【宅建過去問】(平成07年問08)相殺


AがBに対して 100万円の金銭債権、BがAに対して 100万円の同種の債権を有する場合の相殺(AB間に特約はないものとする。)に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1. Aの債権が時効によって消滅した後でも、時効完成前にBの債権と相殺適状にあれば、Aは、Bに対して相殺をすることができる。
  2. Aの債権について弁済期の定めがなく、Aから履行の請求がないときは、Bは、Bの債権の弁済期が到来しても、相殺をすることができない。
  3. Aの債権が、Bの悪意による不法行為によって発生したものであるときには、Bは、Bの債権をもって相殺をすることができない。
  4. CがAの債権を差し押えた後、BがAに対する債権を取得したときは、Bは、相殺をもって債権者Cに対抗することはできない。

正解:2

1 正しい

07-08-1時効消滅した債権でも、その消滅以前に相殺適状にあれば、これを自働債権として相殺することができる(民法508条)。
本肢では、Aの債権が時効消滅する前に、Bの債権と相殺適状になっていた。したがって、Aは、自らの債権が時効消滅したあとであっても、Bに対して相殺をすることができる。代金債権の時効消滅以前に、弁済期が到来している賃料債務との相殺適状が成立しているので、相殺できることになる。

■参照項目&類似過去問
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時効消滅した債権を自働債権とする相殺(民法[21]3(2))
年-問-肢内容正誤
130-09-4[Aは、平成30年10月1日、A所有の甲土地につき、Bとの間で、代金1,000万円、支払期日を同年12月1日とする売買契約を締結した。]BがAに対し同年9月30日に消滅時効の期限が到来する貸金債権を有していた場合には、Aが当該消滅時効を援用したとしても、Bは売買代金債務と当該貸金債権を対当額で相殺することができる。
×
217-04-3時効完成前に相殺適状に達していた債権を自働債権として、時効消滅後に相殺することはできない。×
316-08-3時効完成前に相殺適状に達していた債権を自働債権として、時効消滅後に相殺することはできない。×
407-08-1時効完成前に相殺適状に達していた債権を自働債権として、時効消滅後に相殺することができる。
501-02-4債権が既に時効により消滅している場合、時効完成前に相殺適状にあったとしても、その債権を自働債権として、相殺することはできない。×

2 誤り

07-08-2自働債権(BのAに対する債権)について弁済期が到来していれば、受働債権(AのBに対する債権)の弁済期が到来していなくても、相殺をすることができる。

■参照項目&類似過去問
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弁済期未到来の債権を受働債権とする相殺(民法[21]3(1))
[共通の設定]
AがBに対して貸金債権である甲債権を、BがAに対して貸金債権である乙債権をそれぞれ有している。
年-問-肢内容正誤
1R05-04-ア弁済期の定めのない甲債権と、弁済期到来前に、AがBに対して期限の利益を放棄する旨の意思表示をした乙債権とを、Aが一方的な意思表示により相殺することができる。
2R05-04-イ弁済期が到来している甲債権と、弁済期の定めのない乙債権とを、Aが一方的な意思表示により相殺することができる。
3R05-04-ウ弁済期の定めのない甲債権と、弁済期が到来している乙債権とを、Aが一方的な意思表示により相殺することができる。
4R05-04-エ弁済期が到来していない甲債権と、弁済期が到来している乙債権とを、Aが一方的な意思表示により相殺することができる。×
5H30-09-1[Aは、平成30年10月1日、A所有の甲土地につき、Bとの間で、代金1,000万円、支払期日を同年12月1日とする売買契約を締結した。]BがAに対して同年12月31日を支払期日とする貸金債権を有している場合には、Bは同年12月1日に売買代金債務と当該貸金債権を対当額で相殺することができる。
×
6H16-08-1賃貸人が支払不能に陥った場合、賃借人は、自らの敷金返還請求権を自働債権として、賃料債権と相殺することができる。×
7H07-08-2Aの債権について弁済期の定めがなく、Aから履行の請求がないときは、Bは、Bの債権の弁済期が到来しても、相殺をすることができない。×

3 正しい

07-08-3a悪意による不法行為に基づく損害賠償債権を受働債権として相殺することはできない。つまり、加害者側から相殺を主張することはできない(民法509条)。
本肢のBは、悪意による不法行為の加害者である。したがって、不法行為に基づく損害賠償請求権を受働債権として、相殺をすることは許されない。

07-08-3b※これに対し、被害者側から相殺を主張すること、つまり、不法行為による債権を自働債権として相殺することは許される。

■参照項目&類似過去問
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不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺(民法[21]4(1)民法[30]5(4)
年-問-肢内容正誤
1H30-09-3
Aは、令和XX年10月1日、A所有の甲土地につき、Bとの間で、代金1,000万円、支払期日を同年12月1日とする売買契約を締結した。同年10月10日、BがAの自動車事故によって被害を受け、Aに対して不法行為に基づく損害賠償債権を取得した場合には、Bは売買代金債務と当該損害賠償債権を対当額で相殺することができる。
2H28-09-3
買主に対して債権を有している売主は、信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった売主に対する買主の身体の侵害による損害陪償請求権を受働債権とする相殺をもって、買主に対抗することができない。
3H18-11-3Bの不法行為がAの事業の執行につき行われたものであり、Aに使用者としての損害賠償責任が発生する場合、Aが被害者に対して売買代金債権を有していれば、被害者は不法行為に基づく損害賠償債権で売買代金債務を相殺することができる。
4H16-08-2Bは、A所有の建物を賃借し、毎月末日までに翌月分の賃料50万円を支払う約定をした。BがAに対し不法行為に基づく損害賠償請求権を有した場合、Bは、このAに対する損害賠償請求権を自働債権として、弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺することはできない。×
5H07-08-3AがBに対して 100万円の金銭債権、BがAに対して 100万円の同種の債権を有している。Aの債権が、Bの悪意による不法行為によって発生したものであるときには、Bは、Bの債権をもって相殺をすることができない。
6H04-09-1不法行為の被害者は、損害賠償債権を目働債権として、加害者に対する金銭返還債務と相殺することができない。×

4 正しい

07-08-4支払の差止めを受けた第三債務者は、その後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができない(民法511条)。
本肢でいうと、支払いの差止めを受けたBは、その後に取得したAに対する債権を自働債権とする相殺を、差押えをしたCに対抗することができない。

■参照項目&類似過去問
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差押えを受けた債権を受働債権とする相殺(民法[21]4(2))
年-問-肢内容正誤
130-09-2[Aは、平成30年10月1日、A所有の甲土地につき、Bとの間で、代金1,000万円、支払期日を同年12月1日とする売買契約を締結した。]同年11月1日にAの売買代金債権がAの債権者Cにより差し押さえられても、Bは、同年11月2日から12月1日までの間にAに対する別の債権を取得した場合には、同年12月1日に売買代金債務と当該債権を対当額で相殺することができる。
×
223-06-1差押前に取得した債権を自働債権とする場合、受働債権との弁済期の先後を問わず、相殺が可能。
323-06-2抵当権者が物上代位により賃料債権を差押した後でも、抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記の後に取得した債権を自働債権として相殺の主張ができる。×
416-08-4差押前に取得した債権を自働債権とした相殺が可能。
515-05-3抵当権者が物上代位により賃料債権を差押した後は、抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記の前に取得した債権を自働債権として相殺の主張ができない。×
607-08-4差押後に取得した債権を自働債権とした相殺は不可。

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