【宅建過去問】(平成01年問13)借地借家法(借家)

Aは、その所有する建物をBに賃貸した。この場合、借地借家法の規定によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。

  1. Aがその建物を第三者Cに譲渡し、所有権の移転登記がされた場合でも、その登記前にBがAから建物の引渡しを受けていれば、Bは、Cに対して賃借権を対抗することができる。
  2. Bが建物を第三者Cに転貸する場合、Aの承諾を得る必要があるが、Aが承諾を与えないときは、Bは、Aの承諾に代わる許可の裁判を裁判所に対して申し立てることができる。
  3. Aは、賃貸借契約の更新について、建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情等を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、これを拒むことはできない。
  4. Aが賃貸借期間満了の1年前から6月前までの間にBに対して更新拒絶の通知をしないときは、前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされる。

正解:2

1 正しい

建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる(借地借家法31条1項)。

■参照項目&類似過去問
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建物賃貸借の対抗力(借地借家法[06]1)
年-問-肢内容正誤
1R04-12-2Aは、B所有の甲建物につき、賃貸借契約をBと締結してその日に引渡しを受けた。本件契約が借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借契約であるか否かにかかわらず、Aは、甲建物の引渡しを受けてから1年後に甲建物をBから購入したCに対して、賃借人であることを主張できる。
2R02-12-1AとBとの間でA所有の甲建物をBに対して、居住の用を目的として、期間2年、賃料月額10万円で賃貸する旨の賃貸借契約を締結し、Bが甲建物の引渡しを受けた。AがCに甲建物を売却した場合、Bは、それまでに契約期間中の賃料全額をAに前払いしていたことを、Cに対抗することができる。
3H27-11-3[AがBとの間で、A所有の甲建物について、期間3年、賃料月額10万円と定めた賃貸借契約を締結]Cが、AB間の賃貸借契約締結前に、Aと甲建物の賃貸借契約を締結していた場合、AがBに甲建物を引き渡しても、Cは、甲建物の賃借権をBに対抗することができる。×
4H27-12-1賃借権の登記をしない限り賃借人は賃借権を第三者に対抗することができない旨の特約を定めた場合、定期借家契約においても、普通借家契約においても、当該特約は無効である。
5H22-12-1建物の引渡しを受けていれば、賃借権を対抗可能。
6H21-12-3引渡しを受けている場合、建物の賃借権は対抗可、使用借権は対抗不可。
7H20-04-4建物の引渡しを受けていれば、賃借権を対抗可能。
8H19-14-4登記も引渡しもない場合、定期建物賃借権は対抗不可、一時使用賃借権は対抗可能。×
9H18-14-2建物の引渡しを受けていれば、賃借権を対抗可能。
10H12-12-1賃貸人の承諾を得て転借人に占有させている場合、賃借人は賃借権を対抗不可。×
11H02-13-1引渡しを受けていないと、常に、賃借権を対抗不可。×
12H01-13-1建物の引渡しを受けていれば、建物所有権が移転しても、新所有者に賃借権を対抗可能。

2 誤り

借家の転貸借に関しては、裁判所の代諾許可の制度はない。
借地の転貸借に関しては、代諾許可の制度が存在する(借地借家法19条1項)。

■参照項目&類似過去問
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建物賃借権の譲渡・転貸の許可(借地借家法)
年-問-肢内容正誤
1H12-12-2借家人が建物を第三者に転貸しようとする場合に、その転貸により建物所有者に不利となるおそれがないにもかかわらず、承諾を与えないときは、裁判所は、借家人の申立てにより、建物所有者の承諾に代わる許可を与えることができる。×
2H01-13-2借家人が建物を第三者に転貸する場合、建物所有者の承諾を得る必要があるが、建物所有者が承諾を与えないときは、借家人は、建物所有者の承諾に代わる許可の裁判を裁判所に対して申し立てることができる。×
▲関連過去問
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借地権譲渡・転貸の許可(借地借家法[03]3)
年-問-肢内容正誤
1H23-11-3借地権譲渡・転貸の許可は、建物を譲り受けた第三者が申立て可能。×
2H17-13-2借地権譲渡・転貸の許可は、借地権者が申立て可能。
3H15-13-3借地権譲渡・転貸の許可は、借地権者が申立て可能。
4H09-11-4借地権譲渡・転貸の許可は、建物を譲り受けた第三者が申立て可能。×
5H06-11-1借地権譲渡・転貸の許可は、建物を譲り受けた第三者が申立て可能。×
6H03-12-2借地権譲渡・転貸には、土地所有者または裁判所の許可が必要。

3 正しい

賃貸人は、正当な事由がある場合でなければ、賃貸借契約の更新を拒絶することができない。正当な事由とは、以下のようなものである(借地借家法28条)。

  1. 建物の使用を必要とする事情、
  2. 賃貸借に関する従前の経過、
  3. 建物の利用状況
  4. 建物の現況
  5. 財産上の給付の申出(立退料)
■参照項目&類似過去問
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正当事由(借地借家法[05]2(1)(2))
年-問-肢内容正誤
1H28-12-2
建物の賃貸借契約において、賃貸人が賃借人に対し、解約を申し入れる場合、明渡しの条件として、一定額以上の財産上の給付を申し出たときは、賃貸人の解約の申入れに正当事由があるとみなされる。
×
2H21-12-2期間の定めがない場合、賃貸人は、正当事由があるときに限り、解約の申入れができる。
3H10-12-2正当事由の有無は、賃貸人・賃借人についての事情のみで決せられ、転借人の事情は考慮されない。×
4H08-12-3正当事由は、解約申入れ時に存在すれば、6月経過後に存在しなくても良い。×
5H08-12-4正当事由は、自己使用の必要性のほかに、金銭支払の申出も考慮される。
6H01-13-3正当の事由がなければ、更新を拒絶できない。

4 正しい

建物の賃貸借について期間の定めがある場合、当事者が期間の満了の1年前から6か月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされる(借地借家法26条1項)。

■参照項目&類似過去問
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建物賃貸借契約の更新等(借地借家法[05]2(1))
年-問-肢内容正誤
1R03s-12-1
本件契約に期間を2年とする旨の定めがあり、AもBも更新拒絶の通知をしなかったために本件契約が借地借家法に基づき更新される場合、更新後の期間について特段の合意がなければ、更新後の契約期間は2年となる。
×
2R01-12-3
建物の賃貸人Aが賃借人Bに対して、期間満了の3月前までに更新しない旨の通知をしなければ、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされるが、その期間は定めがないものとなる。×
3H30-12-3
[AとBとの間で、Aが所有する甲建物をBが5年間賃借する旨の契約を締結した。]AB間の賃貸借契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借でない場合、A及びBのいずれからも期間内に更新しない旨の通知又は条件変更しなければ更新しない旨の通知がなかったときは、当該賃貸借契約が更新され、その契約は期間の定めがないものとなる。
4H29-12-1
賃貸人が賃借人に対し、建物の賃貸借契約の期間満了の1年前に更新をしない旨の通知をしていれば、賃貸借契約は期間満了によって当然に終了し、更新されない。
×
5H28-12-1
賃借人も賃貸人も相手方に対し、建物賃貸借契約の期間満了前に何らの通知もしなかった場合、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされるが、その期間は定めがないものとなる。
6H27-11-1AがBとの間で、A所有の甲建物について、期間3年、賃料月額10万円と定めた賃貸借契約を締結した場合、AがBに対し、賃貸借契約の期間満了の6か月前までに更新しない旨の通知をしなかったときは、AとBは、期間3年、賃料月額10万円の条件で賃貸借契約を更新したものとみなされる 。×
7H14-14-1期間の定めのある建物賃貸借において、賃貸人が、期間満了の1年前から6月前までの間に、更新しない旨の通知を出すのを失念したときは、賃貸人に借地借家法28条に定める正当事由がある場合でも、契約は期間満了により終了しない。
8H14-14-2期間の定めのある建物賃貸借において、賃貸人が、期間満了の10月前に更新しない旨の通知を出したときで、その通知に借地借家法28条に定める正当事由がある場合は、期間満了後、賃借人が使用を継続していることについて、賃貸人が異議を述べなくても、契約は期間満了により終了する。×
9H14-14-3期間の定めのある契約が法定更新された場合、その後の契約は従前と同一条件となり、従前と同一の期間の定めのある賃貸借契約となる。×
10H10-12-1賃貸人が賃借人に対する更新拒絶の通知をしたときでも、期間満了後に転借人が建物の使用を継続し、賃貸人がこれに対して遅滞なく異議を述べないと、賃借人・賃貸人間の契約は更新される。
11H04-11-3賃貸借契約の期間が満了した場合において、賃貸人が自ら使用することを必要とする等正当の事由があるときは、賃貸人は、あらかじめ更新拒絶の通知をしなくても、賃貸借契約の更新を拒むことができる。×
12H01-13-4賃貸人が賃貸借期間満了の1年前から6月前までの間に賃借人に対して更新拒絶の通知をしないときは、前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされる。

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【宅建過去問】(平成01年問13)借地借家法(借家)” に対して6件のコメントがあります。

  1. FOD より:

    説明不足ですみません。
    平成27年問11肢1で、
    AがBに対し、賃貸借契約の期間満了の6か月前までに更新しない旨の通知をしなかったときは、AとBは、期間3年、賃料月額10万円の条件で賃貸借契約を更新したものとみなされる。
    答えは誤りで、解説に、
    建物の賃貸借について期間の定めがある場合、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされる(借地借家法26条1項本文)。ただし、契約期間は、定めがないものとされる(同項但書)。
    したがって、法定更新の後、本肢の契約は、期間の定めがなく、賃料月額10万円というものとなる。
    なので、平成01年問13肢4は契約期間の記載が無いので、同項但書については触れていないと判断しました。
    申し訳ありませんが、再度ご回答いただければ幸いです。

    1. 家坂 圭一 より:

      本問肢4に関しても、もちろん、借地借家法26条1項但書が適用されます。したがって、更新後の契約は、期間の定めがないものとされます(借地借家法26条1項但書)。
      しかし、本肢に関しては、「更新したものとみなされる」かどうかだけが問われていますから、更新後の契約の有効期間について考える必要はありません。それを考えるまでもなく、本肢は、「正しい記述」と判断することができます。

      1. FOD より:

        ご回答ありがとうございました。
        このように理解不足を補っていただけるので助かります。

        1. 家坂 圭一 より:

          わざわざ御返信ありがとうございます。
          こちらこそ解説の不備を御指摘いただき、助かっています。

          今後も疑問・質問などがあれば、遠慮なくコメントをお寄せください。
          本試験まで頑張っていきましょう!

  2. FOD より:

    肢4ですが、契約期間について触れていないので正しいという認識でよろしいでしょうか。

    1. 家坂 圭一 より:

      >契約期間について触れていないので正しいという認識でよろしいでしょうか。

      「契約期間について触れていないので正しい」とおっしゃる趣旨がよく分かりません。
      契約期間が長かろうと短かろうと、契約期間の定めのある建物賃貸借においては、期間の満了の1年前から6月前までの間に更新をしない旨の通知をしなければ、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(借地借家法26条1項)。

      基準となるのは、契約期間の長短ではなく、契約期間の定めがあるかどうか、です。
      本肢では、「賃貸借期間満了」という言葉を使っていることから、契約期間の定めがあることが分かります。したがって、借地借家法26条1項のルールが適用され、正しい記述ということになります。

      この点については、講義編の解説もぜひ御覧ください。
      ■借地借家法[05]建物賃貸借契約の更新等
      https://e-takken.tv/ss05/

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