【宅建過去問】(平成28年問34)業務に関する禁止事項
宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)第47条及び第47条の2に規定されている業務に関する禁止事項に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。なお、Aは宅地建物取引業者である。
- Aが、賃貸アパートの媒介に当たり、入居申込者が無収入であることを知っており、入居申込書の収入欄に「年収700万円」とあるのは虚偽の記載であることを認識したまま、その事実を告げずに貸主に提出した行為は法に違反する。
- Aが、分譲マンションの購入を勧誘するに際し、うわさをもとに「3年後には間違いなく徒歩5分の距離に新しく私鉄の駅ができる」と告げた場合、そのような計画はなかったとしても、故意にだましたわけではないので法には違反しない。
- Aは、建売住宅の売買の相手方である買主から手付放棄による契約の解除の通知を受けたとしても、すでに所有権の移転登記を行い引渡しも済んでいる場合は、そのことを理由に当該契約の解除を拒むことができる。
- Aが、宅地の売買契約締結の勧誘に当たり、相手方が手付金の手持ちがないため契約締結を迷っていることを知り、手付金の分割払いを持ちかけたことは、契約締結に至らなかったとしても法に違反する。
正解:2
1 正しい
入居申込者の収入は、取引の関係者の資力・信用に関する事項であり、宅建業者の相手方(本肢では賃貸アパートの貸主)の判断に重要な影響を及ぼします。
このような相手方等の判断に重要な影響を及ぼす事実について、故意に事実を告げない行為は、宅建業法違反です(宅建業法47条1号ニ)。
■類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | 30-40-ウ | 宅地建物取引業者Aは、土地の売買の媒介に際し重要事項の説明の前に、宅地建物取引士ではないAの従業者をして媒介の相手方に対し、当該土地の交通等の利便の状況について説明させた。 | ◯ |
2 | 28-34-1 | 宅建業者が、賃貸アパートの媒介に当たり、入居申込者が無収入であることを知っており、入居申込書の収入欄に「年収700万円」とあるのは虚偽の記載であることを認識したまま、その事実を告げずに貸主に提出した行為は宅建業法に違反する。 | ◯ |
3 | 20-38-1 | 宅地の周辺環境について買主の判断に重要な影響を及ぼす事実を、宅建士でない従業者が説明しても、宅建業法に違反しない。 | ◯ |
4 | 19-36-4 | 建物の利用制限に関する事項で買主の判断に重要な影響を及ぼすものを故意に告げなかった場合、宅建業法に違反し、宅建業者に1億円以下の罰金が課せられることがある。 | ◯ |
5 | 16-44-4 | 契約に係る重要な事項について故意に事実を告げない行為は禁止されており、行為を行った代表者には懲役刑、宅建業者には罰金刑が科されることがある。 | ◯ |
6 | 13-37-1 | 更地を希望する買主に対しては、未登記の古い空き家の存在を告げる必要はない。 | × |
7 | 12-35-1 | 近隣にゴミ集積場所の設置計画がある場合で、それを借主が知らないと重大な不利益を被るおそれがあるときに、その計画について故意に借主に対し告げなかったとしても、宅建業法に違反しない。 | × |
8 | 11-42-3 | [宅地建物取引業者Aが、宅地の所有者Bの依頼を受けてBC間の宅地の売買の媒介を行う。]Aは、当該宅地に対抗力のある借地権を有する第三者が存在することを知っていたが、当該借地権は登記されていなかったので、Cに対して告げることなく、BC間の売買契約を締結させた。 | × |
2 誤り
契約締結の勧誘にあたり、宅建業者が相手方等に対して、宅地又は建物の将来の環境又は交通その他の利便について誤解させるべき断定的判断を提供することは禁止されています(宅建業法47条の2第3項、同法施行規則16条の121号イ)。
「間違いなく私鉄の駅ができる」という発言は、この断定的判断に該当しますから、宅建業法違反です。「故意にだましたわけではない」としても、違法であることに変わりはありません。
■類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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環境・交通に関する断定的判断の提供 | |||
1 | 28-34-2 | 宅建業者が、分譲マンションの購入を勧誘するに際し、うわさをもとに「3年後には間違いなく徒歩5分の距離に新しく私鉄の駅ができる」と告げた場合、そのような計画はなかったとしても、故意にだましたわけではないので宅建業法には違反しない。 | × |
2 | 27-41-ア | 「隣接地は、市有地で、現在、建築計画や売却の予定がないことを市に確認しました。将来、建つとしても公共施設なので、市が眺望を遮るような建物を建てることは絶対ありません。ご安心ください。」という発言は、宅建業法に違反しない。 | × |
3 | 26-43-4 | 「近所に幹線道路の建設計画がある」と説明したが、実際には建設計画は存在せず、従業者の思い込みであった場合、宅建業法に違反しない。 | × |
4 | 24-32-4 | 交通整備の見通しにつき、新聞報道を示しながら、未確定の話として説明した場合、宅建業法に違反しない。 | ◯ |
5 | 24-41-イ | 断定的判断を提供した従業員に故意がない場合、宅建業法に違反しない。 | × |
6 | 20-38-3 | 存在しない新駅設置計画を説明したが、契約には至らなかった場合、宅建業法に違反しない。 | × |
7 | 16-44-2 | 過失で断定的判断を提供した場合でも免責されない。 | ◯ |
8 | 08-45-4 | 10年後開通予定の駅候補地の1つが徒歩5分の場所にある場合、「地下鉄新駅まで徒歩5分」と広告しても、宅建業法に違反しない。 | × |
勧誘者情報の不告知 | |||
1 | 29-28-ウ | 宅地建物取引業者Aの従業者Cは、投資用マンションの販売において、勧誘に先立ちAの名称を告げず、自己の氏名及び契約締結の勧誘が目的であることを告げたうえで勧誘を行ったが、相手方から関心がない旨の意思表示があったので、勧誘の継続を断念した。 | × |
2 | 29-34-2 | 宅建業者Aの従業者Cは、投資用マンションの販売において、勧誘に先立ちAの名称を告げず、自己の氏名及び契約締結の勧誘が目的であることを告げたうえで勧誘を行ったが、相手方から関心がない旨の意思表示があったので、勧誘の継続を断念した。 | × |
3 | 26-43-2 | 宅地建物取引業者が、アンケート調査をすることを装って電話をし、その目的がマンションの売買の勧誘であることを告げずに勧誘をする行為は、宅地建物取引業法に違反する。 | ◯ |
4 | 24-41-ア | 勧誘に先立って商号・自らの氏名を告げてから勧誘を行ったが、勧誘の目的が投資用マンションの売買契約の締結である旨を告げなかった場合、宅建業法に違反しない。 | × |
勧誘の継続 |
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1 | 30-40-エ | 宅地建物取引業者Aの従業者Cは、投資用マンションの販売において、勧誘に先立ちAの名称を告げず、自己の氏名及び契約締結の勧誘が目的であることを告げたうえで勧誘を行ったが、相手方から関心がない旨の意思表示があったので、勧誘の継続を断念した。 | × |
2 | 29-28-ウ | 宅地建物取引業者Aは、投資用マンションの販売に際し、電話で勧誘を行ったところ、勧誘の相手方から「購入の意思がないので二度と電話をかけないように」と言われたことから、電話での勧誘を諦め、当該相手方の自宅を訪問して勧誘した。 | × |
3 | 26-41-2 | 相手方が明確に買う意思がない旨を表明した場合、別の従業者をして、再度勧誘を行わせることは法に違反しない。 | × |
4 | 26-43-3 | 土地の買受けの勧誘に当たり、売却の意思は一切ない旨を告げられたが、その翌日、再度の勧誘を行った場合、宅建業法に違反しない。 | × |
迷惑時間帯の電話・訪問 |
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1 | 24-41-エ | 「午後3時に訪問されるのは迷惑である。」と事前に聞いていたが、深夜でなければ迷惑にはならないだろうと判断し、午後3時に当該相手方を訪問して勧誘を行った。 | × |
困惑させる行為 | |||
1 | 23-41-イ | 建物の販売に際して、短時間であったが、私生活の平穏を害するような方法により電話勧誘を行い、相手方を困惑させた。 | × |
3 正しい
宅建業者の相手方等が手付放棄による契約の解除をしようとしている際に、宅建業者が、正当な理由もなしに、契約の解除を拒んだり、妨げることは禁止されています(宅建業法47条の2第3項、同法施行規則16条の12第3号)。
そこで、「正当な理由」の有無を検討しましょう。
買主が手付放棄によって契約を解除することができるのは、相手方である売主が契約の履行に着手するまでの間に限られます(同法39条2項)。
本肢の売主は、「すでに所有権の移転登記を行い引渡しも済んでいる」わけで、履行に着手済みです。もはや買主が手付放棄によって契約を解除できるタイミングは過ぎています。したがって、売主Aが手付放棄による契約解除を拒んだとしても、その行為には、「正当な理由」があります。宅建業法には違反しません。
■類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | 28-34-3 | 売主である宅建業者は、買主から手付放棄による契約の解除の通知を受けたとしても、すでに所有権の移転登記を行い引渡しも済んでいる場合は、そのことを理由に当該契約の解除を拒むことができる。 | ◯ |
2 | 23-41-ウ | 宅地建物取引業者は、建物の販売に際して、売買契約の締結後、買主から手付放棄による契約解除の申出を受けたが、正当な理由なく、これを拒んだ。 | × |
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R01-37-2 | [宅地建物取引業者Aが、自ら売主として、宅地建物取引業者ではないBとの間で締結する建築工事完了前のマンション(代金3,000万円)の売買契約]Aが手付金を受領している場合、Bが契約の履行に着手する前であっても、Aは、契約を解除することについて正当な理由がなければ、手付金の倍額を償還して契約を解除することができない。 | × |
2 | 28-34-3 | 売主である宅建業者は、買主から手付放棄による契約の解除の通知を受けたとしても、すでに所有権の移転登記を行い引渡しも済んでいる場合は、そのことを理由に当該契約の解除を拒むことができる。 | ◯ |
3 | 26-31-ウ | 「手付解除は契約後30日以内」と定めた場合、契約から30日経過したときは、売主が履行に着手していなかったとしても、買主は手付解除ができない。 | × |
4 | 23-37-1 | 手付金+中間金を支払った買主からの手付解除は不可。 | × |
5 | 22-39-4 | 手付金+内金を受け取った売主からの手付解除は不可。 | ◯ |
6 | 22-40-3 | 「売主の着手後も買主からの手付解除が可能」という特約は無効。 | × |
7 | 21-37-2 | [自らが売主である宅地建物取引業者Aと、宅地建物取引業者でないBとの間での売買契約]AとBが締結した建物の売買契約において、Bが手付金の放棄による契約の解除ができる期限について、金融機関からBの住宅ローンの承認が得られるまでとする旨の定めをした。この場合において、Aは、自らが契約の履行に着手する前であれば、当該承認が得られた後は、Bの手付金の放棄による契約の解除を拒むことができる。 | × |
8 | 21-39-1 | 両者未着手の段階で、買主からの手付解除を拒む売主の行為は、宅建業法に違反しない。 | × |
9 | 19-43-4 | 解約手付の定めがない場合、売主の着手前であっても、買主は手付放棄による解除ができない。 | × |
10 | 18-40-4 | 引渡債務の履行に着手した売主が買主の手付解除を拒否しても宅建業法に違反しない。 | ◯ |
12 | 14-40-2 | 買主が代金の一部支払後、売主からの手付解除は不可。 | ◯ |
12 | 09-39-2 | 解約手付と定めていなくても、売主が履行に着手していなければ、買主は手付解除ができる。 | ◯ |
13 | 09-39-3 | 「手付解除は契約後30日以内」と定めた場合、契約から45日経過したときであっても、売主が履行に着手していなければ、買主は手付解除ができる。 | ◯ |
14 | 08-49-4 | 「引渡しがあるまで、いつでも手付解除が可能」という特約がある場合、買主は、売主が履行に着手していても、手付解除できる。 | ◯ |
15 | 04-44-3 | 「売主が履行完了するまで、買主は手付解除ができる」という特約は、宅建業法に違反しない。 | ◯ |
16 | 03-49-3 | 売主が手付金等保全措置を講じた後は、買主から手付解除をすることができない。 | × |
4 正しい
「手付けについて貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為」自体が禁止されています(宅建業法47条3号)。
本肢のAは、分割払いを持ちかけています。このように持ちかけて契約締結を誘引する行為は、宅建業法違反です。契約締結に至らなかったとしても、違法であることに変わりはありません。
■類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | 30-40-ア | 宅地建物取引業者Aは、自ら売主として、建物の売買契約を締結するに際し、買主が手付金を持ち合わせていなかったため手付金の分割払いを提案し、買主はこれに応じた。 | × |
2 | 30-40-イ | 宅地建物取引業者Aは、建物の販売に際し、勧誘の相手方から値引きの要求があったため、広告に表示した販売価格から100万円値引きすることを告げて勧誘し、売買契約を締結した。 | ◯ |
3 | 29-34-1 | 宅地建物取引業者が、自ら売主として、宅地及び建物の売買の契約を締結するに際し、手付金について、当初提示した金額を減額することにより、買主に対し売買契約の締結を誘引し、その契約を締結させることは、法に違反しない。 | ◯ |
4 | 29-34-3 | 宅地建物取引業者が、宅地及び建物の売買の媒介を行うに際し、媒介報酬について、買主の要望を受けて分割受領に応じることにより、契約の締結を誘引する行為は、法に違反する。 | × |
5 | 29-34-4 | 宅地建物取引業者が、手付金について信用の供与をすることにより、宅地及び建物の売買契約の締結を誘引する行為を行った場合、監督処分の対象となるほか、罰則の適用を受けることがある。 | ◯ |
6 | 28-29-イ | 宅建業者が、建物の売買の媒介に際し、買主に対して手付の貸付けを行う旨を告げて契約の締結を勧誘したが、売買は成立しなかった場合、宅建業法に違反しない。 | × |
7 | 28-34-4 | 宅建業者が、宅地の売買契約締結の勧誘に当たり、相手方が手付金の手持ちがないため契約締結を迷っていることを知り、手付金の分割払いを持ちかけたことは、契約締結に至らなかったとしても宅建業法に違反する。 | ◯ |
8 | 27-41-ウ | 「弊社と提携している銀行の担当者から、手付金も融資の対象になっていると聞いております。ご検討ください。」という発言は、宅建業法に違反しない。 | ◯ |
9 | 26-43-1 | 手付金を複数回に分けて受領することとし、契約締結を誘引するのは、宅建業法に違反しない。 | × |
10 | 24-34-ウ | 手付の貸付により契約を誘引するのは、宅建業法に違反する。 | ◯ |
11 | 24-41-ウ | 宅地建物取引業者A社による投資用マンションの販売の勧誘において、A社の従業員は、勧誘の相手方が金銭的に不安であることを述べたため、売買代金を引き下げ、契約の締結を誘引した。 | ◯ |
12 | 23-41-ア | 宅地建物取引業者A社は、建物の販売に際して、買主が手付として必要な額を持ち合わせていなかったため、手付を貸し付けることにより、契約の締結を誘引した。 | × |
13 | 21-40-1 | 手付の貸付を告知し契約を誘引したが、契約不成立だった場合、宅建業法に違反しない。 | × |
14 | 20-38-4 | 手付を後日支払うこととして、売買契約を締結するのは、宅建業法に違反しない。 | × |
15 | 18-40-3 | 手付の貸付を告知し契約を誘引したが、契約不成立だった場合、宅建業法に違反しない。 | × |
16 | 15-38-3 | 手付金の一部を貸付け、契約の締結を誘引することは、宅建業法に違反しない。 | × |
17 | 13-42-2 | 業者間取引であれば、買主に対し手付金を貸し付けて契約の締結を誘引してもさしつかえない。 | × |
18 | 12-35-4 | 手付金に関し買主と銀行との間の金銭の貸借のあっせんをして、売買契約を締結させたとしても、宅建業法に違反しない。 | ◯ |
19 | 12-40-3 | 買主の要求に応じ、手付金を分割払とすることができる。 | × |
20 | 11-42-2 | 手付の貸付を条件に契約を誘引したが、契約不成立だった場合、宅建業法に違反しない。 | × |
21 | 11-42-4 | 手付金額を減額することで契約を誘引し、契約が成立した場合、宅建業法に違反しない。 | ◯ |
22 | 09-38-1 | 「手付金の不足額は契約成立後に支払う」旨説明して契約を成立させたとしても、宅建業法に違反しない。 | × |
23 | 09-40-1 | 手付金の不足額を宅建業者が立て替えて契約を成立させたとしても、宅建業法に違反しない。 | × |
24 | 04-44-1 | 手付金を分割払としても、宅建業法に違反しない。 | × |
25 | 01-48-1 | 手付の貸付により契約締結を誘引しても、宅建業法違反とならない。 | × |