【宅建過去問】(平成14年問11)不法行為(使用者責任)

Aの被用者Bと、Cの被用者Dが、A及びCの事業の執行につき、共同してEに対し不法行為をし、A、B、C及びDが、Eに対し損害賠償債務を負担した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1. Aは、Eに対するBとDの加害割合が6対4である場合は、Eの損害全額の賠償請求に対して、損害の6割に相当する金額について賠償の支払をする責任を負う。
  2. Aが、自己の負担部分を超えて、Eに対し損害を賠償したときは、その超える部分につき、Cに対し、Cの負担部分の限度で求償することができる。
  3. Aは、Eに対し損害賠償債務を負担したことに基づき損害を被った場合は、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、Bに対し、損害の賠償又は求償の請求をすることができる。
  4. Dが、自己の負担部分を超えて、Eに対し損害を賠償したときは、その超える部分につき、Aに対し、Aの負担部分の限度で求償することができる。

正解:1

1 誤り

共同不法行為においては、加害者の全員が被害者の損害全額を賠償すべき義務を負う(民法719条1項。最判昭57.03.04)。
加害割合に応じて賠償責任を負うのではない。
(加害割合は加害者間の求償関係の基準となるに過ぎない。)

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共同不法行為者の責任(民法[30]4)
年-問-肢内容正誤
125-09-3共同不法行為(自動車事故)の加害者の同乗者は、他の加害者に対して損害賠償請求できない。×
219-05-3共同不法行為の加害者の1人に履行を請求しても、他の加害者には効力を有しない。
314-11-1共同不法行為の加害者は、加害割合に応じた金額についてのみ賠償の責任を負う。×
414-11-2(Aの被用者Bと、Cの被用者Dが、A及びCの事業の執行につき、共同してEに対し不法行為)Aが、自己の負担部分を超えて、Eに対し損害を賠償したときは、その超える部分につき、Cに対し、Cの負担部分の限度で求償することができる。
512-08-2共同不法行為の加害者のうち過失が軽微な者に対しても、損害全額の賠償を請求できる。
604-09-3売主・買主それぞれが宅建業者に媒介を依頼し、両業者が共同不法行為を行った場合、買主は、自らが依頼した宅建業者には損害賠償請求できるが、売主が依頼した業者には請求できない。×

2 正しい

加害者BDの複数の使用者ACが使用者責任を負う場合、使用者の一方(A)が自己の負担部分を超えて損害を賠償したときは、その超える部分に関し、他方の使用者(C)に対して、その使用者の負担部分の割合で求償することができる(民法715条。最判平03.10.25)。

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共同不法行為者の責任(民法[30]4)
年-問-肢内容正誤
125-09-3共同不法行為(自動車事故)の加害者の同乗者は、他の加害者に対して損害賠償請求できない。×
219-05-3共同不法行為の加害者の1人に履行を請求しても、他の加害者には効力を有しない。
314-11-1共同不法行為の加害者は、加害割合に応じた金額についてのみ賠償の責任を負う。×
414-11-2(Aの被用者Bと、Cの被用者Dが、A及びCの事業の執行につき、共同してEに対し不法行為)Aが、自己の負担部分を超えて、Eに対し損害を賠償したときは、その超える部分につき、Cに対し、Cの負担部分の限度で求償することができる。
512-08-2共同不法行為の加害者のうち過失が軽微な者に対しても、損害全額の賠償を請求できる。
604-09-3売主・買主それぞれが宅建業者に媒介を依頼し、両業者が共同不法行為を行った場合、買主は、自らが依頼した宅建業者には損害賠償請求できるが、売主が依頼した業者には請求できない。×

3 正しい

加害者Bの使用者であるAが損害を負担した場合、損害の公平な分担という見地から信義則上認められる限度において、Bに対して、損害の賠償又は求償の請求をすることができる(民法715条。最判昭51.07.08)。

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使用者の被用者に対する求償(民法[30]2(4))
年-問-肢内容正誤
128-07-ウ
使用者は、使用者責任に基づき、被害者に対して被用者の不法行為から生じた損害を賠償した場合、被用者に対して求償することができるが、その範囲が信義則上相当と認められる限度に制限される場合がある。
225-09-1使用者は、被用者との共同不法行為者に対して、求償権を行使することができる。
325-09-2使用者は、被用者に対して、求償ができない。×
424-09-3使用者は、被用者から全額の求償ができる。×
520-11-3使用者は、被用者に対して、求償ができない。×
618-11-4使用者は、被用者から損害額の1/2の求償ができる。×
714-11-3使用者は、被用者に対して、信義則上相当と認められる限度において、求償ができる。
814-11-4(Aの被用者Bと、Cの被用者Dが、A及びCの事業の執行につき、共同してEに対し不法行為)Dが、自己の負担部分を超えて、Eに対し損害を賠償したときは、その超える部分につき、Aに対し、Aの負担部分の限度で求償することができる。
911-09-4使用者は、被用者に故意または重過失がなければ、求償できない。×
1006-07-4使用者は、被害者に対して損害の賠償をした場合、被用者に求償することはできない。×
1104-09-4使用者は、被用者に対して、求償ができない。×

4 正しい

BとDの共同不法行為の場合に、Dが自己の負担部分を超えて、損害を賠償したときには、その超える部分について、使用者Aの負担部分(=加害者Bの負担部分)の限度で求償することができる。

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使用者の被用者に対する求償(民法[30]2(4))
年-問-肢内容正誤
128-07-ウ
使用者は、使用者責任に基づき、被害者に対して被用者の不法行為から生じた損害を賠償した場合、被用者に対して求償することができるが、その範囲が信義則上相当と認められる限度に制限される場合がある。
225-09-1使用者は、被用者との共同不法行為者に対して、求償権を行使することができる。
325-09-2使用者は、被用者に対して、求償ができない。×
424-09-3使用者は、被用者から全額の求償ができる。×
520-11-3使用者は、被用者に対して、求償ができない。×
618-11-4使用者は、被用者から損害額の1/2の求償ができる。×
714-11-3使用者は、被用者に対して、信義則上相当と認められる限度において、求償ができる。
814-11-4(Aの被用者Bと、Cの被用者Dが、A及びCの事業の執行につき、共同してEに対し不法行為)Dが、自己の負担部分を超えて、Eに対し損害を賠償したときは、その超える部分につき、Aに対し、Aの負担部分の限度で求償することができる。
911-09-4使用者は、被用者に故意または重過失がなければ、求償できない。×
1006-07-4使用者は、被害者に対して損害の賠償をした場合、被用者に求償することはできない。×
1104-09-4使用者は、被用者に対して、求償ができない。×

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