【宅建過去問】(平成18年問06)請負人の担保責任


AがBに対し建物の建築工事を代金3,000万円で注文し、Bがこれを完成させた。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

  1. 請負契約の目的物たる建物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合、目的物の修補が可能であれば、AはBに対して損害賠償請求を行う前に、目的物の修補を請求しなければならない。
  2. 請負契約の目的物たる建物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないためにこれを建て替えざるを得ない場合には、Aは当該建物の建替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することができる。
  3. 請負契約の目的物たる建物が種類又は品質に関して契約の内容に適合せず、目的物の修補に要する費用が契約代金を超える場合であっても、Aは原則として請負契約を解除することができない。
  4. 請負契約の目的物たる建物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合にBが担保責任を負わない旨の特約をしたときには、Aはその不適合についてBの責任を一切追及することができなくなる。

正解:2

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18-06-0

請負人の担保責任

請負契約の請負人の担保責任については、売買契約の売主の担保責任に関する規定が準用されます(民法559条)。
したがって、注文者は、以下の方法で、請負人の担保責任を追及することができます(同法562条、563条、564条、415条、541条、542条)。

※令和2年以前の民法とは大きく変わっています。古い知識は、捨ててしまいましょう。

1 誤り

仕事の目的物に契約不適合がある場合、注文者は、目的物の修補(追完請求の一種)を請求することができます(表の3。民法559条、562条1項)。また、損害賠償請求を行うことも可能です(表の1。同法559条、564条、415条)。
どちらを選ぶかは、注文者に委ねられています。「損害賠償請求を行う前に、目的物の修補を請求しなければならない」わけではありません。

■参照項目&類似過去問
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請負人の担保責任:損害賠償請求(民法[28]3(1))
年-問-肢内容正誤
129-07-1請負契約が請負人の責めに帰すべき事由によって中途で終了し、請負人が施工済みの部分に相当する報酬に限ってその支払を請求することができる場合、注文者が請負人に請求できるのは、注文者が残工事の施工に要した費用のうち、請負人の未施工部分に相当する請負代金額を超える額に限られる。
218-06-1請負契約の目的物たる建物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合、目的物の修補が可能であれば、AはBに対して損害賠償請求を行う前に、目的物の修補を請求しなければならない。
×
307-10-3注文者が請負人から完成した建物の引渡しを受けた後、第三者に対して建物を譲渡したときは、その第三者は、その建物の欠陥について、請負人に対し修補又は損害賠償の請求をすることができる。
×
401-08-1完成した目的物に契約の内容に適合しない欠陥がある場合において、その修補が可能なものであっても、注文者は、目的物の修補に代えて、直ちに損害賠償の請求をすることができる。
501-08-2完成した目的物に契約をした目的を達することができない重大な欠陥があるときは、注文者は、目的物の修補又は損害賠償の請求をすることはできないが、契約を解除することができる。
×
請負人の担保責任:修補請求(民法[28]3(1))
年-問-肢内容正誤
1R05-03-2Bが材料を提供して増築した部分に契約不適合がある場合、Aは工事が終了した日から1年以内にその旨をBに通知しなければ、契約不適合を理由とした修補をBに対して請求することはできない。×
2R05-03-3Bが材料を提供して増築した部分に契約不適合があり、Bは不適合があることを知りながらそのことをAに告げずに工事を終了し、Aが工事終了日から3年後に契約不適合を知った場合、AはBに対して、消滅時効が完成するまでは契約不適合を理由とした修補を請求することができる。
3R05-03-4増築した部分にAが提供した材料の性質によって契約不適合が生じ、Bが材料が不適当であることを知らずに工事を終了した場合、AはBに対して、Aが提供した材料によって生じた契約不適合を理由とした修補を請求することはできない。
4H18-06-1請負契約の目的物たる建物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合、目的物の修補が可能であれば、AはBに対して損害賠償請求を行う前に、目的物の修補を請求しなければならない。
×
5H07-10-3注文者が請負人から完成した建物の引渡しを受けた後、第三者に対して建物を譲渡したときは、その第三者は、その建物の欠陥について、請負人に対し修補又は損害賠償の請求をすることができる。
×
6H01-08-1完成した目的物に契約の内容に適合しない欠陥がある場合において、その修補が可能なものであっても、注文者は、目的物の修補に代えて、直ちに損害賠償の請求をすることができる。
7H01-08-2完成した目的物に契約をした目的を達することができない重大な欠陥があるときは、注文者は、目的物の修補又は損害賠償の請求をすることはできないが、契約を解除することができる。
×

2 正しい

請負契約の目的物たる建物に重大な瑕疵があるためにこれを建て替えざるを得ない場合には、Aは、当該建物の建替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することができます(最判平14.9.24)。

※令和2年改正前の民法と異なり、現在の民法では、建物その他の工作物を目的とする請負契約についても、契約の解除が認められています。請負契約を解除することも、損害賠償を請求することも可能なのです。このため、「建替費用相当額の損害賠償」に特別な意味がなくなっています。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
請負人の担保責任:建替費用相当額の損害賠償(民法[28]3(1))
年-問-肢内容正誤
1R01-08-1請負契約の目的物たる建物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないためこれを建て替えざるを得ない場合には、注文者は請負人に対して当該建物の建替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することができる。
224-05-2請負の目的物である建物が種類又は品質に関して本件契約の内容に適合しないためにこれを建て替えざるを得ない場合には、注文者は、請負人に対し、建物の建て替えに要する費用相当額の損害賠償請求をすることができる。
318-06-2請負契約の目的物たる建物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないためにこれを建て替えざるを得ない場合には、注文者は当該建物の建替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することができる。

3 誤り

仕事の目的物に契約不適合がある場合、注文者は、請負契約を解除することができます(表の2。民法559条、564条、541条、542条)。

※令和2年改正前の民法と異なり、現在の民法では、建物その他の工作物についても、その他の物と同様に扱います。
※「目的物の修補に要する費用が契約代金を超える場合」という記述には、特に意味がありません。

■参照項目&類似過去問
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請負人の担保責任:解除(民法[28]3(1))
年-問-肢内容正誤
126-06-4請負の目的物である建物に種類又は品質に関して契約の内容に適合しない欠陥がある場合、そのために請負契約を締結した目的を達成することができない場合でなければ、注文者は請負人との契約を一方的に解除することはできない。
×
218-06-3請負契約の目的物たる建物が種類又は品質に関して契約の内容に適合せず、目的物の修補に要する費用が契約代金を超える場合であっても、請負人は原則として請負契約を解除することができない。
×
306-08-2注文者は、住宅の引渡しを受けた場合において、その住宅に契約の内容に適合しない欠陥があり、契約をした目的を達成することができないときであっても、その契約を解除することはできない。
×
401-08-2完成した目的物に契約をした目的を達することができない重大な欠陥があるときは、注文者は、目的物の修補又は損害賠償の請求をすることはできないが、契約を解除することができる。
×
501-08-4完成した目的物が建物その他土地の工作物である場合において、その物に契約をした目的を達することができない重大な欠陥があるときであっても、注文者は、契約の解除をすることができない。
×

4 誤り

請負人は、契約不適合担保責任を負わない旨の特約をすることができます。しかし、この場合であっても、知りながら告げなかった事実については、責任を免れることができません(民法559条、572条)。
本肢は、「Bの責任を一切追及することができなくなる」の部分が誤っています。

■参照項目&類似過去問
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請負人の担保責任:担保責任を負わない旨の特約(民法[28]3(3))
年-問-肢内容正誤
1H29-07-4請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡した場合に担保責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることはできない。
2H18-06-4請負契約の目的物たる建物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合に請負人が担保責任を負わない旨の特約をしたときには、注文者はその不適合について請負人の責任を一切追及することができなくなる。
×
3H06-08-4請負人は、その住宅に契約の内容に適合しない欠陥がある場合でも担保責任を負わないとする特約を注文者と結ぶこともできるが、その場合でも、請負人がその欠陥の存在を知っていて、注文者に告げなかったときは、免責されない。

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