【宅建過去問】(平成16年問03)物権の移転と対抗問題
Aは、自己所有の建物をBに売却したが、Bはまだ所有権移転登記を行っていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
- Cが何らの権原なくこの建物を不法占有している場合、Bは、Cに対し、この建物の所有権を対抗でき、明渡しを請求できる。
- DがAからこの建物を賃借し、引渡しを受けて適法に占有している場合、Bは、Dに対し、この建物の所有権を対抗でき、賃貸人たる地位を主張できる。
- この建物がAとEとの持分1/2ずつの共有であり、Aが自己の持分をBに売却した場合、Bは、Eに対し、この建物の持分の取得を対抗できない。
- Aはこの建物をFから買い受け、FからAに対する所有権移転登記がまだ行われていない場合、Bは、Fに対し、この建物の所有権を対抗できる。
正解:2
物権の帰属を争う「対抗関係」になるかどうか、
また、「対抗関係」にあるとしても、「第三者(登記がないことを主張する正当な利益を有する者)」といえるか、
という問題である(民法177条)。
1 正しい
不法占拠者(C)は「第三者(登記がないことを主張する正当な利益を有する者)」に該当しない(最判昭25.12.19)。
したがって、BはCに対して、登記がなくとも、所有権を主張し、明渡しを請求することができる。
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対抗問題:不法占拠者(民法[07]3(3))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R03s-09-3 | AがBに対してA所有の甲建物を①売却又は②賃貸した。甲建物をCが不法占拠している場合、①ではBは甲建物の所有権移転登記を備えていなければ所有権をCに対抗できず、②ではBは甲建物につき賃借権の登記を備えていれば賃借権をCに対抗することができる。 | × |
2 | R01-01-1 | [Aは、Aが所有している甲土地をBに売却した。]甲土地を何らの権原なく不法占有しているCがいる場合、BがCに対して甲土地の所有権を主張して明渡請求をするには、甲土地の所有権移転登記を備えなければならない。 | × |
3 | 19-03-3 | 正当な権原なく土地を占有する者に対しては、登記を備えていなくても、土地の明渡しを請求できる。 | ◯ |
4 | 16-03-1 | 何ら権原のない不法占有者に対しては、登記を備えていなくても、土地の明渡しを請求できる。 | ◯ |
5 | 10-01-3 | 土地の不法占拠者に対しては、登記がなければ所有権を主張できない。 | × |
2 誤り
Aから甲土地を購入したBがDに対して賃貸人たる地位を主張するためには、この建物について、所有権移転の登記を受ける必要がある(民法605条の2第3項)。
Bはまだ所有権移転登記を受けていないのだから、Dに対して、賃貸人たる地位を主張することはできない。
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賃貸人たる地位の移転(民法[26]6)
対抗問題:賃借人(民法[07]3(5))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R05-12-3 | 賃借人が建物の引渡しを受けている場合において、当該建物の賃貸人が当該建物を譲渡するに当たり、当該建物の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及び当該建物の譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は譲受人に移転しない。 | ◯ |
2 | R03-12-2 | Aを賃貸人、Bを賃借人とする甲建物の賃貸借契約が締結された。甲建物がBに引き渡された後、甲建物の所有権がAからCに移転した場合、本件契約の敷金は、他に特段の合意がない限り、BのAに対する未払賃料債務に充当され、残額がCに承継される。 | ◯ |
3 | R02s-06-3 | AはBにA所有の甲建物を賃貸し、BはAの承諾を得てCに適法に甲建物を転貸し、Cが甲建物に居住している。AがDに甲建物を売却した場合、AD間で特段の合意をしない限り、賃貸人の地位はDに移転する。 | ◯ |
4 | 24-06-2 | 甲土地の賃借人であるBが、甲土地上に登記ある建物を有する場合に、Aから甲土地を購入したCは、所有権移転登記を備えていないときであっても、Bに対して、自らが賃貸人であることを主張することができる。 | × |
5 | 16-03-2 | Aは、自己所有の建物をCに売却したが、Cはまだ所有権移転登記を行っていない。BがAからこの建物を賃借し、引渡しを受けて適法に占有している場合、Cは、Bに対し、この建物の所有権を対抗でき、賃貸人たる地位を主張できる。 | × |
6 | 07-07-1 | BがAの所有地を賃借して、建物を建てその登記をしている。Aがその土地をCに譲渡する場合、賃貸人の義務の移転を伴うから、Aは、その譲渡についてBの承諾を必要とする。 | × |
7 | 07-07-3 | BがAの所有地を賃借して、建物を建てその登記をしている。CがAからその土地の譲渡を受けた場合、Cは、登記を移転していなくても賃貸人たる地位の取得をBに対抗することができる。 | × |
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R03s-06-2 | 土地の賃借人として当該土地上に登記ある建物を所有する者は、当該土地の所有権を新たに取得した者と対抗関係にある第三者に該当する。 | ◯ |
2 | R01-01-2 | [Aは、Aが所有している甲土地をBに売却した。]Bが甲土地の所有権移転登記を備えていない場合には、Aから建物所有目的で甲土地を賃借して甲土地上にD名義の登記ある建物を有するDに対して、Bは自らが甲土地の所有者であることを主張することができない。 | ◯ |
3 | 24-06-2 | 賃貸中の土地の譲受人→土地上に登記ある建物を有する土地の賃借人:登記がなくても賃貸人の地位を対抗可能。 | × |
4 | 20-04-4 | 建物に居住している建物の賃借人→建物の譲受人:賃借権を対抗可能。 | ◯ |
5 | 16-03-2 | 賃貸中の建物の譲受人→引渡しを受けた建物の賃借人:登記がなくても賃貸人の地位を対抗可能。 | × |
6 | 10-01-1 | 賃貸中の土地の譲受人→自己名義で保存登記をした建物を所有する土地の賃借人:登記がなくても所有権を対抗可能。 | × |
7 | 08-03-4 | Aの所有する土地について、AB間で、代金全額が支払われたときに所有権がAからBに移転する旨約定して売買契約を締結した。EがAからこの土地を賃借して、建物を建てその登記をしている場合、BがAに代金全額を支払った後であれば、AからBへの所有権移転登記が完了していなくても、Bは、Eに対して所有権の移転を主張することができる。 | × |
8 | 07-07-3 | 賃貸中の土地の譲受人→建物を建てその登記をしている土地の賃借人:登記がなくても賃貸人の地位を対抗可能。 | × |
9 | 01-13-1 | 引渡しを受けた建物の賃借人→土地を譲り受け移転登記をした所有権者:賃借人の地位を対抗可能。 | ◯ |
3 正しい
不動産の共有者(AとE)の1人(A)が自己の持分を譲渡した場合、譲受人(B)と他の共有者(E)との関係は対抗関係になる、とするのが判例である(最判昭46.06.18)。
したがって、Bは登記を経由しない限りは、自己の持分をEに対抗することができない。
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対抗問題(複雑なケース)(民法[07])
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | 17-06-1 | BはAに対して自己所有の甲建物に平成15年4月1日に抵当権を設定し、Aは同日付でその旨の登記をした。Bは、平成15年2月1日に甲建物をCに期間4年の約定で賃貸し、同日付で引き渡していた。Cは、この賃貸借をAに対抗できる。 | ◯ |
2 | 16-03-3 | Aは、自己所有の建物をBに売却したが、Bはまだ所有権移転登記を行っていない。この建物がAとEとの持分1/2ずつの共有であり、Aが自己の持分をBに売却した場合、Bは、Eに対し、この建物の持分の取得を対抗できない。 | ◯ |
3 | 15-03-3 | Aは、自己所有の甲地をBに売却し引き渡したが、Bはまだ所有権移転登記を行っていない。Eが、甲地に抵当権を設定して登記を得た場合であっても、その後Bが所有権移転登記を得てしまえば、以後、EはBに対して甲地に抵当権を設定したことを主張することができない。 | × |
4 | 14-02-4 | Aが、Bの代理人としてCとの間で、B所有の土地の売買契約を締結しようとしている。AがBに無断でCと売買契約をしたが、Bがそれを知らないでDに売却して移転登記をした後でも、BがAの行為を追認すれば、DはCに所有権取得を対抗できなくなる。 | × |
5 | 09-06-3 | GがHに土地を譲渡した場合で、Hに登記を移転する前に、Gが死亡し、Iがその土地の特定遺贈を受け、登記の移転も受けたとき、Hは、登記なしにIに対して土地の所有権を主張できる。 | × |
6 | 08-03-3 | Aの所有する土地について、AB間で、代金全額が支払われたときに所有権がAからBに移転する旨約定して売買契約を締結した。Aが、Bとの売買契約締結前に、Dとの間で本件土地を売却する契約を締結してDから代金全額を受領していた場合、AからDへの所有権移転登記が完了していなくても、Bは、Aから所有権を取得することはできない。 | × |
4 正しい
この建物の所有権は、F→A→Bと移転している。
したがって、FとBは、建物につき前主・後主の関係にあり、所有権を争う対抗関係にあるわけではない。
したがって、Bは登記がなくとも、Fに対して建物の所有権を対抗することができる。
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対抗問題にならないケース(民法[07]1(2))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R03s-06-1 | 不動産の所有権がAからB、BからC、CからDと転々譲渡された場合、Aは、Dと対抗関係にある第三者に該当する。 | × |
2 | R01-01-3 | [Aは、Aが所有している甲土地をBに売却した。]Bが甲土地の所有権移転登記を備えないまま甲土地をEに売却した場合、Eは、甲土地の所有権移転登記なくして、Aに対して甲土地の所有権を主張することができる。 | ◯ |
3 | 16-03-4 | F→A→Bと所有権が移転した場合、BはFに対し、登記がなくても所有権を対抗できる。 | ◯ |
4 | 13-25-3 | [A所有の宅地甲地をBが取得]甲地にA所有の住宅が建っているとき、BがAに対してこれを除却するよう求めるためには、Bは、甲地の所有権移転登記を完了していなければならない。 | × |
5 | 08-03-1 | 代金全額を支払ったとしても、所有権移転登記を完了していない場合には、買主は売主に所有権の移転を主張できない。 | × |
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