【宅建過去問】(平成12年問07)解約手付
買主Aと売主Bとの間で建物の売買契約を締結し、AはBに手付を交付したが、その手付は解約手付である旨約定した。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。
- 手付の額が売買代金の額に比べて僅少である場合には、本件約定は、効力を有しない。
- Aが、売買代金の一部を支払う等売買契約の履行に着手した場合は、Bが履行に着手していないときでも、Aは、本件約定に基づき手付を放棄して売買契約を解除することができない。
- Aが本件約定に基づき売買契約を解除した場合で、Aに債務不履行はなかったが、Bが手付の額を超える額の損害を受けたことを立証できるとき、Bは、その損害全部の賠償を請求することができる。
- Bが本件約定に基づき売買契約を解除する場合は、Bは、Aに対して、単に口頭で手付の額の倍額を償還することを告げて受領を催告するだけでは足りず、これを現実に提供しなければならない。
正解:4
1 誤り
手付の額について特に制限はない。
したがって、売買代金の額に比べて手付の額が僅少であっても、解約手付の約定をすることができる。
■参照項目&類似過去問
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手付解除とは(民法[24]2(2)①)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | 12-07-1 | 手付の額が売買代金の額に比べて僅少である場合には、解約手付とする約定は、効力を有しない。 | × |
2 | 12-07-3 | 手付解除した場合で、買主に債務不履行はなかったが、売主が手付の額を超える額の損害を受けたことを立証できるとき、売主は、その損害全部の賠償を請求することができる。 | × |
3 | 12-07-4 | 売主の側から手付解除する場合、単に口頭で手付の額の倍額を償還することを告げて受領を催告するだけでは足りず、これを現実に提供しなければならない。 | ◯ |
4 | 06-06-3 | 買主の債務不履行を理由に契約が解除された場合、買主は、売主に対し違約金を支払わなければならないが、手付の返還を求めることはできる。 | ◯ |
5 | 04-07-1 | 不動産の売買契約が宅建業者の媒介による場合、契約に別段の定めがあっても、手付は解約手付となる。 | × |
6 | 04-07-2 | 解約手付の契約は、売買契約と同時に締結しなければ、効力を生じない。 | × |
2 誤り
手付による解除ができなくなるのは、契約の相手方が契約の履行に着手した時点以降である(民法557条1項)。 自らが履行に着手していても、相手方が履行に着手していなければ、解約手付による解除をすることができる。
したがって、Bが履行に着手していなければ、Aが着手していたとしても、Aから解約することは可能である。
■参照項目&類似過去問
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手付解除ができる期間・当事者(民法[24]2(2)②)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R03s-04-1 | 売主Aと買主Bとの間で締結した売買契約に関し、BがAに対して手付を交付した場合、Aは、目的物を引き渡すまではいつでも、手付の倍額を現実に提供して売買契約を解除することができる。 | × |
2 | R02-09-1 | Aがその所有する甲建物について、Bとの間で、Aを売主、Bを買主とする売買契約を締結した。Bが手付を交付し、履行期の到来後に代金支払の準備をしてAに履行の催告をした場合、Aは、手付の倍額を現実に提供して契約の解除をすることができる。 | × |
3 | 29-05-3 | Aは、中古自動車を売却するため、Bに売買の媒介を依頼し、報酬として売買代金の3%を支払うことを約した。Bの媒介によりAは当該自動車をCに100万円で売却した。売買契約が締結された際に、Cが解約手付として手付金10万円をAに支払っている場合には、Aはいつでも20万円を償還して売買契約を解除することができる。 | × |
4 | 21-10-2 | 売主が履行に着手していなくても、買主が履行に着手していれば、買主は契約を解除できない。 | × |
5 | 17-09-4 | 売主は、自らが履行に着手するまでは、買主が履行に着手していても、契約を解除できる。 | × |
6 | 16-04-2 | 売主が履行に着手した場合、買主が履行に着手したかどうかにかかわらず、売主は契約を解除できない。 | × |
7 | 12-07-2 | 買主が履行に着手した場合、売主が履行に着手していないときでも、買主は契約を解除できない。 | × |
8 | 06-06-2 | 買主は、売主が履行に着手するまでは、自らが履行に着手していても、契約を解除できる。 | ◯ |
9 | 04-07-3 | 買主は、自らが履行に着手していても、売主が履行に着手していなければ、契約を解除できる。 | ◯ |
3 誤り
解約手付による解除があった場合、当事者は相手方に対して損害賠償を請求することはできない。
■参照項目&類似過去問
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手付解除とは(民法[24]2(2)①)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | 12-07-1 | 手付の額が売買代金の額に比べて僅少である場合には、解約手付とする約定は、効力を有しない。 | × |
2 | 12-07-3 | 手付解除した場合で、買主に債務不履行はなかったが、売主が手付の額を超える額の損害を受けたことを立証できるとき、売主は、その損害全部の賠償を請求することができる。 | × |
3 | 12-07-4 | 売主の側から手付解除する場合、単に口頭で手付の額の倍額を償還することを告げて受領を催告するだけでは足りず、これを現実に提供しなければならない。 | ◯ |
4 | 06-06-3 | 買主の債務不履行を理由に契約が解除された場合、買主は、売主に対し違約金を支払わなければならないが、手付の返還を求めることはできる。 | ◯ |
5 | 04-07-1 | 不動産の売買契約が宅建業者の媒介による場合、契約に別段の定めがあっても、手付は解約手付となる。 | × |
6 | 04-07-2 | 解約手付の契約は、売買契約と同時に締結しなければ、効力を生じない。 | × |
4 正しい
売主が契約を解除するためには、手付の倍額を現実に提供しなければならない(民法557条1項)。
受領を催告するだけでは、解除の効果は生じない。
■参照項目&類似過去問
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手付解除とは(民法[24]2(2)①)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | 12-07-1 | 手付の額が売買代金の額に比べて僅少である場合には、解約手付とする約定は、効力を有しない。 | × |
2 | 12-07-3 | 手付解除した場合で、買主に債務不履行はなかったが、売主が手付の額を超える額の損害を受けたことを立証できるとき、売主は、その損害全部の賠償を請求することができる。 | × |
3 | 12-07-4 | 売主の側から手付解除する場合、単に口頭で手付の額の倍額を償還することを告げて受領を催告するだけでは足りず、これを現実に提供しなければならない。 | ◯ |
4 | 06-06-3 | 買主の債務不履行を理由に契約が解除された場合、買主は、売主に対し違約金を支払わなければならないが、手付の返還を求めることはできる。 | ◯ |
5 | 04-07-1 | 不動産の売買契約が宅建業者の媒介による場合、契約に別段の定めがあっても、手付は解約手付となる。 | × |
6 | 04-07-2 | 解約手付の契約は、売買契約と同時に締結しなければ、効力を生じない。 | × |
肢3について質問があります。
解説では、”解約手付による解除があった場合・・・”と記載があります。
肢では、”売主Bが手付の額を超える額の損害を受けた・・・”と記載があります。
そこで質問ですが、肢の文に、売主Bが手付の額を超える額の損害を受けたこと・・・とあります。
売主Bが履行の着手もしていないのに、手付の額を超える額の損害を受けたとは、例をあげるならばどんな損害でしょうか?
要は、解約手付による解除できる状態=履行に着手していない状態なのに損害が発生して損害が受けた。と言う理由が分かりません。小職が何か勘違いしていると思いますが、何を勘違いしているのかも分かりません。ご教示願います。
手付放棄による解除について
買主Aは、「本件約定に基づき売買契約を解除」しました。
つまり、手付を放棄することにより解除したわけです。
この場合、相手方(売主B)にたとえ損害が生じていたとしても、Bは、Aに対して、損害の賠償を請求することはできません。
「手付」については、以下の項目を復習してください。
↓
■民法[24]売買契約
2.手付
(2).解約手付
債務不履行による損害賠償請求について
Aの債務不履行によりBが損害を受けたのであれば、Bは、Aに対して、その損賠の賠償を請求することができます。
しかし、選択肢には、「Aに債務不履行はなかった」とあります。
したがって、Bは、Aに対して、債務不履行による損害賠償を請求することもできません。
「債務不履行」については、以下の項目を復習してください。
↓
■民法[15]債務不履行
maedaさんの疑問について
この選択肢の回答にあたって、必要な知識、検討すべき事項は、以上です。
これ以外のことを考える必要は、全くありません。
問題文にも選択肢にも書いていないので、私にも分かりません。
そして、「どんな損害か」について、考える必要は全くないのです。
宅建試験は、四択のマークシート方式です。
「どんな損害と考えられるか」
というような記述式の問題が出ることは、絶対にありません。
まずは、合格。
必要のないことは考えず、効率的に勉強しましょう。