【宅建過去問】(平成26年問04)抵当権と根抵当権の比較

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AがBとの間で、CのBに対する債務を担保するためにA所有の甲土地に抵当権を設定する場合と根抵当権を設定する場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

  1. 抵当権を設定する場合には、被担保債権を特定しなければならないが、根抵当権を設定する場合には、BC間のあらゆる範囲の不特定の債権を極度額の限度で被担保債権とすることができる。
  2. 抵当権を設定した旨を第三者に対抗する場合には登記が必要であるが、根抵当権を設定した旨を第三者に対抗する場合には、登記に加えて、債務者Cの異議を留めない承諾が必要である。
  3. Bが抵当権を実行する場合には、AはまずCに催告するように請求することができるが、Bが根抵当権を実行する場合には、AはまずCに催告するように請求することはできない。
  4. 抵当権の場合には、BはCに対する他の債権者の利益のために抵当権の順位を譲渡することができるが、元本の確定前の根抵当権の場合には、Bは根抵当権の順位を譲渡することができない。

正解:4

「根抵当権」との区別をハッキリさせるため、以下では、「根抵当権」以外の抵当権を「普通抵当権」と呼びます。

設定の確認

1 誤り

普通抵当権では、設定契約を締結するためには、被担保債権を特定することが必要です。例えば、「甲住宅の住宅ローン債権2,000万円」などと特定することになります。
一方、根抵当権は、一定の範囲に属する不特定の債権をその極度額の限度内で担保する点を特徴とします(民法398条の2第1項)。その性質上、被担保債権の特定は不要です。しかし、だからといって、「BC間のあらゆる範囲の不特定の債権」を担保する根抵当権(包括根抵当権)を設定することはできません。被担保債権の範囲を「一定の種類の取引」に限定する必要があります(同条2項)。

普通抵当権 根抵当権
必要 不要
×)包括根抵当権
◯)一定の種類の取引
■参照項目&類似過去問
内容を見る
根抵当権:被担保債権の範囲・特定(民法[13]2(1))
年-問-肢内容正誤
1H26-04-1普通抵当権では被担保債権の特定が必要だが、根抵当権ではあらゆる範囲の不特定の債権を極度額の限度で被担保債権にできる。×
2H15-06-1普通抵当権でも、根抵当権でも、被担保債権の特定が必要である。×
3H15-06-2普通抵当権でも、根抵当権でも、現在は発生しておらず、将来発生する可能性がある債権を被担保債権とすることができる。
4H12-05-1根抵当権は、根抵当権者が債務者に対して有する現在及び将来の債権をすべて担保するという内容で、設定することができる。×
5H08-07-1根抵当権は、将来有することとなる不特定の貸付金債権であっても、一定の種類の取引によって生ずるものに限定されているときは、設定することができる。
6H03-07-2不動産を目的とする担保物権の中には、被担保債権が将来のものであっても存在するものがある。

2 誤り

普通抵当権の設定を第三者に対抗するには、物権の一般原則通り、登記をする必要があります(民法177条)。
根抵当権についても、対抗要件に関する特別な規定は存在しません。したがって、普通抵当権と同様に、登記が対抗要件です。「債務者Cの異議を留めない承諾」は、必要ありません。

普通抵当権 根抵当権
登記 登記
×)債務者の承諾
■参照項目&類似過去問
内容を見る
抵当権(第三者への対抗要件)(民法[12]2(3))
年-問-肢内容正誤
129-10-4抵当権は不動産に関する物権であり、登記を備えなければ第三者に対抗することができない。
228-14-2登記することができる権利には、抵当権及び賃借権が含まれる。
326-04-2抵当権を設定した旨を第三者に対抗する場合には登記が必要であるが、根抵当権を設定した旨を第三者に対抗する場合には、登記に加えて、債務者Cの異議を留めない承諾が必要である。×
422-05-1抵当権設定者AとBとの抵当権設定契約が、AとCとの抵当権設定契約より先であっても、Cを抵当権者とする抵当権設定登記の方がBを抵当権者とする抵当権設定登記より先であるときには、Cを抵当権者とする抵当権が第1順位となる。

3 誤り

普通抵当権を実行する場合に、物上保証人Aが債権者Bに対し、まず債務者Cに催告するように請求することはできません。根抵当権でも、同様です。物上保証人は、催告の抗弁権を行使することができません。

※催告の抗弁権は、保証人(連帯保証人を除く)に認められた権限です(民法452条、454条)。抵当権とは関係ありません。

普通抵当権 根抵当権 通常の保証人 連帯保証人
なし なし あり なし

4 正しい

普通抵当権については、抵当権の処分方法として、①転抵当、②抵当権の譲渡、③抵当権の放棄、④抵当権の順位の譲渡、⑤抵当権の順位の放棄、の5つが認められています(民法376条1項)。
一方、根抵当権(元本確定前)については、これらのうち、①転抵当のみが許されています(同法398条の11第1項)。根抵当権の順位を譲渡することはできません。

■関連過去問
内容を見る
根抵当権:処分(民法[13]3(2))
年-問-肢内容正誤
転抵当以外の処分の禁止
126-04-4普通抵当権では抵当権の順位を譲渡できるが、元本の確定前の根抵当権では根抵当権の順位を譲渡できない。
201-05-1根抵当権者は、元本の確定前において、同一の債務者に対する他の債権者の利益のために、その順位を譲渡することができる。×
根抵当権の譲渡
101-05-3根抵当権者は、元本の確定前において、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権の一部を譲渡することができる。

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【宅建過去問】(平成26年問04)抵当権と根抵当権の比較” に対して6件のコメントがあります。

  1. 鎌倉 より:

    4の類似問題、01-05-3では、元本確定前なのに譲渡可能なのは何故ですか?承諾を得ているからでしょうか?
    元本確定前に譲渡するときは承諾がいる、顔法確定後は承諾なしに譲渡ができるということになりますか?

    1. 家坂 圭一 より:

      鎌倉様

      御質問ありがとうございます。
      根抵当権の処分については、過去に「関連過去問」に掲載した3肢しか出題されていません。あまり気にしないほうがいいです。
      とはいうものの、疑問に思ったことを放置するのはよくないことです。以下で解説していきましょう。

      ■抵当権の処分
      抵当権の処分というのは、抵当権やその順位の譲渡・放棄のことを指します。これは、競売代金の分配に関し、抵当権者間で特約を定めることです。具体的には、つぎの過去問を解いていただけるとイメージが分かります。
      【宅建過去問】(平成27年問07)抵当権の処分

      元本確定前の根抵当権については、このような抵当権の処分を行うことはできません。これが民法398条の11第1項のルールです。

      ■根抵当権の譲渡
      これに対し、元本確定前の根抵当権を譲渡することは可能です。根抵当権の譲渡というのは、被担保債権と切り離して、根抵当権の全部又は一部を譲渡することをいいます(民法398条の12、同法398条の13)。
      これは、普通抵当権については認められていない根抵当権独自のシステムです。根抵当権譲渡を行うには、根抵当権設定者の承諾が必要です。

      1. 鎌倉 より:

        譲渡という言葉で勘違いしてしまったようでした(・・;)
        順位の譲渡(処分)と権利自体の譲渡は別という事ですね。
        ご回答いただき誠にありがとうございました!

        1. 家坂 圭一 より:

          細かいことですので、お気になさらず。
          今後も疑問点等あれば、遠慮なくコメントしてください。
          本試験まで頑張りましょう!

  2. 山平 より:

     4の解説で根抵当権は、転抵当しか許されていない(同法398条の11第1項)とありますが、確定後では、譲渡、放棄、順位の譲渡、順位の放棄が可能となるのでしょうか。

    1. 家坂 圭一 より:

      民法398条の11条第1項本文は、「元本の確定前においては、根抵当権者は、第三百七十六条第一項の規定による根抵当権の処分をすることができない。」と定めています。つまり、転抵当以外の処分が禁じられているのは、『元本確定前』の根抵当権です。
      逆に、『元本確定後』の根抵当権であれば、普通抵当権同様の処分(譲渡、放棄、順位の譲渡、順位の放棄)が可能です。

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