【宅建過去問】(平成27年問08)同時履行の抗弁権(個数問題)

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同時履行の抗弁権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはいくつあるか。

  • ア マンションの賃貸借契約終了に伴う賃貸人の敷金返還債務と、賃借人の明渡債務は、特別の約定のない限り、同時履行の関係に立つ。
  • イ マンションの売買契約がマンション引渡し後に債務不履行を理由に解除された場合、契約は遡及的に消滅するため、売主の代金返還債務と、買主の目的物返還債務は、同時履行の関係に立たない。
  • ウ マンションの売買契約に基づく買主の売買代金支払債務と、売主の所有権移転登記に協力する債務は、特別の事情のない限り、同時履行の関係に立つ。
  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. なし

正解:1

ア 誤り

敷金は、建物明渡義務を履行するまでの賃貸人の賃借人に対する全ての債権を担保するものです。したがって、明渡義務が先履行義務であり、明け渡すまでは敷金の返還請求権が発生しません(民法622条の2第1項)。
言い換えれば、建物明渡しと敷金返還とは、同時履行の関係には立ちません(最判昭49.09.02)。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
同時履行の抗弁権:敷金に関連する債務([22]2(3)①)
同時履行の抗弁権:敷金に関連する債務([26]8(2))
年-問-肢内容正誤
1R04-12-4甲建物の賃借人Aが賃貸人Bに対して敷金を差し入れている場合、本件契約が期間満了で終了するに当たり、Bは甲建物の返還を受けるまでは、Aに対して敷金を返還する必要はない。
2R03-01-2賃貸借の終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務とは、1個の双務契約によって生じた対価的債務の関係にあるものといえる。×
3R03-01-4賃貸借の終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務の間に同時履行の関係を肯定することは、家屋の明渡しまでに賃貸人が取得する一切の債権を担保することを目的とする敷金の性質にも適合する。×
4R02-04-3賃借人から敷金の返還請求を受けた賃貸人は、賃貸物の返還を受けるまでは、これを拒むことができる。
5H27-08-アマンションの賃貸借契約終了に伴う賃貸人の敷金返還債務と、賃借人の明渡債務は、特別の約定のない限り、同時履行の関係に立つ。×
6H15-11-1建物の賃貸借契約が終了した場合、建物明渡しと敷金返還とは同時履行の関係に立たず、賃借人の建物明渡しは賃貸人から敷金の返還された後に行えばよい。×
7H13-09-3賃貸借契約が終了した場合、建物明渡債務と敷金返還債務とは常に同時履行の関係にあり、Aは、敷金の支払と引換えにのみ建物を明け渡すと主張できる。×

イ 誤り

売買契約が債務不履行を理由に解除された場合、売主の代金返還義務と買主の目的物返還債務という両者の原状回復義務は同時履行の関係に立ちます(民法546条、533条)。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
同時履行の抗弁権:解除による原状回復義務(民法[22]2(1)①)
解除の効果:同時履行の抗弁権(民法[23]4(1)②)
年-問-肢内容正誤
127-08-イマンションの売買契約がマンション引渡し後に債務不履行を理由に解除された場合、契約は遡及的に消滅するため、売主の代金返還債務と、買主の目的物返還債務は、同時履行の関係に立たない 。×
221-08-3債務不履行による解除の場合、債務不履行をした側の原状回復義務が先履行となり、同時履行の抗弁権を主張できない。×
311-08-2解除の際、一方当事者が原状回復義務の履行を提供しないとき、相手方は原状回復義務の履行を拒むことができる。

ウ 正しい

売買契約は双務契約であり、各当事者の債務履行は同時履行の関係にあります(民法533条)。
具体的にいえば、買主の売買代金支払債務と売主の目的物引渡債務(同法555条)や所有権移転登記に協力する債務(同法560条)は、同時履行の関係に立ちます。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
同時履行の抗弁権とは(民法[22]1)
年-問-肢内容正誤
1R01-07-4[Aを売主、Bを買主として甲建物の売買契約が締結された。]Bは、本件代金債務の履行期が過ぎた場合であっても、特段の事情がない限り、甲建物の引渡しに係る履行の提供を受けていないことを理由として、Aに対して代金の支払を拒むことができる。
229-05-1Aは、中古自動車を売却するため、Bに売買の媒介を依頼し、報酬として売買代金の3%を支払うことを約した。Bの媒介によりAは当該自動車をCに100万円で売却した。Bが報酬を得て売買の媒介を行っているので、CはAから当該自動車の引渡しを受ける前に、100万円をAに支払わなければならない。×
327-08-ウマンションの売買契約に基づく買主の売買代金支払債務と、売主の所有権移転登記に協力する債務は、特別の事情のない限り、同時履行の関係に立つ。
418-08-3(AはBとの間で、土地の売買契約を締結し、Aの所有権移転登記手続とBの代金の支払を同時に履行することとした。決済約定日に、Aは所有権移転登記手続を行う債務の履行の提供をしたが、Bが代金債務につき弁済の提供をしなかったので、Aは履行を拒否した。)Aは、一旦履行の提供をしているので、Bに対して代金の支払を求める訴えを提起した場合、引換給付判決ではなく、無条件の給付判決がなされる。×
515-09-1動産売買契約における目的物引渡債務と代金支払債務とは、同時履行の関係に立つ。
611-08-1宅地の売買契約における買主が、弁済期の到来後も、代金支払債務の履行の提供をしない場合、売主は、宅地の引渡しと登記を拒むことができる。
708-09-2売主が、履行期に所有権移転登記はしたが、引渡しをしない場合、買主は、少なくとも残金の半額を支払わなければならない。×

まとめ

以上より、正しいものはウのみです。正解は、肢1。


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【宅建過去問】(平成27年問08)同時履行の抗弁権(個数問題)” に対して2件のコメントがあります。

  1. より:

    昨年家坂先生の動画にもお世話になり合格しました。
    どうもありがとうございました。
    今拝見していて気づきましたが、動画の肢イの解説の図で、
    売主の代金返還債務と買主の目的物返還債務の矢印の向きが逆みたいです。
    (下の図の各返還請求権と同じ矢印の向きになっています)
    ご確認のほどよろしくお願いいたします。

    1. 家坂 圭一 より:

      ☆様

      合格おめでとうございます。
      返信が遅くなって、大変申し訳ありません。

      当社のテキストや講義で矢印を使う場合、「債権者」から「債務者」に向かって線を描くルールにしています。
      そして、通常は、この矢印を、例えば「代金返還請求権」というように「債権」の側から表現しているわけです。
      しかし、「同時履行の抗弁権」に関してだけは、「履行」する対象が「債務」なので、「代金返還債務」のように「債務」側から表現しています。この点が逆になっているように見えるのかも知れません。
      講義をしながら、気になっている部分です。より効果的な説明方法がないか、考えてみます。
      御指摘ありがとうございました。

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