【宅建過去問】(平成14年問04)通行地役権
Aは、自己所有の甲土地の一部につき、通行目的で、隣地乙土地の便益に供する通行地役権設定契約(地役権の付従性について別段の定めはない。)を、乙土地所有者Bと締結した。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。
- この通行地役権の設定登記をしないまま、Aが、甲土地をCに譲渡し、所有権移転登記を経由した場合、Cは、通路として継続的に使用されていることが客観的に明らかであり、かつ、通行地役権があることを知っていたときでも、Bに対して、常にこの通行地役権を否定することができる。
- この通行地役権の設定登記を行った後、Bが、乙土地をDに譲渡し、乙土地の所有権移転登記を経由した場合、Dは、この通行地役権が自己に移転したことをAに対して主張できる。
- Bは、この通行地役権を、乙土地と分離して、単独で第三者に売却することができる。
- Bが、契約で認められた部分ではない甲土地の部分を、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができる形式で、乙土地の通行の便益のために利用していた場合でも、契約で認められていない部分については、通行地役権を時効取得することはできない。
正解:2
1 誤り
Aとの契約によって地役権を設定したBと、Aから甲土地の譲渡を受けたCとの関係は対抗関係である(民法177条)。
しかし、判例は、以下のような論理で、土地の譲受人が対抗問題における「第三者」にあたらない場合があるとしている。
したがってCは、常にBの通行地役権を否定できるわけではない。
【判例】
通行地役権の承役地(甲土地)が譲渡された場合において、譲渡の時に、右承役地が要役地(乙土地)の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、譲受人(C)がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは、譲受人は、通行地役権が設定されていることを知らなかったとしても、特段の事情がない限り、地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらないと解するのが相当である(最判平10.2.13 )。
■類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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付従性 | |||
1 | 14-04-2 | (Aは、自己所有の甲土地の一部につき、通行目的で、隣地乙土地の便益に供する通行地役権設定契約を、乙土地所有者Bと締結した。)この通行地役権の設定登記を行った後、Bが、乙土地をDに譲渡し、乙土地の所有権移転登記を経由した場合、Dは、この通行地役権が自己に移転したことをAに対して主張できる。 | ◯ |
2 | 14-04-3 | (上と同じケース)Bは、この通行地役権を、乙土地と分離して、単独で第三者に売却することができる。 | × |
時効取得 | |||
1 | 25-03-4 | 承役地の所有者が通路を開設し、要役地の所有者がその通路を利用し続けると、時効によって通行地役権を取得することがある。 | × |
2 | 22-03-4 | 継続的に行使され、外形上認識できる地役権は時効取得が可能。 | ◯ |
3 | 14-04-4 | 継続的に行使され、外形上認識できる地役権であっても時効取得は不可能。 | × |
対抗問題 | |||
1 | 14-04-1 | Aは、自己所有の甲土地の一部につき、通行目的で、隣地乙土地の便益に供する通行地役権設定契約を、乙土地所有者Bと締結した。この通行地役権の設定登記をしないまま、Aが、甲土地をCに譲渡し、所有権移転登記を経由した場合、Cは、通路として継続的に使用されていることが客観的に明らかであり、かつ、通行地役権があることを知っていたときでも、Bに対して、常にこの通行地役権を否定することができる。 | × |
2 正しい
地役権は、要役地の所有権に従たるものとして、所有権とともに移転する(民法281条1項)。
したがってDは、乙土地(要役地)の所有権移転の登記さえしておけば、地役権の移転登記をしなくとも、地役権の取得を承役地の所有者(A)に対して主張することができる(大判大13.03.17)。
■類似過去問
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付従性 | |||
1 | 14-04-2 | (Aは、自己所有の甲土地の一部につき、通行目的で、隣地乙土地の便益に供する通行地役権設定契約を、乙土地所有者Bと締結した。)この通行地役権の設定登記を行った後、Bが、乙土地をDに譲渡し、乙土地の所有権移転登記を経由した場合、Dは、この通行地役権が自己に移転したことをAに対して主張できる。 | ◯ |
2 | 14-04-3 | (上と同じケース)Bは、この通行地役権を、乙土地と分離して、単独で第三者に売却することができる。 | × |
時効取得 | |||
1 | 25-03-4 | 承役地の所有者が通路を開設し、要役地の所有者がその通路を利用し続けると、時効によって通行地役権を取得することがある。 | × |
2 | 22-03-4 | 継続的に行使され、外形上認識できる地役権は時効取得が可能。 | ◯ |
3 | 14-04-4 | 継続的に行使され、外形上認識できる地役権であっても時効取得は不可能。 | × |
対抗問題 | |||
1 | 14-04-1 | Aは、自己所有の甲土地の一部につき、通行目的で、隣地乙土地の便益に供する通行地役権設定契約を、乙土地所有者Bと締結した。この通行地役権の設定登記をしないまま、Aが、甲土地をCに譲渡し、所有権移転登記を経由した場合、Cは、通路として継続的に使用されていることが客観的に明らかであり、かつ、通行地役権があることを知っていたときでも、Bに対して、常にこの通行地役権を否定することができる。 | × |
3 誤り
通行地役権を、乙土地(要役地)と分離して譲り渡すことはできない(民法281条2項)。
■類似過去問
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付従性 | |||
1 | 14-04-2 | (Aは、自己所有の甲土地の一部につき、通行目的で、隣地乙土地の便益に供する通行地役権設定契約を、乙土地所有者Bと締結した。)この通行地役権の設定登記を行った後、Bが、乙土地をDに譲渡し、乙土地の所有権移転登記を経由した場合、Dは、この通行地役権が自己に移転したことをAに対して主張できる。 | ◯ |
2 | 14-04-3 | (上と同じケース)Bは、この通行地役権を、乙土地と分離して、単独で第三者に売却することができる。 | × |
時効取得 | |||
1 | 25-03-4 | 承役地の所有者が通路を開設し、要役地の所有者がその通路を利用し続けると、時効によって通行地役権を取得することがある。 | × |
2 | 22-03-4 | 継続的に行使され、外形上認識できる地役権は時効取得が可能。 | ◯ |
3 | 14-04-4 | 継続的に行使され、外形上認識できる地役権であっても時効取得は不可能。 | × |
対抗問題 | |||
1 | 14-04-1 | Aは、自己所有の甲土地の一部につき、通行目的で、隣地乙土地の便益に供する通行地役権設定契約を、乙土地所有者Bと締結した。この通行地役権の設定登記をしないまま、Aが、甲土地をCに譲渡し、所有権移転登記を経由した場合、Cは、通路として継続的に使用されていることが客観的に明らかであり、かつ、通行地役権があることを知っていたときでも、Bに対して、常にこの通行地役権を否定することができる。 | × |
4 誤り
地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識できるものであれば、時効によって取得することができる(民法283条)。
したがって、契約で定められていない部分についても、時効取得することができる。
■類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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付従性 | |||
1 | 14-04-2 | (Aは、自己所有の甲土地の一部につき、通行目的で、隣地乙土地の便益に供する通行地役権設定契約を、乙土地所有者Bと締結した。)この通行地役権の設定登記を行った後、Bが、乙土地をDに譲渡し、乙土地の所有権移転登記を経由した場合、Dは、この通行地役権が自己に移転したことをAに対して主張できる。 | ◯ |
2 | 14-04-3 | (上と同じケース)Bは、この通行地役権を、乙土地と分離して、単独で第三者に売却することができる。 | × |
時効取得 | |||
1 | 25-03-4 | 承役地の所有者が通路を開設し、要役地の所有者がその通路を利用し続けると、時効によって通行地役権を取得することがある。 | × |
2 | 22-03-4 | 継続的に行使され、外形上認識できる地役権は時効取得が可能。 | ◯ |
3 | 14-04-4 | 継続的に行使され、外形上認識できる地役権であっても時効取得は不可能。 | × |
対抗問題 | |||
1 | 14-04-1 | Aは、自己所有の甲土地の一部につき、通行目的で、隣地乙土地の便益に供する通行地役権設定契約を、乙土地所有者Bと締結した。この通行地役権の設定登記をしないまま、Aが、甲土地をCに譲渡し、所有権移転登記を経由した場合、Cは、通路として継続的に使用されていることが客観的に明らかであり、かつ、通行地役権があることを知っていたときでも、Bに対して、常にこの通行地役権を否定することができる。 | × |
肢1の解説ですが、したがってBは、常にCの通行地役権を否定できるわけではない。のBとCは逆ではないでしょうか。
おっしゃる通りです。
BとCが逆になっていたので、訂正しました。
御指摘ありがとうございます。