【宅建過去問】(平成08年問40)業務上の規制
宅地建物取引業者が3,000万円の宅地の売買の媒介契約を締結しようとする場合において、当該業者が宅地の購入をしようとしている依頼者に対して行った次の説明のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、最も適切なものはどれか。
- 事務所ごとに従業者名簿を備えていますので、ご希望なら閲覧してください。今お見せした私の従業者証明書の番号も記載されています。
- 周辺の土地の価格が、最近5年間で2.5倍になっていますから、この土地の価格も今後5年間に2倍程度になることは確実です。
- 私どもへのご依頼は宅地の購入の媒介ですので、媒介契約書の作成は省略させていただきます。
- 売買契約が成立したときは、宅地を購入されたお客様から、100万円の報酬と別途消費税をいただきます。
正解:1
1 最も適切
宅建業者は事務所ごとに従業者名簿を備え付けなければならず(宅地建物取引業法48条3項)、取引の関係者から請求があったときは閲覧させなければならない(宅地建物取引業法48条4項)。本肢では、依頼者から請求を受ける前に閲覧を促しているが、これは依頼者にとって有利な扱いであり、宅建業法には違反しない。
また、従業者名簿に記載すべき事項は、
- 従業者の氏名
- 従業者証明書番号
- 生年月日
- 主たる職務内容
- 宅地建物取引士であるか否かの別
- 当該事務所の従業者となった年月日
- 当該事務所の従業者でなくなった年月日
である(宅地建物取引業法48条3項、同法施行規則17条の2第1項)。
記載事項の中に、従業者証明書の番号も含まれている。
■類似過去問
内容を見る
従業者名簿の備付け(備付場所)(宅建業法[08]4(3)①)
従業者名簿の備付け(記載事項)(宅建業法[08]4(3)②)
従業者名簿の備付け(閲覧させる義務)(宅建業法[08]4(3)④)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R02-39-3 | 宅地建物取引業者は、その事務所ごとに従業者名簿を備えなければならないが、退職した従業者に関する事項は、個人情報保護の観点から従業者名簿から消去しなければならない。 | × |
2 | 24-40-ウ | 事務所ごとに従業者名簿を備え、最終記載日から10年間保存。 | ◯ |
3 | 22-29-2 | 主たる事務所に全事務所分、従たる事務者にその事務所の従業者名簿を備えなければならない。 | × |
4 | 20-42-3 | 主たる事務所に全事務所分、従たる事務者にその事務所の従業者名簿を備えなければならない。 | × |
5 | 19-45-2 | 事務所ごとに従業者名簿を備え、関係者から請求があったときは、閲覧に供しなければならない(パソコンのハードディスクに記録し、ディスプレイ画面に表示する方法も可)。 | ◯ |
6 | 18-42-1 | 宅地建物取引業者は、その事務所ごとに従業者名簿を備えなければならず、当該名簿を最終の記載をした日から5年間保存しなければならない。 | × |
7 | 09-30-3 | 従業者名簿を事務所ごとに備え付け、主たる事務所に一括して備え付けることはしなかったとしても、宅建業法に違反しない。 | ◯ |
8 | 08-40-1 | 事務所ごとに従業者名簿を備える必要がある。 | ◯ |
9 | 07-44-3 | 本店・支店の全従業者に従業者証明書を携帯させている場合、本店以外の事務所に従業者名簿を備え、取引の関係者に閲覧させる必要はない。 | × |
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R02-39-3 | 宅地建物取引業者は、その事務所ごとに従業者名簿を備えなければならないが、退職した従業者に関する事項は、個人情報保護の観点から従業者名簿から消去しなければならない。 | × |
2 | 29-35-4 | 宅地建物取引業者は、その業務に従事する者であっても、一時的に事務の補助のために雇用した者については、従業者名簿に記載する必要がない。 | × |
3 | 26-41-4 | 退職した従業者に関する事項は従業者名簿への記載の対象ではない。 | × |
4 | 21-43-2 | 従業者名簿には、従業者の氏名・生年月日・事務所の従業者となった年月日・従業者でなくなった年月日を記載することで足りる。 | × |
5 | 12-31-4 | 従業者名簿に、従業者が宅建士であるか否かの別を記載しなかった場合、業務停止処分を受けることがあるが、罰金の刑に処せられることはない。 | × |
6 | 09-30-1 | 従業者名簿に、従業者の氏名・生年月日・主たる職務内容を記載したが、宅建士であるか否かの別は記載しなかったとしても、宅建業法に違反しない。 | × |
7 | 08-40-1 | 従業者名簿に、従業者証明書の番号を掲載することは、宅建業法上適切である。 | ◯ |
8 | 04-48-3 | 従業者名簿には、宅建士の事務禁止処分の内容も記載される。 | × |
9 | 04-48-4 | 従業者名簿に記載された従業者証明書番号は、従業証明書にも記載される。 | ◯ |
10 | 02-38-3 | 従業者名簿に、その者が宅建士であるか否かの別を記載する必要はないが、主たる職務内容を記載しなければならない。 | × |
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R02-39-1 | 宅地建物取引業者は、従業者名簿の閲覧の請求があったときは、取引の関係者か否かを問わず、請求した者の閲覧に供しなければならない。 | × |
2 | 19-45-2 | 取引関係者から請求があった場合、従業者名簿を閲覧に供しなければならないが、名簿を事務所のパソコンのハードディスクに記録し、ディスプレイの画面に表示する方法で閲覧に供することもできる。 | ◯ |
3 | 16-44-3 | 取引関係者から請求があった場合、従業者名簿を閲覧させなければならない。 | ◯ |
4 | 09-30-4 | 取引関係者が従業者名簿の閲覧を求めた場合に、秘密を守る義務を理由に断ったとしても、宅建業法に違反しない。 | × |
5 | 08-40-1 | 宅地を購入しようとしている依頼者に対し、従業者名簿を閲覧するよう促すことは、宅建業法上適切である。 | ◯ |
6 | 07-44-3 | 本店・支店の全従業者に従業者証明書を携帯させている場合、本店以外の事務所に従業者名簿を備え、取引の関係者に閲覧させる必要はない。 | × |
7 | 04-48-3 | 取引の関係者から請求があったときは、閲覧に供しなければならない。 | ◯ |
2 適切でない
宅地建物取引業者は、契約締結の勧誘に際し、相手方に対して確実に利益が生じるかのような誤解を生じさせる断定的判断を提供する行為をしてはならない(宅地建物取引業法47条の2第1項)。
本肢の「今後5年間に2倍程度になることは確実」という発言は、まさにこの断定的判断の提供行為であり、宅建業法に違反する。
■類似過去問
内容を見る
断定的判断の提供・威迫行為の禁止(宅建業法[09]7(4)①)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R01-27-エ | 宅地建物取引業者は、宅地建物取引業に係る契約の締結の勧誘をするに際し、その相手方に対し、利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供する行為をしてはならない。 | ◯ |
2 | 27-41-イ | 「弊社が数年前に分譲したマンションが、先日高値で売れました。このマンションはそれより立地条件が良く、また、近隣のマンション価格の動向から見ても、5年後値上がりするのは間違いありません。」という発言は、宅建業法に違反しない。 | × |
3 | 26-43-4 | 「近所に幹線道路の建設計画があるため、この土地は将来的に確実に値上がりする」と説明した場合、宅建業法に違反する | ◯ |
4 | 18-40-1 | 利益を生ずることが確実であると誤解させる断定的判断を提供する行為をしたが、実際に売買契約の成立には至らなかった場合、宅建業法に違反しない | × |
5 | 15-38-1 | 「2年後には価格が上昇し転売利益は確実」という発言は宅建業法に違反しない | × |
6 | 08-40-2 | 「周辺の土地の価格が、最近5年間で2.5倍になっていますから、この土地の価格も今後5年間に2倍程度になることは確実です」という発言は適切である | × |
関連過去問:威迫行為の禁止 | |||
1 | 27-43-3 | 宅建業者が契約の相手方を威迫し契約締結を強要したことが判明した場合、免許権者が情状が特に重いと判断したときは、免許を取り消さなければならない | ◯ |
3 適切でない
売買または交換に関し、媒介契約成立が成立したときには、遅滞なく媒介契約書を作成し、依頼者に交付しなければならない(宅地建物取引業法34条の2第1項)。それを省略する本肢の行為は、宅建業法に違反する。
■類似過去問
内容を見る
媒介契約(規制の対象)(宅建業法[10]1(2)①)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
貸借契約 | |||
1 | 27-28-ウ | 宅地の貸借に係る専任媒介契約には、書面交付義務あり。 | × |
2 | 15-45-3 | オフィスビルの賃貸借の媒介を依頼されたが、媒介契約書を作成・交付しなかった場合、宅建業法に違反しない。 | ◯ |
3 | 07-48-1 | 貸主から媒介の依頼を受けて承諾したが、媒介契約書を作成せず、貸主に交付しなかった。 | ◯ |
貸借契約以外 | |||
1 | 14-34-2 | 一般媒介契約では、書面交付義務なし。 | × |
2 | 08-40-3 | 宅地の購入の媒介で媒介契約書の作成を省略した場合、宅建業法に違反しない。 | × |
4 適切でない
3000万円の宅地の売買を媒介した場合に、宅建業者が受領できる報酬の限度額は、
3000万×3%+6万=96万円
である(別途消費税を受領することは可能である)。
「100万円の報酬と別途消費税」では限度額を超えており、宅建業法に違反する。
0