【宅建過去問】(平成25年問09)不法行為

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Aに雇用されているBが、勤務中にA所有の乗用車を運転し、営業活動のため顧客Cを同乗させている途中で、Dが運転していたD所有の乗用車と正面衝突した(なお、事故についてはBとDに過失がある。)場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

  1. Aは、Cに対して事故によって受けたCの損害の全額を賠償した。この場合、Aは、BとDの過失割合に従って、Dに対して求償権を行使することができる。
  2. Aは、Dに対して事故によって受けたDの損害の全額を賠償した。この場合、Aは、被用者であるBに対して求償権を行使することはできない。
  3. 事故によって損害を受けたCは、AとBに対して損害賠償を請求することはできるが、Dに対して損害賠償を請求することはできない。
  4. 事故によって損害を受けたDは、Aに対して損害賠償を請求することはできるが、Bに対して損害賠償を請求することはできない。

正解:1

はじめに

本問のケースは、BとDの2人を加害者とする共同不法行為です。そして、被害者はB・C・Dの3人です。
以下の話を分かりやすくするため、この事故を、【Bを加害者とする面】、【Dを加害者とする面】の二面に分けて考えてみましょう。それぞれの立場は、以下の通りです。

25-09-0

  Bを加害者とする面  Dを加害者とする面
使用者
加害者 被害者
被害者 被害者
被害者 加害者

1 正しい

【Bを加害者とする面】から見ると、Aは加害者Bの使用者にあたります。そのため、被害者であるCに対し、使用者責任を負います(民法715条1項)。一方、【Dを加害者とする面】からすれば、Dも、Cに対する加害者です。
つまり、被害者Cから見ると、BとDによる共同不法行為があったことになります。
このようなケースで、使用者Aが被害者Cに対する損害全額を賠償した場合、

  1. Aは、Dに対して求償権を行使することができ、
  2. Dの負担部分は、BとDとの過失割合による

とするのが判例です(最判昭41.11.18)。

25-09-1

■参照項目&類似過去問
内容を見る
使用者の被用者に対する求償(民法[30]2(4))

[共通の設定]
Cの被用者Aが、Bとの間で行った行為により、Bに損害が発生した。
年-問-肢内容正誤
1H28-07-ウ
Cは、使用者責任に基づき、Bに対して本件事故から生じた損害を賠償した場合、Aに対して求償することができるが、その範囲が信義則上相当と認められる限度に制限される場合がある。
2H25-09-1Cに雇用されているAが、勤務中にC所有の乗用車を運転し、営業活動のため顧客Bを同乗させている途中で、Dが運転していたD所有の乗用車と正面衝突した(なお、事故についてはAとDに過失がある。)。Cは、Bに対して事故によって受けたBの損害の全額を賠償した。この場合、Cは、BとDの過失割合に従って、Dに対して求償権を行使することができる。
3H25-09-2Cは、Bに対して事故によって受けたBの損害の全額を賠償した。この場合、Cは、被用者であるAに対して求償権を行使することはできない。×
4H24-09-3Cの使用者責任が認められてBに対して損害を賠償した場合には、CはAに対して求償することができるので、Aに資力があれば、最終的にはCはBに対して賠償した損害額の全額を常にAから回収することができる。×
5H20-11-3AがCに雇用されており、AがCの事業の執行につきBに加害行為を行った場合には、CがBに対する損害賠償責任を負うのであって、CはAに対して求償することもできない。×
6H18-11-4Aの不法行為がCの事業の執行につき行われたものであり、Cが使用者としての損害賠償責任を負担した場合、C自身は不法行為を行っていない以上、Cは負担した損害額の2分の1をAに対して求償できる。×
7H14-11-3C、Bに対し損害賠償債務を負担したことに基づき損害を被った場合は、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、Aに対し、損害の賠償又は求償の請求をすることができる。
8H14-11-4Aが、自己の負担部分を超えて、Bに対し損害を賠償したときは、その超える部分につき、Cに対し、Cの負担部分の限度で求償することができる。
9H11-09-4CがAの行為につきBに対して使用者責任を負う場合で、CがBに損害賠償金を支払ったときでも、Aに故意又は重大な過失があったときでなければ、Cは、Aに対して求償権を行使することができない。×
10H06-07-4Aは、Bに対して損害の賠償をした場合、Cに求償することはできない。×
11H04-09-4従業員Aが宅地建物取引業者Cの業務を遂行中に第三者Bに不法行為による損害を与えた場合、Cは、その損害を賠償しなければならないが、Aに対してその求償をすることはできない。×

2 誤り

【Bを加害者とする面】から見ると、Aは加害者Bの使用者にあたります。そのため、被害者であるDに対して、使用者責任を負います(民法715条1項)。この場合、使用者Aは、被用者Bに対して求償することができます(同条3項)。

25-09-2

※求償の範囲は、「信義則上相当と認められる限度」です(最判昭51.07.08)。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
使用者の被用者に対する求償(民法[30]2(4))

[共通の設定]
Cの被用者Aが、Bとの間で行った行為により、Bに損害が発生した。
年-問-肢内容正誤
1H28-07-ウ
Cは、使用者責任に基づき、Bに対して本件事故から生じた損害を賠償した場合、Aに対して求償することができるが、その範囲が信義則上相当と認められる限度に制限される場合がある。
2H25-09-1Cに雇用されているAが、勤務中にC所有の乗用車を運転し、営業活動のため顧客Bを同乗させている途中で、Dが運転していたD所有の乗用車と正面衝突した(なお、事故についてはAとDに過失がある。)。Cは、Bに対して事故によって受けたBの損害の全額を賠償した。この場合、Cは、BとDの過失割合に従って、Dに対して求償権を行使することができる。
3H25-09-2Cは、Bに対して事故によって受けたBの損害の全額を賠償した。この場合、Cは、被用者であるAに対して求償権を行使することはできない。×
4H24-09-3Cの使用者責任が認められてBに対して損害を賠償した場合には、CはAに対して求償することができるので、Aに資力があれば、最終的にはCはBに対して賠償した損害額の全額を常にAから回収することができる。×
5H20-11-3AがCに雇用されており、AがCの事業の執行につきBに加害行為を行った場合には、CがBに対する損害賠償責任を負うのであって、CはAに対して求償することもできない。×
6H18-11-4Aの不法行為がCの事業の執行につき行われたものであり、Cが使用者としての損害賠償責任を負担した場合、C自身は不法行為を行っていない以上、Cは負担した損害額の2分の1をAに対して求償できる。×
7H14-11-3C、Bに対し損害賠償債務を負担したことに基づき損害を被った場合は、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、Aに対し、損害の賠償又は求償の請求をすることができる。
8H14-11-4Aが、自己の負担部分を超えて、Bに対し損害を賠償したときは、その超える部分につき、Cに対し、Cの負担部分の限度で求償することができる。
9H11-09-4CがAの行為につきBに対して使用者責任を負う場合で、CがBに損害賠償金を支払ったときでも、Aに故意又は重大な過失があったときでなければ、Cは、Aに対して求償権を行使することができない。×
10H06-07-4Aは、Bに対して損害の賠償をした場合、Cに求償することはできない。×
11H04-09-4従業員Aが宅地建物取引業者Cの業務を遂行中に第三者Bに不法行為による損害を与えた場合、Cは、その損害を賠償しなければならないが、Aに対してその求償をすることはできない。×

3 誤り

Cは、【Bを加害者とする面】から見ても、【Dを加害者とする面】から見ても、被害者です。したがって、加害者(共同不法行為者)であるBとDに損害賠償を請求することができます(民法719条1項)。

25-09-3

※両者の債務は、連帯債務の関係です。つまり、BとDはそれぞれCに対して、債務全額の支払い義務を負います(求償関係における負担部分は過失割合によって決まります)。
※Cは、加害者Bの使用者であるAに対して、使用者責任を追及することもできます(同法715条1項)。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
共同不法行為者の責任(民法[30]4)

[共通の設定(Q2~5)]
A及びCは、Aの過失とCの過失による共同不法行為によってB所有の建物を取り壊し、Bに対して不法行為による損害賠償債務を負担した。
年-問-肢内容正誤
1H25-09-3Aに雇用されているBが、勤務中にA所有の乗用車を運転し、営業活動のため顧客Cを同乗させている途中で、Dが運転していたD所有の乗用車と正面衝突した(なお、事故についてはBとDに過失がある。)。事故によって損害を受けたCは、AとBに対して損害賠償を請求することはできるが、Dに対して損害賠償を請求することはできない。×
2H19-05-3加害者数人が、共同不法行為として民法第719条により各自連帯して損害賠償の責任を負う場合、その1人に対する履行の請求は、他の加害者に対してはその効力を有しない。
3H14-11-1Aは、Bに対するAとCの加害割合が6対4である場合は、Bの損害全額の賠償請求に対して、損害の6割に相当する金額について賠償の支払をする責任を負う。×
4H14-11-2Aが、自己の負担部分を超えて、Bに対し損害を賠償したときは、その超える部分につき、Cに対し、Cの負担部分の限度で求償することができる。
5H12-08-2不法行為がAの過失とCの過失による共同不法行為であった場合、Aの過失がCより軽微なときでも、Bは、Aに対して損害の全額について賠償を請求することができる。
6H04-09-3売主及び買主がそれぞれ別の宅地建物取引業者に媒介を依頼し、両業者が共同して媒介を行った場合において、両業者の共同不法行為により買主が損害を受けたときは、買主は、買主が依頼した業者に損害賠償を請求することはできるが、売主が依頼した業者に損害賠償を請求することはできない。×

4 誤り

【Bを加害者とする面】から見ると、Aは加害者Bの使用者にあたるため、被害者であるDに対し、使用者責任を負います(民法715条1項)。
このように使用者責任が成立する場合でも、被用者は独立して不法行為責任(同法709条)を負い、両者の債務は、連帯債務の関係です(肢3参照)。
本問でいえば、被害者Dは、使用者A、加害者Bの双方に損害賠償を請求することができます。

25-09-4

■参照項目&類似過去問
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使用者責任と加害者の不法行為責任(民法[30]2(3))

[共通の設定]
Cに雇用されているAが、勤務中にC所有の乗用車を運転し、営業活動をしている途中で、Bが運転していた乗用車と正面衝突した(事故につき、A、Bには過失がある。)。
年-問-肢内容正誤
1H25-09-4使用者責任に基づく損害賠償を請求した場合、加害者に対する損害賠償請求はできない。×
2H20-11-3AがCに雇用されており、AがCの事業の執行につきBに加害行為を行った場合には、CがBに対する損害賠償責任を負うのであって、CはAに対して求償することもできない。×
3H18-11-1使用者責任が発生する場合、被用者である加害者の不法行為に基づく損害賠償責任は発生しない。×
4H06-07-2使用者責任に基づく損害賠償を請求した場合、被用者である加害者に対する損害賠償請求はできない。×

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【宅建過去問】(平成25年問09)不法行為” に対して1件のコメントがあります。

  1. 家坂 圭一 より:

    ムラカミ様

    【宅建過去問】(平成28年問07)賃貸借・使用者責任
    https://e-takken.tv/28-07/#comments
    にいただいた問題について、こちらで回答いたします。

    言い方は失礼ですが、ムラカミさんの考えすぎだと思います。
    本問の肢1で問われているのは、
    「Aが、Dに対して求償権を行使することができるか?」
    ということだけです。
    「Bに対する求償権の有無」
    については、一切触れられていません。
    したがって、Dに対する求償権の有無だけを考慮すれば十分です。このことを根拠に、本肢は「正しい」という結論が導かれます。

    以下、ムラカミさんの御質問を引用しつつ、コメントします。

    >回答先行で無理やりつじつま合わせで解説されているのでしょうか?

    そのようなことはありません。
    問われているテーマ(「Aが、Dに対して求償権を行使することができるか?」)に対して、「できる」と答えているだけです。「つじつま合わせ」ではありませんし、その必要もありません。

    >BとDの過失・・・と宣わっている時点でおんどれ社員への求償に全く触れないのは×のはず!!!
    >Bの求償部分 が欠如と判断可能で、× では!!!ないでしょうか?

    繰り返しになりますが、本肢では、「Bへの求償」について、全く問われていません。
    したがって、このことを考える必要はないのです。
    もちろん、「被用者であるB」に対する求償も可能です。しかし、このことは、本肢の正誤とは無関係です。
    (本問では、Bに対する求償について、肢2で出題しています。)

    >解説画像では Bの求償 のいついては 2 で触れていると仰せですが、
    >1と2は 話は分けずに繋げて解釈し解くのでしょうか?

    肢1と2は独立の選択肢です。つなげて考える必要はありません。
    肢1では「Dに対する求償権」、肢2では「Bに対する求償権」、について、それぞれ解答・解説しています。
    動画で、「2で触れている」のは、同じ内容の繰り返しを防ぐためのものです。肢1と2がどちらか単独で出題されてとしても、正誤の判断に変わりはありません。

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