【宅建過去問】(平成20年問38)業務上の義務と禁止事項
次に記述する宅地建物取引業者Aが行う業務に関する行為のうち、宅地建物取引業法の規定に違反しないものはどれか。
- 宅地の売買の媒介において、当該宅地の周辺環境について買主の判断に重要な影響を及ぼす事実があったため、買主を現地に案内した際に、宅地建物取引士でないAの従業者が当該事実について説明した。
- 建物の貸借の媒介において、申込者が自己都合で申込みを撤回し賃貸借契約が成立しなかったため、Aは、既に受領していた預り金から媒介報酬に相当する金額を差し引いて、申込者に返還した。
- Aの従業者は、宅地の販売の勧誘に際し、買主に対して「この付近に鉄道の新駅ができる」と説明したが、実際には新駅設置計画は存在せず、当該従業者の思い込みであったことが判明し、契約の締結には至らなかった。
- Aは、自ら売主として、宅地の売却を行うに際し、買主が手付金100万円を用意していなかったため、後日支払うことを約して、手付金を100万円とする売買契約を締結した。
正解:1
1 違反しない
取引条件のうち相手方の判断に重要な影響を及ぼす事項について、宅建業者が故意に事実を告げなかったり、不実のことを告げる行為は禁止されています(宅建業法47条1号ニ)。しかし、本肢では、この事実を相手方に説明しています。
この説明は、同法35条の重要事項説明とは別物です。説明の主体が宅建士に限られるわけではありません。
本肢では、宅建士ではないAの従業者が説明していますが、宅建業法には違反しません。
■類似過去問
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重要事実不告知・不実告知の禁止(宅建業法[09]7(1))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | 30-40-ウ | 宅地建物取引業者Aは、土地の売買の媒介に際し重要事項の説明の前に、宅地建物取引士ではないAの従業者をして媒介の相手方に対し、当該土地の交通等の利便の状況について説明させた。 | ◯ |
2 | 28-34-1 | 宅建業者が、賃貸アパートの媒介に当たり、入居申込者が無収入であることを知っており、入居申込書の収入欄に「年収700万円」とあるのは虚偽の記載であることを認識したまま、その事実を告げずに貸主に提出した行為は宅建業法に違反する。 | ◯ |
3 | 20-38-1 | 宅地の周辺環境について買主の判断に重要な影響を及ぼす事実を、宅建士でない従業者が説明しても、宅建業法に違反しない。 | ◯ |
4 | 19-36-4 | 建物の利用制限に関する事項で買主の判断に重要な影響を及ぼすものを故意に告げなかった場合、宅建業法に違反し、宅建業者に1億円以下の罰金が課せられることがある。 | ◯ |
5 | 16-44-4 | 契約に係る重要な事項について故意に事実を告げない行為は禁止されており、行為を行った代表者には懲役刑、宅建業者には罰金刑が科されることがある。 | ◯ |
6 | 13-37-1 | 更地を希望する買主に対しては、未登記の古い空き家の存在を告げる必要はない。 | × |
7 | 12-35-1 | 近隣にゴミ集積場所の設置計画がある場合で、それを借主が知らないと重大な不利益を被るおそれがあるときに、その計画について故意に借主に対し告げなかったとしても、宅建業法に違反しない。 | × |
8 | 11-42-3 | [宅地建物取引業者Aが、宅地の所有者Bの依頼を受けてBC間の宅地の売買の媒介を行う。]Aは、当該宅地に対抗力のある借地権を有する第三者が存在することを知っていたが、当該借地権は登記されていなかったので、Cに対して告げることなく、BC間の売買契約を締結させた。 | × |
2 違反する
「相手方等が契約の申込みの撤回を行うに際し、既に受領した預り金を返還することを拒むこと」は宅建業法に違反します(宅建業法47条の2第3項、同法施行規則16条の12第2号)。
Aは、預り金の返還を拒むことは許されません。本肢のように媒介報酬相当額を差し引くことは宅建業法に違反します。
■類似過去問
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預り金の返還拒否(宅建業法[09]7(4)④)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | 27-41-エ | 「お預かりした申込証拠金10万円のうち、社内規程上、お客様の個人情報保護のため、申込書の処分手数料として、5,000円はお返しできませんが、残金につきましては法令に従いお返しします。」という発言は、宅建業法に違反しない。 | × |
2 | 24-32-1 | [宅地建物取引業者A社が、自ら売主として宅地建物取引業者でない買主Bと宅地の売買について交渉を行う。]Bは、買受けの申込みを行い、既に申込証拠金を払い込んでいたが、申込みを撤回することとした。A社は、既にBに重要事項説明を行っていたため、受領済みの申込証拠金については、解約手数料に充当するとして返還しないこととしたが、申込みの撤回には応じた。 | × |
3 | 21-40-2 | 建物の売買の媒介に際し、買主から売買契約の申込みを撤回する旨の申出があったが、宅地建物取引業者は、申込みの際に受領した預り金を既に売主に交付していたため、買主に返還しなかった。 | × |
4 | 20-38-2 | 建物の貸借の媒介において、申込者が自己都合で申込みを撤回し賃貸借契約が成立しなかったため、宅地建物取引業者は、既に受領していた預り金から媒介報酬に相当する金額を差し引いて、申込者に返還した。 | × |
5 | 18-41-2 | 宅地建物取引業者は、建物の貸借の媒介において、契約の申込時に預り金を受領していたが、契約の成立前に申込みの撤回がなされたときに、既に貸主に預り金を手渡していることから、返金を断った。 | × |
6 | 12-35-3 | 宅地建物取引業者が、建物の貸借の媒介をするに当たり、借受けの申込みをした者から預り金の名義で金銭を授受した場合で、後日その申込みが撤回されたときに、「預り金は、手付金として既に家主に交付した」といって返還を拒んだ。 | × |
3 違反する
「契約の目的物である宅地又は建物の将来の環境又は交通その他の利便について誤解させるべき断定的判断を提供すること」は、禁止されています(宅建業法47条の2第3項、同法施行規則16条の12第1号イ)。
断定的判断を提供すること自体が宅建業法に違反します。「従業者の思い込み」であったり、「契約の締結には至らなかった」としても、免責されることはありません。
■類似過去問
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勧誘の際の禁止行為(宅建業法[09]7(4)③)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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(イ)環境・交通に関する断定的判断の提供 | |||
1 | 28-34-2 | 宅建業者が、分譲マンションの購入を勧誘するに際し、うわさをもとに「3年後には間違いなく徒歩5分の距離に新しく私鉄の駅ができる」と告げた場合、そのような計画はなかったとしても、故意にだましたわけではないので宅建業法には違反しない。 | × |
2 | 27-41-ア | 「隣接地は、市有地で、現在、建築計画や売却の予定がないことを市に確認しました。将来、建つとしても公共施設なので、市が眺望を遮るような建物を建てることは絶対ありません。ご安心ください。」という発言は、宅建業法に違反しない。 | × |
3 | 26-43-4 | 「近所に幹線道路の建設計画がある」と説明したが、実際には建設計画は存在せず、従業者の思い込みであった場合、宅建業法に違反しない。 | × |
4 | 24-32-4 | 交通整備の見通しにつき、新聞報道を示しながら、未確定の話として説明した場合、宅建業法に違反しない。 | ◯ |
5 | 24-41-イ | 断定的判断を提供した従業員に故意がない場合、宅建業法に違反しない。 | × |
6 | 20-38-3 | 存在しない新駅設置計画を説明したが、契約には至らなかった場合、宅建業法に違反しない。 | × |
7 | 16-44-2 | 過失で断定的判断を提供した場合でも免責されない。 | ◯ |
8 | 08-45-4 | 10年後開通予定の駅候補地の1つが徒歩5分の場所にある場合、「地下鉄新駅まで徒歩5分」と広告しても、宅建業法に違反しない。 | × |
(ロ)必要な時間の許与を拒否 | |||
1 | R02s-40-3 | 宅地建物取引業者は、契約の締結の勧誘をするに際し、理由の如何を問わず、相手方に対して当該契約を締結するかどうかを判断するために必要な時間を与えることを拒んではならない。 | × |
(ハ)勧誘者情報の不告知 | |||
1 | 29-28-ウ | 宅地建物取引業者Aの従業者Cは、投資用マンションの販売において、勧誘に先立ちAの名称を告げず、自己の氏名及び契約締結の勧誘が目的であることを告げたうえで勧誘を行ったが、相手方から関心がない旨の意思表示があったので、勧誘の継続を断念した。 | × |
2 | 29-34-2 | 宅建業者Aの従業者Cは、投資用マンションの販売において、勧誘に先立ちAの名称を告げず、自己の氏名及び契約締結の勧誘が目的であることを告げたうえで勧誘を行ったが、相手方から関心がない旨の意思表示があったので、勧誘の継続を断念した。 | × |
3 | 26-43-2 | 宅地建物取引業者が、アンケート調査をすることを装って電話をし、その目的がマンションの売買の勧誘であることを告げずに勧誘をする行為は、宅地建物取引業法に違反する。 | ◯ |
4 | 24-41-ア | 勧誘に先立って商号・自らの氏名を告げてから勧誘を行ったが、勧誘の目的が投資用マンションの売買契約の締結である旨を告げなかった場合、宅建業法に違反しない。 | × |
(ニ)勧誘の継続 |
|||
1 | R02s-40-1 | 宅地建物取引業者が、マンション販売の勧誘をするに際し、相手方から購入を希望しない旨の返事があった後に、当該勧誘を継続することは法に違反しない。 | × |
2 | 30-40-エ | 宅地建物取引業者Aの従業者Cは、投資用マンションの販売において、勧誘に先立ちAの名称を告げず、自己の氏名及び契約締結の勧誘が目的であることを告げたうえで勧誘を行ったが、相手方から関心がない旨の意思表示があったので、勧誘の継続を断念した。 | × |
3 | 29-28-ウ | 宅地建物取引業者Aは、投資用マンションの販売に際し、電話で勧誘を行ったところ、勧誘の相手方から「購入の意思がないので二度と電話をかけないように」と言われたことから、電話での勧誘を諦め、当該相手方の自宅を訪問して勧誘した。 | × |
4 | 26-41-2 | 相手方が明確に買う意思がない旨を表明した場合、別の従業者をして、再度勧誘を行わせることは法に違反しない。 | × |
5 | 26-43-3 | 土地の買受けの勧誘に当たり、売却の意思は一切ない旨を告げられたが、その翌日、再度の勧誘を行った場合、宅建業法に違反しない。 | × |
(ホ)迷惑時間帯の電話・訪問 |
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1 | 24-41-エ | 「午後3時に訪問されるのは迷惑である。」と事前に聞いていたが、深夜でなければ迷惑にはならないだろうと判断し、午後3時に当該相手方を訪問して勧誘を行った。 | × |
(ヘ)困惑させる行為 | |||
1 | 23-41-イ | 建物の販売に際して、短時間であったが、私生活の平穏を害するような方法により電話勧誘を行い、相手方を困惑させた。 | × |
4 違反する
手付について、貸付けなど信用を供与することにより契約の締結を誘引する行為は、禁止されています(宅建業法47条3号)。
本肢のAは、買主に手付の後日払いを認めることで、契約締結を誘引しています。これは、宅建業法違反です。
■類似過去問
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手付貸与による契約誘引の禁止(宅建業法[09]7(3))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R02s-26-1 | 宅地建物取引業者は、建物の売買に際し、買主に対して売買代金の貸借のあっせんをすることにより、契約の締結を誘引してはならない。 | × |
2 | R02s-40-2 | 宅地建物取引業者は、契約の相手方に対して資金不足を理由に手付の貸付けを行ったが、契約締結後償還された場合は法に違反しない。 | × |
3 | R02s-40-4 | 宅地建物取引業者は、勧誘の相手方が金銭的に不安であることを述べたため、売買代金の額を引き下げて、契約の締結を勧誘したとしても、法に違反しない。 | ◯ |
4 | 30-40-ア | 宅地建物取引業者Aは、自ら売主として、建物の売買契約を締結するに際し、買主が手付金を持ち合わせていなかったため手付金の分割払いを提案し、買主はこれに応じた。 | × |
5 | 30-40-イ | 宅地建物取引業者Aは、建物の販売に際し、勧誘の相手方から値引きの要求があったため、広告に表示した販売価格から100万円値引きすることを告げて勧誘し、売買契約を締結した。 | ◯ |
6 | 29-34-1 | 宅地建物取引業者が、自ら売主として、宅地及び建物の売買の契約を締結するに際し、手付金について、当初提示した金額を減額することにより、買主に対し売買契約の締結を誘引し、その契約を締結させることは、法に違反しない。 | ◯ |
7 | 29-34-3 | 宅地建物取引業者が、宅地及び建物の売買の媒介を行うに際し、媒介報酬について、買主の要望を受けて分割受領に応じることにより、契約の締結を誘引する行為は、法に違反する。 | × |
8 | 29-34-4 | 宅地建物取引業者が、手付金について信用の供与をすることにより、宅地及び建物の売買契約の締結を誘引する行為を行った場合、監督処分の対象となるほか、罰則の適用を受けることがある。 | ◯ |
9 | 28-29-イ | 宅建業者が、建物の売買の媒介に際し、買主に対して手付の貸付けを行う旨を告げて契約の締結を勧誘したが、売買は成立しなかった場合、宅建業法に違反しない。 | × |
10 | 28-34-4 | 宅建業者が、宅地の売買契約締結の勧誘に当たり、相手方が手付金の手持ちがないため契約締結を迷っていることを知り、手付金の分割払いを持ちかけたことは、契約締結に至らなかったとしても宅建業法に違反する。 | ◯ |
11 | 27-41-ウ | 「弊社と提携している銀行の担当者から、手付金も融資の対象になっていると聞いております。ご検討ください。」という発言は、宅建業法に違反しない。 | ◯ |
12 | 26-43-1 | 手付金を複数回に分けて受領することとし、契約締結を誘引するのは、宅建業法に違反しない。 | × |
13 | 24-34-ウ | 手付の貸付により契約を誘引するのは、宅建業法に違反する。 | ◯ |
14 | 24-41-ウ | 宅地建物取引業者A社による投資用マンションの販売の勧誘において、A社の従業員は、勧誘の相手方が金銭的に不安であることを述べたため、売買代金を引き下げ、契約の締結を誘引した。 | ◯ |
15 | 23-41-ア | 宅地建物取引業者A社は、建物の販売に際して、買主が手付として必要な額を持ち合わせていなかったため、手付を貸し付けることにより、契約の締結を誘引した。 | × |
16 | 21-40-1 | 手付の貸付を告知し契約を誘引したが、契約不成立だった場合、宅建業法に違反しない。 | × |
17 | 20-38-4 | 手付を後日支払うこととして、売買契約を締結するのは、宅建業法に違反しない。 | × |
18 | 18-40-3 | 手付の貸付を告知し契約を誘引したが、契約不成立だった場合、宅建業法に違反しない。 | × |
19 | 15-38-3 | 手付金の一部を貸付け、契約の締結を誘引することは、宅建業法に違反しない。 | × |
20 | 13-42-2 | 業者間取引であれば、買主に対し手付金を貸し付けて契約の締結を誘引してもさしつかえない。 | × |
21 | 12-35-4 | 手付金に関し買主と銀行との間の金銭の貸借のあっせんをして、売買契約を締結させたとしても、宅建業法に違反しない。 | ◯ |
22 | 12-40-3 | 買主の要求に応じ、手付金を分割払とすることができる。 | × |
23 | 11-42-2 | 手付の貸付を条件に契約を誘引したが、契約不成立だった場合、宅建業法に違反しない。 | × |
24 | 11-42-4 | 手付金額を減額することで契約を誘引し、契約が成立した場合、宅建業法に違反しない。 | ◯ |
25 | 09-38-1 | 「手付金の不足額は契約成立後に支払う」旨説明して契約を成立させたとしても、宅建業法に違反しない。 | × |
26 | 09-40-1 | 手付金の不足額を宅建業者が立て替えて契約を成立させたとしても、宅建業法に違反しない。 | × |
27 | 04-44-1 | 手付金を分割払としても、宅建業法に違反しない。 | × |
28 | 01-48-1 | 手付の貸付により契約締結を誘引しても、宅建業法違反とならない。 | × |
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