【宅建過去問】(平成27年問02)虚偽表示

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Aは、その所有する甲土地を譲渡する意思がないのに、Bと通謀して、Aを売主、Bを買主とする甲土地の仮装の売買契約を締結した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、この問において「善意」又は「悪意」とは、虚偽表示の事実についての善意又は悪意とする。

  1. 善意のCがBから甲土地を買い受けた場合、Cがいまだ登記を備えていなくても、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。
  2. 善意のCが、Bとの間で、Bが甲土地上に建てた乙建物の賃貸借契約(貸主B、借主C)を締結した場合、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。
  3. Bの債権者である善意のCが、甲土地を差し押さえた場合、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。
  4. 甲土地がBから悪意のCへ、Cから善意のDへと譲渡された場合、AはAB間の売買契約の無効をDに主張することができない。

正解:2

虚偽表示における「第三者」

虚偽表示における「第三者」(民法94条2項)とは、「その表示の目的につき法律上の利害関係を有するに至った者」を指します(最判昭45.07.24)。

■参照項目&類似過去問(全選択肢合わせて)
内容を見る
虚偽表示:第三者に対する効果(民法[02]3(3))
年-問-肢内容正誤
[Q1-8共通の設定]
Aは、その所有する甲土地を譲渡する意思がないのに、Bと通謀して、Aを売主、Bを買主とする甲土地の仮装の売買契約を締結した。
1H30-01-3AがBに甲土地を売却した。AB間の売買契約が仮装譲渡であり、その後BがCに甲土地を転売した場合、Cが仮装譲渡の事実を知らなければ、Aは、Cに虚偽表示による無効を対抗することができない。
2H27-02-1善意のCがBから甲土地を買い受けた場合、Cがいまだ登記を備えていなくても、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。
3H27-02-2善意のCが、Bとの間で、Bが甲土地上に建てた乙建物の賃貸借契約(貸主B、借主C)を締結した場合、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。×
4H27-02-3Bの債権者である善意のCが、甲土地を差し押さえた場合、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。
5H27-02-4甲土地がBから悪意のCへ、Cから善意のDへと譲渡された場合、AはAB間の売買契約の無効をDに主張することができない。
6H24-01-1Aが所有する甲土地につき、AとBが通謀の上で売買契約を仮装し、AからBに所有権移転登記がなされた場合に、B名義の甲土地を差し押さえたBの債権者Cは、民法第94条第2項の「第三者」に該当する。
7H24-01-2Aが所有する甲土地につき、AとBの間には債権債務関係がないにもかかわらず、両者が通謀の上でBのために抵当権を設定し、その旨の登記がなされた場合に、Bに対する貸付債権を担保するためにBから転抵当権の設定を受けた債権者Cは、民法第94条第2項の「第三者」に該当する。
8H24-01-3Aが所有する甲土地につき、AとBが通謀の上で売買契約を仮装し、AからBに所有権移転登記がなされた場合に、Bが甲土地の所有権を有しているものと信じてBに対して金銭を貸し付けたCは、民法第94条第2項の「第三者」に該当する。×
9H24-01-4AとBが通謀の上で、Aを貸主、Bを借主とする金銭消費貸借契約を仮装した場合に、当該仮装債権をAから譲り受けたCは、民法第94条第2項の「第三者」に該当する。
10H22-04-4Aは債権者の追及を逃れるために売買契約の実態はないのに登記だけBに移し、Bがそれに乗じてCとの間で売買契約を締結した場合には、AB間の売買契約が存在しない以上、Cは所有権を主張することができない。×
11H20-02-2所有権がAからBに移転している旨が登記されている甲土地について、CはBとの間で売買契約を締結したが、AB間の所有権移転登記はAとBが通じてした仮装の売買契約に基づくものであった場合、CがAB間の売買契約が仮装であることを知らず、知らないことに無過失であっても、Cが所有権移転登記を備えていなければ、Aは所有者であることをCに対して主張できる。×
12H15-03-4Aは、自己所有の甲地をBに売却し引き渡したが、Bはまだ所有権移転登記を行っていない。AとCが、通謀して甲地をAからCに仮装譲渡し、所有権移転登記を得た場合、Bは登記がなくとも、Cに対して甲地の所有権を主張することができる。
13H12-04-2Cが、AB間の契約の事情につき善意無過失で、Bからこの土地の譲渡を受けた場合は、所有権移転登記を受けていないときでも、Cは、Aに対して、その所有権を主張することができる。
14H12-04-3CがAからこの土地の譲渡を受けた場合には、所有権移転登記を受けていないときでも、Cは、Bに対して、その所有権を主張することができる。
15H12-04-4Cが、AB間の契約の事情につき善意過失で、Bからこの土地の譲渡を受け、所有権移転登記を受けていない場合で、Aがこの土地をDに譲渡したとき、Cは、Dに対して、その所有権を主張することができる。×
16H07-02-1Aの所有する土地をBが取得した後、Bが移転登記をする前に、CがAから登記を移転した。BがAから購入した後、AがCに仮装譲渡し、登記をC名義に移転した場合、BがCに対して登記がなければ土地の所有権を主張できない。×
17H07-04-1Bがこの土地にCに対する抵当権を設定し、その登記をした場合で、CがAB間の契約の事情を知っていたときは、Aは、Cに対して抵当権設定行為の無効を主張することができる。
18H07-04-2Bがこの土地をCに売却し、所有権移転登記をした場合で、CがAB間の契約の事情を知らなかったことについて過失があるときは、Aは、Cに対してこの土地の所有権を主張することができる。×
19H07-04-4BがCに、さらにCがDに、それぞれこの土地を売却し、所有権移転登記をした場合で、AB間の契約の事情について、Cは知っていたが、Dが知らなかったとき、Dは、Aに対しこの土地の取得を主張することができる。
[Q20-23共通の設定]
Aが、その所有地について、債権者Xの差押えを免れるため、Bと通謀して、登記名義をBに移転したところ、Bは、その土地をCに譲渡した。
20H05-03-1AB間の契約は無効であるから、Aは、Cが善意であっても、Cに対し所有権を主張することができる。×
21H05-03-2Cが善意であっても、Xが善意であれば、Xは、Cに対し売買契約の無効を主張することができる。×
22H05-03-3Cが善意であっても、Cが所有権移転の登記をしていないときは、Aは、Cに対し所有権を主張することができる。×
23H05-03-4Cがその土地をDに譲渡した場合、Dは、Cの善意悪意にかかわらず、Dが善意であれば、Aに対し所有権を主張することができる。
24H03-04-3Aの所有地にBがAに無断でB名義の所有権移転登記をし、Aがこれを知りながら放置していたところ、BがB所有地として善意無過失のCに売り渡し、CがC名義の所有権移転登記をした場合、Aは、その所有権をCに対抗することができない。
25H02-04-4A所有の土地が、AからB、Bから善意無過失のCへと売り渡され、移転登記もなされている。Aが差押えを免れるため、Bと通謀して登記名義をBに移した場合、Aは、AB間の契約の無効を主張することはできるが、Cに対して所有権を主張することはできない。

1 正しい

甲土地の譲受人は、典型的な「第三者」です。
そして、通謀虚偽表示による契約の無効は、善意の第三者に主張することができません(民法94条2項)。要求されているのは第三者が善意であることです。登記を得ている必要はありません。
本肢では、Cが善意である以上、たとえ未登記であったとしても、AがCに対して売買契約の無効を主張することは不可能です。

2 誤り

土地の仮装譲受人(B)がその土地上に建物を建築してこれを他人(C)に賃貸した場合、Cは、民法94条2項所定の第三者にはあたりません。仮装譲渡された土地について、Cは法律上の利害関係を有しないからです(最判昭57.06.08)。したがって、Aは、売買契約の無効をCに主張することができます。

3 正しい

虚偽表示の目的物を差し押さえた債権者は、利害関係を有する「第三者」に該当します(大判昭12.02.09)。
したがって、Aは、売買契約の無効をCに主張することができません。

4 正しい

甲土地の譲受人Cや転得者Dは、典型的な「第三者」です。
そして、Dは、AB間の通謀虚偽表示について善意です。この場合、Aは、Dに対して所有権を主張することができません。
※間に入ったCが悪意という場合でも、結論は同じです。

※Cが善意であった場合、Aは、Cに対して無効を主張することができません。このようにいったん善意者が間に入っていれば、その後の転得者には、対抗することができなくなります。Dは、たとえ悪意でも保護されます。


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【宅建過去問】(平成27年問02)虚偽表示” に対して2件のコメントがあります。

  1. まさ より:

    第三者という意味と 解説の法律上の利害関係を有しないという意味がわかりません
    仮装譲渡された土地について、Cは法律上の利害関係を有しないからです。

    1. 家坂 圭一 より:

      まさ様

      久しぶりのご質問、ありがとうございます。

      第三者という意味と 解説の法律上の利害関係を有しないという意味がわかりません

      法律用語の「第三者」は、一般的に、「当事者またはその一般承継人以外の者」をいいます。
      しかし、虚偽表示でいう「第三者」は、ここまで広い意味ではありません。「その表示の目的につき法律上の利害関係を有するに至った者」を指す、というのが判例の考えかたです。
      この問題の例でいえば、「その表示の目的」=「甲土地の所有権」について法律上の利害関係を有するかどうか、によって、「第三者」かどうか、が決まるわけです。

      仮装譲渡された土地について、Cは法律上の利害関係を有しないからです。

      いいえ、Cは、「法律上の利害関係」を有しています。

      「AB間の売買契約が虚偽表示によるものであり無効」ということを絶対視すれば、甲土地の所有権は、Aのものということになります。
      しかし、Cは、この土地をBから買い受けているので、「甲土地は自分のものだ!」と主張できる立場にあります。

      このように、Cは、「甲土地の所有権が自分のものになるか、それともAに戻ってしまうのか」ということに利害関係を持っています。
      まさに、虚偽表示における「第三者」の典型例です。

      以上については、以下のところで詳しく説明しています。
      この機会に、[Step.1]基本習得編講座を見直し、[Step.2]実戦応用編講座の『一問一答式過去問集』で類題をまとめて解いておきましょう。

      ■民法[02]意思表示
      3.虚偽表示
      (3).第三者に対する効果

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