【宅建過去問】(平成12年問08)不法行為
Aが、その過失によってB所有の建物を取り壊し、Bに対して不法行為による損害賠償債務を負担した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
- Aの不法行為に関し、Bにも過失があった場合でも、Aから過失相殺の主張がなければ、裁判所は、賠償額の算定に当たって、賠償金額を減額することができない。
- 不法行為がAの過失とCの過失による共同不法行為であった場合、Aの過失がCより軽微なときでも、Bは、Aに対して損害の全額について賠償を請求することができる。
- Bが、不法行為による損害と加害者を知った時から1年間、損害賠償請求権を行使しなければ、当該請求権は消滅時効により消滅する。
- Aの損害賠償債務は、BからAへ履行の請求があった時から履行遅滞となり、Bは、その時以後の遅延損害金を請求することができる。
正解:2
1 誤り
被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる(過失相殺。民法722条2項)。
加害者Aが過失相殺を主張しない場合でも、裁判所は過失相殺を考慮して、損害賠償額を減額することが可能である(大判大12.05.14)。
■参照項目&類似過去問
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過失相殺(民法[30]5(1))
[共通の設定]
Aは、乗用車の運転中に交通事故を起こし、歩いていたBに危害を加えた。
[共通の設定]
Aは、乗用車の運転中に交通事故を起こし、歩いていたBに危害を加えた。
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | H24-09-4 | Bが幼児である場合には、被害者側に過失があるときでも過失相殺が考慮されないので、AはBに発生した損害の全額を賠償しなければならない。 | × |
2 | H12-08-1 | Aの不法行為に関し、Bにも過失があった場合でも、Aから過失相殺の主張がなければ、裁判所は、賠償額の算定に当たって、賠償金額を減額することができない。 | × |
2 正しい
共同不法行為においては、加害者の全員(AC)が被害者(B)の損害全額を賠償すべき義務を負う(民法719条1項。最判昭57.03.04)。
したがってBは、Aに対しても、Cに対しても、損害の全額について賠償を請求することができる。
ACの過失の大小は無関係である。
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共同不法行為者の責任(民法[30]4)
[共通の設定(Q2~5)]
A及びCは、Aの過失とCの過失による共同不法行為によってB所有の建物を取り壊し、Bに対して不法行為による損害賠償債務を負担した。
[共通の設定(Q2~5)]
A及びCは、Aの過失とCの過失による共同不法行為によってB所有の建物を取り壊し、Bに対して不法行為による損害賠償債務を負担した。
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | H25-09-3 | Aに雇用されているBが、勤務中にA所有の乗用車を運転し、営業活動のため顧客Cを同乗させている途中で、Dが運転していたD所有の乗用車と正面衝突した(なお、事故についてはBとDに過失がある。)。事故によって損害を受けたCは、AとBに対して損害賠償を請求することはできるが、Dに対して損害賠償を請求することはできない。 | × |
2 | H19-05-3 | 加害者数人が、共同不法行為として民法第719条により各自連帯して損害賠償の責任を負う場合、その1人に対する履行の請求は、他の加害者に対してはその効力を有しない。 | ◯ |
3 | H14-11-1 | Aは、Bに対するAとCの加害割合が6対4である場合は、Bの損害全額の賠償請求に対して、損害の6割に相当する金額について賠償の支払をする責任を負う。 | × |
4 | H14-11-2 | Aが、自己の負担部分を超えて、Bに対し損害を賠償したときは、その超える部分につき、Cに対し、Cの負担部分の限度で求償することができる。 | ◯ |
5 | H12-08-2 | 不法行為がAの過失とCの過失による共同不法行為であった場合、Aの過失がCより軽微なときでも、Bは、Aに対して損害の全額について賠償を請求することができる。 | ◯ |
6 | H04-09-3 | 売主及び買主がそれぞれ別の宅地建物取引業者に媒介を依頼し、両業者が共同して媒介を行った場合において、両業者の共同不法行為により買主が損害を受けたときは、買主は、買主が依頼した業者に損害賠償を請求することはできるが、売主が依頼した業者に損害賠償を請求することはできない。 | × |
3 誤り
不法行為による損害賠償の請求権は、以下の期間が経過した時に、時効によって消滅する(民法724条)。
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する(民法724条)。
「損害と加害者を知った時から1年間」で消滅するわけではない。
■参照項目&類似過去問
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不法行為による損害賠償請求権の消滅時効(民法[30]5(2))
不法行為による損害賠償請求権の消滅時効(民法[06]3(2))
不法行為による損害賠償請求権の消滅時効(民法[06]3(2))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R03-08-3 | Aが1人で居住する甲建物の保存に瑕疵があったため、甲建物の壁が崩れて通行人Bがケガをした。本件事故について、AのBに対する不法行為責任が成立する場合、BのAに対する損害賠償請求権は、B又はBの法定代理人が損害又は加害者を知らないときでも、本件事故の時から20年間行使しないときには時効により消滅する。 | ◯ |
2 | R03-08-4 | Aが1人で居住する甲建物の保存に瑕疵があったため、甲建物の壁が崩れて通行人Bがケガをした。本件事故について、AのBに対する不法行為責任が成立する場合、BのAに対する損害賠償請求権は、B又はBの法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しないときには時効により消滅する。 | ◯ |
3 | R02s-01-4 | 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しない場合、時効によって消滅する。 | ◯ |
4 | H28-09-1 | 信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった売主に対する買主の損害賠償請求権(人の生命又は身体の侵害によるものではない。)は、買主が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効により消滅する。 | ◯ |
5 | H28-09-2 | 信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった売主に対する買主の損害賠償請求権は、損害を被っていることを買主が知らない場合でも、売買契約から10年間行使しないときは、時効により消滅する。 | × |
6 | H26-06-3 | Aは、Bに建物の建築を注文し、完成して引渡しを受けた建物をCに対して売却した。本件建物の主要な構造部分に欠陥があった。CがBに対して本件建物の瑕疵に関して不法行為責任に基づく損害賠償を請求する場合、当該請求ができる期間は、Cが瑕疵の存在に気付いてから1年以内である。 | × |
7 | H26-08-1 | 不法行為による損害賠償請求権の期間の制限を定める民法第724条における、被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいう。 | ◯ |
8 | H26-08-2 | 不法行為による損害賠償債務の不履行に基づく遅延損害金債権は、当該債権が発生した時から10年間行使しないことにより、時効によって消滅する。 | × |
9 | H26-08-3 | 不法占拠により日々発生する損害については、加害行為が終わった時から一括して消滅時効が進行し、日々発生する損害を知った時から別個に消滅時効が進行することはない。 | × |
10 | H26-08-4 | 不法行為の加害者が海外に在住している間は、民法第724条後段の20年の時効期間は進行しない。 | × |
11 | H19-05-4 | 不法行為による損害賠償の請求権の消滅時効の期間は、権利を行使することができることとなった時から10年である。 | × |
12 | H17-11-4 | 交通事故の被害者が、車の破損による損害賠償請求権を、損害及び加害者を知った時から3年間行使しなかったときは、この請求権は時効により消滅する。 | ◯ |
13 | H12-08-3 | 不法行為の被害者が、不法行為による損害と加害者を知った時から1年間、損害賠償請求権を行使しなければ、当該請求権は消滅時効により消滅する。 | × |
4 誤り
不法行為に基づく損害賠償債務は、何らの催告を要することなく、損害の発生と同時に遅滞に陥る(最判昭37.09.04)。
したがって、Bが履行の請求をしなかったとしても、Aは不法行為のときからの遅延損害金を支払わなければならない。
■参照項目&類似過去問
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不法行為による損害賠償債務の履行遅滞(民法[30]5(3))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | H19-05-1 | 不法行為による損害賠償の支払債務は、催告を待たず、損害発生と同時に遅滞に陥るので、その時以降完済に至るまでの遅延損害金を支払わなければならない。 | ◯ |
2 | H12-08-4 | 不法行為に基づく損害賠償債務は、被害者から加害者へ履行の請求があった時から履行遅滞となり、被害者は、その時以後の遅延損害金を請求することができる。 | × |
3 | H04-09-2 | 不法行為に基づく損害賠償債務は、被害者が催告をするまでもなく、その損害の発生のときから遅滞に陥る。 | ◯ |
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