【宅建過去問】(平成21年問02)代理

AがA所有の土地の売却に関する代理権をBに与えた場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

  1. Bが自らを「売主Aの代理人B」ではなく、「売主B」と表示して、買主Cとの間で売買契約を締結した場合には、Bは売主Aの代理人として契約しているとCが知っていても、売買契約はBC間に成立する。
  2. Bが自らを「売主Aの代理人B」と表示して買主Dとの間で締結した売買契約について、Bが未成年であったとしても、AはBが未成年であることを理由に取り消すことはできない。
  3. Bは、自らが選任及び監督するのであれば、Aの意向にかかわらず、いつでもEを復代理人として選任して売買契約を締結させることができる。
  4. Bは、Aに損失が発生しないのであれば、Aの意向にかかわらず、買主Fの代理人にもなって、売買契約を締結することができる。

正解:2

1 誤り

代理人は、意思表示の際、相手方に対して、自らが代理人である旨を表示する必要があります(「顕名」といいます。民法99条1項)。そして、代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示(顕名のない意思表示)は、代理人自身のためにしたものとみなされます(民法100条本文)。
ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、代理行為は有効です(同条ただし書き、99条1項)。

21-02-1
本肢では、顕名はなく、代理人Bの名前が「売主」として表示されています。しかし、相手方Cは、BがAの代理人として契約していることを知っているわけです。したがって、代理行為は有効であり、売買契約の効力は、AC間に生じます。BC間に成立するわけではありません。

■参照項目&類似過去問
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顕名がなかった場合(民法[03]3(1)①)
年-問-肢内容正誤
121-02-1代理人が顕名を怠り自らの名を本人として表示した場合、相手方がこのことを知っていても、契約は代理人・相手方間に成立する。×
217-03-ア顕名がなくても、相手方が知っていれば、代理による契約が成立する。
313-08-1代理人が顕名せずに契約を締結した場合、相手方が真の売主を知っていても、契約は代理人・相手方間に成立する。×

2 正しい

代理人となるに当たって、行為能力は要求されません(民法102条)。したがって、未成年者など制限行為能力者でも、代理人となることができます。
もちろん、未成年者である代理人がした行為は、確定的に有効になります。代理人Bが未成年者であることを理由に、本人Aが契約を取り消すことはできません。

21-02-2※相手方Dの側から、契約を取り消すことも不可能です。

■参照項目&類似過去問
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代理人の行為能力(民法[03]3(3))
年-問-肢内容正誤
130-02-2[Aが、所有する甲土地の売却に関する代理権をBに授与し、BがCとの間で、Aを売主、Cを買主とする甲土地の売買契約を締結した。]AがBに代理権を授与するより前にBが補助開始の審判を受けていた場合、Bは有効に代理権を取得することができない。
×
226-02-ウ代理人は、行為能力者であることを要しない。
324-02-1未成年者が代理人となる契約には法定代理人の同意が必要。×
422-02-3代理人が未成年であることを理由に、相手方から取消しが可能。×
521-02-2代理人が未成年であることを理由に、本人からの取消しは不可。
612-01-1未成年者は代理人になることができない。×
706-04-1代理人が未成年であることを理由に、本人からの取消しが可能。×
804-02-1代理人が未成年であることを理由に、本人からの取消しが可能。×
903-03-1代理人が未成年であり親権者の同意がないことを理由に、本人からの取消しが可能。×

3 誤り

本問のBは任意代理人です。任意代理人Bは、本人Aの許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができません(民法104条)。
本肢は、「Aの意向にかかわらず」とする点が誤りです。

■参照項目&類似過去問
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復代理(民法[03]4)
年-問-肢内容正誤
129-01-2委任による代理人は、本人の許諾を得たときのほか、やむを得ない事由があるときにも、復代理人を選任することができる。
229-01-3復代理人が委任事務を処理するに当たり金銭を受領し、これを代理人に引き渡したときは、特段の事情がない限り、代理人に対する受領物引渡義務は消滅するが、本人に対する受領物引渡義務は消滅しない。×
324-02-4法定代理人は、やむを得ない事由がなくとも、復代理人を選任することができる。
421-02-3任意代理人は、自ら選任・監督すれば、本人の意向にかかわらず復代理人を選任できる。×
519-02-1任意代理人は、やむを得ない事由があれば、本人の許諾を得なくても復代理人を選任できる。
619-02-2任意代理人が、復代理人の選任につき本人の許諾を得たときは、選任に過失があったとしても責任を負わない。×
719-02-4任意代理人が復代理人を適法に選任したときは、復代理人は本人に対して、代理人と同一の権利を有し、義務を負うため、代理人の代理権は消滅する。×
813-08-4任意代理人は、やむを得ない事情があっても、本人の承諾がなければ、復代理人を選任できない。×
912-01-2任意代理人は、自己の責任により、自由に復代理人の選任ができる。×

4 誤り

売買契約における売主と買主のように、契約の当事者双方を同じ人が代理することを双方代理といいます。このような行為が行われると、代理人のやりたい放題になり、本人の利益が侵害されます。そのため、双方代理は、原則として、無権代理行為とみなされます(民法108条1項本文)。

21-02-4

例外は、以下の2つのケースであり、この場合、契約は有効に成立します(同項ただし書き)。

  1. 本人があらかじめ許諾した行為
  2. 債務の履行

本肢は、「Aの意向にかかわらず」とする点が誤りです。

■参照項目&類似過去問
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双方代理(民法[03]5(2)(3))
年-問-肢内容正誤
1R02s-02-2AがBに対して、A所有の甲土地を売却する代理権を授与した。BがCの代理人も引き受け、AC双方の代理人として甲土地に係るAC間の売買契約を締結した場合、Aに損害が発生しなければ、Bの代理行為は無権代理とはみなされない。×
230-02-3[Aが、所有する甲土地の売却に関する代理権をBに授与し、BがCとの間で、Aを売主、Cを買主とする甲土地の売買契約を締結した。]BがCの代理人にもなって本件契約を成立させた場合、Aの許諾の有無にかかわらず、本件契約は無効となる。
×
324-02-3売主・買主の承諾があれば、双方代理は有効。
422-02-4売主・買主の承諾があれば、双方代理は有効。
521-02-4売主に損失が発生しなければ、売主・買主双方の代理が可能。×
620-03-2売主から書面で代理権を与えられていれば、売主・買主双方の代理が可能。×
708-02-1登記申請について、買主の同意があれば、売主の代理人が、売主・買主双方を代理できる。
803-03-4本人・相手方の同意があれば、双方代理が可能。
902-05-2売主の代理人が売主に隠れて当該土地の売買について買主からも代理権を与えられていた場合は、当該契約は効力を生じない。

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