【宅建過去問】(平成15年問12)相続・対抗問題

Aが死亡し、それぞれ3分の1の相続分を持つAの子B、C及びD(他に相続人はいない。)が、全員、単純承認し、これを共同相続した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

  1. 相続財産である土地につき、遺産分割協議前に、Bが、CとDの同意なくB名義への所有権移転登記をし、これを第三者に譲渡し、所有権移転登記をしても、CとDは、自己の持分を登記なくして、その第三者に対抗できる。
  2. 相続財産である土地につき、B、C及びDが持分各3分の1の共有相続登記をした後、遺産分割協議によりBが単独所有権を取得した場合、その後にCが登記上の持分3分の1を第三者に譲渡し、所有権移転登記をしても、Bは、単独所有権を登記なくして、その第三者に対抗できる。
  3. 相続財産である金銭債権(預金返還請求権ではない。)は、遺産分割協議が成立するまでは、相続人3人の共有に属し、3人全員の同意がなければ、その債務者に弁済請求できない。
  4. Bが相続開始時に金銭を相続財産として保管している場合、CとDは、遺産分割協議の成立前でも、自己の相続分に相当する金銭を支払うよう請求できる。

正解:1

1 正しい

遺産分割協議前において、相続財産である土地のC及びDの相続分について、Bは無権利である。そのため、第三者が当該土地の登記を有していても、C及びDは、自己の持分を登記なくして、その第三者に対抗できる(最判昭38.02.22)。

■参照項目&類似過去問
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共同相続と登記(民法[07]2(4)③)
年-問-肢内容正誤
1R03s-06-4共同相続財産につき、相続人の一人から相続財産に属する不動産につき所有権の全部の譲渡を受けて移転登記を備えた第三者に対して、他の共同相続人は、自己の持分を登記なくして対抗することができる。
230-10-2相続財産に属する不動産について、遺産分割前に単独の所有権移転登記をした共同相続人から移転登記を受けた第三取得者に対し、他の共同相続人は、自己の持分を登記なくして対抗することができる。
319-06-3共同相続人の一人が単独所有権移転登記し、さらに第三者に移転登記した場合、他の共同相続人は、共同相続の登記をしなければ、第三者に対し自己の持分権を対抗できない。×
415-12-1遺産分割協議前に、共同相続人の一人が単独所有権移転登記し、第三者に譲渡、第三者が所有権移転登記をした場合、他の共同相続人は、自己の持分を登記なくして、第三者に対抗できる。
509-06-2共同相続した土地につき、遺産分割前に、共同相続人の一人が単独所有権移転登記し、第三者に譲渡、第三者が所有権移転登記をした場合、他の共同相続人は、自己の持分を登記なくして、第三者に対抗できる。

2 誤り

遺産分割協議によりBが単独所有権を取得した土地について、Cが登記上の持分を第三者に譲渡した場合、その部分の所有権について、Bとその第三者は対抗関係に立つこととなる。
したがって、Bは、登記なくして当該土地の単独所有権を、その第三者に対抗できない(最判昭46.01.26)。

■参照項目&類似過去問
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対抗問題:相続人と対抗関係(民法[07]2(4)①②)
年-問-肢内容正誤
117-08-1Aが所有地をBに譲渡した後死亡し単独相続人Cが所有権移転登記をした場合、Bは、所有権をCに対抗できない。×
217-08-2Aが所有地をBに譲渡した後死亡し単独相続人Cが所有権移転登記をした。その後、CがDに土地を売却しDがその旨登記すると、Bは、所有権をDに対抗できない。
315-12-2相続財産である土地につき、B、C及びDが持分各3分の1の共有相続登記をした後、遺産分割協議によりBが単独所有権を取得した場合、その後にCが登記上の持分3分の1を第三者に譲渡し、所有権移転登記をしても、Bは、単独所有権を登記なくして、その第三者に対抗できる。×
410-01-4Aから土地を取得したBは、Bが当該土地を取得した後で、移転登記を受ける前に、Aが死亡した場合におけるAの相続人に対し、所有権を主張できない。×
508-03-2売主が買主への所有権移転登記を完了する前に死亡した場合、買主は、売主の相続人に対して所有権の移転を主張することができる。

3 誤り

相続財産である金銭債権は、相続により可分債権となる(最判昭29.04.08)。したがって、遺産分割協議が成立していなくても、各相続人は相続分に応じて債務者に弁済請求できる。

※預貯金債権は、遺産分割の対象となる(最大決平28.12.19)。相続開始と同時に当然に分割されるわけではない。

■参照項目&類似過去問
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遺産分割(民法[31]5)
年-問-肢内容正誤
(1)①共同相続の効力
1R05-01-2相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属し、各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
2H11-03-1相続開始時に相続人が数人あるとき、遺産としての不動産は、相続人全員の共有に属する。
3H07-11-3共同相続人の一人は、他の共同相続人の同意を得なければ、自己の相続分を譲渡できない。×
(1)②遺産分割の対象
1R05-01-1遺産である不動産から、相続開始から遺産分割までの間に生じた賃料債権は、遺産である不動産が遺産分割によって複数の相続人のうちの一人に帰属することとなった場合、当該不動産が帰属することになった相続人が相続開始時にさかのぼって取得する。×
2R05-01-4遺産である不動産が遺産分割によって複数の相続人のうちの一人に帰属することとなった場合、当該不動産から遺産分割後に生じた賃料債権は、遺産分割によって当該不動産が帰属した相続人が取得する。
3R01-06-3遺産に属する預貯金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割され、共同相続人は、その持分に応じて、単独で預貯金債権に関する権利を行使することができる。×
4H29-06-3(Aが死亡し、相続人がBとCの2名であった。)遺産分割協議が成立するまでの間に遺産である不動産から賃料債権が生じていて、BとCがその相続分に応じて当該賃料債権を分割単独債権として確定的に取得している場合、遺産分割協議で当該不動産をBが取得することになっても、Cが既に取得した賃料債権につき清算する必要はない。
5H15-12-3相続財産である金銭債権(預金返還請求権ではない。)は、遺産分割協議が成立するまでは、相続人の共有に属し、相続人全員の同意がなければ、その債務者に弁済請求できない。×
6H15-12-4共同相続人の一人が相続開始時に金銭を相続財産として保管している場合、他の相続人は、遺産分割協議の成立前でも、自己の相続分に相当する金銭を支払うよう請求できる。×
(2)①指定分割
1R01-06-1被相続人は、遺言によって遺産分割を禁止することはできず、共同相続人は、遺産分割協議によって遺産の全部又は一部の分割をすることができる。×
2H11-03-2被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定めることができ、また相続開始の時から5年を超えない期間内で遺産の分割を禁ずることもできる。
3H18-12-3被相続人Aが、相続人BCのうちのBに特定遺産を相続させる旨の遺言をして死亡し、特定遺産以外の相続財産についての遺産分割協議の成立前にBがCの同意なく特定遺産を第三者に売却した場合、CはBD間の売買契約を無権代理行為に準じて取り消すことができる。×
(2)②協議分割
1R01-06-2共同相続人は、既に成立している遺産分割協議につき、その全部又は一部を全員の合意により解除した上、改めて遺産分割協議を成立させることができる。
2H29-06-2(Aが死亡し、相続人がBとCの2名であった。)Aの死亡後、いずれもAの子であるBとCとの間の遺産分割協議が成立しないうちにBが死亡したときは、Bに配偶者Dと子Eがいる場合であっても、Aの遺産分割についてはEが代襲相続人として分割協議を行う。×
3H18-12-4B及びCの協議により甲土地をBが取得する旨の遺産分割協議を有効に成立させた場合、後にB及びCの合意があっても、甲土地をCが取得する旨の遺産分割協議を成立させることはできない。×
4H07-11-4遺産分割協議の結論は、相続人の多数決によって決する。×
(2)③家庭裁判所による分割
1H11-03-3遺産の分割について共同相続人間に協議が調わないとき、各共同相続人は、その分割を、相続開始地の地方裁判所に請求することができる。×
(3)効果
1R05-01-3遺産分割の効力は、相続開始の時にさかのぼって生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2R01-06-4遺産の分割は、共同相続人の遺産分割協議が成立した時から効力を生ずるが、第三者の権利を害することはできない。×
3H11-03-4遺産分割の効力は、第三者の権利を害しない範囲で、相続開始の時にさかのぼって生ずる。
(4)債務の相続
1H23-10-3共同相続人のうち、被相続人の唯一の資産を相続するものは、被相続人の債務のすべてを相続する。×
2H19-12-3相続人が単純承認した場合、被相続人の債務も、相続人が相続分に応じて承継する。

4 誤り

金銭は共同相続によっても当然に分割されない(最判平04.04.10)。金銭は、可分債権ではなく、動産として扱われるからである。
したがって、Bが相続開始時に金銭を相続財産として保管している場合、CとDは、遺産分割協議の成立前に、自己の相続分に相当する金銭を支払うよう請求することができない。

■参照項目&類似過去問
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遺産分割(民法[31]5)
年-問-肢内容正誤
(1)①共同相続の効力
1R05-01-2相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属し、各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
2H11-03-1相続開始時に相続人が数人あるとき、遺産としての不動産は、相続人全員の共有に属する。
3H07-11-3共同相続人の一人は、他の共同相続人の同意を得なければ、自己の相続分を譲渡できない。×
(1)②遺産分割の対象
1R05-01-1遺産である不動産から、相続開始から遺産分割までの間に生じた賃料債権は、遺産である不動産が遺産分割によって複数の相続人のうちの一人に帰属することとなった場合、当該不動産が帰属することになった相続人が相続開始時にさかのぼって取得する。×
2R05-01-4遺産である不動産が遺産分割によって複数の相続人のうちの一人に帰属することとなった場合、当該不動産から遺産分割後に生じた賃料債権は、遺産分割によって当該不動産が帰属した相続人が取得する。
3R01-06-3遺産に属する預貯金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割され、共同相続人は、その持分に応じて、単独で預貯金債権に関する権利を行使することができる。×
4H29-06-3(Aが死亡し、相続人がBとCの2名であった。)遺産分割協議が成立するまでの間に遺産である不動産から賃料債権が生じていて、BとCがその相続分に応じて当該賃料債権を分割単独債権として確定的に取得している場合、遺産分割協議で当該不動産をBが取得することになっても、Cが既に取得した賃料債権につき清算する必要はない。
5H15-12-3相続財産である金銭債権(預金返還請求権ではない。)は、遺産分割協議が成立するまでは、相続人の共有に属し、相続人全員の同意がなければ、その債務者に弁済請求できない。×
6H15-12-4共同相続人の一人が相続開始時に金銭を相続財産として保管している場合、他の相続人は、遺産分割協議の成立前でも、自己の相続分に相当する金銭を支払うよう請求できる。×
(2)①指定分割
1R01-06-1被相続人は、遺言によって遺産分割を禁止することはできず、共同相続人は、遺産分割協議によって遺産の全部又は一部の分割をすることができる。×
2H11-03-2被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定めることができ、また相続開始の時から5年を超えない期間内で遺産の分割を禁ずることもできる。
3H18-12-3被相続人Aが、相続人BCのうちのBに特定遺産を相続させる旨の遺言をして死亡し、特定遺産以外の相続財産についての遺産分割協議の成立前にBがCの同意なく特定遺産を第三者に売却した場合、CはBD間の売買契約を無権代理行為に準じて取り消すことができる。×
(2)②協議分割
1R01-06-2共同相続人は、既に成立している遺産分割協議につき、その全部又は一部を全員の合意により解除した上、改めて遺産分割協議を成立させることができる。
2H29-06-2(Aが死亡し、相続人がBとCの2名であった。)Aの死亡後、いずれもAの子であるBとCとの間の遺産分割協議が成立しないうちにBが死亡したときは、Bに配偶者Dと子Eがいる場合であっても、Aの遺産分割についてはEが代襲相続人として分割協議を行う。×
3H18-12-4B及びCの協議により甲土地をBが取得する旨の遺産分割協議を有効に成立させた場合、後にB及びCの合意があっても、甲土地をCが取得する旨の遺産分割協議を成立させることはできない。×
4H07-11-4遺産分割協議の結論は、相続人の多数決によって決する。×
(2)③家庭裁判所による分割
1H11-03-3遺産の分割について共同相続人間に協議が調わないとき、各共同相続人は、その分割を、相続開始地の地方裁判所に請求することができる。×
(3)効果
1R05-01-3遺産分割の効力は、相続開始の時にさかのぼって生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2R01-06-4遺産の分割は、共同相続人の遺産分割協議が成立した時から効力を生ずるが、第三者の権利を害することはできない。×
3H11-03-4遺産分割の効力は、第三者の権利を害しない範囲で、相続開始の時にさかのぼって生ずる。
(4)債務の相続
1H23-10-3共同相続人のうち、被相続人の唯一の資産を相続するものは、被相続人の債務のすべてを相続する。×
2H19-12-3相続人が単純承認した場合、被相続人の債務も、相続人が相続分に応じて承継する。

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【宅建過去問】(平成15年問12)相続・対抗問題” に対して4件のコメントがあります。

  1. 中村 より:

    こんにちは。肢3と肢4の違いについて
    もう少し細かく教えていただくことはできますでしょうか。
    申し訳ございません。

    1. 家坂 圭一 より:

      中村様

      御質問ありがとうございます。
      話をわかりやすくするために、肢4→肢3の順で説明しましょう。

      (1)金銭(肢4)
      「一万円札が◯枚、500円玉が◯枚・・・・」
      という「金銭(現金)」が遺産として残された場合です。

      判例は、これを「動産」と扱います。
      例えば、遺産の中にお札と硬貨を合わせて3万円の「金銭」があったとしましょう。
      この場合、「3万円で相続人が3人だから、当然1万円ずつに分割される」とは考えません。
      他の財産と合わせて、遺産分割の対象になるわけです。
      その結果、現金が全て誰か1人のものになることもあるでしょう。

      (2)金銭債権(肢3)
      こちらは、「金銭」そのものではなく、「金銭債権」に関するものです。
      例えば、Aが交通事故で失くなったとすると、加害者に対して不法行為に基づく損害賠償請求権を持っているわけです。
      このような「金銭債権」について、判例は、相続により、当然に分割されると判断しています。
      例えば、3,000万円の損害賠償請求権があるとすると、その債権は、遺産分割をするまでもなく、当然にB・C・Dが1,000万円ずつ相続するわけです。

      (3)金銭債権のうち「預貯金債権」
      金銭債権のうちでも、銀行や郵便局に対する「預貯金債権」に関しては、扱いが違います。
      これは、「遺産分割の対象である」とするのが、判例の立場です。
      したがって、ある銀行に3,000万円の預金が残されていたとしても、「B・C・Dが1,000万円ずつ引き出す」ことはできません。
      遺産分割をする必要があるわけです。

      これについては、
      令和01年問06肢3で出題されていますので、こちらを御覧ください。
      ■令和01年問06肢3


      長い解答になりましたが、お役に立てれば幸いです。
      今後ともよろしくお願いします。

      1. 中村 より:

        ご回答ありがとうございます!
        まだまだぼんやりですが、イメージ出来ました。

        引き続きよろしくお願いいたします。

        1. 家坂 圭一 より:

          御返信ありがとうございました。
          しばらく考えても「ぼんやり」が続くようでしたら、遠慮なく追加で質問してください。
          今後ともよろしくお願いします!

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