【宅建過去問】(平成19年問42)報酬
宅地建物取引業者A(消費税課税事業者)は、B所有の建物についてB及びCから媒介の依頼を受け、Bを貸主、Cを借主とする定期建物賃貸借契約を成立させた。この場合における次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、正しいものはどれか。なお、1か月分の借賃は13万円、保証金(Cの退去時にCに全額返還されるものとする。)は300万円とする。
- 建物が店舗用である場合、AがCから受け取ることができる報酬の限度額は、154,000円である。
- Aは、媒介報酬の限度額のほかに、Bの依頼によらない通常の広告の料金に相当する額を報酬に合算して、Bから受け取ることができる。
- 建物が居住用である場合、AがB及びCから受け取ることができる報酬の限度額は、B及びCの承諾を得ているときを除き、それぞれ71,500円である。
- 定期建物賃貸借契約の契約期間が終了した直後に、AがBC間の定期建物賃貸借契約の再契約を成立させた場合にAが受け取る報酬については、宅地建物取引業法の規定は適用されない。
正解:3
賃貸借の媒介・代理に関する報酬が問われた場合、以下の表のように、場合分けして考えることが必要である(宅建業法46条1項、国土交通省告示100号第4・第6)。
1 誤り
店舗用建物(=居住用建物以外)の貸借なので、権利金を基準にして報酬を計算できるケースのようにも見える。
しかし、報酬計算の基礎とすることができる「権利金」とは「返還されないもの」に限られる。
本肢の「保証金」は「退去時にCに全額返還される」ものだから、報酬計算の基礎とすることはできない。
したがって、借賃を基準に計算することになる。
居住用建物以外の物件であるから、貸主B・借主Cから「合わせて1か月分」が報酬の限度額となる。
これに消費税が加算されるから、
13万円×1.1=143,000円
が報酬の限度額である。
2 誤り
宅建業者は、国土交通大臣の定める上限額を超えて報酬を受け取ることができない(宅建業法46条)。例外は、以下のものに限られる(解釈・運用の考え方)。
本肢の広告料金は、「Bの依頼によらない通常の広告料金」である。これは、宅建業者が負担すべきものであり、報酬に合算して依頼者から受領することはできない。
■類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R02s-34-4 | 宅地建物取引業者は、依頼者の依頼によらない広告の料金に相当する額を報酬額に合算する場合は、代理又は媒介に係る報酬の限度額を超える額の報酬を依頼者から受けることができる。 | × |
2 | R01-30-ウ | 建物の貸借の媒介において、依頼者の依頼によらない通常の広告を行い、国土交通大臣の定める報酬限度額の媒介報酬のほか、当該広告の料金に相当する額を受領した。 | × |
3 | R01-32-3 | 既存住宅の売買の媒介について、Aが売主Cに対して建物状況調査を実施する者をあっせんした場合、AはCから報酬とは別にあっせんに係る料金を受領することはできない。 | ◯ |
4 | 30-30-3 | 建物が店舗用である場合、Aは、Bからの依頼に基づくことなく広告をした場合でも、その広告が賃貸借契約の成立に寄与したときは、報酬とは別に、その広告料金に相当する額をBに請求することができる。 | × |
5 | 30-33-3 | [宅地建物取引業者Aは、Bから、Bが所有し居住している甲住宅の売却について媒介の依頼を受けた。]Aは、甲住宅の評価額についての根拠を明らかにするため周辺の取引事例の調査をした場合、当該調査の実施についてBの承諾を得ていなくても、同調査に要した費用をBに請求することができる。 | × |
6 | 29-26-2 | 宅地建物取引業者は、限度額の報酬に加えて、依頼者の依頼によって行った広告の料金に相当する額を別途受領することができない。 | × |
7 | 29-26-3 | 宅地建物取引業者は、限度額の報酬に加えて、法第35条の規定に基づく重要事項の説明を行った対価として、報酬を受領することができる。 | × |
8 | 29-43-エ | 専任媒介契約に係る通常の広告費用は宅地建物取引業者Aの負担であるが、指定流通機構への情報登録及び依頼者BがAに特別に依頼した広告に係る費用については、成約したか否かにかかわらず、国土交通大臣の定める報酬の限度額を超えてその費用をBに請求することができる。 | × |
9 | 28-33-イ | 依頼者の依頼によらない通常の広告の料金に相当する額を報酬に合算して、依頼者から受け取ることができる。 | × |
10 | 26-37-1 | 居住用建物の貸借の媒介をするに当たり、依頼者からの依頼に基づくことなく広告をした場合でも、その広告が貸借の契約の成立に寄与したとき、報酬とは別に、広告料金に相当する額を請求できる。 | × |
11 | 25-37-ウ | 依頼者の特別の依頼に基づき行った遠隔地への現地調査に要した特別の費用を受領できる。 | ◯ |
12 | 24-35-エ | 依頼者の依頼の有無にかかわらず、通常の広告料金相当額を受領できる。 | × |
13 | 23-36-3 | 依頼者の依頼の有無にかかわらず、通常の広告料金相当額を受領できる。 | × |
14 | 22-42-2 | 依頼者が好意で支払う謝金は、報酬限度額とは別に受領できる。 | × |
15 | 19-42-2 | 依頼者の依頼によらない通常の広告料金相当額を受領できる。 | × |
16 | 18-43-イ | 依頼者の特別の依頼による広告に要した実費を受領できる。 | ◯ |
17 | 17-34-4 | 依頼者の依頼による広告料金を請求できない。 | × |
18 | 13-45-エ | 国交大臣の定める額をこえて報酬を受けることは宅建業法に違反しない。 | × |
19 | 12-35-2 | 依頼者から特別の依頼を受けて広告をし、契約成立した場合、報酬限度額の報酬のほかに、広告に要した実費を超える料金を受領できる。 | × |
20 | 12-38-3 | 依頼者からの依頼に基づくことなく広告した場合でも、広告が貸借の契約の成立に寄与したとき、報酬とは別に、その広告料金を請求できる。 | × |
21 | 11-36-3 | 宅建業者が報酬限度額の報酬を受けた場合でも、宅建士は、別途報酬を受けることができる。 | × |
22 | 09-43-1 | 依頼者の依頼により特別の広告を行った場合、売買が不成立に終わったときでも、広告料金を受領できる。 | ◯ |
23 | 07-42-2 | 業者間取引であれば、報酬限度額を超える報酬を受領できる。 | × |
3 正しい
居住用建物の貸借の媒介で、貸主B・借主Cの承諾がないケースである。したがって、貸主・借主の双方から「0.5か月分の賃料+消費税」を受領するのが限度となる。
13万円÷2=65,000円
65,000円×1.1=71,500円
が報酬の限度額である。
4 誤り
定期建物賃貸借の再契約に関して宅建業者が受領することができる報酬も、通常の新規契約と同様に計算する(解釈・運用の考え方)。つまり、宅建業法の規定が適用される。
■類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | 30-30-4 | 定期建物賃貸借契約の契約期間が終了した直後にAが依頼を受けてBC間の定期建物賃貸借契約の再契約を成立させた場合、Aが受け取る報酬については、宅地建物取引業法の規定が適用される。 | ◯ |
2 | 19-42-4 | 定期建物賃貸借契約の契約期間が終了した直後に、AがBC間の定期建物賃貸借契約の再契約を成立させた場合にAが受け取る報酬については、宅地建物取引業法の規定は適用されない。 | × |