【宅建過去問】(平成22年問27)免許の基準(欠格要件)
宅地建物取引業の免許(以下この問において「免許」という。)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 法人Aの役員のうちに、破産手続開始の決定がなされた後、復権を得てから5年を経過しない者がいる場合、Aは、免許を受けることができない。
- 法人Bの役員のうちに、宅地建物取引業法の規定に違反したことにより、罰金の刑に処せられ、その刑の執行が終わった日から5年を経過しない者がいる場合、Bは、免許を受けることができない。
- 法人Cの役員のうちに、刑法第204条(傷害) の罪を犯し懲役1年の刑に処せられ、その刑の執行猶予期間を経過したが、その経過した日から5年を経過しない者がいる場合、Cは、免許を受けることができない。
- 法人Dの役員のうちに、道路交通法の規定に違反したことにより、科料に処せられ、その刑の執行が終わった日から5年を経過しない者がいる場合、Dは、免許を受けることができない。
正解:2
はじめに
■欠格要件チェックの対象者
法人業者の免許について欠格要件を考える場合、法人自体だけでなく、その役員や政令で定める使用人も欠格要件を判断する際の対象者になります(宅建業法5条1項12号)。
■犯罪と欠格要件
まず、重い刑罰を受けた場合。具体的には、禁錮以上の刑に処せられた場合、宅建業の免許の欠格要件に該当します(同条1項5号)。犯罪の種類は、問いません。
逆に、軽い刑罰の場合。具体的には、拘留や科料の刑罰を受けたとしても、宅建業の免許の取得には全く問題がありません。
複雑なのは、罰金の場合です。罰金刑を受けた場合は、その原因となった犯罪の種類により、欠格要件になるかどうか、が異なります(同条6号)。したがって、刑罰の種類だけでなく、原因になった罪名までチェックする必要があります。
1 誤り
免許の欠格要件に該当するのは、「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」です(宅建業法5条1項1号)。逆にいえば、復権を得たときからは免許を受けることができます。5年の経過を待つ必要はありません。
したがって、その者を役員としていても、法人Aは、免許を受けることができます。
■類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R02s-31-2 | 免許を受けようとしている法人の政令で定める使用人が、破産手続開始の決定を受け、復権を得てから5年を経過していない場合、当該法人は免許を受けることができない。 | × |
2 | R02-43-4 | 免許を受けようとするE社の取締役について、破産手続開始の決定があった場合、復権を得た日から5年を経過しなければ、E社は免許を受けることができない。 | × |
3 | 22-27-1 | 復権から5年経過しない者が役員にいる法人は、免許が受けられない。 | × |
4 | 21-27-ア | 復権から5年経過しない個人は、免許が受けられない。 | × |
5 | 20-31-2 | 復権を得た者が役員に就任しても、免許が取り消されることはない。 | ◯ |
6 | 19-33-4 | 復権から5年経過しない者が役員にいる法人は、免許が受けられない。 | × |
7 | 16-31-4 | 復権から5年経過しない個人は、免許が受けられない。 | × |
8 | 12-30-3 | 復権から5年経過しない者が役員にいる法人は、免許が受けられない。 | × |
9 | 04-46-4 | 破産者は復権を得ない限り宅建業の免許を受けられないし、法人の役員になったときは、その法人が免許を取り消される。 | ◯ |
2 正しい
(「はじめに」参照。)
「宅建業法違反で罰金刑に処せられた者」は、免許の欠格要件に該当します。刑の執行が終わった日から5年を経過しない限り、免許を受けることができません(宅建業法5条1項6号)。
このような人を役員にしている以上、法人Bは免許を受けることができません(同項12号)。
■類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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宅建業法違反 | |||
1 | 22-27-2 | 役員が、宅建業法違反で罰金刑→免許を受けられない。 | ◯ |
2 | 21-27-イ | 取締役が、宅建業法違反で罰金刑→免許を受けられない。 | ◯ |
3 | 15-31-3 | 役員が、宅建業法違反で罰金刑→免許を受けられる。 | × |
4 | 06-50-1 | 役員が、宅建業法違反で罰金刑→免許を取り消される。 | ◯ |
傷害罪 | |||
1 | 15-31-4 | 役員が、傷害罪で罰金刑→免許を受けられない。 | ◯ |
2 | 02-44-ア | 取締役が、傷害罪で罰金刑→免許を取り消される。 | ◯ |
傷害現場助勢罪 | |||
1 | 24-26-2 | 非常勤役員が、傷害現場助勢罪で罰金刑→免許を受けられる。 | × |
暴行罪 | |||
1 | 17-31-4 | 取締役が、暴行罪で罰金刑→免許を取り消される。 | ◯ |
2 | 08-37-2 | 代表取締役が、暴行罪で罰金刑→免許を受けられる。 | × |
凶器準備集合・結集罪 | |||
1 | 25-26-3 | 非常勤役員が、凶器準備集合・結集罪で罰金刑→免許を取り消されることはない。 | × |
脅迫罪 | |||
1 | 25-26-2 | 支店代表者である使用人が、背任罪で罰金刑→免許を取り消されることはない。 | × |
2 | 08-37-4 | 非常勤取締役が、脅迫罪で罰金刑→免許を受けられる。 | × |
背任罪 | |||
1 | 16-31-1 | 政令で定める使用人が、背任罪で罰金刑→免許を受けられる。 | × |
2 | 10-31-2 | 取締役と同等の支配力を有する非常勤顧問が、背任罪で罰金刑→免許が取り消されることはない。 | × |
3 | 01-39-1 | 未成年者で成年者と同一の能力がなく、法定代理人が背任罪で罰金刑→免許を受けられる。 | × |
欠格要件でないもの | |||
刑法犯(条文番号順) | |||
1 | 15-31-1 | 役員が、私文書偽造罪で罰金刑→免許を受けられない。 | × |
2 | 17-31-2 | 取締役が、贈賄罪で罰金刑→免許を受けられない。 | × |
3 | 19-33-2 | 取締役が、過失傷害罪で罰金刑→免許を取り消される。 | × |
4 | 09-33-4 | 役員が、過失傷害罪で罰金刑→免許を取り消される。 | × |
5 | 03-39-イ | 代表取締役が、業務上過失致傷罪で罰金刑→免許を受けられる。 | ◯ |
6 | 05-36-1 | 取締役が、業務妨害罪で罰金刑→免許を受けられる。 | ◯ |
7 | 23-27-2 | 役員が、詐欺罪で罰金刑→免許を受けられない。 | × |
8 | R01-43-3 | 免許を受けようとする法人の事務所に置く専任の宅地建物取引士が、刑法第261条(器物損壊等)の罪により罰金の刑に処せられ、その刑の執行が終わった日から5年を経過していない場合、当該法人は免許を受けることができない。 | × |
刑法以外 | |||
1 | 25-26-1 | 代表取締役が、道路交通法違反で罰金刑→免許を取り消されることはない。 | ◯ |
2 | 06-35-4 | 代表取締役が、道路交通法違反で罰金刑→免許を受けられない。 | × |
3 誤り
(「はじめに」参照。)
懲役刑に処せられた者は、原因となる犯罪を問わず、免許の欠格要件に該当します(宅建業法5条1項5号)。
しかし、執行猶予期間の満了により、刑の言渡し自体が、効力を失います(刑法27条)。その後に免許を受けることには何ら問題がありません。
したがって、その者を役員としていても、法人Cは、免許を受けることができます。
■類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R02-43-1 | 免許を受けようとするA社の取締役が刑法第204条(傷害)の罪により懲役1年執行猶予2年の刑に処せられた場合、刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予期間を満了し、その日から5年を経過しなければ、A社は免許を受けることができない。 | × |
2 | R01-43-1 | 免許を受けようとする法人の非常勤役員が、刑法第246条(詐欺)の罪により懲役1年の刑に処せられ、その刑の執行が終わった日から5年を経過していなくても、当該法人は免許を受けることができる。 | × |
3 | R01-43-2 | 免許を受けようとする法人の政令で定める使用人が、刑法第252条(横領)の罪により懲役1年執行猶予2年の刑に処せられ、その刑の執行猶予期間を満了している場合、その満了の日から5年を経過していなくても、当該法人は免許を受けることができる。 | ◯ |
4 | 30-36-3 | 宅地建物取引業を営もうとする個人Cが、懲役の刑に処せられ、その刑の執行を終えた日から5年を経過しない場合、Cは免許を受けることができない。 | ◯ |
5 | 27-27-2 | C社の政令で定める使用人Dは、刑法第234条(威力業務妨害)の罪により、懲役1年、執行猶予2年の刑に処せられた後、C社を退任し、新たにE社の政令で定める使用人に就任した。この場合においてE社が免許を申請しても、Dの執行猶予期間が満了していなければ、E社は免許を受けることができない。 | ◯ |
6 | 25-26-4 | 宅建業者の代表取締役が、懲役刑に処せられたとしても、執行猶予が付されれば、宅建業者の免許は取り消されることはない。 | × |
7 | 25-43-3 | 政令で定める使用人が、懲役刑に処せられ、刑執行終了から5年経過していない場合、法人は免許を受けることができる。 | × |
8 | 24-26-1 | 免許を受けようとするA社に、刑法第204条(傷害)の罪により懲役1年(執行猶予2年)の刑に処せられ、その刑の執行猶予期間を満了した者が役員として在籍している場合、その満了の日から5年を経過していなくとも、A社は免許を受けることができる。 | ◯ |
9 | 22-27-3 | 法人Cの役員のうちに、刑法第204条(傷害)の罪を犯し懲役1年の刑に処せられ、その刑の執行猶予期間を経過したが、その経過した日から5年を経過しない者がいる場合、Cは、免許を受けることができない。 | × |
10 | 20-31-1 | 宅地建物取引業者A社に、道路交通法違反により懲役1年執行猶予2年の刑に処せられた者が役員として就任する場合、就任時において執行猶予期間中であれば、その就任をもって、A社の免許が取り消されることはない。 | × |
11 | 20-31-4 | 免許を受けようとするD社に、刑法第204条(傷害)の罪により懲役1年執行猶予2年の刑に処せられ、その猶予期間が満了している役員がいる場合、その満了の日から5年を経過しなければ、D社は免許を受けることができない。 | × |
12 | 17-31-1 | 宅地建物取引業者A社は、取締役Bが道路交通法に違反し、懲役1年執行猶予3年の刑に処せられたため、免許取消処分を受けた。Bが取締役を退任した後、A社は改めて免許申請をしてもBの執行猶予期間が経過するまでは免許を受けることができない。 | × |
13 | 08-37-1 | 支店の代表者が、傷害罪で懲役1年執行猶予2年の刑に処せられ、執行猶予期間を満了したが、満了日から5年経過していない→免許を受けられる。 | ◯ |
14 | 03-39-ウ | 取締役が、3年前に詐欺罪で1年の懲役刑→免許を受けられる。 | × |
15 | 03-39-エ | 取締役が、横領罪により懲役1年、執行猶予2年の刑に処せられ、執行猶予期間が満了してから1年を経過→免許を受けられる。 | ◯ |
16 | 01-39-3 | 取締役が、贈賄罪により懲役1年、執行猶予3年の刑に処せられ、執行猶予期間が満了していない→免許を受けられる。 | × |
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R02-43-1 | 免許を受けようとするA社の取締役が刑法第204条(傷害)の罪により懲役1年執行猶予2年の刑に処せられた場合、刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予期間を満了し、その日から5年を経過しなければ、A社は免許を受けることができない。 | × |
2 | R01-43-2 | 免許を受けようとする法人の政令で定める使用人が、刑法第252条(横領)の罪により懲役1年執行猶予2年の刑に処せられ、その刑の執行猶予期間を満了している場合、その満了の日から5年を経過していなくても、当該法人は免許を受けることができる。 | ◯ |
3 | 27-27-2 | C社の政令で定める使用人Dは、刑法第234条(威力業務妨害)の罪により、懲役1年、執行猶予2年の刑に処せられた後、C社を退任し、新たにE社の政令で定める使用人に就任した。この場合においてE社が免許を申請しても、Dの執行猶予期間が満了していなければ、E社は免許を受けることができない。 | ◯ |
4 | 25-26-4 | 宅建業者の代表取締役が、懲役刑に処せられたとしても、執行猶予が付されれば、宅建業者の免許は取り消されることはない。 | × |
5 | 24-26-1 | 期間満了から5年経過しなくても免許を受けられる。 | ◯ |
6 | 22-27-3 | 期間満了から5年経過しないと免許を受けられない。 | × |
7 | 20-31-1 | 執行猶予期間中の者を役員にすることは免許取消事由にならない。 | × |
8 | 20-31-4 | 期間満了から5年経過しないと免許を受けられない。 | × |
9 | 18-30-1 | 期間満了から5年経過しないと免許を受けられない。 | × |
10 | 17-31-1 | 執行猶予付懲役刑に処せられた取締役が退任した後であっても、その執行猶予期間が満了するまでは、免許を受けられない。 | × |
11 | 17-31-3 | 期間満了から5年経過しないと免許を受けられない。 | × |
12 | 16-31-2 | 期間満了から5年経過しないと免許を受けられない。 | × |
13 | 15-31-2 | 執行猶予期間中であっても免許を受けることができる。 | × |
14 | 10-31-1 | 取締役が執行猶予付懲役刑に処せられたとしても、免許を取り消されることはない。 | × |
15 | 08-37-1 | 期間満了から5年経過しなくても免許を受けられる。 | ◯ |
16 | 03-39-エ | 期間満了から1年経過していれば免許を受けられる。 | ◯ |
17 | 01-39-3 | 執行猶予期間中であっても免許を受けることができる。 | × |
関連過去問(欠格要件:判決確定前) | |||
1 | 18-30-3 | 取締役が、私文書偽造罪を犯し、地方裁判所で懲役2年の判決を言い渡されたが、現在、高等裁判所に控訴中である場合、その会社は免許を受けることができない。 | × |
4 誤り
(「はじめに」参照。)
刑罰を科せられたことが、免許の欠格要件には該当するのは、罰金刑以上の場合に限られます。罰金刑よりも軽い科料刑は、その原因となる犯罪を問わず、欠格要件に該当しません(宅建業法5条1項5号、6号参照)
したがって、その者を役員としていても、法人Dは、免許を受けることができます。
■類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R01-43-4 | 免許を受けようとする法人の代表取締役が、刑法第231条(侮辱)の罪により拘留の刑に処せられ、その刑の執行が終わった日から5年を経過していない場合、当該法人は免許を受けることができない。 | × |
2 | 24-26-3 | 免許を受けようとするC社に、刑法第208条(暴行)の罪により拘留の刑に処せられた者が役員として在籍している場合、その刑の執行が終わってから5年を経過していなければ、C社は免許を受けることができない。 | × |
3 | 24-26-4 | 免許を受けようとするD社に、刑法第209条(過失傷害)の罪により科料の刑に処せられた者が非常勤役員として在籍している場合、その刑の執行が終わってから5年を経過していなければ、D社は免許を受けることができない。 | × |
4 | 22-27-4 | 法人Dの役員のうちに、道路交通法の規定に違反したことにより、科料に処せられ、その刑の執行が終わった日から5年を経過しない者がいる場合、Dは、免許を受けることができない。 | × |
5 | 20-31-3 | 免許を受けようとするC社に、刑法第206条(現場助勢)の罪により科料に処せられた役員がいる場合、その刑の執行が終わってから5年を経過しなければ、C社は免許を受けることができない。 | × |