【宅建過去問】(令和01年問01)物権変動と対抗問題

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Aは、Aが所有している甲土地をBに売却した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1. 甲土地を何らの権原なく不法占有しているCがいる場合、BがCに対して甲土地の所有権を主張して明渡請求をするには、甲土地の所有権移転登記を備えなければならない。
  2. Bが甲土地の所有権移転登記を備えていない場合には、Aから建物所有目的で甲土地を賃借して甲土地上にD名義の登記ある建物を有するDに対して、Bは自らが甲土地の所有者であることを主張することができない。
  3. Bが甲土地の所有権移転登記を備えないまま甲土地をEに売却した場合、Eは、甲土地の所有権移転登記なくして、Aに対して甲土地の所有権を主張することができる。
  4. Bが甲土地の所有権移転登記を備えた後に甲土地につき取得時効が完成したFは、甲土地の所有権移転登記を備えていなくても、Bに対して甲土地の所有権を主張することができる。

正解:1

設定の確認

1 誤り

Cは、甲土地を何らの権限なく不法占有しています。このような不法占拠者は、「登記がないことを主張する正当な利益を有する者」ということができず、そのため対抗問題でいう「第三者」に該当しません(最判昭25.12.19)。したがって、Bは、甲土地の所有権移転登記を備えなくても、Cに対して所有権を主張し、明渡しを請求することができます。

■類似過去問
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対抗問題:不法占拠者(民法[07]3(3))
年-問-肢内容正誤
1R03s-09-3AがBに対してA所有の甲建物を①売却又は②賃貸した。甲建物をCが不法占拠している場合、①ではBは甲建物の所有権移転登記を備えていなければ所有権をCに対抗できず、②ではBは甲建物につき賃借権の登記を備えていれば賃借権をCに対抗することができる。
×
2R01-01-1[Aは、Aが所有している甲土地をBに売却した。]甲土地を何らの権原なく不法占有しているCがいる場合、BがCに対して甲土地の所有権を主張して明渡請求をするには、甲土地の所有権移転登記を備えなければならない。
×
319-03-3正当な権原なく土地を占有する者に対しては、登記を備えていなくても、土地の明渡しを請求できる。
416-03-1何ら権原のない不法占有者に対しては、登記を備えていなくても、土地の明渡しを請求できる。
510-01-3土地の不法占拠者に対しては、登記がなければ所有権を主張できない。×

2 正しい

土地の譲受人Bが土地の賃借人Dに対して所有権や賃貸人たる地位の取得を対抗するためには、甲土地の所有権移転登記を備える必要があります(最判昭49.03.19)。

■類似過去問
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対抗問題:賃借人(民法[07]3(5))
年-問-肢内容正誤
1R03s-06-2土地の賃借人として当該土地上に登記ある建物を所有する者は、当該土地の所有権を新たに取得した者と対抗関係にある第三者に該当する。
2R01-01-2[Aは、Aが所有している甲土地をBに売却した。]Bが甲土地の所有権移転登記を備えていない場合には、Aから建物所有目的で甲土地を賃借して甲土地上にD名義の登記ある建物を有するDに対して、Bは自らが甲土地の所有者であることを主張することができない。
324-06-2賃貸中の土地の譲受人→土地上に登記ある建物を有する土地の賃借人:登記がなくても賃貸人の地位を対抗可能。×
420-04-4建物に居住している建物の賃借人→建物の譲受人:賃借権を対抗可能。
516-03-2賃貸中の建物の譲受人→引渡しを受けた建物の賃借人:登記がなくても賃貸人の地位を対抗可能。×
610-01-1賃貸中の土地の譲受人→自己名義で保存登記をした建物を所有する土地の賃借人:登記がなくても所有権を対抗可能。×
708-03-4Aの所有する土地について、AB間で、代金全額が支払われたときに所有権がAからBに移転する旨約定して売買契約を締結した。EがAからこの土地を賃借して、建物を建てその登記をしている場合、BがAに代金全額を支払った後であれば、AからBへの所有権移転登記が完了していなくても、Bは、Eに対して所有権の移転を主張することができる。×
807-07-3賃貸中の土地の譲受人→建物を建てその登記をしている土地の賃借人:登記がなくても賃貸人の地位を対抗可能。×
901-13-1引渡しを受けた建物の賃借人→土地を譲り受け移転登記をした所有権者:賃借人の地位を対抗可能。

3 正しい

甲土地の所有権は、AからBへ、BからEへと順次に移転しています。したがって、EとB、EとAの間には対抗問題が発生していません。対抗問題でないのであれば、権利を主張するために所有権移転登記を受ける必要はありません。Eは、所有権移転登記がなくても、Aに対して、甲土地の所有権を主張することができます。

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対抗問題にならないケース(民法[07]1(2))
年-問-肢内容正誤
1R03s-06-1不動産の所有権がAからB、BからC、CからDと転々譲渡された場合、Aは、Dと対抗関係にある第三者に該当する。×
2R01-01-3[Aは、Aが所有している甲土地をBに売却した。]Bが甲土地の所有権移転登記を備えないまま甲土地をEに売却した場合、Eは、甲土地の所有権移転登記なくして、Aに対して甲土地の所有権を主張することができる。
316-03-4F→A→Bと所有権が移転した場合、BはFに対し、登記がなくても所有権を対抗できる。
413-25-3[A所有の宅地甲地をBが取得]甲地にA所有の住宅が建っているとき、BがAに対してこれを除却するよう求めるためには、Bは、甲地の所有権移転登記を完了していなければならない。×
508-03-1代金全額を支払ったとしても、所有権移転登記を完了していない場合には、買主は売主に所有権の移転を主張できない。×

4 正しい

時系列に整理しましょう。①AからBへの譲渡と②Bによる所有権移転登記の後で、③甲土地に関するFの取得時効が完成しています。つまり、時効により権利を取得したFから見て、Bは時効完成前の第三者ということになるわけです。
この場合、甲土地の所有権は、AからB、BからFと順次移転しています。FとB、FとAの間には対抗問題が発生していません(肢3と同じ状況です)。Fは、所有権移転登記がなくても、Bに対して、甲土地の所有権を主張することができます(最判昭41.11.22)。

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対抗問題:時効完成前後の第三者(民法[07]2(2))
年-問-肢内容正誤
時効完成後の第三者
1R05-06-イA所有の甲土地についてBの取得時効が完成した後に、AがCに対して甲土地を売却しCが所有権移転登記を備え、Bが、Cの登記の日から所有の意思をもって平穏にかつ公然と時効取得に必要な期間占有を継続した場合、所有権移転登記を備えていなくても、甲土地の所有権の時効取得をCに対抗することができる。
2R05-06-ウA所有の甲土地についてBの取得時効完成後、Bへの所有権移転登記がなされないままCがAを債務者として甲土地にAから抵当権の設定を受けて抵当権設定登記をした場合において、Bがその後引き続き所有の意思をもって平穏にかつ公然と時効取得に必要な期間占有を継続した場合、特段の事情がない限り、再度の時効取得により、Bは甲土地の所有権を取得し、Cの抵当権は消滅する。
3H19-06-4
取得時効の完成により甲不動産の所有権を適法に取得した者は、その旨を登記しなければ、時効完成後に甲不動産を旧所有者から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない。
4H13-05-4
AからB、BからCに、甲地が順次売却され、AからBに対する所有権移転登記がなされた。BからCへの売却前に、取得時効の完成により甲地の所有権を取得したDがいる場合、Dがそれを理由にして所有権登記をBから取得する前に、Dの取得時効につき善意のCがBから甲地を購入し、かつ、所有権移転登記を受けたときは、Cは甲地の所有権をEに対抗できる。
5H09-06-4Bが、A所有の土地を占有し取得時効期間を経過した場合で、時効の完成後に、Aがその土地をCに譲渡して登記を移転したとき、Bは、登記なしにCに対して時効による甲土地の取得を主張できる。×
6H07-02-4
Aの所有する土地についてBの取得時効が完成した後、AがCに売却し、登記をC名義に移転した場合、Bは、Cに対して登記がなければ土地の所有権を主張できない。
時効完成前の第三者
1R05-06-アAがCに対して甲土地を売却し、Cが所有権移転登記を備えた後にBの取得時効が完成した場合には、Bは登記を備えていなくても、甲土地の所有権の時効取得をCに対抗することができる。
2R04-10-4AはBに対し、自己所有の甲土地を売却し、代金と引換えにBに甲土地を引き渡したが、その後にCに対しても甲土地を売却し、代金と引換えにCに甲土地の所有権登記を移転した。Bが甲土地の所有権を時効取得した場合、Bは登記を備えなければ、その所有権を時効完成時において所有者であったCに対抗することはできない。×
3R03s-06-3第三者のなした登記後に時効が完成して不動産の所有権を取得した者は、当該第三者に対して、登記を備えなくても、時効取得をもって対抗することができる。
4R01-01-4Aは、Aが所有している甲土地をCに売却した。Cが甲土地の所有権移転登記を備えた後に甲土地につき取得時効が完成したBは、甲土地の所有権移転登記を備えていなくても、Cに対して甲土地の所有権を主張することができる。
5H27-04-3
Aから甲土地を買い受けたCが所有権の移転登記を備えた後に、Bについて甲土地所有権の取得時効が完成した場合、Bは、Cに対し、登記がなくても甲土地の所有者であることを主張することができる。
6H24-06-1
A所有の甲土地に甲土地につき、時効により所有権を取得したBは、時効完成前にAから甲土地を購入して所有権移転登記を備えたCに対して、時効による所有権の取得を主張することができない。×
7H22-04-3
Bが時効により甲土地の所有権を取得した旨主張している場合、取得時効の進行中にAC間で売買契約及び所有権移転登記がなされ、その後に時効が完成しているときには、Bは登記がなくてもCに対して所有権を主張することができる。
810-02-3
CがBの取得時効完成前にAから甲土地を買い受けた場合には、Cの登記がBの取得時効完成の前であると後であるとを問わず、Bは、登記がなくても、時効による甲土地の所有権の取得をCに対抗することができる。
9H04-04-3
Aの所有地についてBが善意無過失で占有を開始し、所有の意思をもって、平穏かつ公然に7年間占有を続けた後、AがCにその土地を売却し、所有権移転登記を完了してもBは、その後3年間占有を続ければ、その土地の所有権を時効取得し、Cに対抗することができる。
時効期間の起算点
1H22-03-3
時効期間は、時効の基礎たる事実が開始された時を起算点としなければならず、時効援用者において起算点を選択し、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできない。
【参考】時効完成後の第三者

話の順序を少し変えて、①甲土地についてGの時効が完成した後に、②AからBへの売却が行われたケースについて考えてみましょう。時効により権利を取得したGから見て、Bは時効完成後の第三者ということになります。
この場合、①AからGへの取得時効による所有権移転と②AからBへの売買契約による所有権移転との間には、対抗問題が生じています。GがBに対して所有権を主張するためには、Bよりも先に所有権移転登記を備える必要があります。


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