【宅建過去問】(平成20年問12)遺留分


Aには、相続人となる子BとCがいる。Aは、Cに老後の面倒をみてもらっているので、「甲土地を含む全資産をCに相続させる」旨の有効な遺言をした。この場合の遺留分に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

  1. Bの遺留分を侵害するAの遺言は、その限度で当然に無効である。
  2. Bが、Aの死亡の前に、A及びCに対して直接、書面で遺留分を放棄する意思表示をしたときは、その意思表示は有効である。
  3. Aが死亡し、その遺言に基づき甲土地につきAからCに対する所有権移転登記がなされた後でも、Bは遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
  4. Bは、遺留分侵害額に相当する金銭の支払の請求に代えて、遺留分に基づき遺贈の減殺を請求することができる。

正解:3

はじめに

BとCは、ともにAの子ですから1/2ずつの法定相続分を有しています(民法900条4号)。しかし、Aは、「全財産をCに相続させる」旨の遺言をしているのです。これに従えば、Bの相続分は、ゼロとなってしまいます。
このような場合、Cは、Aの財産の1/4を、遺留分として受けることができます(同法1042条1項2号、900条4号)。具体的には、Cに対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができます(同法1046条1項)。

1 誤り

被相続人は、遺言で共同相続人の相続分を定める場合、遺留分に関する規定に違反することができません(民法902条1項ただし書き)。
しかし、遺留分を侵害するような遺言がなされたとしても、遺言自体が無効になるわけではありません。遺留分侵害額請求を受ける可能性がある、というだけのことです。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
遺留分侵害額請求(民法[33]3)
年-問-肢内容正誤
120-12-1相続人の一部の遺留分を侵害する被相続人の遺言は、その限度で当然に無効である。×
212-10-2Aは、「Aの財産をすべてBに遺贈する。CはBに対して遺留分侵害額の請求をしてはならない」旨の遺言をして、CをAの相続から排除することができる。
×
312-10-4Aは、「Aの乙建物を子Cに相続させる」旨の遺言をした場合で、子Bの遺留分を害しないとき、これをC単独の所有に帰属させることができる。
409-10-2遺留分侵害額の請求は、訴えを提起しなくても、内容証明郵便による意思表示だけでもすることができる。
507-11-2[Aが死亡し、相続人はAの子であるC・Dのみ。]Aが遺産の全部をCに遺贈した場合、DからCに対して遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
602-11-2Aが遺産を子Cに遺贈していた場合、その遺贈は、配偶者B、子D及び子Eの遺留分を侵害した部分について、効力を生じない。×

2 誤り

相続の開始前に遺留分を放棄するには、家庭裁判所の許可を受ける必要があります(民法1049条1項)。
「書面で遺留分を放棄する意思表示をした」というだけでは、遺留分の放棄は有効となりません。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
遺留分の放棄(民法[33]4)
年-問-肢内容正誤
1R04-02-1被相続人の生前においては、相続人は、家庭裁判所の許可を受けることにより、遺留分を放棄することができる。
2R04-02-3相続人が遺留分の放棄について家庭裁判所の許可を受けると、当該相続人は、被相続人の遺産を相続する権利を失う。×
3H20-12-2相続開始前でも、書面で意思表示すれば、遺留分を放棄できる。×
4
H09-10-4相続開始前に、家裁の許可を得て遺留分を放棄した場合でも、遺産を相続する権利を失わない。
5H02-11-4被相続人の生前に相続人Dが遺留分の放棄について家庭裁判所の許可を受けていた場合においても、Dは、相続人となることができる。

3 正しい

遺留分侵害額の請求権は、以下の期間が経過したときに時効消滅します(民法1048条)。
「被相続人の遺言に基づき土地の所有権移転登記がなされた」というだけでは、遺留分侵害額請求権は、消滅しません。その後であっても、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができます。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
遺留分侵害額請求の期間制限(民法[33]3(3))
年-問-肢内容正誤
120-12-3[Aには、相続人となる子BとCがいる。]Aが死亡し、その遺言に基づき甲土地につきAからCに対する所有権移転登記がなされた後でも、Bは遺留分侵害額を請求することができる。
209-10-3相続が開始して9年6箇月経過する日に、はじめて相続の開始と遺留分を害する遺贈のあったことを知った遺留分権利者は、6箇月以内であれば、遺留分侵害額の請求をすることができる。

4 誤り

遺留分権利者に認められるのは、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求するという方法です(民法1046条1項)。
遺留分に基づき、遺贈の減殺を請求することはできません。

※遺留分減殺請求というのは、令和2年改正前の民法が使っていたルールで、現在は、存在しません。


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