【宅建過去問】(平成21年問01)錯誤


民法第95条の定める錯誤による意思表示に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1. 意思表示をなすに当たり、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその意思表示を取り消すことができない。
  2. 表意者自身において、その意思表示に瑕疵を認めず、民法第95条に基づく意思表示の取消しを主張する意思がない場合は、第三者がその意思表示を取り消すことはできない。
  3. 意思表示をなすについての動機を表意者が当該意思表示の基礎とし、かつ、その旨を相手方に明示的に表示した場合は、表意者は、意思表示を取り消すことができる。
  4. 意思表示をなすについての動機を表意者が当該意思表示の基礎としたが、その旨を相手方に黙示的に表示したにとどまる場合は、表意者は、意思表示を取り消すことができない。

正解:4

1  正しい

錯誤が表意者の重大な過失によるものである場合、表意者は、意思表示を取り消すことができません(民法95条3項)。

■参照項目&類似過去問
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【例外2】表意者の重過失があるとき(民法[02]4(2)②)

[共通の前提]
AがBにAの所有する甲土地を売却した。

年-問-肢内容正誤
1R02s-07-4本件契約が、Aの重大な過失による錯誤に基づくものであり、その錯誤が重要なものであるときは、Aは本件契約の無効を主張することができる。×
2R02-06-1Aは、自己所有の自動車を100万円で売却するつもりであったが、重大な過失によりBに対し「10万円で売却する」と言ってしまい、Bが過失なく「Aは本当に10万円で売るつもりだ」と信じて購入を申し込み、AB間に売買契約が成立した場合×
3R02-06-4Aは、自己所有の腕時計を100万円で外国人Bに売却する際、当日の正しい為替レート(1ドル100円)を重大な過失により1ドル125円で計算して「8,000ドルで売却する」と言ってしまい、Aの錯誤について過失なく知らなかったBが「8,000ドルなら買いたい」と言って、AB間に売買契約が成立した場合×
4R01-02-3Aの売却の意思表示につき、その目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤がある場合、Aの錯誤について悪意のCが、Bから甲土地を買い受けたときは、Aに重大な過失がなければ、AはBに対する意思表示を錯誤を理由に取消し、Cに対して、その取消しを主張して、甲土地の返還を請求することができる。
5R01-02-4Aの売却の意思表示につき、その目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤がある場合、Aに重大な過失があったとしても、AはBに対して、錯誤による当該意思表示の取消しを主張して、甲土地の返還を請求することができる。×
6H30-01-2Aが甲土地を売却した意思表示に錯誤があったとしても、Aに重大な過失があって取消しを主張することができない場合は、BもAの錯誤を理由として取消しを主張することはできない。
7H21-01-1意思表示をなすに当たり、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその意思表示を取り消すことができない。
8H17-02-3売却の意思表示に錯誤がある場合であっても、意思表示者であるAに重過失があるときは、Aは、この売却の意思表示を取り消すことはできない。
9H13-02-1Bが、Aや媒介業者の説明をよく聞き、自分でもよく調べて、これなら住宅が建てられると信じて買ったが、地下に予見できない空洞(古い防空壕)があり、建築するためには著しく巨額の費用が必要であることが判明した場合、Bは、錯誤を理由に売買契約を取り消すことができる。
10H13-02-4Bは、代金をローンで支払うと定めて契約したが、Bの重大な過失によりローン融資を受けることができない場合、Bは、錯誤を理由に売買契約を取り消すことはできない。
11H10-07-4AのBに対する売却の意思表示につき、その目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤があった場合、Aは、売却の意思表示の取り消すことができるが、Aに重大な過失があったときは、取り消すことができない。
12H06-02-2Aは、無過失のときに限り、法律行為の要素に錯誤があるとして、その契約を取り消すことができる。×
13H02-04-3Aが要素の錯誤により契約をした場合、Aは、重大な過失がないときは、AB間の契約の取り消すことはできるが、Cに対して所有権を主張することはできない。
例外の例外
14R02-06-3Aは、自己所有の時価100万円の名匠の絵画を贋作だと思い込み、Bに対し「贋作であるので、10万円で売却する」と言ったところ、Bも同様に贋作だと思い込み「贋作なら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合、Aは、Bに対し、錯誤による取消しができる。

2 正しい

錯誤による取消しの制度は、錯誤に陥った表意者を保護する制度です。したがって、取消権を有するのも表意者Bに限られます。第三者が取り消すことはできません。

■参照項目&類似過去問
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表意者以外による取消し主張(民法[02]4(5))

[共通の前提]
Aが、Bに甲土地を売却した。
年-問-肢内容正誤
1H30-01-2
AがBに甲土地を売却した意思表示に錯誤があったとしても、Aに重大な過失があって取消しを主張することができない場合は、BもAの錯誤を理由として取消しを主張することはできない。
2H28-03-4
AB間の売買契約が、Bが意思表示の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤があって締結されたものである場合、Bが所有権移転登記を備えていても、AはBの錯誤を理由にAB間の売買契約を取り消すことができる。×
3H21-01-2表意者自身において、その意思表示に瑕疵を認めず、民法第95条に基づく意思表示の取消しを主張する意思がない場合は、第三者がその意思表示の取消しを主張することはできない。
4H17-02-4AがBに対し土地の売却の意思表示をしたが、その意思表示は錯誤によるものであった。錯誤を理由としてこの売却の意思表示を取り消すことができる場合、意思表示者であるAがその錯誤を認めていないときは、Bはこの売却の意思表示を取り消すことができる。×
5H13-02-2売買契約に重要な錯誤があった場合は、Bに代金を貸し付けたCは、Bがその錯誤を認めず、売買契約を取り消す意思がないときでも、Aに対し、Bに代位して、売買契約を取り消すことができる。×

3 正しい

動機の錯誤による意思表示も、取消しの対象となることがあります(民法95条1項2号。民法の言葉で言えば、「表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」)。
それは、その事情が法律行為の基礎とされていることが相手方に表示されていたときです(同条2項)。
この表示の方法は、明示的なものでも、黙示的なものでも構いません(最判昭29.11.26最判平01.09.14)。

本肢では、表意者が、動機を相手方に明示的に表示しています。したがって、動機の錯誤を理由に、意思表示を取り消すことができます。

■参照項目&類似過去問
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動機の錯誤(民法[02]4(2)②)
年-問-肢内容正誤
1R02-06-2
Aは、自己所有の時価100万円の壺を10万円程度であると思い込み、Bに対し「手元にお金がないので、10万円で売却したい」と言ったところ、BはAの言葉を信じ「それなら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合×
2R02-06-3
Aは、自己所有の時価100万円の名匠の絵画を贋作だと思い込み、Bに対し「贋作であるので、10万円で売却する」と言ったところ、Bも同様に贋作だと思い込み「贋作なら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合
3H28-03-4
AB間の売買契約が、Bが意思表示の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤があって締結されたものである場合、Bが所有権移転登記を備えていても、AはBの錯誤を理由にAB間の売買契約を取り消すことができる。×
4H23-01-1A所有の甲土地につき、AとBとの間で売買契約が締結された。Bは、甲土地は将来地価が高騰すると勝手に思い込んで売買契約を締結したところ、実際には高騰しなかった場合、意思表示の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤を理由に本件売買契約を取り消すことができる。×
5H21-01-3意思表示をなすについての動機を表意者が当該意思表示の基礎とし、かつ、その旨を相手方に明示的に表示した場合は、表意者は、意思表示を取り消すことができる。
6H21-01-4意思表示をなすについての動機を表意者が当該意思表示の基礎としたが、その旨を相手方に黙示的に表示したにとどまる場合は、表意者は、意思表示を取り消すことができない。×
7H17-02-2AがBに対し土地の売却の意思表示をしたが、その意思表示は錯誤によるものであった。錯誤が、法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤であり、その事情をAがBに対して法律行為の基礎として表示した場合であっても、Aは、この売却の意思表示を取り消すことができない。×
8H13-02-3Aが、Bに住宅用地を売却した。Aが、今なら課税されないと信じていたが、これをBに話さないで売却した場合、後に課税されたとしても、Aは、錯誤を理由に売買契約を取り消すことはできない。

4 誤り

(肢3参照。)
本肢では、表意者が、動機を相手方に黙示的に表示しています。したがって、動機の錯誤を理由に、意思表示を取り消すことができます。

■参照項目&類似過去問
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動機の錯誤(民法[02]4(2)②)
年-問-肢内容正誤
1R02-06-2
Aは、自己所有の時価100万円の壺を10万円程度であると思い込み、Bに対し「手元にお金がないので、10万円で売却したい」と言ったところ、BはAの言葉を信じ「それなら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合×
2R02-06-3
Aは、自己所有の時価100万円の名匠の絵画を贋作だと思い込み、Bに対し「贋作であるので、10万円で売却する」と言ったところ、Bも同様に贋作だと思い込み「贋作なら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合
3H28-03-4
AB間の売買契約が、Bが意思表示の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤があって締結されたものである場合、Bが所有権移転登記を備えていても、AはBの錯誤を理由にAB間の売買契約を取り消すことができる。×
4H23-01-1A所有の甲土地につき、AとBとの間で売買契約が締結された。Bは、甲土地は将来地価が高騰すると勝手に思い込んで売買契約を締結したところ、実際には高騰しなかった場合、意思表示の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤を理由に本件売買契約を取り消すことができる。×
5H21-01-3意思表示をなすについての動機を表意者が当該意思表示の基礎とし、かつ、その旨を相手方に明示的に表示した場合は、表意者は、意思表示を取り消すことができる。
6H21-01-4意思表示をなすについての動機を表意者が当該意思表示の基礎としたが、その旨を相手方に黙示的に表示したにとどまる場合は、表意者は、意思表示を取り消すことができない。×
7H17-02-2AがBに対し土地の売却の意思表示をしたが、その意思表示は錯誤によるものであった。錯誤が、法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤であり、その事情をAがBに対して法律行為の基礎として表示した場合であっても、Aは、この売却の意思表示を取り消すことができない。×
8H13-02-3Aが、Bに住宅用地を売却した。Aが、今なら課税されないと信じていたが、これをBに話さないで売却した場合、後に課税されたとしても、Aは、錯誤を理由に売買契約を取り消すことはできない。

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