【宅建過去問】(平成10年問11)借地借家法(借地)

Aは、その所有地について、Bに対し、建物の所有を目的とし存続期間30年の約定で賃借権(その他の特約はないものとする。)を設定した。この場合、借地借家法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。

  1. Bが、当初の存続期間満了前に、現存する建物を取り壊し、残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造した場合で、Aにその旨を事前に通知しなかったとき、Aは、無断築造を理由として、契約を解除することができる。
  2. 当初の存続期間満了時に建物が存在しており、Bが契約の更新を請求した場合で、Aがこれに対し遅滞なく異議を述べたが、その異議に正当の事由がないとき、契約は更新したものとみなされ、更新後の存続期間は30年となる。
  3. Bが、契約の更新後に、現存する建物を取り壊し、残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造した場合で、Aの承諾もそれに代わる裁判所の許可もないとき、Aは、土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる。
  4. 存続期間が満了し、契約の更新がない場合で、Bの建物が存続期間満了前にAの承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべきものとして新たに築造されたものであるとき、Bは、Aに対し当該建物を買い取るべきことを請求することはできない。

正解:3

1 誤り

借地権の当初の存続期間中に建物が滅失した場合、借地権設定者の承諾がない場合であっても、借地権は存続し、借地権者は建物を再築することができる。逆からいえば、借地権設定者が地上権消滅請求や賃貸借の解約の申入れをすることはできない。

※借地権者の承諾があった場合、借地権は、承諾日又は築造日のいずれか早い日から20年間存続する(借地借家法7条1項)。

※契約更新後については→肢3

■参照項目&類似過去問
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当初の契約期間中の滅失・取壊し(借地借家法[01]4(1))
年-問-肢内容正誤
1R04-11-1借地権の存続期間が満了する前に建物の滅失があった場合において、借地権者が借地権の残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物を築造することにつき借地権設定者の承諾がない場合でも、借地権の期間の延長の効果が生ずる。×
2R04-11-2転借地権が設定されている場合において、転借地上の建物が滅失したときは、転借地権は消滅し、転借地権者(転借人)は建物を再築することができない。×
3R04-11-3借地上の建物が滅失し、借地権設定者の承諾を得て借地権者が新たに建物を築造するに当たり、借地権設定者が存続期間満了の際における借地の返還確保の目的で、残存期間を超えて存続する建物を築造しない旨の特約を借地権者と結んだとしても、この特約は無効である。
4H25-12-4借地権の存続期間満了前に建物が滅失し、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を建築した場合、借地権設定者が異議を述べない限り、借地権は築造日から当然に20年間存続する。×
5H21-11-1当初の存続期間内に建物が滅失し、借地権者が借地権設定者の承諾を得ずに残存期間を超えて存続すべき建物を築造→借地権設定者は解約の申入れが可能。×
6H21-11-3借地権の当初の存続期間中に借地上の建物の滅失があった場合、借地権者は地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる。×
7H10-11-1当初の存続期間内に、借地権者が、借地権設定者に通知することなく、建物を取壊し残存期間を超えて存続すべき建物を築造→借地権設定者は契約の解除が可能。×
8H04-10-1木造建物の所有を目的とする借地契約において、期間満了前に借地権者が鉄筋コンクリート造りの建物を無断で増築した場合、借地権設定者が遅滞なく異議を述べなければ、借地権の存続期間は、増築のときから20年となる。×
9H04-10-4期間満了前に建物が火災により滅失し、借地権者が同等の建物を再築した場合、土地所有者が遅滞なく異議を述べなければ、借地権の存続期間は、建物滅失の日から20年となる。×
10H03-12-1借地権者は、家屋が火災により減失したときは、新築することができ、その建物が借地権の残存期間を超えて存続するものであっても、土地所有者は異議を述べることができない。×
11H02-12-3建物の所有を目的とする土地の賃貸借において、当該建物が借地人の失火により滅失したときは、賃貸人は、解約の申入れをすることができる。×
12H02-12-4建物の所有を目的とする土地の賃貸借において、当初の存続期間中に当該建物が滅失したときであっても、当該賃貸借は終了しない。

2 誤り

借地権の当初の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされる(借地借家法5条1項本文)。
ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない(同項ただし書き)。
もっとも、この異議には、「正当の事由」が必要であり、それがない場合には、異議を述べることはできない(同法6条)。すなわち、契約は更新されることになる。
本肢は、ここまでは正しい。

しかし、契約が更新された場合、更新後の存続期間は20年である(同法4条)。本肢は、「存続期間は30年」とする点が誤り。

■参照項目&類似過去問
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契約の法定更新(借地借家法[01]3)
年-問-肢内容正誤
1R05-11-4本件契約が借地権者の居住のための建物を所有する目的であり契約の更新がない旨を定めていない契約であって、期間満了する場合において甲土地上に建物があり、借地権者が契約の更新を請求したとしても、借地権設定者が遅滞なく異議を述べ、その異議に更新を拒絶する正当な事由があると認められる場合は、本件契約は更新されない。
2R03s-11-2借地権の存続期間が満了する場合、借地権者が契約の更新を請求したとき、その土地上に建物が存在する限り、借地権設定者は異議を述べることができない。×
3H25-12-2借地権の存続期間が満了する際、借地権者の更新請求に対し、借地権設定者が遅滞なく異議を述べた場合には、借地契約は当然に終了する。×
4H21-11-2当初の存続期間満了時に、借地権者が更新請求し、建物がある場合は、借地権設定者が異議を述べたとしても、異議の理由にかかわらず、借地契約を更新したものとみなされる。×
5H20-13-2存続期間満了後に、借地権者が土地使用を継続した場合、契約更新とみなされることがある。
6H19-13-3存続期間が満了した場合でも、借地権者が、建物収去・土地明渡しを請求できない場合がある。
7H10-11-2存続期間満了時に借地権者が更新を請求し、借地権設定者が異議を述べたがその異議に正当事由がない場合、契約は更新され、その存続期間は30年である。×
8H05-11-2「期間満了の際、借地権者に対し相当の一定額の交付さえ行えば、借地権設定者は更新を拒絶できる」と特約してもその特約は、無効である。
9H04-10-2当初の存続期間内に、建物が滅失し再築しない場合、期間満了時に、借地権者が更新請求しても、借地権設定者が異議を述べたときは、契約は更新されない。
10H04-10-3存続期間満了後、借地権者が土地使用を継続しており、借地権設定者が異議を述べなければ、期間の定めのない借地権が設定されたとみなされる。×
11H01-12-2存続期間満了時に、借地権者が更新請求し、建物がある場合は、借地権設定者が異議を述べなければ、前の契約と同一条件で更新したものとみなされる。
12H01-12-3存続期間満了後、借地権者が土地使用を継続しており、建物がある場合は、借地権設定者が異議を述べなければ、前の契約と同一条件で更新したものとみなされる。
借地権の存続期間(更新後の存続期間)(借地借家法[01]2(2))
年-問-肢内容正誤
1R03s-11-1借地権の存続期間を契約で30年と定めた場合には、当事者が借地契約を更新する際、その期間を更新の日から30年以下に定めることはできない。
×
2R02-11-4A所有の甲土地につき、Bとの間で居住の用に供する建物の所有を目的として存続期間30年の約定で賃貸借契約が締結された。AとBとが期間満了に当たり本件契約を最初に更新する場合、更新後の存続期間を15年と定めても、20年となる。
3H21-11-4当初の存続期間が満了し契約更新する場合、契約期間を10年と定めたときは、その定めは無効で契約期間は20年となる。
4H10-11-2存続期間満了時に借地権者が更新を請求し、借地権設定者が異議を述べたがその異議に正当事由がない場合、契約は更新され、その存続期間は30年である。×
5H04-10-3存続期間満了後、借地権者が土地使用を継続しており、借地権設定者が異議を述べなければ、期間の定めのない借地権が設定されたとみなされる。×

3 正しい

契約更新後に、建物が滅失し、借地権者が借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべき建物を築造した場合、借地権設定者は地上権消滅請求や賃貸借の解約の申入れをすることができる(借地借家法8条2項)。

■参照項目&類似過去問
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契約更新後の滅失・取壊し(借地借家法[01]4(2))
年-問-肢内容正誤
1H10-11-3借地権者が、契約の更新後に、現存する建物を取り壊し、残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造した場合で、借地権設定者の承諾もそれに代わる裁判所の許可もないとき、借地権設定者は、土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる。

4 誤り

借地権の存続期間が満了し、契約更新がない場合、借地権者は建物買取請求権を行使することができる(借地借家法13条1項)。これは、本肢のように、借地権者が借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続する建物を築造した場合であっても、変わるものではない。

※本肢のケースの場合、裁判所は、借地権設定者の請求により、代金支払いにつき期限を許与することができる(同条2項)。

■参照項目&類似過去問
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建物買取請求権(借地借家法[02]3)
年-問-肢内容正誤
1R05-11-3
本件契約に建物買取請求権を排除する旨の特約が定められていない場合、本件契約が終了したときは、その終了事由のいかんにかかわらず、BはAに対してBが甲土地上に所有している建物を時価で買い取るべきことを請求することができる。×
2R04-11-4
借地上の建物所有者が借地権設定者に建物買取請求権を適法に行使した場合、買取代金の支払があるまでは建物の引渡しを拒み得るとともに、これに基づく敷地の占有についても、賃料相当額を支払う必要はない。×
3R02-11-3
A所有の甲土地につき、Bとの間で居住の用に供する建物の所有を目的として存続期間30年の約定で賃貸借契約が締結された。本件契約で「Bの債務不履行により賃貸借契約が解除された場合には、BはAに対して建物買取請求権を行使することができない」旨を定めても、この合意は無効となる。×
4H28-11-4
[Aが居住用の甲建物を所有する目的で、期間30年と定めてBから乙土地を賃借]Aが地代を支払わなかったことを理由としてBが乙土地の賃貸借契約を解除した場合、契約に特段の定めがないときは、Bは甲建物を時価で買い取らなければならない。
×
5H24-11-4一時使用目的の借地権にも、建物買取請求権の規定が適用される。×
6H14-13-1事業用定期借地権を設定した場合、借主は建物買取請求権を有しない。
7H14-13-2借主の債務不履行を原因とする契約終了の場合にも、建物買取請求できる。×
8H14-13-3賃貸借契約・転貸借契約がともに期間満了し更新がなければ、転借人は賃貸人に対し直接建物買取請求権を有する。
9H14-13-4借主が適法に貸主に建物買取請求権を行使すると、その所有権は直ちに借主から貸主に移転するが、借主は貸主が代金を支払うまで、建物の引渡しを拒むことができる。
10H10-11-4建物が存続期間満了前に貸主の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべきものとして新たに築造されたものであるとき、建物買取請求権を行使できない。×
11H03-12-3借地権者は、借地権が消滅した場合において、家屋があるときは、自らが債務不履行のときでも土地所有者に対し家屋の買取りを請求することができる。×

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【宅建過去問】(平成10年問11)借地借家法(借地)” に対して2件のコメントがあります。

  1. 坂本 より:

    問1では、契約解除できないとなり、問3は解約の申し入れができる
    同じような問題でなぜ答えがちがうのか?

    1. 家坂 圭一 より:

      坂本様

      御質問ありがとうございます。

      建物を取り壊したタイミングを確認してください。
      肢1が「当初の存続期間満了前」の話であるのに対して、肢3は「契約の更新後」です。
      建物滅失のタイミングが違うので、適用されるルールも異なります。

      このサイトの【講義編】では、
      借地借家法[01]借地権の存続期間と更新
      で解説しています。

      4.建物の滅失・取壊し
      (1).当初の存続期間中の滅失・取壊し
      (2).契約更新後の滅失・取壊し

      この両者をしっかり区別しましょう。

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