【宅建過去問】(平成24年問08)債務不履行

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債務不履行に基づく損害賠償請求権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1. AがBと契約を締結する前に、信義則上の説明義務に違反して契約締結の判断に重要な影響を与える情報をBに提供しなかった場合、Bが契約を締結したことにより被った損害につき、Aは、不法行為による賠償責任を負うことはあっても、債務不履行による賠償責任を負うことはない。
  2. AB間の利息付金銭消費貸借契約において、利率に関する定めがない場合、借主Bが債務不履行に陥ったことによりAがBに対して請求することができる遅延損害金は、年3分の利率により算出する。
  3. AB間でB所有の甲不動産の売買契約を締結した後、Bが甲不動産をCに二重譲渡してCが登記を具備した場合、AはBに対して債務不履行に基づく損害賠償請求をすることができる。
  4. AB間の金銭消費貸借契約において、借主Bは当該契約に基づく金銭の返済をCからBに支払われる売掛代金で予定していたが、その入金がなかった(Bの責めに帰すべき事由はない。)ため、返済期限が経過してしまった場合、Bは債務不履行には陥らず、Aに対して遅延損害金の支払義務を負わない。

正解:4

1 正しい

契約の締結以前の準備段階においても、当事者は、相手方に対し、信義則上の説明義務を負います。この義務に違反し、契約締結の判断に影響を及ぼす情報を提供しなかった場合、相手方が被った損害につき、賠償責任を負うわけです。
この責任は、不法行為による賠償責任です。契約上の債務不履行による賠償責任を負うことはありません(最判平23.04.22)。

■参照項目&類似過去問
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契約準備段階での説明義務違反(民法[30]5(5))
年-問-肢内容正誤
1H28-09-4売主が信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった場合、買主は、売主に対して、この説明義務違反を理由に、売買契約上の債務不履行責任を追及することはできない。
2H24-08-1AがBと契約を締結する前に、信義則上の説明義務に違反して契約締結の判断に重要な影響を与える情報をBに提供しなかった場合、Bが契約を締結したことにより被った損害につき、Aは、不法行為による賠償責任を負うことはあっても、債務不履行による賠償責任を負うことはない。
3H18-01-1契約締結交渉中の一方の当事者が契約交渉を打ち切ったとしても、契約締結に至っていない契約準備段階である以上、損害賠償責任が発生することはない。×

2 正しい

金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定めます(民法419条1項)。その法定利率は、年3パーセントです(同法404条2項)。

※利息がつくかどうかにつき、何の定めもしなかった場合、利息は発生しません。本肢は、利息が発生することは定めたものの、その利率を定めなかったケースです。

利息に関する定めが 利率に関する定めが 利息・利率は
ない 無利息
ある ない 法定利息(3%)
ある 約定利息
■参照項目&類似過去問
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金銭債務の特則(民法[15]5)
年-問-肢内容正誤
1R02s-07-3Aを売主、Bを買主として、甲土地の売買契約が締結された。Bが売買契約で定めた売買代金の支払期日までに代金を支払わなかった場合、売買契約に特段の定めがない限り、AはBに対して、年5%の割合による遅延損害金を請求することができる。×
224-08-2貸主Aと借主Bとの間の利息付金銭消費貸借契約において、利率に関する定めがない場合、Bが債務不履行に陥ったことによりAがBに対して請求することができる遅延損害金は、年3パーセントの利率により算出する。
324-08-4当てにしていた入金がなかったため、借金が返済できなかった場合、債務不履行にはならない。×
402-02-1金銭債務の不履行については、債権者は、損害の証明をすることなく、損害賠償を請求できる。
法定利率(民法[15]5)
年-問-肢内容正誤
1R02s-07-3
Aを売主、Bを買主として、甲土地の売買契約が締結された。Bが売買契約で定めた売買代金の支払期日までに代金を支払わなかった場合、売買契約に特段の定めがない限り、AはBに対して、年5%の割合による遅延損害金を請求することができる。×
2H28-01-1
利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年3%とする。
3H24-08-2貸主Aと借主Bとの間の利息付金銭消費貸借契約において、利率に関する定めがない場合、Bが債務不履行に陥ったことによりAがBに対して請求することができる遅延損害金は、年3パーセントの利率により算出する。
4H03-09-1利率について別段の定めがないときは、貸主は、利息を請求することができない。×

3 正しい

「不動産の二重売買の場合において、売主の一方の買主に対する債務は、特段の事情のないかぎり、他の買主に対する所有権移転登記が完了した時に履行不能になる」とするのが判例です(最判昭35.04.21)。
本肢のケースでは、Cが登記を備えた段階で、BのAに対する引渡義務が履行不能となります。履行不能になったのですから、Aは、Bに対して、債務不履行に基づく損害賠償請求をすることが可能です(民法415条)。

■参照項目&類似過去問
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履行不能(民法[15]2(2))
年-問-肢内容正誤
1R03-03-ウAがA所有の土地について買主Bとの間で売買契約を締結し、当該土地の引渡しと残代金決済の前にAが死亡した場合、当該売買契約は原始的に履行が不能となって無効となる。×
2R02s-04-4契約に基づく債務の履行が契約の成立時に不能であったとしても、その不能が債務者の責めに帰することができない事由によるものでない限り、債権者は、履行不能によって生じた損害について、債務不履行による損害の賠償を請求することができる。
324-08-3AB間でB所有の甲不動産の売買契約を締結した後、Bが甲不動産をCに二重譲渡してCが登記を具備した場合、AはBに対して債務不履行に基づく損害賠償請求をすることができる。
419-10-1令和X年9月1日にA所有の甲建物につきAB間で売買契約が成立した。甲建物が同年8月31日時点でAB両者の責に帰すことができない火災により滅失していた場合、甲建物の売買契約は有効に成立するが、Aは甲建物を引き渡す債務を負わないものの、Bは、代金の支払いを拒むことができない。×
519-10-2令和X年9月1日にA所有の甲建物につきAB間で売買契約が成立した。甲建物が同年9月15日時点でAの責に帰すべき火災により滅失した場合、有効に成立していた売買契約は、Aの債務不履行によって無効となる。
×

4 誤り

金銭債務について、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができません(民法419条3項)。つまり、金銭債務は、履行不能となることがないわけです。
したがって、本肢のBは、「Cからの支払がなかった」ことを抗弁とすることができません。Bは、返済期限を経過した時点で債務不履行に陥っているのですから、Aに対して損害賠償金を支払う義務を負います。

■参照項目&類似過去問
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金銭債務の特則(民法[15]5)
年-問-肢内容正誤
1R02s-07-3Aを売主、Bを買主として、甲土地の売買契約が締結された。Bが売買契約で定めた売買代金の支払期日までに代金を支払わなかった場合、売買契約に特段の定めがない限り、AはBに対して、年5%の割合による遅延損害金を請求することができる。×
224-08-2貸主Aと借主Bとの間の利息付金銭消費貸借契約において、利率に関する定めがない場合、Bが債務不履行に陥ったことによりAがBに対して請求することができる遅延損害金は、年3パーセントの利率により算出する。
324-08-4当てにしていた入金がなかったため、借金が返済できなかった場合、債務不履行にはならない。×
402-02-1金銭債務の不履行については、債権者は、損害の証明をすることなく、損害賠償を請求できる。

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【宅建過去問】(平成24年問08)債務不履行” に対して2件のコメントがあります。

  1. 隼汰 より:

    先生から教えて頂いた過去問の一問一答に取り組んでいます。
    問1なのですが、この場合なぜ債務不履行の損害賠償責任を負わないのですか?債務を履行してないと思うのですが。
    不法行為責任を負うときは、事故などによって損害を受けた場合に不法行為責任を負うと思うのですが、詳しく教えて頂いてもよろしいのですか?

    1. 家坂 圭一 より:

      隼汰様

      「契約を締結する前」つまり契約の準備段階における説明義務違反に対して、どのように対処するか、については、以下の2つの考え方があります。
      (1)不法行為による賠償責任を負うという考え方
      (2)契約上の債務不履行責任による賠償責任を負うという考え方

      これらのうち、判例は(1)の考え方を採用しています。
      そして、宅建試験では、「民法の規定及び判例」が正解の基準です。本件については、肢1の考え方が正解ということになります。
      「隼汰さんが正しいと考える学説」ではなく、判例を基準にすることが必要です。

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