【宅建過去問】(平成18年問01)民法の基本原則
次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
- 契約締結交渉中の一方の当事者が契約交渉を打ち切ったとしても、契約締結に至っていない契約準備段階である以上、損害賠償責任が発生することはない。
- 民法第1条第2項が規定する信義誠実の原則は、契約解釈の際の基準であり、信義誠実の原則に反しても、権利の行使や義務の履行そのものは制約を受けない。
- 時効は、一定時間の経過という客観的事実によって発生するので、消滅時効の援用が権利の濫用となることはない。
- 所有権に基づく妨害排除請求が権利の濫用となる場合には、妨害排除請求が認められることはない。
正解:4
1 誤り
契約締結後の履行段階における債務不履行が損害賠償責任の対象になるのは、当然である(民法415条)。
判例は、これに加え、契約準備段階における責任をも認めている。すなわち、契約が締結されていない場合でも、双方は信義則上の注意義務を負う。この注意義務に違反した場合、その当事者は、相手方の損害を賠償しなければならない(同法1条2項。最判昭59.09.18)。
■参照項目&類似過去問
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契約準備段階での説明義務違反(民法[30]5(5))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | H28-09-4 | 売主が信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった場合、買主は、売主に対して、この説明義務違反を理由に、売買契約上の債務不履行責任を追及することはできない。 | ◯ |
2 | H24-08-1 | AがBと契約を締結する前に、信義則上の説明義務に違反して契約締結の判断に重要な影響を与える情報をBに提供しなかった場合、Bが契約を締結したことにより被った損害につき、Aは、不法行為による賠償責任を負うことはあっても、債務不履行による賠償責任を負うことはない。 | ◯ |
3 | H18-01-1 | 契約締結交渉中の一方の当事者が契約交渉を打ち切ったとしても、契約締結に至っていない契約準備段階である以上、損害賠償責任が発生することはない。 | × |
2 誤り
民法1条2項は、「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。」としている。つまり、信義誠実の原則は、もともと、権利行使や義務履行における基準であった。
判例は、さらに加えて、「信義誠実の原則は、単に権利の行使、義務の履行についてのみならず、契約の趣旨の解釈についてもその基準となる。」と言っている(最判昭32.07.05)。つまり、信義誠実の原則(信義則)が「契約趣旨の解釈基準」としての意義をも有することを認めたのである。
3 誤り
消滅時効の援用が権利の濫用となることがありうる(民法1条3項。最判昭51.05.25)。
■参照項目&類似過去問
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時効の効力(民法[06]4(1))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
時効の効力 | |||
1 | H29-02-1 | Aの所有する甲土地をBが時効取得した場合、Bが甲土地の所有権を取得するのは、取得時効の完成時である。 | × |
時効の援用 | |||
1 | R02s-05-1 | 消滅時効の援用権者である「当事者」とは、権利の消滅について正当な利益を有する者であり、債務者のほか、保証人、物上保証人、第三取得者も含まれる。 | ◯ |
2 | H30-04-1 | 消滅時効完成後に主たる債務者が時効の利益を放棄した場合であっても、保証人は時効を援用することができる。 | ◯ |
3 | H30-04-2 | 後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。 | × |
4 | H30-04-3 | 詐害行為の受益者は、債権者から詐害行為取消権を行使されている場合、当該債権者の有する被保全債権について、消滅時効を援用することができる。 | ◯ |
5 | H18-01-3 | 時効は、一定時間の経過という客観的事実によって発生するので、消滅時効の援用が権利の濫用となることはない。 | × |
6 | H12-02-1 | 物上保証人は、主たる債務者の消滅時効を援用できる。 | ◯ |
7 | H09-04-3 | 物上保証人は、債権の消滅時効を援用して債権者に抵当権の抹消を求めることができる。 | ◯ |
時効の利益の放棄 | |||
1 | R02-07-2 | 主たる債務の目的が保証契約の締結後に加重されたときは、保証人の負担も加重され、主たる債務者が時効の利益を放棄すれば、その効力は連帯保証人に及ぶ。 | × |
2 | H30-04-1 | 消滅時効完成後に主たる債務者が時効の利益を放棄した場合であっても、保証人は時効を援用することができる。 | ◯ |
3 | H21-03-2 | 賃借人が、賃貸人との建物賃貸借契約締結時に、賃料債権につき消滅時効の利益はあらかじめ放棄する旨約定したとしても、その約定に法的効力は認められない。 | ◯ |
4 正しい
所有権に基づく妨害排除請求が権利の濫用となる場合もありうる。この場合、妨害排除請求は認められない(民法1条3項。宇奈月温泉事件)。
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