【宅建過去問】(平成22年問11)借地借家法(事業用定期借地権)

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借地借家法第23条の借地権(以下この問において「事業用定期借地権」という。)に関する次の記述のうち、借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。

  1. 事業の用に供する建物の所有を目的とする場合であれば、従業員の社宅として従業員の居住の用に供するときであっても、事業用定期借地権を設定することができる。
  2. 存続期間を10年以上20年未満とする短期の事業用定期借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によらなくとも、書面又は電磁的記録によって適法に締結することができる。
  3. 事業用定期借地権が設定された借地上にある建物につき賃貸借契約を締結する場合、建物を取り壊すこととなるときに建物賃貸借契約が終了する旨を定めることができるが、その特約は公正証書によってしなければならない。
  4. 事業用定期借地権の存続期間の満了によって、その借地上の建物の賃借人が土地を明け渡さなければならないときでも、建物の賃借人がその満了をその1年前までに知らなかったときは、建物の賃借人は土地の明渡しにつき相当の期限を裁判所から許与される場合がある。

正解:4

はじめに

本問は、事業用定期借地権に関するものですが、比較のため、またヒッカケ対策として、他の定期借地権についても、表にまとめておきます。

1 誤り

事業用定期借地権の対象となるのは、「専ら事業の用に供する建物」に限られます(借地借家法23条1項)。逆からいえば、居住の用に供する建物は対象外です。
「従業員の社宅」は、居住の用に供する建物です。したがって、事業用定期借地権を設定することはできません。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
事業用定期借地権(借地借家法[04]1(2)③)
年-問-肢内容正誤
1R05-11-2本件契約が甲土地上で専ら賃貸アパート事業用の建物を所有する目的である場合、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を定めるためには、公正証書で合意しなければならない。×
2R03-11-1事業の用に供する建物を所有する目的とし、期間を60年と定める場合には、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を書面で合意すれば、公正証書で合意しなくても、その旨を借地契約に定めることができる。
3R03-11-2事業の用に供する建物を所有する目的とし、期間を60年と定める場合には、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を書面で合意すれば、公正証書で合意しなくても、その旨を借地契約に定めることができる。
4R01-11-4
賃貸借契約が専ら工場の用に供する建物の所有を目的とする場合、期間を50年と定めたときは契約の更新がないことを公正証書で定めた場合に限りその特約は有効であるが、期間を15年と定めたときは契約の更新がないことを公正証書で定めても無効である。×
5H30-11-1
[AとBとの間で、A所有の甲土地につき建物所有目的で賃貸借契約を締結する。]本件契約が専ら事業の用に供する建物の所有を目的とする場合には、公正証書によらなければ無効となる。×
6H30-11-2
[AとBとの間で、A所有の甲土地につき建物所有目的で賃貸借契約を締結する。]本件契約が居住用の建物の所有を目的とする場合には、借地権の存続期間を20年とし、かつ、契約の更新請求をしない旨を定めても、これらの規定は無効となる。
7H29-11-4
賃貸借契約が建物所有を目的としている場合、契約の更新がなく、建物の買取りの請求をしないこととする旨を定めるには、賃貸人はあらかじめ賃借人に対してその旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。×
8H28-11-3
[Aが居住用の甲建物を所有する目的で、期間30年と定めてBから乙土地を賃借]AB間の賃貸借契約を公正証書で行えば、当該契約の更新がなく期間満了により終了し、終了時にはAが甲建物を収去すべき旨を有効に規定することができる。
×
9H22-11-1社宅も事業用定期借地権の対象になる。×
10H22-11-2事業用定期借地権設定契約は公正証書以外の書面で締結することができる。×
11H18-13-2居住用賃貸マンションは、事業用定期借地権の対象にならない。
12H18-13-3小売業を行う目的の土地賃貸借は、期間20年の事業用定期借地権とすることができる。
13H14-13-1事業用定期借地権を設定した場合、借主は建物買取請求権を有しない。
14H07-12-3賃貸マンションも、事業用定期借地権の対象になる。×

2 誤り

事業用定期借地権の設定を目的とする契約は、公正証書でしなければなりません(借地借家法23条3項)。公正証書以外の書面や電磁的記録で契約することは不可能です。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
事業用定期借地権(借地借家法[04]1(2)③)
年-問-肢内容正誤
1R05-11-2本件契約が甲土地上で専ら賃貸アパート事業用の建物を所有する目的である場合、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を定めるためには、公正証書で合意しなければならない。×
2R03-11-1事業の用に供する建物を所有する目的とし、期間を60年と定める場合には、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を書面で合意すれば、公正証書で合意しなくても、その旨を借地契約に定めることができる。
3R03-11-2事業の用に供する建物を所有する目的とし、期間を60年と定める場合には、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を書面で合意すれば、公正証書で合意しなくても、その旨を借地契約に定めることができる。
4R01-11-4
賃貸借契約が専ら工場の用に供する建物の所有を目的とする場合、期間を50年と定めたときは契約の更新がないことを公正証書で定めた場合に限りその特約は有効であるが、期間を15年と定めたときは契約の更新がないことを公正証書で定めても無効である。×
5H30-11-1
[AとBとの間で、A所有の甲土地につき建物所有目的で賃貸借契約を締結する。]本件契約が専ら事業の用に供する建物の所有を目的とする場合には、公正証書によらなければ無効となる。×
6H30-11-2
[AとBとの間で、A所有の甲土地につき建物所有目的で賃貸借契約を締結する。]本件契約が居住用の建物の所有を目的とする場合には、借地権の存続期間を20年とし、かつ、契約の更新請求をしない旨を定めても、これらの規定は無効となる。
7H29-11-4
賃貸借契約が建物所有を目的としている場合、契約の更新がなく、建物の買取りの請求をしないこととする旨を定めるには、賃貸人はあらかじめ賃借人に対してその旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。×
8H28-11-3
[Aが居住用の甲建物を所有する目的で、期間30年と定めてBから乙土地を賃借]AB間の賃貸借契約を公正証書で行えば、当該契約の更新がなく期間満了により終了し、終了時にはAが甲建物を収去すべき旨を有効に規定することができる。
×
9H22-11-1社宅も事業用定期借地権の対象になる。×
10H22-11-2事業用定期借地権設定契約は公正証書以外の書面で締結することができる。×
11H18-13-2居住用賃貸マンションは、事業用定期借地権の対象にならない。
12H18-13-3小売業を行う目的の土地賃貸借は、期間20年の事業用定期借地権とすることができる。
13H14-13-1事業用定期借地権を設定した場合、借主は建物買取請求権を有しない。
14H07-12-3賃貸マンションも、事業用定期借地権の対象になる。×

3 誤り

取壊し予定建物の賃貸借契約は、書面によってする必要があります(借地借家法39条2項。電磁的記録でも書面による契約とみなされます)。
要求されているのは、「書面(又は電磁的記録)で契約すること」です。その書面が公正証書でなくても構いません。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
取壊し予定の建物の賃貸借(借地借家法[07]2)
年-問-肢内容正誤
1H23-12-3取壊し予定建物の賃貸借は書面による契約で可能。
2H22-11-3取壊し予定建物の賃貸借契約は公正証書によることが必要。×
3H11-14-3取壊し予定建物の賃貸借契約は公正証書によることが必要。×
4H07-12-2借地人が定期借地権に基づき建てた家屋を賃貸する場合は、借家人との間で「賃貸借は、定期借地権の期間満了に伴い家屋を取り壊すこととなる時に終了し、更新はしない」とする契約を締結することができる。
5H05-12-3法令又は契約により一定の期間を経過した後に取り壊すことが明らかな場合には、「建物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する」と特約することができる。

4 正しい

建物の賃借人が借地権の存続期間が満了することをその1年前までに知らなかった場合、裁判所は、1年を超えない範囲内で、土地の明渡しにつき相当の期限を与えることができます(借地借家法35条1項)。


※これは、借地権の存続期間が満了する場合の措置です。借地権者の債務不履行により賃貸借契約が解除された場合には、適用されません。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
借地上の建物の賃借人の保護(借地借家法[06]5)
年-問-肢内容正誤
1H22-11-4借地権の存続期間の満了を、建物の賃借人が1年前までに知らなかった場合、裁判所が期限を許与できる。
2H18-14-3借地権の債務不履行による解除を、建物の賃借人が1年前までに知らなかった場合、裁判所が期限を許与できる。×
3H18-14-4借地権の存続期間の満了を、建物の賃借人が1年前までに知らなかった場合、裁判所が期限を許与できる。
4H12-12-4借地権の存続期間の満了を、建物の賃借人が1年前までに知らなかった場合、裁判所に明渡しの猶予を請求できる。

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【宅建過去問】(平成22年問11)借地借家法(事業用定期借地権)” に対して2件のコメントがあります。

  1. R32SKYLINEGTR より:

    先生に質問がございます

    事業用定期借地権ではない場合の一般の人が借りる場合の
    借地権について質問がございます

    本問の、

    ①期間50年とする定期借地権と、

    ②最短期間30年、最初の更新時20年、
    2度目以降は10年以上の借地権

    ③建物譲渡特約付借地権

    はどういう場合に成立するんでしょうか?

    また、本問のケースは、土地も借りて建物所有する場合に成立できるものでしょうか?

    なので平成19年度の問14の定期建物賃貸借、通常の建物賃貸借が成立する場合、間違ってたらすいません、土地を借りるのではなく、建物だけを借りるケースとはちがいますか?

    本当に申し訳ありません、先生・・お願いします!!

    1. 家坂 圭一 より:

      R32SKYLINEGTR様

      御質問を拝見すると、この過去問に関する質問というよりも、借地借家法の基本的なところでつまづいているように感じます。

      コメント欄で、基本知識から講義することは、残念ながら不可能です(ここは、過去問とその解説に関する質問を扱うサイトなので)。

      この問題にこだわる前に、まず、御利用されているテキストを確認するほうがいいでしょう。

      具体的には、
      ①借地権と借家権(建物賃貸借)との区別
      ②普通借地権・定期借地権の成立要件
      ③定期建物賃貸借の成立要件
      などです。

      以下、混乱されてらっしゃるように見える箇所を具体的に指摘します。

      >また、本問のケースは、土地も借りて建物所有する場合に成立できるものでしょうか?

      本問は、「借地権」に関する問題です。すなわち、「建物の所有『を』目的とする地上権又は土地の賃借権」(借地借家法2条1号)がテーマです。

      「土地『も』借りて」という質問は、どういう意味でしょうか?

      >なので平成19年度の問14の定期建物賃貸借、通常の建物賃貸借が成立する場合、間違ってたらすいません、土地を借りるのではなく、建物だけを借りるケースとはちがいますか?

      平成19年問14は、建物賃貸借の問題です。当然のことながら、建物だけを借りるのであって、土地を借りるのではありません。
      もちろん、借地権の問題とは違います。

      ■まとめ■
      基本知識を整理したうえで、あらためてこの問題にチャレンジしましょう。
      まだ時間はありますから、焦ることなく行きましょう。

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