【宅建過去問】(平成20年問43)報酬
宅地建物取引業者A及び宅地建物取引業者B(共に消費税課税事業者)が受領する報酬に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。なお、借賃には、消費税相当額を含まないものとする。
- Aが単独で行う居住用建物の貸借の媒介に関して、Aが依頼者の一方から受けることができる報酬の上限額は、当該媒介の依頼者から報酬請求時までに承諾を得ている場合には、借賃の1.1か月分である。
- Aが単独で行う事業用建物の貸借の媒介に関して、Aが依頼者の双方から受ける報酬の合計額が借賃の1.1か月分以内であれば、Aは依頼者の双方からどのような割合で報酬を受けてもよい。
- Aが単独で貸主と借主の双方から店舗用建物の貸借の媒介の依頼を受け、 1か月の借賃25万円(消費税額及び地方消費税額を含む。)、権利金330万円(権利設定の対価として支払われるもので、返還されない。消費税額及び地方消費税額を含む。)の契約を成立させた場合、Aは依頼者の双方から合計で32万円の報酬を受けることができる。
- Aは売主から代理の依頼を、Bは買主から媒介の依頼を、それぞれ受けて、代金4,000万円の宅地の売買契約を成立させた場合、Aは売主から277万2,000円、Bは買主から138万6,000円の報酬をそれぞれ受けることができる。
正解:2
貸借に関する報酬の計算方法
肢1~3では、貸借に関する報酬について問われています。ここで最初にまとめておきましょう。
1 誤り
居住用建物の貸借の媒介で、依頼者の承諾があるケースなので、依頼者の一方から借賃の1.1か月分の報酬を受けることが可能なようにも見えます。
しかし、この承諾は、「依頼を受けるにあたって」得たものであることが必要です。本肢は、「報酬請求時までに承諾を得ている場合には」という部分が誤りです。
2 正しい
事業用建物(=居住用建物以外)の貸借の媒介のケースなので、依頼者の双方から合わせて借賃の1.1か月分が限度額です。その限度額内であれば、依頼者双方からどのような割合で報酬を受けることもできます。
3 誤り
店舗用建物(=居住用建物以外)の貸借の媒介で権利金の授受があるケースなので、権利金を売買代金とみなして報酬を計算することも可能です(宅建業法46条、告示第6)。
この方法に基づいて、計算してみましょう。
- 権利金330万円は消費税(10%)込の額なので税の分を省くと、300万円である。
- 300万円を売買代金とみなして報酬を計算すると、
300万×4%+2万=14万円
- Aは消費税課税業者なので、これに消費税分(10%)を加算すると、
14万×1.1=15万4,000円 - 双方から媒介依頼を受けているから、
15万4,000円×2=30万8,000円
この額は1か月の借賃25万円より大きいので、Aが受け取る報酬の限度額は30万8,000円です。
それを超えた32万円の報酬を受け取ることはできません。
4 誤り
売買の媒介・代理の場合は、以下の手順で計算します。
- 宅地の売買には消費税が課税されないので、4,000万は、そのまま本体価格である。
- 4,000万×3%+6万=126万
- 消費税(10%)を加算すると、126万×1.1=138万6,000円
- 媒介の場合(本肢のB)はこの金額が限度額となる。
- 代理の場合(本肢のA)は媒介の場合の2倍が限度額である。具体的には、
138万6,000円×2=277万2,000円
ここまでで考えると、本肢は正解のように見えます。
しかし、複数の業者が関与する場合には、その合計の限度額が媒介の場合の2倍(277万2,000円)に制限されるというルールを忘れてはいけません。
- 媒介業者B社の限度額=138万6,000円
- 代理業者A社の限度額=277万2,000円
- 両者を合わせた限度額=277万2,000円
本肢では、業者AとBが受領する報酬を合計すると、媒介の場合の3倍にも達します。これは、宅建業法違反です。
権利金を売買代金とみなして算定するということは代理をするときは媒介の2倍もらえるってことでしょうか。
肢3であれば貸主の代理をしたとき、貸主から30万8,000円受け取れるということでしょうか。
「権利金を売買代金とみなして報酬を計算する」のです。
つまり、売買の場合と同じに考えます。
宅建業者Aが貸主の「代理」だとすれば、当然、媒介の場合の2倍、すなわち、30万8,000円を報酬として受領することができます。
(借主を別の宅建業者が代理・媒介していれば、その宅建業者の報酬も考える必要があります。)
ありがとうございます。