要な一定の建築物で政令で定めるもの
八 前各号の建築物に附属するもの(政令で定めるものを除く。)

第一号で(い)項(第一種低層住居専用地域に関する規定)を引いているので、これも挙げておきましょう。

(い) 第一種低層住居専用地域内に建築することができる建築物

一 住宅
二 住宅で事務所、店舗その他これらに類する用途を兼ねるもののうち政令で定めるもの
三 共同住宅、寄宿舎又は下宿
四 学校(大学、高等専門学校、専修学校及び各種学校を除く。)、図書館その他これらに類するもの
五 神社、寺院、教会その他これらに類するもの
六 老人ホーム、保育所、身体障害者福祉ホームその他これらに類するもの
七 公衆浴場(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和二十三年法律第百二十二号)第二条第六項第一号に該当する営業(以下この表において「個室付浴場業」という。)に係るものを除く。)
八 診療所
九 巡査派出所、公衆電話所その他これらに類する政令で定める公益上必要な一定の建築物
十 前各号の建築物に附属するもの(政令で定めるものを除く。)

また、(は)項第七号に基づく政令はこのようなものです。

第130条の5の4(第一種中高層住居専用地域内に建築することができる公益上必要な一定の建築物)

法別表第二(は)項第七号(法第八十七条第二項 又は第三項 において法第四十八条第三項 の規定を準用する場合を含む。)の規定により政令で定める建築物は、次に掲げるものとする。

一  税務署、警察署、保健所、消防署その他これらに類するもの
(法別表第二(い)項第九号に掲げるもの及び五階以上の部分をこれらの用途に供するものを除く。)
二  第百三十条の四第五号イからハまでの一に掲げる施設である建築物で国土交通大臣が指定するもの(法別表第二(い)項第九号に掲げるもの及び五階以上の部分をこれらの用途に供するものを除く。)

以上を見た結果、火葬場が該当するかどうかを検討する必要があるのは、以下の2つくらいです。

  1. 神社、寺院、教会その他これらに類するもの
  2. 税務署、警察署、保健所、消防署その他これらに類するもの

以下、それぞれについて考えます。

(4)具体的検討

(i).「神社、寺院、教会その他これらに類するもの」にあたるか

火葬場は「神社、寺院、教会その他これらに類するもの」に該当するとして特定行政庁の許可が不要だと考える方がいるようです。
しかし、これはちょっと無理ではないでしょうか?

「神社、寺院、教会」は宗教施設です。
だからといって、「これらに類するもの」の中にあらゆる宗教的な施設を含めてることができるわけではありません。

ここに掲げられた「神社、寺院、教会」は、宗教的な施設のうち、「特定の宗教・宗派の氏子や檀家や信者が集まって宗教的な儀式を行う常設の場所」といった共通点を持っています。
しかし、火葬場はそうではありません。
確かに、お弔いという宗教的なプロセスの一環に火葬場があるわけですが、大抵の火葬場は特定の宗教・宗派のためのものではありません。また、火葬の間だけ火葬場に行くだけで、終わってしまえば火葬場に行く機会はなくなります(火葬場で例大祭や三回忌やミサはやりませんよね)。
したがって、神社・寺院・教会と火葬場はかなり性質が異なり、類していないことがわかります。

また、同じ法律(建築基準法)の中で火葬場という語の使い方が不統一である、というのも考えにくいことです。
法2条2号及び51条では火葬場という言葉を使っているのですから、(建築可能だとしたいのであれば)別表でも火葬場について正面から規定すればいいことです。
一つの法律のある箇所では火葬場と明記し、別の箇所では「類するもの」に含まれると解釈するというのは、ちょっとイレギュラーです。

(ii).「公益上必要な一定の建築物で政令で定めるもの」にあたるか

この言葉の解釈でも混乱している人がいます。

火葬場が公益上必要なことはいうまでもありません。しかし、ここではそういうことをいっているわけではありません。
また、何らかの政令に火葬場という言葉が出てくるからといって、ここでいう「政令で定めるもの」に該当するわけでもありません。

ここでいう「公益上必要な一定の建築物で政令で定めるもの」について、見るべき政令は建築基準法施行令第130条の5の4だけです。
そして、この政令で具体的に定められているのは以下のものです。

税務署、警察署、保健所、消防署その他これらに類するもの

この「これらに類するもの」に火葬場が含まれるという解釈は・・・ムリですよね。

5.全体のまとめ

(1)本稿のロジックと結論

以上書いてきたことをまとめると、こんな風にまとめることができます。

第一種中高層住居専用地域において、火葬場を新築するためには、

  1. 法51条に基づき都市計画により敷地の位置決定がなされていることが必要条件である。
    (そして、その要件は本問では充たされている) 
  2. しかし、法51条は十分条件ではなく、他に必要な要件があればそれも充たさなければならない。
  3. 具体的には用途制限(法48条)がそれであり、用途制限をクリアしない限り、火葬場の新築は不可能である。
  4. 第一種中高層住居専用地域において、火葬場は、特定行政庁の許可なくして建築できるリストに含まれない。

したがって、本問の前提(特定行政庁の許可は考慮しない)の下では、火葬場の新築は不可能である。ゆえに、
「火葬場を新築しようとする場合には、都市計画により敷地の位置が決定されていれば新築することができる」
とする肢4は誤り。

(2)反論のためのヒント

本稿と別の結論を導くためには、以下3つのうち、いずれか一つを論証しなければならないことになると思います。

  1. 法51条は単に必要条件でなく、必要十分条件である。
  2. (1でないとしても)法51条の要件が充たされれば、法48条の用途制限は適用されない。
  3. 用途制限は適用されるが、火葬場は特定行政庁の許可がなくても新築可能である。

図で示せば、以下のようになります。

(3)とりあえず暫定版で

とりあえず、このくらいのところまでまとめました。
まだまだ論争は続きそうなので、本稿は暫定版ということにさせて下さい。

したがって、異論反論は大歓迎です。
コメント・トラックバックでドンドンどうぞ。
2ちゃんは常時見ているわけではないので、そちらでの発言につきましては、
「気付かなかったらゴメンナサイ」
というしかありません。

補1.「開発整備促進区」の扱いに関する見解

コメントで頂いた質問のうち、以下のものについては他にも複数の方からご質問をいただいています。
文章だけでは説明が難しいので、ここで図を使って説明します。

(1)質問の内容

平成19年都市計画法及び建築基準法の一部が改正され、工業地域での大規模集客施設については、建築基準法48条では原則建築することはできないが、 68条の3において都市計画法に規定する地区計画のうち開発整備促進区で地区整備計画が定められているものの区域については、48条11項を適用しないこ ととされ、建築できることになった。
「地区計画のうち開発整備促進区で地区整備計画が定められているもの」は問題文のただし書きでいう「用途地域以外の地域地区等の指定」には当たらないものと考えられ、前述の「地区整備計画の策定」を考慮すれば、「工業地域においては建築することができない」とは断定できないことになるのではないでしょう か。
とすれば、肢1は×と言うことになるのではないでしょうか。

代表的なものとしてコメントで頂いた質問を挙げます。
ポイントは、「地区計画のうち開発整備促進区で地区整備計画が定められているもの」は問題文のただし書きでいう「用途地域以外の地域地区等の指定」には当たらないものと考えられるかどうか、というところです。

(2)問題文ただし書きの分析

問題文ただし書きの
「用途地域以外の地域地区等の指定」は考慮しない
について考えます。

地域地区については、都市計画法4条3項に定義があり、8条1項各号に掲げる地域、地区又は街区を指すことになっています。
しかし、本問問題文のただし書きにあるのは「地区計画」です。
この、「等」の部分にどの程度の内容が含まれているか、について法律上の定義はありません。
逆に言えば、「等以外の部分」(本問において考慮することが許される)に何が含まれるかについても確定することはできません。

(3)質問の見解

質問された方のご見解は、
地区計画で定めるもののうち、『開発整備促進区』は地域地区等に該当しない
→したがって、考慮することが許される
(上図のピンク部分)

というものです。

つまり、本肢が以下のような問題であるとして解こうというのです。

店舗の用途に供する建築物で当該用途に供する部分の床面積の合計が20,000?であるものは、準工業地域においては建築することができるが、工業地域(開発整備促進区内であり地区整備計画が定められている)においては建築することができない。

このように考えれば、肢1は確かに×(誤り)です。
一方、この()部分を外して考えれば◯(正しい)ことになります。

それでは、どちらの解き方をすべきなのでしょうか?

質問では、地区計画で定めるもののうち、『開発整備促進区』以外のものについてのご見解は明らかではありませんが、
他の方の質問ともあわせると、『開発整備促進区』だけが例外という考え方が多いようです。

まずは、この考え方からスタートしましょう。
図でいえば、このようになります。
※以下、すべての図において、肢4の存在は無視しています。

(4)特別扱いの疑問

地区計画で定めることのできる内容は、別に「開発整備促進区」に限定されません。
用途制限、斜線制限、容積率…その他多彩な内容を定めることが可能です。
そもそも地区計画は、都市計画につき多彩な内容を定めることができることを目的に拡充されたシステムなのですから。

これら多彩な内容のうち、

  1. 「開発整備促進区」だけを特別扱いし、
  2. これに限っては、本問の「地域地区等以外」であり、本問で考慮可能とし、
  3. 他の内容は「地域地区等」に該当するとし、本問で考慮しない要素にする

という理屈に何の根拠があるのか、私には分かりません。
根拠のない特別扱いを止めて、地域計画の地区について、内容を問わず扱いを統一することにしましょう。

(5)「考慮する」に統一した場合

統一といっても、

  1. 地区計画の区域は地域地区等の指定に当たらない(本問で考慮可能)
  2. 地区計画等の指定に当たる(本問で考慮禁止)

の2つの方向での統一が考えられます。

まずは、ご質問の見解にしたがい、
「地域地区等の指定には当たらない」
の方向に統一してみます。
つまり、
「地区計画の区域における定めは地域地区等の指定には当たらない」
=本問で考慮して構わない
と仮定してみます。

しかし、そのように考えるとすれば、
肢1=×
となるのみでなく、
肢2=◯
肢3=◯
という考え方もありえることになり、問題自体が不成立になるのではないでしょうか。

まずは、この考え方のイメージ図を示し、次にそれぞれの選択肢について述べます。

(i)肢2が「正しい」に?

地区計画で定めることにより建基法48条の用途制限を緩和することが可能です(建基法68条の2第5項)。
現在の仮定に従えば、このような定めのある地区計画の区域は「用途地域以外の地域地区等」に該当しない、つまり本問で存在を考慮していいことになります。
だとすれば、肢2は以下のように変貌します。
肢2は◯(正しい)と考えることもできませんか?

第一種住居地域であって、地区計画によりカラオケボックスが面積を問わず建築可能であると定められた区域において、カラオケボックスで当該用途に供する部分の床面積の合計が500?であるものは建築することができる。

【理由】

  1. 地区計画により用途制限を緩和し、「第一種住居地域でカラオケボックス(面積不問)が建築できる」ように定めたとする。
  2. このような地区計画の区域があったとしても、それは「考慮しない」とされる「用途地域以外の地域地区等」ではないのだから、本問で考慮していいのだ。
  3. だとすれば、このような地区では、床面積500?のカラオケボックスが建築可能である。
  4. 「できる」とする肢2は◯(正しい)。
(ii)肢3も「正しい」に?

建築基準法68条の5の5を利用すれば、地区計画の区域に斜線制限(建基法56条1項3号)が適用されない区域を設定することができます。
現在の仮定に従えば、このような定めのある地区計画の区域は「用途地域以外の地域地区等」に該当しない、つまり本問で存在を考慮していいことになります。
だとすれば、肢3は以下のように変貌します。
肢3は◯(正しい)と考えることもできませんか?

建築物が第一種中高層住居専用地域(地区計画により斜線制限が適用されない区域に指定されている。)と第二種住居地域にわたる場合で、当該建築物の敷地の過半が第二種住居地域内に存するときは、当該建築物に対して法第56条第1項第3号の規定による北側高さ制限は適用されない。

【理由】

  1. 地区計画により、「一中高の建築物に北側斜線制限が適用されない」ように定めたとする。
  2. このような地区計画の区域があったとしても、それは「考慮しない」とされる「用途地域以外の地域地区等」ではないのだから、本問で考慮していいのだ。
  3. 二種住居の建築物にはそもそも北側斜線制限が適用されない
  4. したがって、両者にまたがった建築物があったとしても、全体に対して斜線制限は適用されない。
  5. 「北側高さ制限は適用されない。 」のだから◯(正しい)。
(iii)まとめ

こんなに結論(◯×)がフラフラするような仮定を正しいとすることには大きな問題があります。
ここで、「だから没問(複数正解」と言うのはカンタンなこと。
しかし、間違えた仮定の下で間違えた結論が出たからといって、それを出題者のせいにするのは早計です。

もう一方の仮定について検討してみることが先決となります。

(6)「考慮しない」に統一した場合

もう一方の仮定、つまり、
「地区計画の区域における定めは地域地区等の指定に当たる」
=本問で考慮してはならない
と仮定してみます。

そうすると、
肢1=◯
肢2&3=×
という結論が素直に出てきます。

わざわざ正解が決まらないような仮定を置くよりも、素直に正解が決まる解釈をするのが、宅建に限らず試験におけるセオリーではないでしょうか。
(こういう言い方をすると某所で批判されそうですが)
しかも、この解釈によりどれかの選択肢が△(◯とも×とも決まらない灰色状態)になるわけでもありません。
答え(◯)は一つに決まるのです。

(7)まとめ

  1. 『開発整備促進区』は「用途地域以外の地域地区等」に該当しない(本問で考慮可能)
    と仮定し、それだけを特別扱いする理由が存在しないと考えると、 
  2. 地区計画の区域における定めの全般が「用途地域以外の地域地区等」に該当しない(本問で考慮可能)
    とせざるを得ません。 
  3. しかし、それでは、
    それぞれの正解肢の◯×を特定することができません。 
  4. 「正解が1つに決まる」ことは試験の大前提です。
  5. だとすれば、
    1)の仮定自体が誤りと考えるしかありません。

つまり、

  1. 「開発整備促進区」が「用途地域以外の地域地区等」に該当しない、とするのは誤り。
  2. それ以外の「地区計画による定めのある区域」が「用途地域以外の地域地区等」に該当しない、とするのも誤り。
  3. 地区計画の区域で何を定めようと、それは地域地区『等』に該当する、が正解。
  4. したがって、本問では地区計画について一切考慮しない。
  5. さらにいえば、「各選択肢に明示された用途地域の指定以外は、一切考慮しない」

というのが自然で素直な解釈ではないでしょうか?

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