【宅建過去問】(平成23年問07)転貸借

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Aは、Bに対し建物を賃貸し、Bは、その建物をAの承諾を得てCに対し適法に転貸している。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1. BがAに対して賃料を支払わない場合、Aは、Bに対する賃料の限度で、Cに対し、Bに対する賃料を自分に直接支払うよう請求することができる。
  2. Aは、Bに対する賃料債権に関し、Bが建物に備え付けた動産、及びBのCに対する賃料債権について先取特権を有する。
  3. Aが、Bとの賃貸借契約を合意解除しても、特段の事情がない限り、Cに対して、合意解除の効果を対抗することができない。
  4. Aは、Bの債務不履行を理由としてBとの賃貸借契約を解除するときは、事前にCに通知等をして、賃料を代払いする機会を与えなければならない。

正解:4

設定の確認

1 正しい

賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負います(民法613条1項前段)。したがって、賃貸人は、賃借料の範囲で、転借人に対して直接に転借料を自分に支払うよう請求することが可能です。ただし、請求できるのは賃借料と転借料のうち、少ないほうの額に限られます。
本肢では、賃貸人Aは転借人Cに対して、賃借料の範囲で賃料の直接支払いを請求することができます。

■参照項目&類似過去問
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転貸の効果(民法[26]5(3))
年-問-肢内容正誤
[共通の設定]
AがBに甲建物を月額10万円で賃貸し、BがAの承諾を得て甲建物をCに適法に月額15万円で転貸している。
1R02s-06-4
BがAに約定の賃料を支払わない場合、Cは、Bの債務の範囲を限度として、Aに対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負い、Bに賃料を前払いしたことをもってAに対抗することはできない。
228-08-2
BがAに対して甲建物の賃料を支払期日になっても支払わない場合、AはCに対して、賃料10万円をAに直接支払うよう請求することができる。
323-07-1BがAに対して賃料を支払わない場合、Aは、Bに対する賃料の限度で、Cに対し、Bに対する賃料を自分に直接支払うよう請求することができる。
416-13-1転借人Cは、賃貸人Aに対しても、月10万円の範囲で、賃料支払債務を直接に負担する。
510-06-2Cは、Aから請求があれば、CがBに支払うべき転借料全額を直接Bに支払うべき義務を負う。
×
601-06-4BがAの承諾を得て第三者Cに建物を転貸した場合、Aは、Cに対して直接賃料を請求することができる。

2 正しい

建物の賃貸人の先取特権の範囲には、賃借人がその建物に備え付けた動産が含まれます(民法313条2項)。また、転貸の場合、賃貸人の先取特権は、転借人の動産や転貸人が受け取るべき賃料債権にも及ぶとされています(同法314条)。
したがって、Aは、Bが建物に備え付けた動産のみならず、BのCに対する賃料債権についても、先取特権を行使することができます。

■参照項目&類似過去問
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先取特権(民法[14]1(2))
年-問-肢内容正誤
法定担保物権
121-05-2先取特権も質権も、債権者と債務者との間の契約により成立する。×
219-07-1建物の建築工事の費用について先取特権を行使するには、あらかじめ債務者である建築主との間で、先取特権の行使について合意しておく必要がある。×
目的物
121-05-3留置権は動産についても不動産についても成立するのに対し、先取特権は動産については成立するが不動産については成立しない。×
物上代位
121-05-1火災保険に基づく損害保険金請求権は、抵当権・先取特権による物上代位の対象となる。
217-05-1不動産の売買により生じた債権を有する者は先取特権を有し、当該不動産が賃借されている場合には、賃料に物上代位することができる。
312‐03‐3建物の賃料債権の先取特権に関し、賃借人が建物内の動産を第三者に売却した場合、賃貸人は、代金債権に対し、払渡し前に差押えをしなくても先取特権を行使できる。×
動産の先取特権
123-07-2建物の賃料債権の先取特権に関賃借人が建物に備え付けた動産、転貸人の転借料債権→先取特権の対象。
212-03-1賃借人所有の家具類、自己使用のために持ち込んだ時計・宝石類→先取特権の対象。
312-03-2転借人が建物内に所有する動産→先取特権の対象。
412-03-3賃借人が建物内の動産を第三者に売却した場合、賃貸人は、代金債権に対し、払渡し前に差押えをしなくても先取特権を行使できる。×
512-03-4敷金を受領している場合、敷金を差し引いた残額についてのみ先取特権が発生。
不動産保存・不動産工事の先取特権
103-07-3不動産を目的とする担保物権の順位は、すべて登記の先後による。×

3 正しい

賃貸人Aが賃借人Bと賃貸借契約を合意解除したとしても、転借人Cに対して解除を対抗することができません。したがって、甲建物の明渡しを請求することもできません(最判昭62.03.24)。

■参照項目&類似過去問
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転貸の終了(合意解除)(民法[26]5(4)①)
年-問-肢内容正誤
[共通の設定]
Aは、Bに対し建物を賃貸し、Bは、その建物をAの承諾を得てCに対し適法に転貸している。
1R02s-06-1
Aは、Bとの間の賃貸借契約を合意解除した場合、解除の当時Bの債務不履行による解除権を有していたとしても、合意解除したことをもってCに対抗することはできない。×
228-08-4
AがBとの間で甲建物の賃貸借契約を合意解除した場合、AはCに対して、Bとの合意解除に基づいて、当然には甲建物の明渡しを求めることができない。
327-09-1土地の賃借人が無断転貸した場合において賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるため賃貸人が無断転貸を理由に賃貸借契約を解除できないときであっても、賃貸借契約を合意解除したときは、賃貸人は転借人に対して賃貸土地の明渡しを請求することができる。
×
427-09-4土地の賃借人が無断転貸した場合、転借人は、賃貸人と賃借人との間で賃貸借契約が合意解除されたとしても、賃貸人からの賃貸土地の明渡し請求を拒絶することができる場合がある。
523-07-3Aが、Bとの賃貸借契約を合意解除しても、特段の事情がない限り、Cに対して、合意解除の効果を対抗することができない。
616-13-3AB間で賃貸借契約を合意解除しても、転借人Cに不信な行為があるなどの特段の事情がない限り、賃貸人Aは、転借人Cに対し明渡しを請求することはできない。
710-06-1AとBとが賃貸借契約を合意解除した場合、BC間の転貸借契約は、その前提を失うため、特別の事情のある場合を除き、当然に終了する。
×
806-12-2AB間の賃貸借が合意解除によって終了すれば、CがBの承諾を得て転借していても、特段の事由のない限り、AC間の転貸借は終了し、Cの権利は、消滅する。
×
904-11-4賃貸人の承諾を得て、賃借人から建物を転借している場合、賃貸借契約が合意解除されても、転借人の権利は、特段の事由がある場合を除き、消滅しない。

4 誤り

賃借人Bの債務不履行(賃料の不払い)を理由に賃貸借契約を解除する場合、賃貸人Aは、Bに対して、解除の手続をとれば十分です。転借人Cに対して賃料代払いの機会を与える必要はありません(民法541条、最判昭37.03.29)。

■参照項目&類似過去問
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転貸の終了(債務不履行による解除)(民法[26]5(4)②借地借家法[06]4(2)②

[共通の設定]
Aは、Bに対し甲建物を賃貸し、Bは、その建物をAの承諾を得てCに対し適法に転貸している。
年-問-肢内容正誤
1R03s-12-3
建物の転貸借がされている場合において、本件契約がB(転貸人)の債務不履行によって解除されて終了するときは、Aが転借人に本件契約の終了を通知した日から6月を経過することによって、転貸借契約は終了する。×
2H28-08-1
Aは、Bの賃料の不払いを理由に甲建物の賃貸借契約を解除するには、Cに対して、賃料支払の催告をして甲建物の賃料を支払う機会を与えなければならない。×
3H28-08-3
AがBの債務不履行を理由に甲建物の賃貸借契約を解除した場合、CのBに対する賃料の不払いがなくても、AはCに対して、甲建物の明渡しを求めることができる。
4H26-07-3BがAの承諾を得て甲建物をCに転貸した場合、AB間の賃貸借契約がBの債務不履行で解除されても、AはCに解除を対抗することができない。×
5H25-11-2Bの債務不履行を理由にAが賃貸借契約を解除したために当該賃貸借契約が終了した場合であっても、BがAの承諾を得て甲建物をCに転貸していたときには、AはCに対して甲建物の明渡しを請求することができない。×
6H23-07-4Aは、Bの債務不履行を理由としてBとの賃貸借契約を解除するときは、事前にCに通知等をして、賃料を代払いする機会を与えなければならない。×
7H18-10-2BがAの承諾を受けてCに対して当該建物を転貸している場合には、AB間の賃貸借契約がBの債務不履行を理由に解除され、AがCに対して目的物の返還を請求しても、BC間の転貸借契約は原則として終了しない。×
8H16-13-4賃貸人AがAB間の賃貸借契約を賃料不払いを理由に解除する場合は、転借人Cに通知等をして賃料をBに代わって支払う機会を与えなければならない。×
9H10-06-3Aは、Bの債務不履行によりAB間の賃貸借契約を解除しようとする場合、Cに対して、3ヵ月以前に通知し、Bに代わって賃料を支払う機会を与えなければならない。×
10H10-06-4Aが、Bの債務不履行によりAB間の賃貸借契約を適法に解除した場合、Cは、BC間の転貸借契約に基づく転借権をAに対抗することができない。

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【宅建過去問】(平成23年問07)転貸借” に対して4件のコメントがあります。

  1. ムライ より:

    すみません。転借料>賃借料ではなく転借料<賃借料の一例でした。失礼します!

  2. ムライ より:

    なるほど!
    手持ちのテキストに転借料>賃借料の一例が書いてあったので、混乱していました。
    確かに通常は逆ですよね!いずれにしても、「どちらか少ない方の額」と覚えておくのがいいのですね。
    ありがとうございました!

  3. ムライ より:

    すみません。賃借料が5万円で転借料が10万円であり、賃借料<転借料というのは設問には具体的に書かれていないと思うのですが、どこから出てきたものでしょうか?

    1. 家坂 圭一 より:

      ムライ様

      久々のご質問ありがとうございます。

      賃借料が5万円で転借料が10万円であり、賃借料<転借料というのは設問には具体的に書かれていないと思うのですが、どこから出てきたものでしょうか?

      「賃借料5万円、転借料10万円」は、数字があったほうが分かりやすいと思って、私が設定した具体例です。問題文に設定が示されているわけではありません。

      正確なところは、※印で書いた通りです。すなわち、
      ※賃貸人Aが転借人Cに請求できるのは賃借料と転借料のうち、少ないほうの額に限られます。

      しかしながら、賃借料>転借料という状況は、通常考えられません(Bに何のメリットもないので、通常、そのような行動はしない)。
      また、宅建の過去問でも、特殊な例を除いては、「賃借料<転借料」という設定になっています。

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