【宅建過去問】(平成23年問06)相殺


Aは自己所有の甲建物をBに賃貸し賃料債権を有している。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

  1. Aの債権者Cが、AのBに対する賃料債権を差し押さえた場合、Bは、その差し押さえ前に取得していたAに対する債権と、差し押さえにかかる賃料債務とを、その弁済期の先後にかかわらず、相殺適状になった段階で相殺し、Cに対抗することができる。
  2. 甲建物の抵当権者Dが、物上代位権を行使してAのBに対する賃料債権を差し押さえた場合、Bは、Dの抵当権設定登記の後に取得したAに対する債権と、差し押さえにかかる賃料債務とを、相殺適状になった段階で相殺し、Dに対抗することができる。
  3. 甲建物の抵当権者Eが、物上代位権を行使してAのBに対する賃料債権を差し押さえた場合、その後に賃貸借契約が終了し、目的物が明け渡されたとしても、Bは、差し押さえにかかる賃料債務につき、敷金の充当による当然消滅を、Eに対抗することはできない。
  4. AがBに対する賃料債権をFに適法に譲渡し、その旨をBに通知したときは、通知時点以前にBがAに対する債権を有しており相殺適状になっていたとしても、Bは、通知後はその債権と譲渡にかかる賃料債務を相殺することはできない。

正解:1

1 正しい

支払の差止めを受けた第三債務者(B)は、そのに取得した債権による相殺をもって差押債権者(C)に対抗することができません(民法511条)。
しかし、本肢のBがAに対して有する債権は、Cによる差し押え前に取得したものです。したがって、Bからの相殺が可能です(最大判昭45.06.24)。
両者が相殺適状に達していれば、弁済期の先後は、問われません。

※ポイントは、Cによる支払いの差止め(差し押さえ)と、Bの債権取得の先後です。この点をチェックしましょう。

■類似過去問
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支払差止債権と相殺(民法[22]4(2))
 年-問-肢内容正誤
130-09-2[Aは、平成30年10月1日、A所有の甲土地につき、Bとの間で、代金1,000万円、支払期日を同年12月1日とする売買契約を締結した。]同年11月1日にAの売買代金債権がAの債権者Cにより差し押さえられても、Bは、同年11月2日から12月1日までの間にAに対する別の債権を取得した場合には、同年12月1日に売買代金債務と当該債権を対当額で相殺することができる。
×
223-06-1差押前に取得した債権を自働債権とする場合、受働債権との弁済期の先後を問わず、相殺が可能。
323-06-2抵当権者が物上代位により賃料債権を差押した後でも、抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記の後に取得した債権を自働債権として相殺の主張ができる。×
416-08-4差押前に取得した債権を自働債権とした相殺が可能。
515-05-3抵当権者が物上代位により賃料債権を差押した後は、抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記の前に取得した債権を自働債権として相殺の主張ができない。×
607-08-4差押後に取得した債権を自働債権とした相殺は不可。

2 誤り

抵当権者Dが物上代位権を行使して賃料債権の差押えをしています。これ以降、抵当不動産の賃借人Bは、抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権として、相殺をすることはできません(最判平13.03.13)。

※ポイントは、Dの抵当権設定登記と、Bの債権取得の先後です。この点をチェックしましょう。

■類似過去問
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支払差止債権と相殺(民法[22]4(2))
 年-問-肢内容正誤
130-09-2[Aは、平成30年10月1日、A所有の甲土地につき、Bとの間で、代金1,000万円、支払期日を同年12月1日とする売買契約を締結した。]同年11月1日にAの売買代金債権がAの債権者Cにより差し押さえられても、Bは、同年11月2日から12月1日までの間にAに対する別の債権を取得した場合には、同年12月1日に売買代金債務と当該債権を対当額で相殺することができる。
×
223-06-1差押前に取得した債権を自働債権とする場合、受働債権との弁済期の先後を問わず、相殺が可能。
323-06-2抵当権者が物上代位により賃料債権を差押した後でも、抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記の後に取得した債権を自働債権として相殺の主張ができる。×
416-08-4差押前に取得した債権を自働債権とした相殺が可能。
515-05-3抵当権者が物上代位により賃料債権を差押した後は、抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記の前に取得した債権を自働債権として相殺の主張ができない。×
607-08-4差押後に取得した債権を自働債権とした相殺は不可。

3 誤り

敷金は、建物明渡義務を履行するまでの賃貸人の賃借人に対する全ての債権を担保するものです。そして、賃貸人は、賃貸借の終了後、明渡完了するまでに生じた被担保債権を控除してなお残額がある場合に、その残額につき返還義務を負担するに過ぎません(最判昭48.02.02)。
したがって、抵当権者が物上代位権を行使して、賃料債権を差し押さえたとしても、権利を行使できるのは、敷金が残存している範囲に限られます(最判平14.03.28)。

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敷金契約の性質(民法[29]8(1))
 年-問-肢内容正誤
128-01-2
賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づく金銭債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる旨が、民法の条文に規定されている。×
223-06-3
[Aは自己所有の甲建物をBに賃貸し賃料債権を有している。]甲建物の抵当権者Eが、物上代位権を行使してAのBに対する賃料債権を差し押さえた場合、その後に賃貸借契約が終了し、目的物が明け渡されたとしても、Bは、差し押さえにかかる賃料債務につき、敷金の充当による当然消滅を、Eに対抗することはできない。×
320-10-4[Aは、自己所有の甲建物(居住用)をBに賃貸]甲建物の抵当権者がAのBに対する賃料債権につき物上代位権を行使してこれを差し押さえた場合においても、その賃料が支払われないまま賃貸借契約が終了し、甲建物がBからAに明け渡されたときは、その未払賃料債権は敷金の充当により、その限度で消減する。
413-09-1賃貸借契約期間中でも、貸主の返済能力に客観的な不安が生じた場合は、借主は、賃料支払債務と敷金返還請求権とを対当額にて相殺することができる。×
513-09-4貸主は、借主の、賃貸借契約終了時までの未払賃料と契約終了後明渡しまでの期間の賃料相当損害額の双方を、敷金から控除できる。
610-03-1賃借人は、建物賃貸借契約が終了し、建物の明渡しが完了した後でなければ、敷金返還請求権について質権を設定することはできない。×
710-03-4敷金返還請求権に質権を設定した者が、賃借人に対し質権実行通知をしたとき、賃借人は、通知受領後明渡し完了前に発生する賃料相当損害金については敷金から充当することができなくなる。×
806-10-1借主は、貸主に対し、未払賃料について敷金からの充当を主張することができる。×
906-10-2借主の債権者が敷金返還請求権を差し押さえたときは、貸主は、その範囲で、未払賃料の弁済を敷金から受けることができなくなる。×
物上代位と敷金(民法[13]3(4)③)
 年-問-肢内容正誤
123-06-3抵当権者が物上代位により賃料債権を差し押さえた後、賃貸借契約終了した場合、未払いの賃料債権は敷金の限度で当然消滅するわけではない。×
220-10-4抵当権者が賃料債権につき物上代位権を行使し差し押さえた場合でも、未払い賃料債権は敷金の充当により消滅する。
315-05-4抵当権者が物上代位権を行使し賃料債権を差し押さえた場合、賃料債権につき敷金が充当される限度において物上代位権を行使できない。
406-10-2借主の債権者が敷金返還請求権を差し押さえたときは、貸主は、その範囲で、借主の未払賃料の弁済を敷金から受けることができなくなる。×

4 誤り

債権譲渡の対抗要件が譲渡人からの通知である場合、債務者は、通知を受けるまでに譲渡人に対して生じていた事由を譲受人に対抗することができます(民法468条2項)。
本肢は、まさに、このパターンです。債務者(B)は、譲渡人(A)に対して生じた事由(相殺適状)を、譲受人(F)にも対抗することができます。

債務者の抗弁

※これと異なる結論となるのは、債務者が債権譲渡について異議をとどめないで承諾した場合です。このケースでは、債務者が譲渡人に対して主張できた事由があったとしても、それを譲受人に対抗することができなくなります。

■類似過去問
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債権譲渡:債務者の抗弁(民法[20]4)
 年-問-肢内容正誤
譲受人からの通知
123-05-3債権者が債務者に譲渡の通知をした場合、債務者は譲受人に対し、譲渡人に対する相殺を主張できない。×
223-06-4債権者が債務者に譲渡の通知をした場合、債務者は譲受人に対し、譲渡人に対する相殺を主張できない。×
312-06-4すでに譲渡人に弁済していたのに、異議を留めないで承諾した場合、債務者は、弁済したことを譲受人にも譲渡人にも主張できない。×
409-05-2債務者が異議を留めない承諾をした場合、債務者は、善意の譲受人に譲渡人に対する相殺を主張できない。債権者が譲渡の通知をした場合は、相殺を主張できる。
505-05-2債権者が債務者に譲渡の通知をした場合、債務者は譲受人に対し、譲渡人に対する相殺を主張できる。
債務者の異議を留めない承諾
112-06-4すでに譲渡人に弁済していたのに、異議を留めないで承諾した場合、債務者は、弁済したことを譲受人にも譲渡人にも主張できない。×
209-05-2債務者が異議を留めない承諾をした場合、債務者は、善意の譲受人に譲渡人に対する相殺を主張できない。債権者が譲渡の通知をした場合は、相殺を主張できる。

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【宅建過去問】(平成23年問06)相殺” に対して1件のコメントがあります。

  1. 裸ノ大将 より:

    問の1.について質問させていただいてよろしいでしょうか。
    元々Aに対して債権を所有しているCが、その債権をBからBの所有するAに対しての債権で相殺をされることでCはAに対しての債権を失うだけの状態になるように思えるのですが自分の認識が間違ってるのでしょうか。

    1. 家坂 圭一 より:

      少し勘違いがあるようです。
      Bからの相殺によって消滅するのは、「AのBに対する賃料債権」です。
      「CのAに対する債権」が消滅するわけではありません。

      Cは、Aに対する債権を「AのBに対する賃料債権」から回収することはできません。
      しかし、別の方法で取り立てることは可能です。

      1. 裸ノ大将 より:

        素早い解説に感謝致します。
        問題文最後の文章の「Cに対抗することが出来る」という一文で混乱してしまいました。
        ありがとうございました。

        1. 家坂 圭一 より:

          どういたしまして。
          お役に立てて幸いです。

  2. くろねこ より:

    問1の解説について疑問があります
    解説では、賃料債権が差し押さえられる前に
    弁済期の到来の有無にかかわらず自働債権となる債権を取得しさえすれば
    相殺が可能、とあります。
    しかし、相殺適状の要件のひとつに自働債権が弁済期に来ているとき、とあるのですが
    今回に関してはそれは例外となるのでしょうか?

    1. 家坂 圭一 より:

      くろねこ様

      質問ありがとうございます。
      くろねこさんの御質問には、ちょっと混乱があるように思います。

      以下の2つの論点は、区別しなければなりません。
      (1)Aの債権とBの債権とは、相殺が可能な関係か?
      (2)(相殺が可能として)それは、いつからできるのか?

      この選択肢の論点となっているのは、(1)です。
      そして、(1)については、「Bの債権が差押後に取得されたものでない限り、Bからの相殺が可能」というのが判例の見解です。

      一方、くろねこさんの質問は、(2)に関するものです。
      実際に相殺するにあたっては、もちろん、「相殺適状にあること」が必要です。そして、相殺適状の要件の一つとして、「自働債権が弁済期にあること」というものがあるのも事実です。
      しかし、この選択肢は、この論点に関しては、何も質問していません。なぜなら、問題文に、「相殺適状になった段階で相殺し」とバッチリ書いてあるからです。つまり、この選択肢では、「双方の債権が相殺適状にあること」は、確実なのです。
      したがって、「自働債権の弁済期が到来しているかどうか」を悩む必要はありません。「相殺適状になった」といっている以上、「自働債権の弁済期が到来している」ことは明らかです。

      1. くろねこ より:

        問題文の読み方に問題があったのですね、回答ありがとうございました。

        1. 家坂 圭一 より:

          くろねこ様

          わざわざ御返信ありがとうございます。
          本試験まで1か月。
          気持ちは焦りますが、落ち着いて勉強を進めましょう!

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