【宅建過去問】(平成29年問04)民法に規定されているもの

【注意】

「民法の条文に規定されているかどうか」を問う問題は、民法改正を控えた平成24年~29年の6年間に渡り出題されました。令和2年に改正民法が施行されたため、今後この形式で出題される可能性は低いです。ここでは、改正後の民法に合うように問題を修正して掲載しています。


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次の記述のうち、民法の条文に規定されていないものはどれか。

  1. 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、その合意があった時から1年を経過した時までは、時効は完成しない旨
  2. 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を自由に選んで通行することができる旨
  3. 売主は、買主に対し、登記、登録その他の売買の目的である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務を負う旨
  4. 賃借人の原状回復義務の対象となる損傷からは、通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年劣化を除く旨

正解:2

1 条文に規定されている

権利について協議することを合意が書面でされたときは、以下のいずれか早い時点まで時効の完成が猶予されます(民法151条1項1号)。

  1. 合意から1年経過した時
  2. 当事者が定めた協議期間(1年未満)が経過した時
  3. 協議続行拒絶の書面通知から6か月を経過した時
■参照項目&類似過去問
内容を見る
時効の完成猶予(民法[06]5(2))
年-問-肢内容正誤
催告
1H21-03-3債権者が、債務者に対する賃料債権につき内容証明郵便により支払を請求したときは、その請求により消滅時効は更新される。
×
2H01-02-2訴えの提起前6月以内に、債権者が債務者に債務の履行の催告をしても、時効が更新されるのは、訴えを提起したときである。
×
協議を行う旨の合意
1H29-04-1権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、その合意があった時から1年を経過した時までは、時効は完成しない。
夫婦間の権利
1R02s-05-4夫婦の一方が他方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から6箇月を経過するまでの間は、時効が完成しない。

2 条文に規定されていない

他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができます(民法210条1項)。
その場合、通行の場所と方法は、通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ぶ必要があります(同法211条1項)。「自由に選んで」通行できるわけではありません。

■参照項目&類似過去問
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公道に至るための他の土地の通行権(民法[09]3)
年-問-肢内容正誤
1R05-02-4他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に出るためにその土地を囲んでいる他の土地を自由に選んで通行することができる。×
2R02-01-1Aが購入した甲土地が他の土地に囲まれて公道に通じない土地であった。甲土地が共有物の分割によって公道に通じない土地となっていた場合には、Aは公道に至るために他の分割者の所有地を、償金を支払うことなく通行することができる。
3R02-01-2Aが購入した甲土地が他の土地に囲まれて公道に通じない土地であった。Aは公道に至るため甲土地を囲んでいる土地を通行する権利を有するところ、Aが自動車を所有していても、自動車による通行権が認められることはない。×
4R02-01-4Aが購入した甲土地が他の土地に囲まれて公道に通じない土地であった。Cが甲土地を囲む土地の所有権を時効により取得した場合には、AはCが時効取得した土地を公道に至るために通行することができなくなる。×
5H29-04-2他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を自由に選んで通行することができる。×
6H25-03-1囲んでいる他の土地を自由に選んで通行できるわけではない。
7H25-03-2共有物分割によって袋地が生じた場合、償金を支払わずに、他の分割者の土地を通行できる。
8H21-04-2囲んでいる他の土地を自由に選んで通行できる。×
9H13-03-1償金を支払えば、自己の意思のみによって通行の場所・方法を定め通路を開設できる。×
10H13-03-2囲繞地通行権の対象となる土地を譲り受けた場合、所有権移転の登記を完了しないと、囲繞地に通路を開設することができない。×
11H13-03-3共有地の分割によって袋地となったときには、分割後の残余地にしか通路を開設できない。
12H13-03-4甲地が、D所有の土地を分筆してAに売却した結果、袋地になった場合で、Dが、甲地の譲渡後、その残余地である乙地をEに売却したときには、Aは乙地に通路を開設できない。×

3 条文に規定されている

売主は、財産権を相手方に移転する義務(民法555条)に加えて、登記、登録その他の売買の目的である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務を負っています(同法560条)。

■参照項目&類似過去問
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売主の義務(民法[24]1(2)①)
年-問-肢内容正誤
1H29-04-3売主は、買主に対し、登記、登録その他の売買の目的である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務を負う。

4 条文に規定されている

賃借人は賃貸借終了時に賃借物の損傷を原状に回復させる義務を負っています。この「損傷」から、通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化は、除外されています(民法621条本文)。

■参照項目&類似過去問
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賃貸借契約:原状回復義務(民法[26]7(3))
年-問-肢内容正誤
1R02-04-1賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合、通常の使用及び収益によって生じた損耗も含めてその損傷を原状に復する義務を負う。×
2R02-04-2賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合、賃借人の帰責事由の有無にかかわらず、その損傷を原状に復する義務を負う。×
3H30-08-1賃借物件を賃借人がどのように使用しても、賃借物件に発生する損耗による減価の回収は、賃貸人が全て賃料に含ませてその支払を受けることにより行っている。
×
4H30-08-2通常損耗とは、賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する。
5H30-08-3賃借人が負担する通常損耗の範囲が賃貸借契約書に明記されておらず口頭での説明等もない場合に賃借人に通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担を課すことになる。
6H30-08-4賃貸借契約に賃借人が原状回復義務を負う旨が定められていても、それをもって、賃借人が賃料とは別に通常損耗の補修費を支払う義務があるとはいえない。
7H29-04-4賃借人の原状回復義務の対象となる損傷からは、通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年劣化が除かれる。
8H20-10-1賃貸借が終了した場合、貸主が借主に対し、社会通念上通常の使用をした場合に生じる通常損耗について原状回復義務を負わせることは、補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているなど、その旨の特約が明確に合意されたときでもすることができない。×

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