【宅建過去問】(平成17年問26) 所得税
所得税法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 譲渡所得とは資産の譲渡による所得をいうので、個人の宅地建物取引業者が販売の目的で所有している土地を譲渡した場合には、譲渡所得として課税される。
- 建物等の所有を目的とする土地の賃借権の設定の対価として支払を受ける権利金の金額がその土地の価額の5/10に相当する金額を超える場合には、譲渡所得として課税される。
- 譲渡所得の基因となる資産をその譲渡の時における価額の1/2に満たない金額で個人に対して譲渡した場合には、その譲渡の時における価額に相当する金額によりその資産の譲渡があったものとみなされる。
- 個人が所有期間5年以内の固定資産を譲渡した場合には、譲渡益から譲渡所得の特別控除額を差し引いた後の譲渡所得の金額の1/2相当額が課税標準とされる。
正解:2
1 誤り
譲渡所得とは、資産の譲渡による所得である。そして、譲渡所得の対象となる資産には、土地、借地権、建物などが含まれる。しかし、事業所得者が商品や製品などの棚卸資産を譲渡した場合には、譲渡所得ではなく事業所得として課税される。
本肢では、「個人の宅建業者が販売目的で所有している土地を譲渡」したというのだから、事業所得として課税される。
※個人が自宅を売却したような場合が譲渡所得の対象である。
譲渡所得 | 資産を譲渡したことによる所得 |
事業所得 | 事業所得者が商品や製品などの棚卸資産を譲渡したことによる所得 |
2 正しい
賃借権の設定の対価として支払を受ける権利金の金額がその土地の価額の5/10に相当する金額を超える場合には、譲渡所得として課税される。このような賃貸借は実質において売買と異ならないためである。
3 誤り
譲渡所得の基因となる資産を、その譲渡の時における価額の2分の1未満の金額で譲渡(低額譲渡)した場合、譲渡先が法人であるときには、その譲渡の時における価額に相当する金額(時価)による譲渡があったものとして課税される。しかし、本肢の譲渡相手は、個人である。この場合、時価課税ではなく、実際に譲渡した金額を収入金額として課税される。
※個人に対する低額譲渡で譲渡損失が生じた場合、損失の金額は、譲渡所得の金額の計算上なかったものとみなされる。
譲渡の相手方 | 課税方法 | |
法人 | 時価課税 | |
個人 | 譲渡益 | 通常課税 |
譲渡損失 | なかったものとみなす |
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | 20-26-4 | 個人に対して、譲渡所得の基因となる資産をその譲渡の時における価額の2分の1に満たない金額で譲渡した場合において、その譲渡により生じた損失の金額については、譲渡所得の金額の計算上、なかったものとみなされる。 | ◯ |
2 | 17-26-3 | 譲渡所得の基因となる資産をその譲渡の時における価額の1/2に満たない金額で個人に対して譲渡した場合には、その譲渡の時における価額に相当する金額によりその資産の譲渡があったものとみなされる。 | × |
4 誤り
本肢では、固定資産としか書かれていないが、それが土地建物なのか、それ以外なのか、によって計算方法は異なる。
まず、土地建物の譲渡の場合(上図)、譲渡益から、居住用財産の譲渡の場合の3,000万円控除や、収用等による譲渡の場合の5,000万円控除などの特別控除を差し引いた額を課税標準とする。短期譲渡所得・長期譲渡所得のいずれの場合にも、譲渡所得金額の1/2が課税標準となることはない。
次に、土地建物以外の譲渡の場合(下図)、まず、譲渡益から、譲渡所得の特別控除(50万円)を差し引いて、譲渡所得を求める。短期譲渡所得(所有期間が5年以内)の場合は、この譲渡所得全額が課税対象となる。長期譲渡所得(所有期間が5年超)の場合は、譲渡所得の金額の1/2が課税標準となる。
「短期譲渡所得において、譲渡所得の金額の1/2相当額が課税標準とされる」という本肢の記述は、譲渡される固定資産が土地建物である場合とそれ以外のいずれについても誤っている。